2023.12.30
2024年に箱根駅伝は第100回大会を迎える。記念すべき100回に向けて、これまでの歴史を改めて振り返る『Playback箱根駅伝』を企画。第1回大会から第99回大会まで、大会の様子を刻んでいく。(所属などは当時のもの)
第96回(2020年/令和2年)
2区で相澤が驚異の1時間5分台
館澤が山下りで大幅区間新
令和最初の箱根は激戦が予想された。出雲は新鋭の國學院大が初優勝し、全日本は箱根王者の東海大が16年ぶりV。箱根の連続優勝が「4」で途切れた青学大は、出雲こそ5位に終わったものの、全日本は2位と勢いを取り戻しつつあった。
10月の予選会では筑波大が6位に入り、26年ぶりの本戦出場権を獲得。第1回大会(1920年)の優勝校・東京高師を前身とする大学が、100年後のレースに参戦することになった。
1区はスタートから速いペースで展開したものの、18km過ぎの六郷橋ではまだ9人が先頭グループを形成。中継所まで残り500mを切ったところで創価大の米満怜(4年)が先頭へ立ち、区間歴代2位タイの1時間1分13秒でチーム初となる区間賞獲得とトップ中継を果たした。
5秒差の2位は國學院大で、日体大をはさみ、前回王者の東海大がトップから10秒差の4位中継。青学大は18秒差の7位、東洋大は2年連続区間賞の西山和弥(3年)が2分02秒差の14位と大きく出遅れた。
2区では最大7校が先頭争いを繰り広げる。終盤には4校(國學院大、東海大、青学大、早大)に絞られ、青学大の1年生・岸本大紀がトップ中継を果たした。
その後方では14位スタートの東洋大・相澤晃(4年)が13秒先に出た東京国際大・伊藤達彦(4年)に追いつくとそのまま並走。ハイペースの鍔迫り合いで抜きつ抜かれつの名勝負を繰り広げた。相澤の勢いは最後まで衰えず、20km過ぎで伊藤を振り切り、7位で中継。区間記録を11年ぶりに更新する1時間5分57秒の特大区間新を叩き出した。相澤には及ばなかったものの、伊藤も1時間6分18秒(区間2位タイ)をマーク。前回大会で塩尻和也(順大)が出した日本人最高記録(1時間6分45秒)を大幅に上回った。
超高速レースは3区も続いた。その主役は東京国際大のイェゴン・ヴィンセント(1年)。11km過ぎに先頭の青学大を抜き去ると、その後は独走。従来の区間記録を2分01秒も更新する衝撃の59分25秒で駆け抜け、初の首位中継を果たした。青学大は1分21秒差の2位。3位は戸塚から順位を1つ上げた國學院大。4位は帝京大で、遠藤大地(2年)が従来の区間記録を3秒上回る1時間1分23秒をマーク。また、駒大のルーキー・田澤廉も区間記録から1秒速いタイムで、13位から6位に進出した。
4区では青学大が主役の座を取り戻した。最終学年にして箱根初出場の吉田祐也(4年)が14km手前で東京国際大を逆転。相澤が前年マークした区間記録(1時間0分54秒)を更新する1時間0分30秒で走破し、2位・東京国際大とは1分02秒差とした。3位は変わらず國學院大、4位は東海大で、帝京大は5位。往路2連覇中の東洋大は、3区で10位に下がると、4区は区間最下位で14位まで後退。青学大とは8分14秒差をつけられ、往路3連覇は絶望的となった。
青学大の安定したレースは山でも変わらない。5区初挑戦の飯田貴之(2年)は区間新が狙えるペースで駆け上がり、後続との差を広げて3年ぶりの往路優勝。前年の東洋大の往路記録を5分15秒も更新する5時間21分16秒をマークした。
2位の國學院大、3位の東京国際大、7位の創価大は往路の自校最高成績。前回王者の東海大は3分22秒差の4位で終えた。個人では東洋大の宮下隼人(2年)が区間新記録の1時間10分25秒で制し、苦戦するチームを14位から11位に押し上げた。また、区間2位の青学大・飯田、3位の國學院大・浦野雄平(4年)も区間記録を上回った。
6区では青学大・谷野航平(4年)が安定したペースを刻み、首位をキープ。2位・國學院大との差を1分33秒から2分16秒まで拡大した。逆転優勝を狙う4位・東海大は館澤亨次(4年)を起用。区間記録を40秒も更新する57分17秒をマークし、青学大とは2分21秒差、國學院大には5秒差まで迫る3位に浮上した。また、3年連続6区となった東洋大・今西駿介(4年)も従来の区間記録を23秒上回り、7位に躍進した。
