2020.09.17
1区区間賞で流れを呼び寄せた駒大の内田直将
平成以降の箱根駅伝を振り返る「PlayBack箱根駅伝」。今回は駒大が山梨学大との一騎打ちを制して連覇を飾った第79回大会(2003年)を紹介する。大会の歴史を知ることで、正月の箱根路がより楽しみになるかも!?
今大会から大幅なルール変更。関東学連選抜が初参戦
2区では山梨学大のO.モカンバ(左)、駒大の松下龍治(中央)、中大の藤原正和が熾烈な先頭争いを繰り広げた
全日本大学駅伝で連覇を達成した駒大と、出雲駅伝を制して全日本も2位に食い込んだ山梨学大が優勝候補に挙げられた第79回。今大会から大幅にルール変更があり、出場枠が従来の15から「20」に増加しただけでなく、シード権も1つ増枠して上位10チームに与えられることになった。
出場枠が増えたことにより、前回出場校はすべて予選会を通過。東洋大が3年ぶり、中央学大が4年ぶり、拓大と國學院大が2年ぶりに予選会を通過して本戦出場を果たした。加えて、今大会からオープン参加の関東学連選抜が初編成され、予選会で落選した大学から1校2名以内を基準として16名のメンバーが選出された(出走は1大学1名)。
1区は前年に続くスロースタートとなり、19km過ぎで抜け出した駒大の内田直将(3年)が区間賞を獲得。12秒差で神奈川大の下里和義(2年)、さらに3秒差で山梨学大の橋ノ口滝一(3年)と続き、そこから10秒以内に10校がなだれ込む大混戦となった。
2区では先頭の駒大・松下龍治(4年)に山梨学大のオンベチェ・モカンバ(2年)、日大の清水将也(4年)、中大の藤原正和(4年)が並び、4校による首位争いが展開された。15kmで清水が脱落すると、21kmでモカンバも遅れはじめ、最後の上り坂で藤原がスパート。中大勢として35年ぶりに戸塚中継所トップ通過を果たし、藤原は1年時の5区以来となる区間賞を獲得した。
出場校が20チームに増えたこと、1区が混戦だったことで、この区間では多くの“ごぼう抜き”が見られた。藤原が7人抜きで首位に躍り出ると、後方では順大の中川拓郎(4年)が史上最多(当時)となる15人抜きを達成して4位に浮上。そのほか、関東学院大の尾田賢典(4年)が12人抜き、中央学大の福山良祐(4年)が9人抜き、早大の森村哲(4年)が8人抜きと快走した。
3区では上位6校に順位変動が見られなかったものの、最下位(19位/関東学連選抜を入れれば20番手)でタスキを受けた國學院大の山岡雅義(3年)がチーム史上初となる区間賞の活躍で9人抜きを達成。予選会でチーム内12番手に沈んだ汚名を返上する快走だった。
4区では山梨学大のデビット・カリウキ(4年)が区間トップの走りで首位に立った。日大も藤井周一(3年)が区間2位の好走で5位から2位にジャンプアップし、3位中大、4位駒大、5位東洋大という順で5区にタスキが渡った。
5区では駒大の田中が猛烈な勢いで2人を抜いて2位へ上がったが、トップを走る山梨学大・森本直人(1年)の背中は遠い。森本は区間4位と安定した走りで後続の追随を許さず、チームとして9年ぶりとなる往路優勝のテープを切った。
8年ぶりとなる往路優勝のテープを切った山梨学大の森本直人
往路2位は1分39秒差で駒大。日大が10年ぶりの往路トップ3に入り、大東大が4位、ルーキー・中井祥太が驚異の区間新記録を樹立した東海大が5位でフィニッシュした。
18年ぶりに大雪の中でスタートした復路は、山梨学大が6区、7区と駒大との差を徐々に広げ、7区終了時点で1分53秒差までリードを拡大。このまま逃げ切りを図りたいところだったが、ここから駒大の驚異の追い上げが始まった。
駒大は8区の太田貴之(2年)が区間賞の走りで先頭との差を55秒詰めると、9区の島村清孝も区間トップの走りで先頭をいく山梨学大の清家健(4年)を逆転。一気に1分31秒のリードを奪った。
