2023.12.10
2024年に箱根駅伝は第100回大会を迎える。記念すべき100回に向けて、これまでの歴史を改めて振り返る『Playback箱根駅伝』を企画。第1回大会から第99回大会まで、大会の様子を刻んでいく。(所属などは当時のもの)
第21回(1940年/昭和15年)
山上り6度目の鈴木房重が往路Vのフィニッシュテープ 復路も首位を譲らず
戦時色が強まる中、早大、慶大、明大、立大が不参加となり、10校で行われた。
すでに日中戦争が始まってから3年が経っており、伴走できる車の数なども制限。それでも、選手たちは必死にタスキをつなぎ、また沿道でもファンが声援を送っている。
レースは前年に5連覇を阻まれた日大が強さを発揮する。1区の郷野喜一が区間賞を獲得する絶好のスタート。2区で東京文理科大に先頭を譲るが、3区の大沢竜雄で首位を奪い返す。
4区の手島弘信が区間賞の快走で、2位の専大との差を47秒から6分16秒に広げた。5区では6度目の出走となる鈴木房重が区間2位でまとめて2年ぶりの往路優勝。前回優勝校の専大に10分18秒の大差をつけた。
復路でも日大の独走は続く。6区・渡辺安雄、7区・片岡忠司、9区・永野常平、10区・小島武雄が区間賞を獲得。2位の東京文理科大に31分59秒の大差をつけ、2年ぶり5回目の優勝を果たした。3位は中大、連覇を狙った専大は復路で順位を2つ落として4位に終わった。
また、東京文理科大の3区には1年生の高橋進が出場。高橋は戦後の1952年ヘルシンキ五輪に出場したほか、指導者として辣腕を振るい「日本マラソン育ての親」とも呼ばれた。
政府や軍部などから多くの制限を受けながらも行われてきた箱根駅伝だが、この大会の後に戦火がさらに拡大。コースとなる東海道と箱根路が軍需物資の輸送のため使用不可能となり、大会は翌年以降、中止を余儀なくされてしまった。しかし、関東学連は、1941年1月12日に東京―青梅間(8区間、107km)で「東京青梅間往復大学専門学校鍛錬継走大会」という大会名で代替レースを実施。さらに同じ年の11月に翌年の大会を繰り上げる形で青梅往復の2回目の代替レースが行われ、いずれも日大が優勝した。
代替レースは箱根駅伝に含まれない非公式大会であるため、正規の大会にはカウントされていない。しかし、スポーツの全国大会が全面禁止となる非常時の中で大会開催にこぎつけた当事者たちの情熱と努力は後世に受け継がれていくべきだろう。
参考文献:箱根駅伝90回記念誌(関東学生連盟)
第21回(1940年/昭和15年) 山上り6度目の鈴木房重が往路Vのフィニッシュテープ 復路も首位を譲らず
戦時色が強まる中、早大、慶大、明大、立大が不参加となり、10校で行われた。 すでに日中戦争が始まってから3年が経っており、伴走できる車の数なども制限。それでも、選手たちは必死にタスキをつなぎ、また沿道でもファンが声援を送っている。 レースは前年に5連覇を阻まれた日大が強さを発揮する。1区の郷野喜一が区間賞を獲得する絶好のスタート。2区で東京文理科大に先頭を譲るが、3区の大沢竜雄で首位を奪い返す。 4区の手島弘信が区間賞の快走で、2位の専大との差を47秒から6分16秒に広げた。5区では6度目の出走となる鈴木房重が区間2位でまとめて2年ぶりの往路優勝。前回優勝校の専大に10分18秒の大差をつけた。 復路でも日大の独走は続く。6区・渡辺安雄、7区・片岡忠司、9区・永野常平、10区・小島武雄が区間賞を獲得。2位の東京文理科大に31分59秒の大差をつけ、2年ぶり5回目の優勝を果たした。3位は中大、連覇を狙った専大は復路で順位を2つ落として4位に終わった。 また、東京文理科大の3区には1年生の高橋進が出場。高橋は戦後の1952年ヘルシンキ五輪に出場したほか、指導者として辣腕を振るい「日本マラソン育ての親」とも呼ばれた。 政府や軍部などから多くの制限を受けながらも行われてきた箱根駅伝だが、この大会の後に戦火がさらに拡大。コースとなる東海道と箱根路が軍需物資の輸送のため使用不可能となり、大会は翌年以降、中止を余儀なくされてしまった。しかし、関東学連は、1941年1月12日に東京―青梅間(8区間、107km)で「東京青梅間往復大学専門学校鍛錬継走大会」という大会名で代替レースを実施。さらに同じ年の11月に翌年の大会を繰り上げる形で青梅往復の2回目の代替レースが行われ、いずれも日大が優勝した。 代替レースは箱根駅伝に含まれない非公式大会であるため、正規の大会にはカウントされていない。しかし、スポーツの全国大会が全面禁止となる非常時の中で大会開催にこぎつけた当事者たちの情熱と努力は後世に受け継がれていくべきだろう。 参考文献:箱根駅伝90回記念誌(関東学生連盟)第21回箱根駅伝総合成績をチェック
