2024.02.03
2024年、最後の箱根駅伝を終えた大学4年生ランナーたち。納得のいく走りができた選手や悔いを残した選手、なかにはアクシデントでスタートラインにすら立てなかったエース級もいる。お届けするのは、そんな最上級生たちの物語――。
3冠チームの副主将として、主将の鈴木芽吹をサポート
駒大の黄金期を彩った4年生世代が卒業する。在学中負けなしの全日本大学駅伝を含め三大駅伝11戦8勝(1年時の出雲駅伝は中止)、この学年から10人の学生駅伝出場者を生んだ。
その中にあって、金子伊吹の存在は異色だ。入学時、金子の5000m自己記録は同学年中11番目。そこから這い上がって、箱根駅伝の5区に2度の出場を果たした。
「高校3年の12月に同期になる面々を知り、正直、すごいところに入ってしまうんだなと感じたことを覚えています。でも、怖気づくとかはなかったですね。みんなで仲良くやっていたし、一緒に生活してみると、(足が)速い選手も『意外と普通なんだな』と感じたんです。地道にやれば自分も成長していけると感じました」
2年時の箱根駅伝は、当時の2年生が10区間中7人を埋める結果に。その一角に金子が食い込んだ。駒大の出場10人のうち、当時の5000m自己記録が13分台に届かなかったのは金子1人。劣勢の中で粘り抜いた区間4位は、十分な仕事だった。
「中学時代から箱根の5区を目標にしてきたので、それが叶ったことはすごくうれしくて。自分が輝ける場所、力を発揮できる場所がここなんだなとわかりました。でも結果的には負けてしまっていたので、『もっと強くならなきゃ』と感じた機会でした」。
3年時は、区間エントリーで金子の名前が5区に入ったが、当日変更で当時1年の山川拓馬にバトンタッチ。山川の付き添いをするかたちで総合優勝に貢献した。練習ができてこその金子。夏の鍛錬期後の2週間ほど、大学入学後初めてのケガがあった。
年が明け、金子は副キャプテンに指名された。「自分は速くない選手なのに……」と謙遜したが、「ぜひやってくれないか」と声をかけてもらったという。
3冠達成チームの副将として重圧もあった。しかし、1年間をやり終えて、「(鈴木)芽吹キャプテンと一緒にチーム作りをやってきて、学ぶことも多かった」と振り返る。
キャプテンの鈴木が言う。「箱根駅伝を終えて一番に思ったのが、『金子が副キャプテンで本当に良かったなぁ』ということ。それにはいろんな理由がありますが、とにかく助けてもらった。『ありがとう』という言葉しかありません」。
金子の持ち前の柔らかな性格で自然と下級生と打ち解け、それだけで学年間の風通しが良くなった。この1年、食堂では誰かの誕生日を祝うちょっとした時間が自然発生。みんなで「ハッピーバースデー」を歌い、当人は誕生日の誓いを発表する。金子が「じゃあ、ちょっとみんなで歌うか」と言い出したことが発端だ。
3冠チームの副主将として、主将の鈴木芽吹をサポート
駒大の黄金期を彩った4年生世代が卒業する。在学中負けなしの全日本大学駅伝を含め三大駅伝11戦8勝(1年時の出雲駅伝は中止)、この学年から10人の学生駅伝出場者を生んだ。 その中にあって、金子伊吹の存在は異色だ。入学時、金子の5000m自己記録は同学年中11番目。そこから這い上がって、箱根駅伝の5区に2度の出場を果たした。 「高校3年の12月に同期になる面々を知り、正直、すごいところに入ってしまうんだなと感じたことを覚えています。でも、怖気づくとかはなかったですね。みんなで仲良くやっていたし、一緒に生活してみると、(足が)速い選手も『意外と普通なんだな』と感じたんです。地道にやれば自分も成長していけると感じました」 2年時の箱根駅伝は、当時の2年生が10区間中7人を埋める結果に。その一角に金子が食い込んだ。駒大の出場10人のうち、当時の5000m自己記録が13分台に届かなかったのは金子1人。劣勢の中で粘り抜いた区間4位は、十分な仕事だった。 