2023.12.20
飛躍を遂げた2年目シーズン
「もっと距離を踏まないといけない」。箱根を意識しつつ、花岡は2年目のシーズンを迎える。圧巻だったのは5月の関東インカレ10000m。山梨学院大のジェームズ・ムトゥク(2年)が刻む2分50秒ほどのハイペースに花岡はつく。雨足が強まる中、5000mを過ぎると2分40秒台後半にさらにペースアップしたが、花岡はひとり食らいついた。8000m過ぎに離されたものの、28分15秒65の自己新で2位に入った。
「自分でも想定以上でした。ああいう走りができて、自信をつけることができました」。箱根で味わった悔しさから積み重ねた鍛錬が生きた。確かな成長を花岡は実感する。
「石原頼み」からの脱却。東海大の一つのテーマだ。その先頭に立って結果を出している花岡が、当然次期エース候補に挙がる。
ただ、「花岡だけ結果を出しているようではダメだ」と学年ミーティングでは皆の士気が上がっている。
2年生の成長ぶりは、夏合宿後に結果として表れた。箱根予選会では鈴木天智が1時間2分58秒でチームトップ。11月19日の上尾ハーフではロホマン・シュモンが1時間2分40秒をマーク。11月26日の日体大長距離競技会10000mでは兵藤ジュダが28分14秒75と、花岡の自己記録を抜いた。
100回大会の東海大は、2年生が活躍の中心になりそうだ。花岡は、チームを支えてきた大エース・石原への思いも強い。「最後の箱根は気持ちよく走ってもらいたい」。後輩たちの偽らざる気持ちだ。石原は12月にようやく本格練習を再開。復帰へメドは立ってきている。
ただ、状況次第で『2区・花岡』という可能性も十分考えられる。「前回の箱根が終わってから、チームを引っ張っていかないといけない自覚が芽生えました。2区を任されたらしっかり勝負したい」。両角速駅伝監督も「花岡もエースとして走りたいという思いはあるはず」と期待を寄せる。「自分が走らないとチームの順位は上がってこない」。東海大のエースになるための実力と自覚はすでに備わっている。
長野に住む家族は今回も現地応援に来る予定だという。「関東インカレ10000mのような、自慢できるようなレースがしたい」。インパクトのある走りを箱根路で見せるつもりだ。

2度目の箱根駅伝はエース区間を走る覚悟ができているという花岡寿哉(撮影/荒井寛太)
はなおか・ひさや/2003年6月10日生まれ。長野県白馬村出身。長野・白馬中→上田西高。5000m13分41秒31、10000m28分15秒65、ハーフ1時間3分23秒
文/荒井寛太
野球少年だった中学時代、素質が開花した高校時代
佐久長聖高に進むか、上田西高に進むか。中学3年生だった花岡寿哉は悩んでいた。長野・白馬中時代は野球のシニアリーグで活動しながら、普段は陸上部に所属。「どちらかというと野球のための陸上」だったが、陸上に気持ちが傾いていた。持ちタイムは全国屈指の駅伝名門・佐久長聖高の入部基準にギリギリ届いていた。 2019年。東海大が初の箱根総合優勝を遂げる。その勇姿にあこがれた花岡。あの舞台に立つために自分がどう進むべきか、自ら考えた。 その結果、花岡は上田西高を選んだ。「僕のレベルで佐久長聖に入ったとしても、厳しいトレーニングでケガなくやっていくのは難しい。将来箱根駅伝で活躍するため『力をつける高校3年間にしたい』と考えました」。 上田西高では、亜細亜大や富士通で活躍した帯刀秀幸先生の指導で、その素質が開花。インターハイ路線はコロナ禍の影響で出場機会に恵まれなかったが、高3の12月5日の日体大長距離競技会で5000m13分48秒29を記録。この年の日本人高校ランキング5位だ。さらに12月26日の平成国際大記録会では10000m29分25秒91。こちらも同10位につけている。 東海大に入学すると、1年目から活躍。日本インカレ5000mで6位入賞(13分59秒73)すると、全日本大学駅伝は1区(9.5km)を任され区間7位。箱根にも3区に抜擢された。2区の石原翔太郎が19位から11位に上げ、花岡にタスキが渡る。夢の箱根路へと駆け出した。 「これが箱根駅伝か、と思いましたね。沿道の声援が今まで感じたことのないくらい多かったです」。結果は区間6位(1時間2分21秒)。順位も2つ上げる好結果ともいえるが、本人は課題を感じた。 「3区経験者の石原さんや神薗(竜馬)さんに事前に話を聞き、『前半突っ込んで後半耐える』というレースプランを立てました。前半は良かったのですが…」 一時は7位まで順位を上げたものの、11.9kmの浜須賀歩道橋を右折し、国道134号線に入ってから、花岡の表情がゆがみ始める。後半粘ったものの、最後は後ろから追い上げて来た井川龍人(早大/現・旭化成)や森下翔太(明大2年)に抜かれ、9位で平塚中継所にたどりついた。 「耐えると言って耐えられませんでした。後半しっかり上がらないと勝負にならない」。長い距離に対するスタミナが足りないと感じた。飛躍を遂げた2年目シーズン
「もっと距離を踏まないといけない」。箱根を意識しつつ、花岡は2年目のシーズンを迎える。圧巻だったのは5月の関東インカレ10000m。山梨学院大のジェームズ・ムトゥク(2年)が刻む2分50秒ほどのハイペースに花岡はつく。雨足が強まる中、5000mを過ぎると2分40秒台後半にさらにペースアップしたが、花岡はひとり食らいついた。8000m過ぎに離されたものの、28分15秒65の自己新で2位に入った。 「自分でも想定以上でした。ああいう走りができて、自信をつけることができました」。箱根で味わった悔しさから積み重ねた鍛錬が生きた。確かな成長を花岡は実感する。 「石原頼み」からの脱却。東海大の一つのテーマだ。その先頭に立って結果を出している花岡が、当然次期エース候補に挙がる。 ただ、「花岡だけ結果を出しているようではダメだ」と学年ミーティングでは皆の士気が上がっている。 2年生の成長ぶりは、夏合宿後に結果として表れた。箱根予選会では鈴木天智が1時間2分58秒でチームトップ。11月19日の上尾ハーフではロホマン・シュモンが1時間2分40秒をマーク。11月26日の日体大長距離競技会10000mでは兵藤ジュダが28分14秒75と、花岡の自己記録を抜いた。 100回大会の東海大は、2年生が活躍の中心になりそうだ。花岡は、チームを支えてきた大エース・石原への思いも強い。「最後の箱根は気持ちよく走ってもらいたい」。後輩たちの偽らざる気持ちだ。石原は12月にようやく本格練習を再開。復帰へメドは立ってきている。 ただ、状況次第で『2区・花岡』という可能性も十分考えられる。「前回の箱根が終わってから、チームを引っ張っていかないといけない自覚が芽生えました。2区を任されたらしっかり勝負したい」。両角速駅伝監督も「花岡もエースとして走りたいという思いはあるはず」と期待を寄せる。「自分が走らないとチームの順位は上がってこない」。東海大のエースになるための実力と自覚はすでに備わっている。 長野に住む家族は今回も現地応援に来る予定だという。「関東インカレ10000mのような、自慢できるようなレースがしたい」。インパクトのある走りを箱根路で見せるつもりだ。 [caption id="attachment_123650" align="alignnone" width="800"]
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