2023.10.12
パリ五輪マラソン選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」は10月15日、東京・国立競技場を午前8時にスタート、上野から日本橋、銀座、日比谷の東京のど真ん中を通る往復周回を挟み、国立競技場へと戻る42.195kmのコースで行われる。上位2選手が五輪代表に即時内定する一発勝負。65人がエントリーした男子の見どころを紹介する。
五輪入賞者か、日本記録保持者か
男子は、東京五輪の代表選考レースとして行われた4年前のMGCでのエントリーは31人。今回はほぼ倍増となったうえ、2時間4分56秒の日本記録(2021年)を持つ鈴木健吾(富士通)を筆頭に、2時間5分台が3人、2時間6分台が7人と、持ちタイムの水準も上昇した。
その中でも、キャリアが際立つのが東京五輪6位入賞の大迫傑(Nike)と、日本記録保持者の鈴木。レースはこの「2強」の動きによって大きく左右されることになるだろう。
ともに前回大会を経験しており、大迫は3位、鈴木は7位。大迫は勝負を懸けたレースであり、鈴木は爪痕を残す意識と、当時の臨むスタンスに差はあれど、五輪代表を決めるこれ以上ない緊張感を経験していることは、大きなアドバンテージとなる。
ただ、今大会への過程などを踏まえると、大迫が一歩リードしている印象だ。東京五輪後にいったんはシューズを脱いだが、22年2月の現役復帰後は順調にレースを重ねてきた。マラソンでは復帰初戦だった22年11月のニューヨークシティ5位、国内復帰初戦だった今年3月の東京では2時間6分13秒のサードベストで日本人3番手(9位)にまとめた。
MGCに向けては、東京五輪への調整段階でも実施した同一レースでの10000m×2本を、7月のホクレン・ディスタンスチャレンジで組み込み、その後は米国・フラッグスタッフへ。高地で身体を作り、2度目のMGCに臨む。
一方の鈴木は、昨年3月の東京マラソン以降、オレゴン世界選手権を体調不良で欠場するなど、なかなかレースに出場できない時期が続いた。6月に出場した函館ハーフ(1時間2分46秒/7位)が1年3ヵ月ぶりのレース。そこから米国・アルバカーキで本格的なマラソン練習に入っている。
こういった過程を見ると、やはり大迫が一枚上手か。唯一の不安要素は、いまだマラソンでの優勝経験がない部分。だが、前回のMGC後のファイナルチャレンジでは最終レースの東京で、2時間5分29秒の当時日本新をマークして日本人トップを占め、残り1枚の五輪切符をつかみ取っている。
一方の鈴木は、日本人初の2時間4分台を出した21年2月のびわ湖では残り35㎞からのスパートで優勝、昨年の東京は中盤で抜け出して日本人トップ(2時間5分28秒/パフォーマンス日本歴代2位)に輝くなど、多彩な攻め方ができるタイプ。鈴木が先に仕掛ける展開になるようだと、そのまま逃げ切る可能性もある。
世界選手権代表組と九州勢が追随
「2強」を追う勢力は多士済々だ。その中でも軸となりそうなのが、世界選手権で熱走を見せた山下一貴(三菱重工)と西山雄介(トヨタ自動車)だろう。
山下は、今年8月のブダペスト世界選手権では30km過ぎに一時トップを引っ張り、優勝争いが動いてからも冷静に追い上げて5位まで順位を上げた。最後は両脚にケイレンを起こして12位まで後退しており、そのダメージからどこまで回復できているかは大きなポイントではある。ただ、過去のレースでも見せている積極性、後半の勝負強さは大きな武器だ。
西山は昨年のオレゴン世界選手権で、世界大会日本人最高の2時間8分35秒をマークして日本人トップの13位。その後はマラソンレースに出場していないものの、そのぶんじっくりと調整。前回2位で五輪代表内定を得た先輩の服部勇馬と同じ流れでトレーニングを進めており、その力を本番にぶつける。最多7人がエントリーしたうち、ブダペスト世界選手権代表の西山和弥と、丸山竜也は欠場となるが、5人のチーム戦が組めることも強みだ。
山下を含めて九州の実業団勢に実力者がずらり。今回のMGC出場権獲得第1号の細谷恭平(黒崎播磨)は、昨年10月のシカゴ(2時間8分05秒/6位)で今大会に向けてのトレーニングの流れをテストした。
九電工からは前回4位の大塚祥平と、7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ5000mで13分28秒70をマークして三浦龍司に先着した赤﨑暁が出場。古賀淳紫(安川電機)も4月のぎふ清流、6月の仙台国際とハーフマラソンで連続日本人トップ(ともに4位)と流れがいい。
三菱重工のエース・井上大仁が、完走選手中最下位(27位)だった前回の雪辱を期し、2度目のMGCに臨む。前回はチームとしてMGC出場者ゼロだった旭化成は、スピードランナー・鎧坂哲哉、丸山文裕の33歳コンビと、若手の土方英和の3人が出場する。
このほか、7月のゴールドコーストを大会新(2時間7分40秒)で制した小山直城(Honda)、20年福岡国際覇者・吉田祐也(GMOインターネットグループ)、6度のマラソン歴で4度の2時間7分台の安定感を誇る聞谷賢人(トヨタ紡織)、世界選手権に出場経験を持つ其田健也(JR東日本)と星岳(コニカミノルタ)ら、強豪がずらり。
さらには39歳の今井正人(トヨタ自動車九州)と岡本直己(中国電力)、マラソン経験で右に出る者のいない川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)といったベテラン組の存在も見逃せない。
