HOME 学生長距離

2023.12.25

観戦歴64年!立教大卒の徳光和夫さんが語る箱根駅伝の魅力「変化から不変」「日本人の文化そのもの」100回大会も沿道で応援
観戦歴64年!立教大卒の徳光和夫さんが語る箱根駅伝の魅力「変化から不変」「日本人の文化そのもの」100回大会も沿道で応援

箱根駅伝を愛して止まないフリーアナウンサーの徳光和夫さん

第100回大会を迎える箱根駅伝を前に、特別な思いを持つ著名人の方々にインタビューした。今回はフリーアナウンサーでタレントの徳光和夫さん。箱根駅伝を愛して止まず、沿道で応援していることでも有名だ。60年以上も学生たちを見守ってきた徳光さんに、箱根駅伝に対する思いを聞いた。

箱根を見始めたきっかけは立教大の同級生

――箱根駅伝を見るようになったきっかけを教えてください。

徳光 僕は立教大に入った18歳の時に茅ヶ崎に引っ越しました。自宅から自転車ですぐのところが箱根駅伝のコースで観に行くようになったんです。

大学に入るまではまったく知らなかったです。立教大に入って仲良くなった運動部の同級生がいたんです。体型もそれほど目立たなくて、まったく地味だったんです。何をやっているのかなって。

そうしたら、新聞に彼の名前が出ていたんです。豊田(多賀司)君というのですが、彼が出るのだったら、と応援に行ったのが最初です。1960年の第36回大会(※豊田は4区で出場)からですから、観戦歴は64年になりますね。

――それから箱根駅伝に魅了されたわけですね。

徳光 茅ヶ崎のお正月といえば箱根駅伝。みんなの楽しみなんですよ。朝8時半くらいから大移動が始まって、国道134号線沿いに行くんです。巨人の開幕戦よりも楽しみですね。往路は3区、復路は8区を観に行きます。なぜか、往路より復路のほうが、選手が速いように感じるんですよ。

広告の下にコンテンツが続きます

当時はテレビ中継がなかったので、ラジオを聞きながらでした。選手を待っていて、目の前を一瞬で通り過ぎていく。ちなみに、日テレのテレビ中継が始まったのが1987年ですが、それを仕掛けたのが、日テレの坂田(信久)という男で、彼は同期入社です。本当に誇らしいですよ。

テレビが始まってからは、選手を応援したあと、自宅に帰ってテレビを見る。すると、だいたい遊行寺の坂になるのですが、あんなに颯爽と走っていた選手がヘロヘロになっている。まるで別人。それが本当に不思議で、どんどん魅了されましたね。

箱根駅伝は2区や5区、6区に注目が集まりますが、8区は“つなぎ区間”とはいえ、監督の戦略によっていろんな選手を用意するので、レースとしてはすごくおもしろい区間なんです。

――その後、アナウンサーとなられてから、沿道でプライベート実況する姿が有名になりました。

徳光 とにかく長嶋茂雄さんの一挙手一投足を伝えたいという一心でアナウンサーを目指したのですが、箱根駅伝を実況したいとは思ったことがなかったですね。当時はラジオしかなかったですし、完全に“見る側”でした。

野球中継を断念して音楽番組などにシフトしていきましたが、そのままスポーツ中継を志していれば、もしかしたら実況していたかもしれませんね。アナウンサーの仕事に就いてから、選手の出身校や特徴を調べて、沿道で勝手に話すようになったんです。

――特に印象に残っている選手や場面は?

徳光 山梨学院大の古田哲弘選手ですね。1年生(第73回大会)の時に8区を走った選手ですが、丸刈り頭のルーキーが、私の目の前で4人を抜き去ったんです。区間記録(1時間4分05秒)も最近まで残っていましたよね。野武士のように輝いて見えました。

うれしかった出来事が一つあります。ある大会で、順天堂大のジープに乗った澤木(啓祐)さんが拡声器で「イチ、ニ、イチ、ニ」と声かけしている時に目が合ったんです。そうしたら「あ、徳光さん」と言って、また「イチ、ニ、イチ、ニ」と。あれは僕の宝物です。

第73回箱根駅伝で8区を走った山梨学大の古田

――ご自身で実況してみたいと思ったことはありませんか。

徳光 現実味がなくなった今だからこそ、やってみたかったなという思いはありますね。僕は仕事柄、アナウンサー目線で見ることもありますが、河村(亮)には本当に参りました。彼のような表現は僕には絶対にできない。とても耳に残る声なんです。だから、亡くなった(※22年5月に他界)のは本当に悔しい。今後、河村にあこがれてアナウンサーを目指す人が現われていってほしいですね。

