HOME 国内

2023.11.14

3年越しの思い込めた鹿児島特別国体「みなさんの協力あって開催できた」新開浩一先生は亡き恩師へも感謝
3年越しの思い込めた鹿児島特別国体「みなさんの協力あって開催できた」新開浩一先生は亡き恩師へも感謝

鹿児島国体最終日に集合写真

鹿児島特別国体の陸上競技が10月13日から17日、鴨池陸上競技場で行われた。桜島の火山灰が例年以上に降るといったこともあったが、普段は浜風で厳しい向かい風が吹き荒れるスタジアムながら、関係者が「珍しい」と言うほどホームストレートが絶好の追い風基調となり、好記録に沸いた。

地元・鹿児島は最終日に実施された少年男子共通800mで、立迫大徳(鹿児島城西高3)が1分47秒97の大会新記録で優勝。タイトルは1つだったが、5日間通して地元の観客を大いに沸かせた。

鹿児島にとって、まさに「待ちに待った」国体だった。本来であれば2020年秋に開催予定だったが、コロナ禍のために中止が決定。国体の中止は昭和21年(1946年)に第1回大会が始まって以来、初めてのことだった。国体は通常、数年先まで開催地が決まっているため、「延期」となるのが難しい。そうした中でも各所のはたらきかけの上、2023年に「特別国体」として組み込まれることが決定。2023年だった佐賀、24年だった滋賀などが後ろ倒しになることに合意した。

監督を務めた新開浩一先生(鹿児島南高教諭)は「佐賀や滋賀も含め、みなさんの協力があって開催できました。感謝の気持ちでいっぱいです」と話している。国体が中止となった後は「子どもたちに夢を与えたい」と地元の関係者が尽力。ジャパンアスリートトレーニングセンター大隅で冬に行われている室内競技会もその一つだ。

地元での国体を目指して競技を続けたものの、コロナ禍で先延ばしとなって引退した選手たちも少なからずいる。一方で、そこから成長を遂げたアスリートもいる。鶴田玲美(南九州ファミリーマート)もその一人。当時は国体が大きな目標だったスプリンターは、その年に大ブレイクを果たし、2021年には東京五輪4×100mリレー代表となり、今年はブダペスト世界選手権200mにも出場した。鶴田は「鴨池を走ることができて幸せでした」と笑顔を浮かべ、ともに4×100mリレーでバトンをつないだ後輩たちに温かい眼差しを向けていた。

鹿児島は男女総合で8位入賞。新開先生は「運営も含めて、選手、役員みんなが頑張ってくれました。中・高、先生方、スタッフ、一丸となった結果です」と胸を張る。表彰式では写真を手にしていた新開先生。順大OBの瀬戸口良一先生の写真で、瀬戸口先生は長きにわたって鹿児島の短距離界を指導し、強化部長や理事長などを歴任した。新開先生は「僕らの年代の指導者を成長させてくれた存在で、リードしていただいた」。その瀬戸口先生は2017年6月に他界。国体開催が決まっていたため「見届けてほしかった」といい、「僕らとしては先生のために、という思いもありました」。新開先生は目頭を熱くしていた。

広告の下にコンテンツが続きます

来年の佐賀大会からは「国民スポーツ大会=国スポ」へと名称変更。これが『最後の国体』だった。晴れ渡った最終日。いつものように桜島からは噴煙が青空に上がる。集合写真に収まった鹿児島チームはみんなが満開の笑顔だった。

