2023.12.27
初の箱根路でエース区間も意識
初めての箱根路はいきなりチームのエース格として迎えることになるが、山口自身に気負いはなく、「初めてということに特に意気込むことはないですね。むしろ大舞台になるほど力が出せるのが自分の強みだと思っているので楽しみです」と語る。希望区間は1区だが、2区の最有力候補で、「チームの状況や戦略を考えると2区を走るべきかなと思っています」と心の準備はできている。
「どの区間であろうと、タイムよりも勝負できる走りをしたい」と語るが、特に高校の同期で、すでに箱根でインパクト残している青学大の太田との対決を熱望する。
「太田は大学でも活躍するだろうと思っていたので驚きはないです。むしろ高校の時に同じ練習をやっていた自分もやれるという自信になったと思います。箱根でも同じ区間で勝負して勝ちたい気持ちは常に持っています」
過去2年は山口にとって、不遇の時期だったかもしれない。だが、高校時代も学年を重ねるごとに着実に成長し、狙った試合では結果を残してきた。そして今季も走れない時期を乗り越えた時こそ、強くなれる原動力だと信じてやってきた。
他校のエース級と対峙する可能性が高い箱根路で、チームを6年ぶりのシード権に導く走りをー。それが自身をさらに成長させることにつながると信じている。

3年にして初の箱根では2区で他校のエースと対峙するつもりだ(チーム提供)
やまぐち・れん/2003年3月31日生まれ。佐賀県伊万里市出身。佐賀・啓成中→福岡・大牟田高。5000m14分08秒15、10000m29分26秒96、ハーフ1時間2分24秒
文/田中 葵
故障しない体づくりが奏功
山口廉(3年)にとって、2023年は飛躍の年だった。1年目は故障でほとんど練習ができず、「一時は競技から離れた時期もありました」と振り返る。そこから再度走り始めたものの、まだ身体作りが不十分で故障を繰り返し、三大駅伝のみならず、個人としても公式戦出場は叶わぬまま2年目のシーズンも終えることとなった。 「それまではあまり走り込みをせず、少ない練習で終わらせる感じで、このままではいけないと思いました」 箱根に向けて、エントリーメンバーが最後の仕上げに入っていく1年前の12月、山口は「まずはハーフの距離を走るための土台作りが必要だと思った」と、週1回のペースで月4回程度の2時間ジョグを取り入れ、誰よりも走り込んだ。練習後のケアやウエイトトレーニング、さらには食事改善にも取り組み、過去2年がまるで嘘だったかのように、故障での離脱なく継続したトレーニングを行なってきた。 その成果は結果にも反映し、5月の関東インカレ1部ハーフマラソン7位入賞を果たす。 「大学初の公式戦だったので、インパクトのある走りをしたいと思っていました。正直、もう少し上を狙いたかった悔しさもありますが、距離に対する取り組みもしっかり成果になったと思います」 そして迎えた10月の箱根駅伝予選会。6月の全日本大学駅伝関東選考会で15位に終わり、戦前は苦戦も予想されたが、3年目にして初出場を果たした山口は自信に満ち溢れていた。 「夏合宿も100%練習を消化できましたし、状態は良かったと思います。予選会ではタイムを稼ぐ役割だったので、他校のエースとどう戦うかを意識してきて、持っている力は100%出せたと思います。ただ、日本人3位まで12秒だったので、もう少し上を狙えたという気持ちもあります」 自己記録を2分近く短縮する1時間2分24秒をマークし、チームトップの個人19位で、76年連続の本戦出場に大きく貢献。自身初の箱根駅伝出走はすぐそこまで迫っている。 山口が陸上を始めたのは小学2年の頃。「スポーツが苦手で、走るのもそんなに速くなかったので、できるようになろうという感じだった」ことがきっかけで、佐賀県伊万里市の三香クラブに入った。「スポーツは今でも苦手」だが、走ることは好きだったと振り返る。 箱根駅伝を意識したのは、2015年の時。青学大が初優勝した大会をテレビで観戦し、「神野さんの山上りの走りが印象的だった」。 さらに2017年、中学2年の時に見た箱根1区で、当時東海大1年だった鬼塚翔太(現・メイクス)の走りに強い衝撃を受けた。 「1年生で、大学トップクラスの選手だった服部弾馬さん(東洋大、現・NTT西日本)に果敢に挑んでいく姿に惹かれました」と、高校は県内を離れ、鬼塚と同じ福岡・大牟田高へ進学。全国高校駅伝で5度の優勝を誇る強豪校の扉を叩いた。 同期には太田蒼生(青学大)、林虎太朗(立教大)ら、力のある選手が揃い、「入学時は同期で下から2番目くらい。(3000mの)自己ベストの差も1分くらいありました」と振り返る。高校時も1年目は故障が多かったが、当時も冬季練習の走り込みで徐々に力をつけ、3年時には5000mで14分08秒15を記録。3年時には全国高校駅伝で6区5位と好走し、チームを7年ぶりの入賞(8位)に導いた。 「同期を追いかけて強くなれた。彼らに勝ったりする楽しさを感じたことで、成長してきたと思います」初の箱根路でエース区間も意識
