2023.12.21
「常に意識してしまう」駒大・篠原
いまや学生長距離界を代表する選手になりつつある吉田。中学時代は野球部に所属し、千葉・拓大紅陵高に進学して本格的に陸上を始めた。「常に意識してしまう」という駒大の篠原倖太朗(3年)とは、当時から同じ千葉県でしのぎを削ってきた。
丸亀ハーフと日本学生ハーフでは篠原に先着され、悔しさを味わったが、ワールドユニバーシティゲームズでは先着。そうしたライバルの存在が吉田のレベルを引き上げていった。中央学大では「自分がエースという自覚はあります」と力強く言い切る。
「エースの役割は、自分の走りでチームを勢いづけたり、みんなに刺激を与えたりすること。それは練習の時から毎回意識しています」
夏合宿も箱根予選会に向けた取り組みがメインだった。「ハーフの距離を走るにあたって、長く感じないことが1番。合宿を行った北海道も気温が高く、例年よりペースを落とした面はありましたが、その分、距離を増やして30km走などを多くやった感じです」
確かな手応えをつかんで、駅伝シーズンを迎えていた。
吉田にとって印象に残っている箱根駅伝は、第96回大会の2区で相澤晃(東洋大/現・旭化成)と伊藤達彦(東京国際大/現・Honda)がデッドヒートを演じたシーンだ。その頃から自身も「箱根駅伝を走りたい」と思うようになったという。
2021年に中央学大に入学すると、早くも1年目で箱根を走るチャンスをつかみ取る。しかもエース区間の2区を任された。その大会で1年生を2区に起用したのは、中央学大だけだった。ただ、初めての箱根は吉田に厳しい結果を突きつけた。当時エースだった栗原啓吾(現・SUBARU)が予想外の最下位(20位)スタート。吉田も最後方から前を追う展開を余儀なくされ、区間18位に沈んだ。
「(2年前の箱根は)苦い思い出しかありません。2区を走るにはまだ実力不足だったと痛感しました」
しかし、あれから様々な経験を積んで力をつけた吉田は、揺るぎない自信を胸に自身2度目の箱根駅伝に臨もうとしている。2年ぶりの箱根本戦も2区が最有力で、目標を「区間5位以内、1時間6分台で行きたいです」と掲げる。
ただ、チームは5年ぶりとなるシード権獲得を目指すが、優勝候補の駒大を始め、上位候補の大学との差も感じている。
「例えば駒澤大学さんを見ると、走りに自信があるというか、絶対に1位を取る気持ちが伝わってくる。自分たちにはその気持ちが足りていないんじゃないかなと。みんながもっと強気になっていいと思います」
チームメイトに奮起を促すからには、自分はエースとしてエースらしい走りをしなければならない。吉田にはその覚悟と準備ができている。
よしだ・れいし/2002年6月19日生まれ。千葉県袖ケ浦市出身。千葉・蔵波中→千葉・拓大紅陵高。5000m13分45秒39、10000m27分47秒01、ハーフ1時間0分31秒
文/小野哲史
2年ぶりの本戦切符に安堵
昨年の箱根駅伝予選会で敗退した後、レースのたびに存在感を高めているのが、中央学大の吉田礼志(3年)だ。今年の予選会突破だけを見据え、己を磨いてきた。2年ぶりに臨む箱根路でも逞しく成長した姿を披露する。 10月14日の箱根駅伝予選会。スタート直後から先頭集団を形成した10人以上の留学生に、ただ1人、果敢に食らいついた日本人選手がいた。それが吉田だった。 「チームとしては3位以内が目標でしたが、僕自身はトップ通過を狙っていました。そのためには1時間1分10秒ぐらいで日本人トップ、他大学の留学生と渡り合うぐらいの走りをしなければいけないなと。留学生の集団についていくことはずっと前から決めていました」 10km過ぎで集団から離れたのは、「後半の公園内に入ってからの起伏で脚に来ると思いました」から。5kmや10kmは想像していたよりやや速いペースだったが、「それほどきついとは感じなかったです」と冷静にレースを進めることができていた。 20km手前で東農大の前田和摩(1年)に逆転を許し、日本人トップとはならなかったものの、1時間1分59秒の11位でフィニッシュ。中央学大を2年ぶりに本戦へと導いた。 「(9位通過という結果に)みんなも納得はしていなかったと思いますし、悔しさもありました。でも、とりあえず箱根本戦の切符を得られたことにはホッとしました」 昨年の予選会で本戦出場を逃し、「チームとしても個人としても悔しい結果で終わってしまった」。それ以降、100回大会の予選会突破だけを見据えて、1年間を過ごしてきた。 