●総合成績 1位 日大 13時間12分27秒 2位 東京文理科大 13時間44分26秒 3位 中大 13時間56分35秒 4位 専大 14時間06分51秒 5位 東洋大 14時間21分42秒 6位 法大 14時間36分28秒 7位 横浜専門 14時間41分28秒 8位 東農大 15時間32分23秒 9位 拓大 16時間01分25秒 10位 日本歯科医専 16時間06分38秒 ●区間賞 1区 郷野喜一(日大) 1時間15分55秒 2区 勝亦清政(文理科大) 1時間09分20秒 3区 山下勝(専大) 1時間14分32秒 4区 手島弘信(日大) 1時間13分16秒 5区 朴鍈采(東洋大) 1時間40分38秒 6区 渡辺安雄(日大) 1時間21分44秒 7区 片岡忠司(日大) 1時間18分02秒 8区 岡田正美(文理科大) 1時間22分06秒 9区 永野常平(日大) 1時間12分50秒 10区 小島武雄(日大) 1時間20分21秒
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.04.22
フランス発のランニング専門ブランド「KIPRUN」 いよいよ日本でも本格展開
-
2025.04.22
-
2025.04.22
2025.04.17
駅伝王者に復権した旭化成 選手たちがパフォーマンスを最大限に発揮できた要因とは?
-
2025.04.19
-
2025.04.17
-
2025.04.20
-
2025.04.16
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
2025.03.23
女子は長野東が7年ぶりの地元V アンカー・田畑陽菜が薫英女学院を逆転/春の高校伊那駅伝
-
2025.04.01
-
2025.04.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.22
フランス発のランニング専門ブランド「KIPRUN」 いよいよ日本でも本格展開
フランス発のランニング専門ブランド「KIPRUN」。2018年にその歴史が始まったが、瞬く間に世界中の話題を席巻した。2025年1月には千葉・幕張にもオフィシャルショップがオープンし、徐々に日本国内でもその名が知られるよ […]
2025.04.22
劇場長編アニメーション『ひゃくえむ。』 主演は松坂桃李さん&染谷将太さんに決定! 東京世界陸上開催中の9月19日から公開
人気漫画「チ。―地球の運動について―」で手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞するなど、注目を集める漫画家の魚豊さんの連載デビュー作「ひゃくえむ。」。その劇場版アニメの9月19日に公開されることが決まった。 また、物語に登場する […]
2025.04.22
コリルが2時間4分45秒でメジャーマラソン連勝!女子はロケディが2時間17分22秒の大会新V/ボストンマラソン
第129回ボストン・マラソンは4月21日に米国の当地で行われ、男子はジョン・コリル(ケニア)が大会歴代3位の2時間4分45秒で優勝した。女子でシャロン・ロケディ(ケニア)が2時間17分22秒の大会新で制した。 最初の5k […]
2025.04.22
Onが三浦龍司をアスリート契約締結「新しい競技人生のスタート」本職初戦で世界陸上「内定決めたい」
スイスのスポーツブランド「On(オン)」は4月22日、男子3000m障害で五輪2大会連続入賞の三浦龍司(SUBARU)とアスリート契約締結を発表した。同日、国立競技場で会見を開いた。 勢いに乗るスポーツメーカーと日本のエ […]
2025.04.22
愛知製鋼にケニア出身の24歳サイモン・ガサ・ムンガイが加入
愛知製鋼は4月22日、サイモン・ガサ・ムンガイが新たに加入したとチームのSNSで発表した。 ケニア・マウセカンダリ高出身の24歳。ケニアでは昨年12月のケニアクロスカントリーシリーズ第6戦の10kmシニア男子で5位(32 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)