「とりあえずシード圏内で帰ってくることができて、ほっとしています」。早大の花田勝彦駅伝監督は、総合7位でレースを終えて、ひとまずは胸をなでおろした。
前回6位のメンバーが8人残りながらも、その立役者となった経験者がスタートラインに立てなかった。前回5区区間6位の伊藤大志(3年)と6区区間3位の北村光(4年)は、それぞれ12月下旬にインフルエンザを発症。4区区間6位の佐藤航希(4年)はなかなか調子が上がらず、起用を見送ることになった。
「北村は絶好調で、区間賞を狙えるような勢いで準備をしましたが、最後の大事な練習が終わった後に熱が出てしまった。その翌日には伊藤も発熱しました。2人とも幸いにすぐ解熱し回復して、走れない状態ではなかったんですけど、実力というよりも体調の良い人を今回は使おうとメンバー編成をしました」
元々、伊藤は平地で起用するプランがあったが、今回のストロングポイントになるはずだった区間に誤算が生じた。
「選手たちに気持ちの面で余裕を持たせてあげたいと思ったので、この状況であれば行けるというタイム設定をしました。全体としては10時間57分半辺りを想定していて、総合では9番、10番争いだと思っていました」
前回以上の成績を目標に掲げて今シーズンは始まったが、直前のトラブルで指揮官はシード権争いになるのを覚悟した。
それでも、往路は「100点以上の出来だった」。特筆すべきは2区の山口智規(2年)だろう。
「1時間6分台で走れる力はあるが、初めての箱根なので、1時間7分半ぐらいでいいと思っていた」と花田監督は言うが、その想像をはるかに上回る走りを見せた。1995年に渡辺康幸(現・住友電工監督)が打ち立てた早大記録を17秒上回る1時間6分31秒で区間4位。8人を抜き4位まで押し上げた。
「渡辺康幸さんのタイムを抜きたいという気持ちもあったので、いい意味で期待を裏切れて良かったです」と山口にとっても納得の走りだった。
伊藤や、調子を落としていた石塚陽士(3年)に代わって、3区に抜擢された辻文哉(4年)も最初で最後の箱根路で指揮官の想定を上回る走りを見せた。
「往路で伊藤の代わりに誰が走るか非常に迷ったのですが、辻がよく走ってくれました」
順位を3つ下げたものの、区間7位で粘り、山口が作った流れを切らさなかった。5区でもルーキーの工藤慎作が区間6位と好走し、往路を5位で終えた。
“耐えるレース”になるのを覚悟した復路は、6区と7区を終えて、9位に順位を落としてしまう。往路から一転し、シード権争いに巻き込まれそうになったが、このピンチに奮闘したのが、早稲田にとっては欠かせない一般入学組だった。
8区の伊福陽太(3年)、10区の菅野雄太(3年)がいずれも区間5位。「伊福は、最後タスキを落としてしまって取りに戻るシーンもありましたが、全日本と同じくシード権がかかった場面で最後まで気持ちを切らさずに走ってくれた。10区の菅野は非常に調子が良かった。彼のところでシード権争いになっていたら絶対に勝てると思っていました。前半から積極的な走りで素晴らしかった」と花田監督は称える。
前回よりも1つ順位は落としはしたものの、目標を下方修正したなかで、現状で持っている力は出しただろう。
「前回経験者の中から要の選手が欠けた中での7位。総合力としてベースは上がったのかなと思います。しかし、一方で青学大は本当にすごい記録で優勝しています。我々も同じように進歩、進化していかないと、優勝争いは見えてこない。安堵はしますけれども、全然満足できる結果ではない。やはり課題はたくさんあったと思います」
地力がついているのは確認できた。だが、この結果で満足するわけにはいかない。第87回大会(2011年)以来遠ざかっている頂点を見据えて、また新たなシーズンが始まる。
文/和田悟志
第100回箱根駅伝7位の早大メンバー
1区 間瀬田純平(2年) 区間12位 2区 山口智規(2年) 区間4位 3区 辻文哉(4年) 区間7位 4区 石塚陽士(3年) 区間13位 5区 工藤慎作(1年) 区間6位 6区 栁本匡哉(4年) 区間20位 7区 諸冨湧(3年) 区間14位 8区 伊福陽太(3年) 区間5位 9区 菖蒲敦司(4年) 区間11位 10区 菅野雄太(3年) 区間5位 ◎補員 北村光(4年) 佐藤航希(4年) 伊藤大志(3年) 宮岡凜太(2年) 長屋匡起(1年) 山﨑一吹(1年)
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