10区の北浦政史(3年)もとどめの区間新記録で後続との差を大きく広げ、駒大が悠々と2連覇のフィニッシュテープを切った。山梨学大は9区以降で区間12位、区間10位と沈んで2位。日大が11年ぶりの好成績となる3位に食い込み、往路12位だった中大は野村俊輔(2年)の6区区間賞などで5位まで順位を上げた。
今回から増枠されたシード権争いは最後の最後まで予測できない大混戦へ。9区終了時点で11位だった東洋大は岩田豪(4年)の5人抜きで6位までジャンプアップ。そこから9秒差で東海大、8秒差で順大、18秒差で日体大と続き、4年ぶり4回目の出場だった中央学大が最後の1枠をつかんで初のシード権獲得となった。9区時点で6位だった神奈川大は次々と順位を落とし、総合11位でまさかのシード陥落となった。
<人物Close-up>
藤原正和(中大4年)
箱根駅伝の5区に3年連続で出走し、1年時から区間賞(区間新)、区間2位、区間3位と山上りの名手として活躍。4年目は満を持してエース区間の2区に起用されると、日本人区間歴代3位(当時)となる1時間7分31秒で区間賞を獲得した。ロードに滅法強く、3年時にはハーフマラソンでユニバーシアードの金メダルを獲得。卒業直前のびわ湖毎日マラソンでは現在も破られていない初マラソン最高&学生記録となる2時間8分12秒をマークして同年のパリ世界選手権に内定した(その後、ケガで出場辞退)。その後も長らく故障などで苦しんだが、2013年、15年には2大会連続で世界選手権のマラソン代表として出場を果たした。翌年に現役を引退し、母校・中大の駅伝監督として後進の指導にあたっている。
<総合成績>
1位 駒澤大学 11.03.47(往路2位、復路1位)
2位 山梨学院大学 11.08.28(往路1位、復路3位)
3位 日本大学 11.12.52(往路3位、復路5位)
4位 大東文化大学 11.15.15(往路4位、復路9位)
5位 中央大学 11.16.27(往路12位、復路2位)
6位 東洋大学 11.16.56(往路9位、復路4位)
7位 東海大学 11.17.05(往路5位、復路13位)
8位 順天堂大学 11.17.13(往路7位、復路10位)
9位 日本体育大学 11.17.31(往路6位、復路14位)
10位 中央学院大学 11.17.33(往路11位、復路6位)
========シード権ライン=========
11位 神奈川大学 11.17.57(往路8位、復路11位)
12位 拓殖大学 11.19.05(往路14位、復路7位)
13位 帝京大学 11.20.17(往路15位、復路8位)
14位 國學院大學 11.22.40(往路13位、復路15位)
15位 早稲田大学 11.22.42(往路10位、復路16位)
16位 法政大学 11.27.30(往路18位、復路12位)
17位 亜細亜大学 11.27.32(往路16位、復路17位)
18位 関東学院大学 11.28.37(往路17位、復路19位)
19位 専修大学 11.34.12(往路19位、復路18位)
OP 関東学連選抜 11.27.21
<区間賞>
1区(21.3km)内田直将(駒 大3) 1.04.36
2区(23.0km)藤原正和(中 大4) 1.07.31
3区(21.3km)山岡雅義(國學院大3) 1.03.25
4区(20.9km)D.カリウキ(山梨学大4)1.01.32
5区(20.7km)中井祥太(東海大1) 1.11.29=区間新
6区(20.7km)野村俊輔(中 大2) 58.54
7区(21.2km)岩永暁如(山梨学大4) 1.05.26
8区(21.3km)太田貴之(駒 大2) 1.05.40
9区(23.0km)島村清孝(駒 大4) 1.09.02
10区(23.0km)北浦政史(駒 大3) 1.09.54=区間新

今大会から大幅なルール変更。関東学連選抜が初参戦


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