2024.01.29
名門チームを率いるキャプテンとしての責務
野球少年だった湯浅は、高校から陸上をスタート。練習に対して真摯に打ち込み、そして誰にでもフラットに接し、笑顔を絶やさない湯浅は、いつしかチームの精神的主柱となる。主将を任された3年時には、都大路でチームを初入賞となる7位に導いた。
期待に胸を膨らませて中大に入学した2020年。新型コロナウイルス感染症により、練習もできなければ、大会もない。モチベーションを持ち続けるのは難しい現実が待ち構えていた。
しかし、湯浅は持ち前の真面目な性格でコツコツとやるべきことを積み重ねてきた。その成果が、2年時の箱根駅伝で爆発。9区を任され、区間3位の好走で10年ぶりのシード獲得に大きく貢献した。
さらに3年時にも9区で区間6位と安定した走りを見せている。
高校時代と同じくチームの主将を任された湯浅は、まず「自分が背中で見せて、結果で示していく」ことを大事に取り組んできた。
「主将として、やっぱり自分が結果を残さないと発言力もなくなってくると思うので。練習面では、スピードところをしっかりと意識して練習に取り組んできました。あと、自分はあまり強度の高い練習ができないので、とにかく当たり前のことやる、ということを心がけました。1人で距離を踏むだとか、そういうプラスアルファという面で、人より多くやってやろう、という意識で4年間やってきました」
また、3年時の箱根駅伝で2区、3区と連続区間賞を獲得した同学年のスター選手、吉居大和、中野翔太の存在も大きかった。
「彼らがいたから、僕は彼らの背中を追ってここまで来ることができました。本当に2人には感謝しています」
だが、「エース頼みのチームじゃいけないと思っていた」とも考えていた。だからこそ主将の自分が、チームがどんな状況であっても、どんな試合展開であったとしても、粛々と走り、結果を残せるような実力をつけなければならない。そう考え、日々のトレーニングに打ち込んだ。
「彼らがもし走れなければ、自分がしっかり走らないといけない。それはずっと考えていたので、今回任されたこの4区で結果を残せて良かったなと思います」
高校時代にも主将は経験していたが、大学の、ましてや大学陸上界でも伝統あるチームの主将とはプレッシャーがケタ違いだった。
だが、そんなチームを任せてくれた首脳陣と、チームメイトたちからの信頼を裏切るわけにはいかなかった。「このチームの主将としての自覚というか、責任感がここまで自分を動かしてくれました」。
今回、チームはシード権を失い、次回は予選会からの再スタートとなった。しかし、中大はどんな状況に追い込まれたとしても、必ずはい上がってきた。
「チームとしては目標にはほど遠い結果になってしまったんですけど、個人としてはしっかりと後輩たちに背中を見せられたと思います。やってきたことは間違っていない。後輩たちには自信を持って、これからも取り組んでいってほしいと思っています」
卒業後は元日の全日本実業団対抗駅伝で優勝した強豪・トヨタ自動車で競技を続けることが決まっている。
後輩たちに夢を託し、湯浅は次のステージに進む。

2024年箱根駅伝4区で区間3位と好走した中大の湯浅仁
湯浅仁(ゆあさ・じん:中大)/2001年8月27日生まれ。宮崎県宮崎市出身。宮崎日大高卒。自己ベストは5000m13分55秒60、10000m28分12秒17、ハーフ1時間2分35秒。
文/田坂友暁
最後の箱根路は4区で5人抜きの区間3位