文/向永拓史

鹿児島特別国体の陸上競技が10月13日から17日、鴨池陸上競技場で行われた。桜島の火山灰が例年以上に降るといったこともあったが、普段は浜風で厳しい向かい風が吹き荒れるスタジアムながら、関係者が「珍しい」と言うほどホームストレートが絶好の追い風基調となり、好記録に沸いた。 地元・鹿児島は最終日に実施された少年男子共通800mで、立迫大徳(鹿児島城西高3)が1分47秒97の大会新記録で優勝。タイトルは1つだったが、5日間通して地元の観客を大いに沸かせた。 鹿児島にとって、まさに「待ちに待った」国体だった。本来であれば2020年秋に開催予定だったが、コロナ禍のために中止が決定。国体の中止は昭和21年(1946年)に第1回大会が始まって以来、初めてのことだった。国体は通常、数年先まで開催地が決まっているため、「延期」となるのが難しい。そうした中でも各所のはたらきかけの上、2023年に「特別国体」として組み込まれることが決定。2023年だった佐賀、24年だった滋賀などが後ろ倒しになることに合意した。 監督を務めた新開浩一先生(鹿児島南高教諭)は「佐賀や滋賀も含め、みなさんの協力があって開催できました。感謝の気持ちでいっぱいです」と話している。国体が中止となった後は「子どもたちに夢を与えたい」と地元の関係者が尽力。ジャパンアスリートトレーニングセンター大隅で冬に行われている室内競技会もその一つだ。 地元での国体を目指して競技を続けたものの、コロナ禍で先延ばしとなって引退した選手たちも少なからずいる。一方で、そこから成長を遂げたアスリートもいる。鶴田玲美(南九州ファミリーマート)もその一人。当時は国体が大きな目標だったスプリンターは、その年に大ブレイクを果たし、2021年には東京五輪4×100mリレー代表となり、今年はブダペスト世界選手権200mにも出場した。鶴田は「鴨池を走ることができて幸せでした」と笑顔を浮かべ、ともに4×100mリレーでバトンをつないだ後輩たちに温かい眼差しを向けていた。 鹿児島は男女総合で8位入賞。新開先生は「運営も含めて、選手、役員みんなが頑張ってくれました。中・高、先生方、スタッフ、一丸となった結果です」と胸を張る。表彰式では写真を手にしていた新開先生。順大OBの瀬戸口良一先生の写真で、瀬戸口先生は長きにわたって鹿児島の短距離界を指導し、強化部長や理事長などを歴任した。新開先生は「僕らの年代の指導者を成長させてくれた存在で、リードしていただいた」。その瀬戸口先生は2017年6月に他界。国体開催が決まっていたため「見届けてほしかった」といい、「僕らとしては先生のために、という思いもありました」。新開先生は目頭を熱くしていた。 来年の佐賀大会からは「国民スポーツ大会=国スポ」へと名称変更。これが『最後の国体』だった。晴れ渡った最終日。いつものように桜島からは噴煙が青空に上がる。集合写真に収まった鹿児島チームはみんなが満開の笑顔だった。 文/向永拓史

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.02.22

「インターハイでも勝ちたい」高校2年の栗村凌がU20男子を制す 女子は真柴愛里が貫禄/日本選手権クロカン

◇第40回U20日本選手権クロスカントリー(2月22日/福岡・海の中道海浜公園) U20日本選手権クロスカントリーが行われ、男子(8km)では栗村凌(学法石川高2福島)が23分20秒で優勝を果たした。 今年も全国から有力 […]

NEWS 三浦龍司が圧巻スパートで優勝 井川龍人は2年連続2位/日本選手権クロカン

2025.02.22

三浦龍司が圧巻スパートで優勝 井川龍人は2年連続2位/日本選手権クロカン

◇第108回日本選手権クロスカントリー(2月22日/福岡・海の中道海浜公園) 来年1月の世界クロスカントリー選手権(米国・タラハシー)の代表選考を兼ねた第108回日本選手権クロスカントリーが行われ、男子(10km)はパリ […]

NEWS 【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日)

2025.02.22

【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日)

【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日/福岡・海の中道海浜公園) ●男子10km 1位 三浦龍司(SUBARU)   28分24秒 2位 井川龍人(旭化成)   28分25秒 3位 塩尻和 […]

NEWS 今年も福岡でクロカン日本一決定戦! 日本選手権&U20日本選手権クロカンに有力選手が多数出場

2025.02.22

今年も福岡でクロカン日本一決定戦! 日本選手権&U20日本選手権クロカンに有力選手が多数出場

第108回日本選手権クロスカントリー、第40回U20日本選手権クロスカントリーは今日2月22日、福岡・海の中道海浜公園の1周2kmのコースを舞台に行われる。 日本選手権は男子が10km、女子が8kmで争われ、男子にはパリ […]

NEWS 編集部コラム「奥が深い」

2025.02.21

編集部コラム「奥が深い」

毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年3月号 (2月14日発売)

2025年3月号 (2月14日発売)

別府大分毎日マラソン
落合 晃×久保 凛
太田智樹、葛西潤
追跡箱根駅伝&高校駅伝

page top