第100回大会を迎える箱根駅伝を前に、特別な思いを持つ著名人の方々にインタビューした。今回はフリーアナウンサーでタレントの徳光和夫さん。箱根駅伝を愛して止まず、沿道で応援していることでも有名だ。60年以上も学生たちを見守ってきた徳光さんに、箱根駅伝に対する思いを聞いた。

箱根を見始めたきっかけは立教大の同級生

――箱根駅伝を見るようになったきっかけを教えてください。 徳光 僕は立教大に入った18歳の時に茅ヶ崎に引っ越しました。自宅から自転車ですぐのところが箱根駅伝のコースで観に行くようになったんです。 大学に入るまではまったく知らなかったです。立教大に入って仲良くなった運動部の同級生がいたんです。体型もそれほど目立たなくて、まったく地味だったんです。何をやっているのかなって。 そうしたら、新聞に彼の名前が出ていたんです。豊田(多賀司)君というのですが、彼が出るのだったら、と応援に行ったのが最初です。1960年の第36回大会(※豊田は4区で出場)からですから、観戦歴は64年になりますね。 ――それから箱根駅伝に魅了されたわけですね。 徳光 茅ヶ崎のお正月といえば箱根駅伝。みんなの楽しみなんですよ。朝8時半くらいから大移動が始まって、国道134号線沿いに行くんです。巨人の開幕戦よりも楽しみですね。往路は3区、復路は8区を観に行きます。なぜか、往路より復路のほうが、選手が速いように感じるんですよ。 当時はテレビ中継がなかったので、ラジオを聞きながらでした。選手を待っていて、目の前を一瞬で通り過ぎていく。ちなみに、日テレのテレビ中継が始まったのが1987年ですが、それを仕掛けたのが、日テレの坂田(信久)という男で、彼は同期入社です。本当に誇らしいですよ。 テレビが始まってからは、選手を応援したあと、自宅に帰ってテレビを見る。すると、だいたい遊行寺の坂になるのですが、あんなに颯爽と走っていた選手がヘロヘロになっている。まるで別人。それが本当に不思議で、どんどん魅了されましたね。 箱根駅伝は2区や5区、6区に注目が集まりますが、8区は“つなぎ区間”とはいえ、監督の戦略によっていろんな選手を用意するので、レースとしてはすごくおもしろい区間なんです。 ――その後、アナウンサーとなられてから、沿道でプライベート実況する姿が有名になりました。 徳光 とにかく長嶋茂雄さんの一挙手一投足を伝えたいという一心でアナウンサーを目指したのですが、箱根駅伝を実況したいとは思ったことがなかったですね。当時はラジオしかなかったですし、完全に“見る側”でした。 野球中継を断念して音楽番組などにシフトしていきましたが、そのままスポーツ中継を志していれば、もしかしたら実況していたかもしれませんね。アナウンサーの仕事に就いてから、選手の出身校や特徴を調べて、沿道で勝手に話すようになったんです。 ――特に印象に残っている選手や場面は? 徳光 山梨学院大の古田哲弘選手ですね。1年生(第73回大会)の時に8区を走った選手ですが、丸刈り頭のルーキーが、私の目の前で4人を抜き去ったんです。区間記録(1時間4分05秒)も最近まで残っていましたよね。野武士のように輝いて見えました。 うれしかった出来事が一つあります。ある大会で、順天堂大のジープに乗った澤木(啓祐)さんが拡声器で「イチ、ニ、イチ、ニ」と声かけしている時に目が合ったんです。そうしたら「あ、徳光さん」と言って、また「イチ、ニ、イチ、ニ」と。あれは僕の宝物です。 [caption id="attachment_124500" align="alignnone" width="800"] 第73回箱根駅伝で8区を走った山梨学大の古田[/caption] ――ご自身で実況してみたいと思ったことはありませんか。 徳光 現実味がなくなった今だからこそ、やってみたかったなという思いはありますね。僕は仕事柄、アナウンサー目線で見ることもありますが、河村(亮)には本当に参りました。彼のような表現は僕には絶対にできない。とても耳に残る声なんです。だから、亡くなった(※22年5月に他界)のは本当に悔しい。今後、河村にあこがれてアナウンサーを目指す人が現われていってほしいですね。

