2023.12.27
東農大で才能がさらに開花
5000mのベストが15分30秒ほどだった1年時に村上和春コーチから勧誘を受けたこともあり、古豪・東農大への進学を決めた。
「小指徹監督と村上さんが高校の先生と僕の今後について相談してくださって、自分に合った練習スタイルを考えてくれることになったんです。農大なら強くなれると思いました」
特に1年目は「自分の身体を大事にしたい」と思っており、「出場レースを絞って、余裕を持った練習をじっくり継続していくのが自分には合っている」という前田考えを、チームは尊重した。
その予感は的中する。大学では10000mで28分10秒台のタイムを持つ高槻芳照と並木寧音(ともに4年)のダブルエースと練習。「良いイメージで終わる」ことを意識したトレーニングを続けると、出場したレースで確実に結果を残していく。
大学デビュー戦となった5月の関東インカレ(2部)は5000mに出場。ラスト1周の争いで遅れたが、13分57秒25で4位(日本人2位)に入った。次の目標に「(6月の)全日本大学駅伝選考会の日本人トップ」を掲げると、目標以上の快走を見せる。
最終4組でケニア人留学生と真っ向勝負を演じて3着。蒸し暑いコンディション下でU20日本歴代2位(当時)の28分03秒51をマークして、チームを14年ぶりの伊勢路に導いたのだ。
そして「日本人トップ」を目標に掲げた10月の箱根駅伝予選会は15㎞過ぎからペースアップし、ハーフマラソンでU20日本記録に1秒差と迫る1時間1分42秒をマークして、日本人トップの個人9位でフィニッシュ。伝統校に10年ぶり70回目の本戦出場をもたらした。
3週間後の全日本大学駅伝でも強さを発揮した。2区に出走した前田は10位でタスキを受け取ると、3秒後ろの順大・三浦龍司(4年)ではなく、20秒前の駒大・佐藤圭汰(2年)を意識。区間新記録(区間3位)の快走で6人を抜き去った。
「初めての学生駅伝は楽しかったですね。突っ込んで入り、後半は耐えるというイメージ通りの走りができました。目に見える結果として区間新はすごくうれしいですけど、区間賞を獲得できず、悔しい気持ちもあります」
箱根駅伝は花の2区を希望しているが、1年生ながらどんな走りを見せるのか。
「10000mとハーフマラソンはU20日本記録に届かなかったので、2区の日本人1年生最高記録(1時間7分03秒/岸本大紀、青学大)を超えたいですね。できれば6分台を目指していきたい」
11月25日に駒大の佐藤が10000mで27分28秒50のU20日本記録を樹立。高校時代のライバルである長嶋も12月2日の10000mでU20日本歴代2位となる27分44秒86をマークしたのは刺激になっているだろう。
レースに出場するたびに強さを増すスーパールーキー。今季5レース目となる箱根駅伝で“最高の走り”を見せつける。
まえだ・かずま/2005年1月16日生まれ。兵庫県西宮市出身。兵庫・深津中→報徳学園高。5000m13分56秒65、10000m28分03秒51、ハーフ1時間1分42秒
文/酒井政人
高校時代はライバル・長嶋幸宝と切磋琢磨
「世界に通用するランナーを育成したい」という思いで創設された箱根駅伝が第100回大会を迎える。そんな記念すべき節目にスケールの大きなランナーが登場。東農大の前田和摩(1年)だ。 昨年のインターハイ5000mで日本人トップ(4位)に輝くと、大学で快進撃を続けている。今季出場したレースは4つ。そのすべてでインパクトを残しているのだ。 しかも、前田のキャリアはまだ浅い。小さい頃から箱根駅伝をテレビ観戦していたが、中学時代はサッカー部だった。冬季の駅伝に参加したことで、3年時には「箱根駅伝を走りたい」という気持ちが芽生える。中学駅伝での走りを評価されて兵庫・報徳学園高に進学して、本格的に競技を開始した。 無名だった前田は高2の秋に大ブレイクすることになる。駅伝は兵庫県大会1区(10km)を28分59秒で独走。中学時代から全国大会の上位常連だった同学年の西脇工高・長嶋幸宝(現・旭化成)に14秒差をつけて区間賞を獲得した。近畿大会1区も28分58秒で区間賞を奪っている。 長嶋は2019年の全中3000mで3位、高2のインターハイは1500mで4位に入っている選手。「高校入学時はまさか届くとは思っていなかったのですが、徐々に戦えるようになってきて、強く意識するようになったんです」と振り返る。 3年時は4月の兵庫リレーカーニバル高校5000mで長嶋に競り負けるが、13分56秒65の自己ベスト。インターハイ路線の5000mは兵庫県大会と近畿大会で長嶋に惜敗するも、全国の舞台でリベンジを果たす。ケニア人留学生に食らいつき、13分58秒01で4位。長嶋を抑えて、日本人トップに輝いた。 「高校時代もトラックレースはそんなに出ていませんが、その一つひとつが自信になりました。なかでもインターハイの日本人トップはすごくうれしかったですし、高校生活で一番印象に残っています」 しかし、兵庫県高校駅伝1区は自滅する。「長嶋を引き離さないといけない」という思いが空回りし、28分31秒の区間新で駆け抜けた長嶋から1分11秒遅れの区間2位。チームは3位に終わった。 「チームで勝つことを考えれば、1秒でもいいので前で確実にタスキをつなげるべきだった」と今でも後悔している。東農大で才能がさらに開花
