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2023.12.25

箱根駅伝Stories/初の箱根路へ挑む駿河台大・東泉大河「チームを勢いづけるのは僕しかいない!」
箱根駅伝Stories/初の箱根路へ挑む駿河台大・東泉大河「チームを勢いづけるのは僕しかいない!」

初の箱根路へ挑む東泉大河(撮影/田坂友暁)

挫折から立ち直るきっかけをくれた仲間の存在

元々は箱根駅伝が大好きだった父の影響で小学4年生から現地観戦をしていたという。その流れで自然と自分も箱根に思いを馳せるようになり、箱根を走ることを目標に、地元の那須塩原ジュニア陸上クラブに所属して陸上人生をスタートさせた。

東泉は「自分、結構目立ちたがり屋なんですけど……」と笑いながら、言葉を続ける。「箱根を走る選手がテレビにたくさん写っているのを見て、もうめっちゃ走りたいなって。大舞台だし、みんながテレビで見てくれる大会だからこそ、走りたいって思ったんです」

三島中時代には志をともにする仲間もでき、全中駅伝では4位入賞を果たした(1区16位)。

しかし、現実は厳しい。そのメンバーの中で、今も陸上を続けて箱根への夢を追い続けているのは、東泉1人となってしまった。

「でも、みんなが陸上を辞める時に、箱根を走る夢を僕に託してくれたんです。今年の箱根予選会にも応援に来てくれました。そんな仲間の思いを僕は背負っている。だから頑張れるんです」

そう話す東泉も、群馬・東農大二高で走っているときに一度挫折をしかけたことがあった。地元の栃木県を離れ、寮生活を送る毎日。生活環境の大きな変化が東泉のメンタルを微妙に左右する。

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「僕の家は両親も祖父母も一緒に住んでいて、大家族だったんです。それが急に1人の生活になった時に、ちょっとホームシック気味になってしまって。高校1年目は、環境に慣れることにとても苦労しました」

追い打ちをかけるように、1年時に2回も疲労骨折をして、ほとんど走れない日々を過ごしてしまう。気持ちを切り替えて再スタートを切ろうとした2年時には、新型コロナウイルス感染症ですべてがストップしてしまった。その瞬間、東泉は心が折れる音を聞いた気がした。

「コロナ禍のときに、一度実家に帰る機会があったのですが、その時にはもう陸上を辞めよう、と思っていたんです」

そんな東泉を陸上に世界に引き留めたのは家族と、中学時代に夢を一緒に追いかけた仲間たちだった。

「みんな、『おまえが後悔しないなら別辞めてもいいんじゃないか。でも、もし後悔するんだったら、もう一度やったほうが良いよ』って言ってくれたんです。今思い返すと、その言葉が、僕の中で本気で競技に取り組むきっかけになりました」

自分の背中には、いろんな人の夢が乗っかっている。そう思うと、挫折なんかしている暇はなかった。

新春の風物詩・箱根駅伝の100回大会に挑む出場全23校の選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。それぞれが歩んできた1年間の足跡をたどった。

1年時に痛感した「世界との壁」

「俺のもとでやれば、絶対に伸びるから。学生トップになれるし、世界も狙える」 駿河台大の東泉大河(2年)は、徳本一善監督からもらったこの言葉で同校への進学を決心した。 「話してみるとすごく熱心な監督だな、と感じました。それに、箱根を走った選手の中でも歴史に残るというか、インパクトがある人からそういう言葉をもらったということが自分の中でもすごく印象深かったんです」 その言葉が嘘ではなかったことを東泉はすぐに証明する。入学して早々、4月の日体大長距離競技会5000mで自己記録を30秒縮めて一気に13分台へ突入。箱根駅伝予選会のメンバーには入れなかったものの、同年12月の世界クロスカントリー選手権U20日本代表選考会で13分54秒37の自己新で3位に入り、日本代表の座を射とめた。 だが、そこで世界との壁を東泉も痛感する。 「もうちょっとで周回遅れになるくらいの差をつけられてしまいました。まったく戦えない状況が本当に悔しくて……」 帰国後、徳本監督と話した時に「それが世界との差だよね」という話をした。「もし、次に世界に行くなら、勝負できる力をつけていこう」とも。