「練習内容はそれほど変わっていませんが、普段のジョグを20~30分長く走ったり、1kmのスピードをみんなより20~30秒速くしたり、昨年より質の高いジョグはしていたと思います」 地道な努力は徐々に結果に表れていく。昨年12月に10000mで2022年の日本人学生最高となる27分58秒60をマーク。今年に入って2月の丸亀ハーフでは、「出場をやめようかなと思うぐらい1週間前の練習で調子が優れなかった」と言いながら、日本歴代9位、日本人学生歴代2位となる1時間0分31秒で走破した。3月の日本学生ハーフは、レース中に靴紐がほどけて結び直すアクシデントがあった中で、「調子が良かったので最低限の走りはできた」と2位に入っている。 6月の全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会では、熱中症で途中フラフラになりながら走る状況に。フィニッシュしたものの、レース中にトラックの内側に入ったとして失格となってしまい、チームも11年連続の伊勢路行きを逃した。だが、川崎勇二監督から「あとは箱根予選会でやるしかないぞ」と言葉をかけられ、すぐに気持ちを切り替えた吉田。8月に行われたワールドユニバーシティゲームズのハーフマラソンでは日本勢トップの4位を占めた。「常に意識してしまう」駒大・篠原
いまや学生長距離界を代表する選手になりつつある吉田。中学時代は野球部に所属し、千葉・拓大紅陵高に進学して本格的に陸上を始めた。「常に意識してしまう」という駒大の篠原倖太朗(3年)とは、当時から同じ千葉県でしのぎを削ってきた。 丸亀ハーフと日本学生ハーフでは篠原に先着され、悔しさを味わったが、ワールドユニバーシティゲームズでは先着。そうしたライバルの存在が吉田のレベルを引き上げていった。中央学大では「自分がエースという自覚はあります」と力強く言い切る。 「エースの役割は、自分の走りでチームを勢いづけたり、みんなに刺激を与えたりすること。それは練習の時から毎回意識しています」 夏合宿も箱根予選会に向けた取り組みがメインだった。「ハーフの距離を走るにあたって、長く感じないことが1番。合宿を行った北海道も気温が高く、例年よりペースを落とした面はありましたが、その分、距離を増やして30km走などを多くやった感じです」 確かな手応えをつかんで、駅伝シーズンを迎えていた。 吉田にとって印象に残っている箱根駅伝は、第96回大会の2区で相澤晃(東洋大/現・旭化成)と伊藤達彦(東京国際大/現・Honda)がデッドヒートを演じたシーンだ。その頃から自身も「箱根駅伝を走りたい」と思うようになったという。 2021年に中央学大に入学すると、早くも1年目で箱根を走るチャンスをつかみ取る。しかもエース区間の2区を任された。その大会で1年生を2区に起用したのは、中央学大だけだった。ただ、初めての箱根は吉田に厳しい結果を突きつけた。当時エースだった栗原啓吾(現・SUBARU)が予想外の最下位(20位)スタート。吉田も最後方から前を追う展開を余儀なくされ、区間18位に沈んだ。 「(2年前の箱根は)苦い思い出しかありません。2区を走るにはまだ実力不足だったと痛感しました」 しかし、あれから様々な経験を積んで力をつけた吉田は、揺るぎない自信を胸に自身2度目の箱根駅伝に臨もうとしている。2年ぶりの箱根本戦も2区が最有力で、目標を「区間5位以内、1時間6分台で行きたいです」と掲げる。 ただ、チームは5年ぶりとなるシード権獲得を目指すが、優勝候補の駒大を始め、上位候補の大学との差も感じている。 「例えば駒澤大学さんを見ると、走りに自信があるというか、絶対に1位を取る気持ちが伝わってくる。自分たちにはその気持ちが足りていないんじゃないかなと。みんながもっと強気になっていいと思います」 チームメイトに奮起を促すからには、自分はエースとしてエースらしい走りをしなければならない。吉田にはその覚悟と準備ができている。 [caption id="attachment_123980" align="alignnone" width="800"] 23年箱根駅伝予選会(ハーフマラソン)では1時間1分59秒で11位とチームの本戦出場に貢献した吉田礼志[/caption] よしだ・れいし/2002年6月19日生まれ。千葉県袖ケ浦市出身。千葉・蔵波中→千葉・拓大紅陵高。5000m13分45秒39、10000m27分47秒01、ハーフ1時間0分31秒 文/小野哲史
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