5000mのベストが15分30秒ほどだった1年時に村上和春コーチから勧誘を受けたこともあり、古豪・東農大への進学を決めた。 「小指徹監督と村上さんが高校の先生と僕の今後について相談してくださって、自分に合った練習スタイルを考えてくれることになったんです。農大なら強くなれると思いました」 特に1年目は「自分の身体を大事にしたい」と思っており、「出場レースを絞って、余裕を持った練習をじっくり継続していくのが自分には合っている」という前田考えを、チームは尊重した。 その予感は的中する。大学では10000mで28分10秒台のタイムを持つ高槻芳照と並木寧音(ともに4年)のダブルエースと練習。「良いイメージで終わる」ことを意識したトレーニングを続けると、出場したレースで確実に結果を残していく。 大学デビュー戦となった5月の関東インカレ(2部)は5000mに出場。ラスト1周の争いで遅れたが、13分57秒25で4位(日本人2位)に入った。次の目標に「(6月の)全日本大学駅伝選考会の日本人トップ」を掲げると、目標以上の快走を見せる。 最終4組でケニア人留学生と真っ向勝負を演じて3着。蒸し暑いコンディション下でU20日本歴代2位(当時)の28分03秒51をマークして、チームを14年ぶりの伊勢路に導いたのだ。 そして「日本人トップ」を目標に掲げた10月の箱根駅伝予選会は15㎞過ぎからペースアップし、ハーフマラソンでU20日本記録に1秒差と迫る1時間1分42秒をマークして、日本人トップの個人9位でフィニッシュ。伝統校に10年ぶり70回目の本戦出場をもたらした。 3週間後の全日本大学駅伝でも強さを発揮した。2区に出走した前田は10位でタスキを受け取ると、3秒後ろの順大・三浦龍司(4年)ではなく、20秒前の駒大・佐藤圭汰(2年)を意識。区間新記録(区間3位)の快走で6人を抜き去った。 「初めての学生駅伝は楽しかったですね。突っ込んで入り、後半は耐えるというイメージ通りの走りができました。目に見える結果として区間新はすごくうれしいですけど、区間賞を獲得できず、悔しい気持ちもあります」 [caption id="attachment_124781" align="alignnone" width="800"] 23年全日本大学駅伝では2区で従来の区間記録を上回る区間3位の好走で6人を抜いた前田和摩[/caption] 箱根駅伝は花の2区を希望しているが、1年生ながらどんな走りを見せるのか。 「10000mとハーフマラソンはU20日本記録に届かなかったので、2区の日本人1年生最高記録(1時間7分03秒/岸本大紀、青学大)を超えたいですね。できれば6分台を目指していきたい」 11月25日に駒大の佐藤が10000mで27分28秒50のU20日本記録を樹立。高校時代のライバルである長嶋も12月2日の10000mでU20日本歴代2位となる27分44秒86をマークしたのは刺激になっているだろう。 レースに出場するたびに強さを増すスーパールーキー。今季5レース目となる箱根駅伝で“最高の走り”を見せつける。 まえだ・かずま/2005年1月16日生まれ。兵庫県西宮市出身。兵庫・深津中→報徳学園高。5000m13分56秒65、10000m28分03秒51、ハーフ1時間1分42秒 文/酒井政人
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
-
2025.01.17
-
2025.01.17
-
2025.01.17
-
2025.01.17
2025.01.12
【テキスト速報】第43回都道府県対抗女子駅伝
2025.01.14
創価大が来春入学の長距離10人を発表! 西脇工・衣川勇太、倉敷・大倉凰來ら
-
2025.01.12
-
2025.01.15
2024.12.22
早大に鈴木琉胤、佐々木哲の都大路区間賞2人が来春入学!女子100mH谷中、松田ら推薦合格
-
2024.12.22
-
2024.12.30
-
2025.01.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.01.18
選抜女子駅伝オーダー発表 積水化学は1区松本明莉、パナソニック5区森田香織 高校3連覇狙う神村学園は5区瀬戸口凜
選抜女子駅伝 各チームのオーダーと区間距離をチェック! ■一般の部(5区間27.2km) 【1区5.3km―2区3.8km―3区3.9km―4区3.8km―5区10.4km】 肥後銀行▼ 堤好伽―多田妃奈―南雲栞理―高江 […]
2025.01.18
都道府県男子駅伝オーダー発表!3区に塩尻和也と鶴川正也 7区は鈴木健吾、黒田朝日 4連覇狙う長野は3区吉岡大翔
47チームのオーダーをチェック! ■第30回全国都道府県対抗男子駅伝オーダー (左から1区―2区―3区―4区―5区―6区―7区 ※[F]はふるさと選手) 北海道▼ 吉田星―杉田來翔―岩崎大洋 [F]―三浦清史―林柚杏―泉 […]
2025.01.17
西脇多可新人高校駅伝の出場校決定!男子は佐久長聖、大牟田、九州学院、洛南 女子は長野東、薫英女学院など有力校が登録
第17回西脇多可新人高校駅伝の出場チーム 男子 ※総合の部 桐生(群馬) 埼玉栄(埼玉) 中越(新潟) 高岡向陵・高岡商(富山) 遊学館(石川) 敦賀気比(福井) 鯖江(福井) 佐久長聖A(長野) 佐久長聖B(長野) 大 […]
2025.01.17
編集部コラム「年末年始の風物詩」
毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]
2025.01.17
中・高校生充実の長野“4連覇”なるか 実力者ぞろいの熊本や千葉、岡山、京都、福岡も注目/都道府県男子駅伝
◇天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝(1月19日/広島・平和記念公園前発着:7区間48.0km) 中学生から高校生、社会人・大学生のランナーがふるさとのチームでタスキをつなぐ全国都道府県男子駅伝が1月19日に行われる […]
Latest Issue 最新号
2025年2月号 (1月14日発売)
駅伝総特集!
箱根駅伝
ニューイヤー駅伝
高校駅伝、中学駅伝
富士山女子駅伝