大きな貯金をもらった青学大の7区・中村友哉(4年)は終始、危なげない走りでトップを守った。3位の東海大は12km過ぎで2位の國學院大を抜くが、青学大とは20秒詰めただけ。5位で中継所を飛び出した明大・阿部弘輝(4年)は区間新のペースで追い上げ、12km過ぎで東京国際大をかわし、4位に浮上。そのままハイペースを保って区間記録を36秒更新する1時間1分40秒で他を圧倒した。
8区も青学大の堅実な走りは揺るがない。岩見秀哉(3年)は、区間記録保持者の東海大・小松陽平(4年)に区間賞こそ譲ったものの、リードは2分00秒と、逆転劇の気配はない。後方では國學院大が明大から3位を奪い返した。
終盤にさしかかる9区で青学大・神林勇太(3年)がダメ押しの区間賞。2位・東海大との差を3分42秒まで拡大し、総合優勝をほぼ決定づけた。10区の湯原慶吾(2年)は悠々と独走。青学大は4区以降、一度も先頭を譲ることなく、10時間45分23秒で2年ぶり5回目の総合優勝を遂げた。
東海大は連覇を逃したものの、大会新の10時間48分25秒で2位フィニッシュ。復路成績では新記録の5時間23分47秒を叩き出し、青学大を抑えて初の復路優勝を手にした。3位は國學院大。10区で4チームが争う激戦を制し、大学最高成績を挙げた。4位は帝京大で大学最高タイ、5位の東京国際大も大学最高成績と初のシード権獲得となった。
駒大が8位、東洋大が10位と上位候補が低迷したのを尻目に、創価大が初のシード権獲得となる9位に入った。アンカーの嶋津雄大(2年)は13年ぶりの区間新となる1時間8分40秒で、11位から順位を上げた。代わって11位に転落した中央学大は6年ぶりにシードを失った。金栗四三杯は2区区間新の相澤が受賞した。
第96回(2020年/令和2年) 2区で相澤が驚異の1時間5分台 館澤が山下りで大幅区間新
令和最初の箱根は激戦が予想された。出雲は新鋭の國學院大が初優勝し、全日本は箱根王者の東海大が16年ぶりV。箱根の連続優勝が「4」で途切れた青学大は、出雲こそ5位に終わったものの、全日本は2位と勢いを取り戻しつつあった。 10月の予選会では筑波大が6位に入り、26年ぶりの本戦出場権を獲得。第1回大会(1920年)の優勝校・東京高師を前身とする大学が、100年後のレースに参戦することになった。 1区はスタートから速いペースで展開したものの、18km過ぎの六郷橋ではまだ9人が先頭グループを形成。中継所まで残り500mを切ったところで創価大の米満怜(4年)が先頭へ立ち、区間歴代2位タイの1時間1分13秒でチーム初となる区間賞獲得とトップ中継を果たした。 5秒差の2位は國學院大で、日体大をはさみ、前回王者の東海大がトップから10秒差の4位中継。青学大は18秒差の7位、東洋大は2年連続区間賞の西山和弥(3年)が2分02秒差の14位と大きく出遅れた。 2区では最大7校が先頭争いを繰り広げる。終盤には4校(國學院大、東海大、青学大、早大)に絞られ、青学大の1年生・岸本大紀がトップ中継を果たした。 その後方では14位スタートの東洋大・相澤晃(4年)が13秒先に出た東京国際大・伊藤達彦(4年)に追いつくとそのまま並走。ハイペースの鍔迫り合いで抜きつ抜かれつの名勝負を繰り広げた。相澤の勢いは最後まで衰えず、20km過ぎで伊藤を振り切り、7位で中継。区間記録を11年ぶりに更新する1時間5分57秒の特大区間新を叩き出した。相澤には及ばなかったものの、伊藤も1時間6分18秒(区間2位タイ)をマーク。前回大会で塩尻和也(順大)が出した日本人最高記録(1時間6分45秒)を大幅に上回った。 超高速レースは3区も続いた。その主役は東京国際大のイェゴン・ヴィンセント(1年)。11km過ぎに先頭の青学大を抜き去ると、その後は独走。従来の区間記録を2分01秒も更新する衝撃の59分25秒で駆け抜け、初の首位中継を果たした。青学大は1分21秒差の2位。3位は戸塚から順位を1つ上げた國學院大。4位は帝京大で、遠藤大地(2年)が従来の区間記録を3秒上回る1時間1分23秒をマーク。また、駒大のルーキー・田澤廉も区間記録から1秒速いタイムで、13位から6位に進出した。 4区では青学大が主役の座を取り戻した。最終学年にして箱根初出場の吉田祐也(4年)が14km手前で東京国際大を逆転。相澤が前年マークした区間記録(1時間0分54秒)を更新する1時間0分30秒で走破し、2位・東京国際大とは1分02秒差とした。3位は変わらず國學院大、4位は東海大で、帝京大は5位。往路2連覇中の東洋大は、3区で10位に下がると、4区は区間最下位で14位まで後退。青学大とは8分14秒差をつけられ、往路3連覇は絶望的となった。 