「『やるしかない』という気持ちでスタートラインに立ちました」 優勝候補に挙げられていた中大だったが、序盤から苦しい戦いを強いられていた。そんななか、チームの追い上げムードを作り上げる走りを見えたのが、4区を任された湯浅仁(4年)であった。 総合18位でタスキを受け取った湯浅。1年間チームを率いてきた駅伝主将は、総合18位でタスキを受け取っても勝負を捨ててはいなかった。 トップとは約8分差。優勝は絶望的だった。だからといって、チームの旗振り役が気の抜いた走りなど見せられるはずもない。 トップ争いをする駒大、青学大との差は、さほど縮まらない。それでも、一つひとつ、一歩一歩、ひたすら自分がやってきたことを信じて走り続けた。 1人、また1人と抜き、気づけば5人抜き。湯浅は日大と肩を並べて小田原中継所に飛び込んできた。 区間3位、総合順位を13位にまで押し上げて、湯浅は最後の箱根路を終えた。 「チームとしてものすごく苦しい展開だったのですが、こういうピンチの時こそ、キャプテンが何とかしないといけないと考えていました。チームのピンチを救えて良かったかなと思います」名門チームを率いるキャプテンとしての責務
野球少年だった湯浅は、高校から陸上をスタート。練習に対して真摯に打ち込み、そして誰にでもフラットに接し、笑顔を絶やさない湯浅は、いつしかチームの精神的主柱となる。主将を任された3年時には、都大路でチームを初入賞となる7位に導いた。 期待に胸を膨らませて中大に入学した2020年。新型コロナウイルス感染症により、練習もできなければ、大会もない。モチベーションを持ち続けるのは難しい現実が待ち構えていた。 しかし、湯浅は持ち前の真面目な性格でコツコツとやるべきことを積み重ねてきた。その成果が、2年時の箱根駅伝で爆発。9区を任され、区間3位の好走で10年ぶりのシード獲得に大きく貢献した。 さらに3年時にも9区で区間6位と安定した走りを見せている。 高校時代と同じくチームの主将を任された湯浅は、まず「自分が背中で見せて、結果で示していく」ことを大事に取り組んできた。 「主将として、やっぱり自分が結果を残さないと発言力もなくなってくると思うので。練習面では、スピードところをしっかりと意識して練習に取り組んできました。あと、自分はあまり強度の高い練習ができないので、とにかく当たり前のことやる、ということを心がけました。1人で距離を踏むだとか、そういうプラスアルファという面で、人より多くやってやろう、という意識で4年間やってきました」 また、3年時の箱根駅伝で2区、3区と連続区間賞を獲得した同学年のスター選手、吉居大和、中野翔太の存在も大きかった。 「彼らがいたから、僕は彼らの背中を追ってここまで来ることができました。本当に2人には感謝しています」 だが、「エース頼みのチームじゃいけないと思っていた」とも考えていた。だからこそ主将の自分が、チームがどんな状況であっても、どんな試合展開であったとしても、粛々と走り、結果を残せるような実力をつけなければならない。そう考え、日々のトレーニングに打ち込んだ。 「彼らがもし走れなければ、自分がしっかり走らないといけない。それはずっと考えていたので、今回任されたこの4区で結果を残せて良かったなと思います」 高校時代にも主将は経験していたが、大学の、ましてや大学陸上界でも伝統あるチームの主将とはプレッシャーがケタ違いだった。 だが、そんなチームを任せてくれた首脳陣と、チームメイトたちからの信頼を裏切るわけにはいかなかった。「このチームの主将としての自覚というか、責任感がここまで自分を動かしてくれました」。 今回、チームはシード権を失い、次回は予選会からの再スタートとなった。しかし、中大はどんな状況に追い込まれたとしても、必ずはい上がってきた。 「チームとしては目標にはほど遠い結果になってしまったんですけど、個人としてはしっかりと後輩たちに背中を見せられたと思います。やってきたことは間違っていない。後輩たちには自信を持って、これからも取り組んでいってほしいと思っています」 卒業後は元日の全日本実業団対抗駅伝で優勝した強豪・トヨタ自動車で競技を続けることが決まっている。 後輩たちに夢を託し、湯浅は次のステージに進む。 [caption id="attachment_127191" align="alignnone" width="800"]
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