2023.10.12
パリ五輪マラソン選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」は10月15日、東京・国立競技場を午前8時10分にスタート、上野から日本橋、銀座、日比谷の東京のど真ん中を通る往復周回を挟み、国立競技場へと戻る42.195kmのコースで行われる。上位2選手が五輪代表に即時内定する一発勝負。27人がエントリーした女子の見どころを紹介する。
東京五輪に続く2大会連続五輪へ照準
女子は、東京五輪の代表選考レースとして行われた4年前のMGCでのエントリーは10人で、出場は9人。今回は3倍近くの27人が登録した。記録水準も2時間21分~23分あたりを多くの選手がマークし、底上げが着実に進んだ印象だ。
ただ、優勝争いに目を向けると、やはりキャリアを重ねた選手の存在が目を引く。東京五輪8位入賞の一山麻緒(資生堂)、同じ五輪代表の前田穂南(天満屋)と鈴木亜由子(日本郵政グループ)が「3強」を形成する。
現役日本人最速の2時間19分24秒を持つ新谷仁美(積水化学)は出場資格を持ちながらも回避し、マラソン4勝を誇る松田瑞生(ダイハツ)もブダペスト世界選手権13位を経て右脛骨骨膜炎のため、同じブダペスト代表の佐藤早也伽(積水化学)もコンディション不良のため欠場する。だからといって、東京五輪代表たちの存在感にゆらぎはない。
3人の中で最も順調に歩を進めるのは鈴木だろう。昨年9月のベルリンで2時間22分02秒(8位)と好走し、今大会へのスケジュール作りの確認をすると、今年3月の名古屋ウィメンズを自己新の2時間21分52秒で日本人トップ(2位)。前回は3位と4秒差で2位とギリギリの勝負を制したが、五輪本番は体調を合わせきれずに19位にとどまった。トラックで出場した16年リオ五輪も直前のケガで10000mは棄権し、5000mは予選敗退。2度の五輪で味わった悔しさをパリ五輪にぶつけることが、自身の最大のモチベーションだ。
前田は、苦しい時間を乗り越えて復調を遂げた。前回は中盤から独走する圧倒的な強さを見せ、30度近い気温の中を2時間25分15秒で走破して圧勝した。だが、五輪本番は33位どまり。その後もケガや体調不良、厚底シューズへの対応に苦しんだ。そこから復活を果たしたのが3月の名古屋ウィメンズ。2年ぶり自己新の2時間22分32秒をマークして鈴木に次ぐ3位に入り、ラストチャンスでMGC出場権をつかんだ。米国・アルバカーキで準備を整え、2連覇の偉業に挑む。
五輪入賞者の一山も、苦しい時期を乗り越えて臨む2度目のMGCとなる。22歳で臨んだ前回のMGCは調整不十分の中で6位どまり。そこからファイナルチャレンジ最終戦の名古屋ウィメンズで女子単独レースアジア新の2時間20分29秒をマークして、五輪代表3枠目をつかみ、本番の入賞につなげた。しかし、昨年7月のオレゴン世界選手権を体調不良で欠場して以降、スピードあふれる走りが影をひそめる。6月のハーフマラソン2連勝、米国・ボルダーで2度の合宿を経て復調を期す。「優勝」への強い気持ちを胸に、昨年12月に結婚した鈴木健吾(富士通)とともに代表入りの喜びを分かち合うことができるか。
スパート力では鈴木が上回り、速いペースで押し切るのが前田や一山。その持ち味がぶつかり合えば、歴史的名勝負となるだろう。
持ち味多彩の経験者&初出場組
五輪代表たちに挑むのは、経験豊富な安藤友香(ワコール)、加世田梨花(ダイハツ)と細田あい(エディオン)の初出場組か。
安藤は前回こそ8位どまりだったが、東京五輪には10000mで出場。マラソンではMGC後に3戦連続で2時間22分台と安定感は抜群だ。最後まで粘り切る展開に持ち込めれば、3強に食い込むチャンスは大いにある。
加世田は、ブダペスト世界選手権を経ての参戦。レース中に脱水症状を起こしたため、コンディション面で難しさはあるだろう。だが、持ち味の積極性と、5月の世界選手権10000m選考レース(ゴールデンゲームズinのべおか)を制したスピードは大きな武器だ。
細田もマラソン初挑戦から自己記録を着実に更新し、4レースめだった昨年10月のロンドンで日本歴代8位の2時間21分42秒をマーク。今年3月の東京でも2時間22分08秒(7位)を出して、さらなる手応えを得た。ロンドンと同じ流れを踏んでMGCに備えている。
このほか、初マラソンで学生新(2時間25分02秒)をマークした2年目の鈴木優花(第一生命グループ)、マラソン経験豊富な28歳の上杉真穂(スターツ)にも注目だ。
ダイハツは2015年北京世界選手権代表の実績を持つ前田彩里ら、天満屋もドーハ世界選手権7位の谷本観月ら複数人が出場し、チームとして臨めることも大きな強みとなる。