終盤に待つ上り坂や、日本橋や銀座を通る周回部分など、勝負所は満載の難コースを制し、五輪切符をつかむのは果たして誰か。
スタートは午前8時。TBS系列で生中継される予定。
五輪入賞者か、日本記録保持者か
男子は、東京五輪の代表選考レースとして行われた4年前のMGCでのエントリーは31人。今回はほぼ倍増となったうえ、2時間4分56秒の日本記録(2021年)を持つ鈴木健吾(富士通)を筆頭に、2時間5分台が3人、2時間6分台が7人と、持ちタイムの水準も上昇した。 その中でも、キャリアが際立つのが東京五輪6位入賞の大迫傑(Nike)と、日本記録保持者の鈴木。レースはこの「2強」の動きによって大きく左右されることになるだろう。 ともに前回大会を経験しており、大迫は3位、鈴木は7位。大迫は勝負を懸けたレースであり、鈴木は爪痕を残す意識と、当時の臨むスタンスに差はあれど、五輪代表を決めるこれ以上ない緊張感を経験していることは、大きなアドバンテージとなる。 ただ、今大会への過程などを踏まえると、大迫が一歩リードしている印象だ。東京五輪後にいったんはシューズを脱いだが、22年2月の現役復帰後は順調にレースを重ねてきた。マラソンでは復帰初戦だった22年11月のニューヨークシティ5位、国内復帰初戦だった今年3月の東京では2時間6分13秒のサードベストで日本人3番手(9位)にまとめた。 MGCに向けては、東京五輪への調整段階でも実施した同一レースでの10000m×2本を、7月のホクレン・ディスタンスチャレンジで組み込み、その後は米国・フラッグスタッフへ。高地で身体を作り、2度目のMGCに臨む。 一方の鈴木は、昨年3月の東京マラソン以降、オレゴン世界選手権を体調不良で欠場するなど、なかなかレースに出場できない時期が続いた。6月に出場した函館ハーフ(1時間2分46秒/7位)が1年3ヵ月ぶりのレース。そこから米国・アルバカーキで本格的なマラソン練習に入っている。 こういった過程を見ると、やはり大迫が一枚上手か。唯一の不安要素は、いまだマラソンでの優勝経験がない部分。だが、前回のMGC後のファイナルチャレンジでは最終レースの東京で、2時間5分29秒の当時日本新をマークして日本人トップを占め、残り1枚の五輪切符をつかみ取っている。 一方の鈴木は、日本人初の2時間4分台を出した21年2月のびわ湖では残り35㎞からのスパートで優勝、昨年の東京は中盤で抜け出して日本人トップ(2時間5分28秒/パフォーマンス日本歴代2位)に輝くなど、多彩な攻め方ができるタイプ。鈴木が先に仕掛ける展開になるようだと、そのまま逃げ切る可能性もある。世界選手権代表組と九州勢が追随
「2強」を追う勢力は多士済々だ。その中でも軸となりそうなのが、世界選手権で熱走を見せた山下一貴(三菱重工)と西山雄介(トヨタ自動車)だろう。 山下は、今年8月のブダペスト世界選手権では30km過ぎに一時トップを引っ張り、優勝争いが動いてからも冷静に追い上げて5位まで順位を上げた。最後は両脚にケイレンを起こして12位まで後退しており、そのダメージからどこまで回復できているかは大きなポイントではある。ただ、過去のレースでも見せている積極性、後半の勝負強さは大きな武器だ。 西山は昨年のオレゴン世界選手権で、世界大会日本人最高の2時間8分35秒をマークして日本人トップの13位。その後はマラソンレースに出場していないものの、そのぶんじっくりと調整。前回2位で五輪代表内定を得た先輩の服部勇馬と同じ流れでトレーニングを進めており、その力を本番にぶつける。最多7人がエントリーしたうち、ブダペスト世界選手権代表の西山和弥と、丸山竜也は欠場となるが、5人のチーム戦が組めることも強みだ。 山下を含めて九州の実業団勢に実力者がずらり。今回のMGC出場権獲得第1号の細谷恭平(黒崎播磨)は、昨年10月のシカゴ(2時間8分05秒/6位)で今大会に向けてのトレーニングの流れをテストした。 九電工からは前回4位の大塚祥平と、7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ5000mで13分28秒70をマークして三浦龍司に先着した赤﨑暁が出場。古賀淳紫(安川電機)も4月のぎふ清流、6月の仙台国際とハーフマラソンで連続日本人トップ(ともに4位)と流れがいい。 三菱重工のエース・井上大仁が、完走選手中最下位(27位)だった前回の雪辱を期し、2度目のMGCに臨む。前回はチームとしてMGC出場者ゼロだった旭化成は、スピードランナー・鎧坂哲哉、丸山文裕の33歳コンビと、若手の土方英和の3人が出場する。 このほか、7月のゴールドコーストを大会新(2時間7分40秒)で制した小山直城(Honda)、20年福岡国際覇者・吉田祐也(GMOインターネットグループ)、6度のマラソン歴で4度の2時間7分台の安定感を誇る聞谷賢人(トヨタ紡織)、世界選手権に出場経験を持つ其田健也(JR東日本)と星岳(コニカミノルタ)ら、強豪がずらり。 さらには39歳の今井正人(トヨタ自動車九州)と岡本直己(中国電力)、マラソン経験で右に出る者のいない川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)といったベテラン組の存在も見逃せない。 終盤に待つ上り坂や、日本橋や銀座を通る周回部分など、勝負所は満載の難コースを制し、五輪切符をつかむのは果たして誰か。 スタートは午前8時。TBS系列で生中継される予定。
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