◇第100回箱根駅伝(東京・大手町←→神奈川・箱根町/10区間217.1km)
第100回大会となる箱根駅伝で、城西大が新たな歴史を彩った。総合10時間52分26秒の3位。タイム、順位ともに大学最高を塗り替えた。また、5区で前回自身の樹立した区間記録を更新した山本唯翔(4年)が大会MVPにあたる金栗四三杯を受賞した。
1区を担当した主将の野村颯斗(4年)が区間3位と好調な滑り出し。すると、2区の斎藤将也(2年)も各校のエースと互角に戦い、区間8位ながら1時間7分15秒と15年に村山紘太(現・GMOインターネットグループ)が出した大学記録(1時間7分43秒)を大きく塗り替える力走。順位は2つ下げたが、3区のヴィクター・キムタイ(2年)ですかさず3位に上がった。
4区も順位をキープし、いよいよ山本へタスキが渡る。前回大会で“山の妖精“の愛称が一躍有名になった山本は、大会前は「自らの区間記録を更新したい」と意気込んでいた。ただ、小田原中継所では冷たい雨が降っており、櫛部監督からも「記録よりは自分との戦いだ」と言われていた。
山本も総合3位を達成するため、「区間記録を意識せずに走った」と話す。しかし、山を駆け上がるにつれて身体が動くようになり、2位の駒大との差をどんどんと詰めていく。最終的には1時間9分14秒と、自ら持っていた記録を50秒更新。3位で芦ノ湖にたどり着いた。2位駒大とは39秒差にまで迫っていた。
復路では7区の林晃耀(3年)が区間5位で走った以外は、いずれも区間ふたケタと我慢の駅伝。それでも、後ろから来る東洋大には追いつかせず、86回大会(11年)、88回大会(13年)の6位を上回り初のトップスリー入りを果たし、メンバーには笑顔が絶えなかった。
櫛部静二監督は予選会を突破して挑んだ前回大会の直前に、「100回大会では総合3位を目標とする」と選手たちに宣言。はじめは半信半疑だった選手たちも、99回大会で9位となりシード権を獲得して自信をつけた。走った選手が全員残った今シーズンはより練習のレベルも上がり、チーム全体の競技力が上がったことで、目標が徐々に現実的なものとなってきた。
科学的な見地から低酸素トレーニングを取り入れ、地道に浸透させてきたことで選手の取り組みも変わってきた。はじめは監督から働きかけないと低酸素室に入らなかった選手たちも、トレーニングの効果を感じるようになってからは自発的に練習に取り入れるようになっていったという。
その成果は駅伝シーズンが終わってから結果として表れ、2月に山本が丸亀ハーフで1時間1分34秒の大学記録を更新。関東インカレ(2部)ではキムタイが5000m、10000mの2冠を獲得し、今回の箱根で9区を務めた平林樹(3年)がハーフマラソンで4位入賞を果たす。6月の全日本大学駅伝選考会はトップで悠々と通過した。夏を経て臨んだ出雲駅伝では3位、全日本大学駅伝も5位とともにチーム最高順位を更新。満を持して箱根駅伝だった。
前回の箱根に出場した選手たちの成長を考えてタイムに当てはめた時に、「トレーニングをしっかりしていけば、3位はいける」と思えるようになったと櫛部監督。「本当に練習どおり選手が走れて、思うようにできたかなというのが正直な感想です」と達成感が言葉からにじみ出る。「4年生が本当にしっかりしていました。箱根駅伝は山が中心だと思うので、やはり山本の存在ですね。主将の野村も1区で良いスタートを切ってくれて、下級生たちも一緒になってやった結果だと思います」(櫛部監督)。
今季は春のトラックシーズンからチームが掲げた目標をほぼ完璧にクリア。1年越しの目標であった箱根でも見事に大願を成就させた。来シーズンは1区の野村、4区の山中秀真、5区の山本、10区の中山侑希と今回のメンバーから4人が卒業する。櫛部監督は「今いる選手を育成しなきゃいけないですし、新しく入ってくる選手たちも強くしていかないといけないと思っています。今回の結果も含めて、マインドの部分を継承して、さらに強くしていかないといけない」と、さらに上のステージを視野に入れて語った。真の意味で強豪校となれるか、城西大のこれからにも注目したい。
文/藤井みさ
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