終盤に待つ上り坂や、日本橋や銀座を通る周回部分など、勝負所は満載の難コースを制し、五輪切符をつかむのは果たして誰か。
スタートは午前8時10分。TBS系列で生中継される予定。
東京五輪に続く2大会連続五輪へ照準
女子は、東京五輪の代表選考レースとして行われた4年前のMGCでのエントリーは10人で、出場は9人。今回は3倍近くの27人が登録した。記録水準も2時間21分~23分あたりを多くの選手がマークし、底上げが着実に進んだ印象だ。 ただ、優勝争いに目を向けると、やはりキャリアを重ねた選手の存在が目を引く。東京五輪8位入賞の一山麻緒(資生堂)、同じ五輪代表の前田穂南(天満屋)と鈴木亜由子(日本郵政グループ)が「3強」を形成する。 現役日本人最速の2時間19分24秒を持つ新谷仁美(積水化学)は出場資格を持ちながらも回避し、マラソン4勝を誇る松田瑞生(ダイハツ)もブダペスト世界選手権13位を経て右脛骨骨膜炎のため、同じブダペスト代表の佐藤早也伽(積水化学)もコンディション不良のため欠場する。だからといって、東京五輪代表たちの存在感にゆらぎはない。 3人の中で最も順調に歩を進めるのは鈴木だろう。昨年9月のベルリンで2時間22分02秒(8位)と好走し、今大会へのスケジュール作りの確認をすると、今年3月の名古屋ウィメンズを自己新の2時間21分52秒で日本人トップ(2位)。前回は3位と4秒差で2位とギリギリの勝負を制したが、五輪本番は体調を合わせきれずに19位にとどまった。トラックで出場した16年リオ五輪も直前のケガで10000mは棄権し、5000mは予選敗退。2度の五輪で味わった悔しさをパリ五輪にぶつけることが、自身の最大のモチベーションだ。 前田は、苦しい時間を乗り越えて復調を遂げた。前回は中盤から独走する圧倒的な強さを見せ、30度近い気温の中を2時間25分15秒で走破して圧勝した。だが、五輪本番は33位どまり。その後もケガや体調不良、厚底シューズへの対応に苦しんだ。そこから復活を果たしたのが3月の名古屋ウィメンズ。2年ぶり自己新の2時間22分32秒をマークして鈴木に次ぐ3位に入り、ラストチャンスでMGC出場権をつかんだ。米国・アルバカーキで準備を整え、2連覇の偉業に挑む。 五輪入賞者の一山も、苦しい時期を乗り越えて臨む2度目のMGCとなる。22歳で臨んだ前回のMGCは調整不十分の中で6位どまり。そこからファイナルチャレンジ最終戦の名古屋ウィメンズで女子単独レースアジア新の2時間20分29秒をマークして、五輪代表3枠目をつかみ、本番の入賞につなげた。しかし、昨年7月のオレゴン世界選手権を体調不良で欠場して以降、スピードあふれる走りが影をひそめる。6月のハーフマラソン2連勝、米国・ボルダーで2度の合宿を経て復調を期す。「優勝」への強い気持ちを胸に、昨年12月に結婚した鈴木健吾(富士通)とともに代表入りの喜びを分かち合うことができるか。 スパート力では鈴木が上回り、速いペースで押し切るのが前田や一山。その持ち味がぶつかり合えば、歴史的名勝負となるだろう。持ち味多彩の経験者&初出場組
五輪代表たちに挑むのは、経験豊富な安藤友香(ワコール)、加世田梨花(ダイハツ)と細田あい(エディオン)の初出場組か。 安藤は前回こそ8位どまりだったが、東京五輪には10000mで出場。マラソンではMGC後に3戦連続で2時間22分台と安定感は抜群だ。最後まで粘り切る展開に持ち込めれば、3強に食い込むチャンスは大いにある。 加世田は、ブダペスト世界選手権を経ての参戦。レース中に脱水症状を起こしたため、コンディション面で難しさはあるだろう。だが、持ち味の積極性と、5月の世界選手権10000m選考レース(ゴールデンゲームズinのべおか)を制したスピードは大きな武器だ。 細田もマラソン初挑戦から自己記録を着実に更新し、4レースめだった昨年10月のロンドンで日本歴代8位の2時間21分42秒をマーク。今年3月の東京でも2時間22分08秒(7位)を出して、さらなる手応えを得た。ロンドンと同じ流れを踏んでMGCに備えている。 このほか、初マラソンで学生新(2時間25分02秒)をマークした2年目の鈴木優花(第一生命グループ)、マラソン経験豊富な28歳の上杉真穂(スターツ)にも注目だ。 ダイハツは2015年北京世界選手権代表の実績を持つ前田彩里ら、天満屋もドーハ世界選手権7位の谷本観月ら複数人が出場し、チームとして臨めることも大きな強みとなる。 終盤に待つ上り坂や、日本橋や銀座を通る周回部分など、勝負所は満載の難コースを制し、五輪切符をつかむのは果たして誰か。 スタートは午前8時10分。TBS系列で生中継される予定。
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