「中学時代から箱根の5区を目標にしてきたので、それが叶ったことはすごくうれしくて。自分が輝ける場所、力を発揮できる場所がここなんだなとわかりました。でも結果的には負けてしまっていたので、『もっと強くならなきゃ』と感じた機会でした」。 3年時は、区間エントリーで金子の名前が5区に入ったが、当日変更で当時1年の山川拓馬にバトンタッチ。山川の付き添いをするかたちで総合優勝に貢献した。練習ができてこその金子。夏の鍛錬期後の2週間ほど、大学入学後初めてのケガがあった。 年が明け、金子は副キャプテンに指名された。「自分は速くない選手なのに……」と謙遜したが、「ぜひやってくれないか」と声をかけてもらったという。 3冠達成チームの副将として重圧もあった。しかし、1年間をやり終えて、「(鈴木)芽吹キャプテンと一緒にチーム作りをやってきて、学ぶことも多かった」と振り返る。 キャプテンの鈴木が言う。「箱根駅伝を終えて一番に思ったのが、『金子が副キャプテンで本当に良かったなぁ』ということ。それにはいろんな理由がありますが、とにかく助けてもらった。『ありがとう』という言葉しかありません」。 金子の持ち前の柔らかな性格で自然と下級生と打ち解け、それだけで学年間の風通しが良くなった。この1年、食堂では誰かの誕生日を祝うちょっとした時間が自然発生。みんなで「ハッピーバースデー」を歌い、当人は誕生日の誓いを発表する。金子が「じゃあ、ちょっとみんなで歌うか」と言い出したことが発端だ。最後の箱根路で駒大新記録も「力及ばなかった」
チームの1年間を支えたテーマは「2年連続3冠~史上最高への挑戦~」。これを鈴木と部屋で2人、アイデアを出した。「3冠を達成した王者と見られるけれど、何かに挑戦したいよね」。サブタイトルにつけた「史上最高への挑戦」が、チーム作りを進めるにつれて、沁み込んできた。「あのスローガンに沿って、1人ひとりががこういうチームを作ろうと行動できたと思います」と金子は感じている。 個人の競技でも足場を固めた1年だった。1月の奥球磨、3月の日本学生ハーフ、4月の焼津、5月の関東インカレ(2部)、6月の仙台国際と、徹底してハーフマラソンにこだわって転戦。半年で5本をこなす異例の取り組みを行った。 自己記録は3年時の1時間4分59秒から、学生ハーフで1時間3分34秒に伸ばしたが(11月の世田谷246で1時間3分32秒に更新)、常に疲労のある状態でコンスタントに出した中でのタイムだ。そしてこの充実期、チームが距離走を行う時には金子や赤星雄斗(4年)がペースを作り、自然とチーム力の引き上げに寄与していた。 夏場は慢性疲労で苦しんだが、秋から復調。箱根駅伝で2度目の出番となった。巡り合わせが悪く、金子の出番は2度とも、劣勢に立たされた状態でのスタート。そんな中で2年時を上回るパフォーマンスで逆転に望みをつないだ。1時間10分44秒は想定を上回る駒大新記録だったが、「自分の能力からするとがんばったと思われますが、結果として青学大の若林(宏樹)君に1分以上離されてしまっています。力及ばなかった、というのが感想です」と悔しさのほうが大きい。 小学校の卒業文集に「将来はマラソン選手になる」と記した。駒大で培った土台を生かし、卒業後はマラソン挑戦を視野に入れる。 「自分はマラソンで戦うしかありません。うれしいことに、実力の高い(鈴木)芽吹たちと同期になった。これからもみんなの活躍を絶対に知ることになると思うし、そのたびに『自分も負けないぞ』という思いを常に持てる。将来的にはマラソンで日本を代表する選手になれるよう、努力していきたいです」 今はまだ花々隠れたつぼみが、数年後にいちばん大きな花を咲かせるかもしれない。 [caption id="attachment_127554" align="alignnone" width="800"]
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