青学大の安定したレースは山でも変わらない。5区初挑戦の飯田貴之(2年)は区間新が狙えるペースで駆け上がり、後続との差を広げて3年ぶりの往路優勝。前年の東洋大の往路記録を5分15秒も更新する5時間21分16秒をマークした。 2位の國學院大、3位の東京国際大、7位の創価大は往路の自校最高成績。前回王者の東海大は3分22秒差の4位で終えた。個人では東洋大の宮下隼人(2年)が区間新記録の1時間10分25秒で制し、苦戦するチームを14位から11位に押し上げた。また、区間2位の青学大・飯田、3位の國學院大・浦野雄平(4年)も区間記録を上回った。 6区では青学大・谷野航平(4年)が安定したペースを刻み、首位をキープ。2位・國學院大との差を1分33秒から2分16秒まで拡大した。逆転優勝を狙う4位・東海大は館澤亨次(4年)を起用。区間記録を40秒も更新する57分17秒をマークし、青学大とは2分21秒差、國學院大には5秒差まで迫る3位に浮上した。また、3年連続6区となった東洋大・今西駿介(4年)も従来の区間記録を23秒上回り、7位に躍進した。 大きな貯金をもらった青学大の7区・中村友哉(4年)は終始、危なげない走りでトップを守った。3位の東海大は12km過ぎで2位の國學院大を抜くが、青学大とは20秒詰めただけ。5位で中継所を飛び出した明大・阿部弘輝(4年)は区間新のペースで追い上げ、12km過ぎで東京国際大をかわし、4位に浮上。そのままハイペースを保って区間記録を36秒更新する1時間1分40秒で他を圧倒した。 8区も青学大の堅実な走りは揺るがない。岩見秀哉(3年)は、区間記録保持者の東海大・小松陽平(4年)に区間賞こそ譲ったものの、リードは2分00秒と、逆転劇の気配はない。後方では國學院大が明大から3位を奪い返した。 終盤にさしかかる9区で青学大・神林勇太(3年)がダメ押しの区間賞。2位・東海大との差を3分42秒まで拡大し、総合優勝をほぼ決定づけた。10区の湯原慶吾(2年)は悠々と独走。青学大は4区以降、一度も先頭を譲ることなく、10時間45分23秒で2年ぶり5回目の総合優勝を遂げた。 東海大は連覇を逃したものの、大会新の10時間48分25秒で2位フィニッシュ。復路成績では新記録の5時間23分47秒を叩き出し、青学大を抑えて初の復路優勝を手にした。3位は國學院大。10区で4チームが争う激戦を制し、大学最高成績を挙げた。4位は帝京大で大学最高タイ、5位の東京国際大も大学最高成績と初のシード権獲得となった。 駒大が8位、東洋大が10位と上位候補が低迷したのを尻目に、創価大が初のシード権獲得となる9位に入った。アンカーの嶋津雄大(2年)は13年ぶりの区間新となる1時間8分40秒で、11位から順位を上げた。代わって11位に転落した中央学大は6年ぶりにシードを失った。金栗四三杯は2区区間新の相澤が受賞した。第96回箱根駅伝総合成績をチェック
●総合成績 1位 青学大 10時間45分23秒 2位 東海大 10時間48分25秒 3位 國學院大 10時間54分20秒 4位 帝京大 10時間54分23秒 5位 東京国際大 10時間54分27秒 6位 明大 10時間54分46秒 7位 早大 10時間57分43秒 8位 駒大 10時間57分44秒 9位 創価大 10時間58分17秒 10位 東洋大 10時間59分11秒 11位 中央学大 11時間01分10秒 12位 中大 11時間03分39秒 13位 拓大 11時間04分28秒 14位 順大 11時間06分45秒 15位 法大 11時間07分23秒 16位 神奈川大 11時間07分26秒 17位 日体大 11時間10分32秒 18位 日大 11時間10分37秒 19位 国士大 11時間13分33秒 20位 筑波大 11時間16分13秒 - 関東学生連合 11時間12分34秒 ●区間賞 1区 米満怜(創価大) 1時間01分13秒 2区 相澤晃(東洋大) 1時間05分57秒 3区 Y.ヴィンセント(東京国際大) 59分25秒 4区 吉田祐也(青学大) 1時間00分30秒 5区 宮下隼人(東洋大) 1時間10分25秒 6区 館澤亨次(東海大) 57分17秒 7区 阿部弘輝(明大) 1時間01分40秒 8区 小松陽平(東海大) 1時間04分24秒 9区 神林勇太(青学大) 1時間08分13秒 10区 嶋津雄大(創価大) 1時間08分40秒
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