初めての箱根路はいきなりチームのエース格として迎えることになるが、山口自身に気負いはなく、「初めてということに特に意気込むことはないですね。むしろ大舞台になるほど力が出せるのが自分の強みだと思っているので楽しみです」と語る。希望区間は1区だが、2区の最有力候補で、「チームの状況や戦略を考えると2区を走るべきかなと思っています」と心の準備はできている。 「どの区間であろうと、タイムよりも勝負できる走りをしたい」と語るが、特に高校の同期で、すでに箱根でインパクト残している青学大の太田との対決を熱望する。 「太田は大学でも活躍するだろうと思っていたので驚きはないです。むしろ高校の時に同じ練習をやっていた自分もやれるという自信になったと思います。箱根でも同じ区間で勝負して勝ちたい気持ちは常に持っています」 過去2年は山口にとって、不遇の時期だったかもしれない。だが、高校時代も学年を重ねるごとに着実に成長し、狙った試合では結果を残してきた。そして今季も走れない時期を乗り越えた時こそ、強くなれる原動力だと信じてやってきた。 他校のエース級と対峙する可能性が高い箱根路で、チームを6年ぶりのシード権に導く走りをー。それが自身をさらに成長させることにつながると信じている。 [caption id="attachment_124775" align="alignnone" width="800"]
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.04.22
-
2025.04.22
2025.04.17
駅伝王者に復権した旭化成 選手たちがパフォーマンスを最大限に発揮できた要因とは?
-
2025.04.19
-
2025.04.17
-
2025.04.20
-
2025.04.16
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
2025.03.23
女子は長野東が7年ぶりの地元V アンカー・田畑陽菜が薫英女学院を逆転/春の高校伊那駅伝
-
2025.04.01
-
2025.04.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.22
コリルが2時間4分45秒でメジャーマラソン連勝!女子はロケディが2時間17分22秒の大会新V/ボストンマラソン
第129回ボストン・マラソンは4月21日に米国の当地で行われ、男子はジョン・コリル(ケニア)が大会歴代3位の2時間4分45秒で優勝した。女子でシャロン・ロケディ(ケニア)が2時間17分22秒の大会新で制した。 最初の5k […]
2025.04.22
Onが三浦龍司をアスリート契約締結「新しい競技人生のスタート」本職初戦で世界陸上「内定決めたい」
スイスのスポーツブランド「On(オン)」は4月22日、男子3000m障害で五輪2大会連続入賞の三浦龍司(SUBARU)とアスリート契約締結を発表した。同日、国立競技場で会見を開いた。 勢いに乗るスポーツメーカーと日本のエ […]
2025.04.22
愛知製鋼にケニア出身の24歳サイモン・ガサ・ムンガイが加入
愛知製鋼は4月22日、サイモン・ガサ・ムンガイが新たに加入したとチームのSNSで発表した。 ケニア・マウセカンダリ高出身の24歳。ケニアでは昨年12月のケニアクロスカントリーシリーズ第6戦の10kmシニア男子で5位(32 […]
2025.04.22
東京世界陸上が朝日新聞社とスポンサー契約締結 報道、スポーツ支援の実績で貢献目指す
公益財団法人東京2025世界陸上財団は4月22日、朝日新聞社とスポンサー契約を締結したことを発表した。 朝日新聞社は1879年1月25日に創刊。以来、全国紙として国内外のさまざまなニュース、情報を発信してきたほか、スポー […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)