“徳さん”が語る箱根駅伝の魅力とは

――改めて箱根駅伝の魅力とは。 徳光 まず走るコースが素晴らしい。僕は「変化から不変」だと感じているんです。東京、横浜という場所は日本の中で一番変化してきたところ。道路は整備され、大都会になったのです。そして遊行寺から湾岸線へ行くと“不変”の景色が広がる。日本を象徴する富士山に向かって走り、富士山を背にして走る。霊峰・富士は太古から変わらない。 あと、タスキでつないでいく、というのも日本人の文化そのものですよね。野球でも“つなぐ”のが日本の野球。点ではなく線というのが日本の美学なんです。 そして、日本には剣道、柔道、書道…など、「道」で表現しますが、まさに駅伝というのも「道」を使う。「駅伝道」とも言えるのではないかと思います。 その中に「青春」があります。青春とは、友情だったり、母校愛だったり、その柔らかで強靱な頭脳と精神、家族への感謝、そういったものが1本のタスキに込められている。これがまさに日本人の美徳。箱根駅伝の随所に詰まっています。 [caption id="attachment_124501" align="alignnone" width="800"] 箱根駅伝の魅力について語る徳光さん[/caption] 今ではインターネットも普及し、コンテンツはテレビだけではなくなりました。ただ、箱根駅伝だけは家族そろってみんなで見る。非常に貴重なコンテンツですね。 それを若者が見せてくれる。やっぱり、若い人たちが頑張る姿というのは美しいです。自分の子供だったり、近所の子だったり、才能的に優れた選手もいるでしょうが、いわゆる“普通”の若者たちが努力する。 どれだけ時代が変わろうと、箱根駅伝の青春は不変。だから老若男女が感動する。 ――もし、走るとしたらどの区間を走りたいですか。 徳光 それはやっぱり、3区か8区。富士山に向かうのがいいから3区かな。潮騒を耳にしながら、頭の中ではサザンオールスターズか永ちゃん(矢沢永吉)を流しながら走りますよ。 ――第100回大会に向けてメッセージをお願いします。 徳光 100回大会とはいえ、これからも不変であってほしいな、と思います。箱根駅伝を疾走される選手のみなさんは、僕の人生の宝です。 前回、久しぶりに母校の立教大学が出場して本当にうれしかった。立教大関係者と一緒に沿道で応援しました。今回も、湘南立教会でおそろいのキャップをかぶって、立教大カラーのシャツを着てみんなで応援します! ◎とくみつ・かずお/1941年3月10日生まれ。82歳。立教大卒。1963年に日本テレビに入社。プロレス中継や歌番組の司会、『ズームイン』『24時間テレビ』などを担当して人気アナウンサーとなった。1989年からフリーに。現在はアナウンサーやタレントとして活動している。 構成/向永拓史

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.01.18

都道府県男子駅伝オーダー発表!3区に塩尻和也と鶴川正也 7区は鈴木健吾、黒田朝日 4連覇狙う長野は3区吉岡大翔

◇天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝(1月19日/広島・平和記念公園前発着:7区間48.0km) 天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝前日の1月18日、オーダーリストが発表された。 エントリーされていた2人の日本記 […]

NEWS 西脇多可新人高校駅伝の出場校決定!男子は佐久長聖、大牟田、九州学院、洛南 女子は長野東、薫英女学院など有力校が登録

2025.01.17

西脇多可新人高校駅伝の出場校決定!男子は佐久長聖、大牟田、九州学院、洛南 女子は長野東、薫英女学院など有力校が登録

1月17日、西脇多可新人高校駅伝の実行委員会が、2月16日に行われる第17回大会の出場チームを発表した。 西脇多可新人高校駅伝は、兵庫県西脇市から多可町を結ぶ「北はりま田園ハーフマラソンコース(21.0795km)」で行 […]

NEWS 編集部コラム「年末年始の風物詩」

2025.01.17

編集部コラム「年末年始の風物詩」

毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]

NEWS 中・高校生充実の長野“4連覇”なるか 実力者ぞろいの熊本や千葉、岡山、京都、福岡も注目/都道府県男子駅伝

2025.01.17

中・高校生充実の長野“4連覇”なるか 実力者ぞろいの熊本や千葉、岡山、京都、福岡も注目/都道府県男子駅伝

◇天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝(1月19日/広島・平和記念公園前発着:7区間48.0km) 中学生から高校生、社会人・大学生のランナーがふるさとのチームでタスキをつなぐ全国都道府県男子駅伝が1月19日に行われる […]

NEWS 栁田大輝、坂井隆一郎らが日本選手権室内出場キャンセル 日本室内大阪はスタートリスト発表

2025.01.17

栁田大輝、坂井隆一郎らが日本選手権室内出場キャンセル 日本室内大阪はスタートリスト発表

日本陸連は2月1日から2日に行われる、日本選手権室内のエントリー状況と、併催の日本室内大阪のスタートリストを発表した。 日本選手権室内では12月にエントリーが発表されていた選手のうち、男子60mに出場予定だったパリ五輪代 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年2月号 (1月14日発売)

2025年2月号 (1月14日発売)

駅伝総特集!
箱根駅伝
ニューイヤー駅伝
高校駅伝、中学駅伝
富士山女子駅伝

page top