挫折から立ち直るきっかけをくれた仲間の存在

元々は箱根駅伝が大好きだった父の影響で小学4年生から現地観戦をしていたという。その流れで自然と自分も箱根に思いを馳せるようになり、箱根を走ることを目標に、地元の那須塩原ジュニア陸上クラブに所属して陸上人生をスタートさせた。 東泉は「自分、結構目立ちたがり屋なんですけど……」と笑いながら、言葉を続ける。「箱根を走る選手がテレビにたくさん写っているのを見て、もうめっちゃ走りたいなって。大舞台だし、みんながテレビで見てくれる大会だからこそ、走りたいって思ったんです」 三島中時代には志をともにする仲間もでき、全中駅伝では4位入賞を果たした(1区16位)。 しかし、現実は厳しい。そのメンバーの中で、今も陸上を続けて箱根への夢を追い続けているのは、東泉1人となってしまった。 「でも、みんなが陸上を辞める時に、箱根を走る夢を僕に託してくれたんです。今年の箱根予選会にも応援に来てくれました。そんな仲間の思いを僕は背負っている。だから頑張れるんです」 そう話す東泉も、群馬・東農大二高で走っているときに一度挫折をしかけたことがあった。地元の栃木県を離れ、寮生活を送る毎日。生活環境の大きな変化が東泉のメンタルを微妙に左右する。 「僕の家は両親も祖父母も一緒に住んでいて、大家族だったんです。それが急に1人の生活になった時に、ちょっとホームシック気味になってしまって。高校1年目は、環境に慣れることにとても苦労しました」 追い打ちをかけるように、1年時に2回も疲労骨折をして、ほとんど走れない日々を過ごしてしまう。気持ちを切り替えて再スタートを切ろうとした2年時には、新型コロナウイルス感染症ですべてがストップしてしまった。その瞬間、東泉は心が折れる音を聞いた気がした。 「コロナ禍のときに、一度実家に帰る機会があったのですが、その時にはもう陸上を辞めよう、と思っていたんです」 そんな東泉を陸上に世界に引き留めたのは家族と、中学時代に夢を一緒に追いかけた仲間たちだった。 「みんな、『おまえが後悔しないなら別辞めてもいいんじゃないか。でも、もし後悔するんだったら、もう一度やったほうが良いよ』って言ってくれたんです。今思い返すと、その言葉が、僕の中で本気で競技に取り組むきっかけになりました」 自分の背中には、いろんな人の夢が乗っかっている。そう思うと、挫折なんかしている暇はなかった。

「エースとして区間トップで走るつもりで挑む」

駿河台大1年目、箱根に新たな歴史を刻んだチームは乗りに乗っているはずだったが、予選会で19位と惨敗。その様子を見て、駿河台大は立て直すのに数年かかる、と誰もが思っただろう。だが、選手たちは違った。 「今後も箱根に出られないかもしれない、と考えるのではなく、箱根を走るためにはどうしたら良いのかを考えて生活しよう、と上級生が言ってくれたんです」 [caption id="attachment_124562" align="alignnone" width="800"] 23年箱根駅伝予選会ではチーム3番手の走りで本戦出場に貢献した東泉大河[/caption] 予選会敗退から1年、主将の新山舜心(4年)が掲げるチームの大改革にも不満なく取り組んだ。その結果が、箱根路への復帰となって現れた。 チームとして2度目、東泉としては初の箱根路。友人たちと共有した夢、家族への恩返し、さまざまな思いを背負い、箱根路を駆け抜ける。 「チームを勢いづけるのは僕しかいない!と思っています。まずは、しっかりとエースとして区間トップで走るくらいのつもりで挑む。その走りをみんなに見せて、『本当にあいつ頑張ってるな』と思ってもらえるような走りをして、チームの活躍に貢献したいと思っています」 とうせん・たいが/2004年1月11日生まれ。栃木県那須塩原市出身。栃木・三島中→群馬・東農大二高。5000m13分54秒37、10000m28分32秒29、ハーフ1時間3分54秒 文/田坂友暁

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