2020.09.11
毎週金曜日更新!?
★月陸編集部★
攻め(?)のアンダーハンド
リレーコラム🔥
毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ!
陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。
編集スタッフが週替りで綴って行きたいと思います。
暇つぶし程度にご覧ください!
第59回「思い込みを捨てる」(山本慎一郎)
早いもので陸上界の2020シーズンも後半戦です。
各地で新人戦なども開催され、来年度を見据えたトレーニング計画を考え始める時期になっているのではないでしょうか。
また、競技を続けている中学・高校3年生にとってはここからが勝負どころですね。
そのタイミングで、全国高等学校体育連盟陸上競技専門部が発行する書籍『高校陸上 基本&実践 トレーニング』が完成しました。
これは全国の名だたる指導者の方々が、各種目の基本から応用までを網羅した『教本』です。
顧問の先生方はもちろんのこと、学校に指導者がいない中高生も、これを読んで競技について勉強すれば飛躍のきっかけをつかめるかもしれません。
最近はこういった書籍以外にもインターネットなどでノウハウを入手できる時代になりました。陸上界がレベルアップしているのはそういった情報量の増加も要因の1つだと感じます。
ただし、情報というのは受け取り方によってその意味が大きく異なる場合もあります。
私が学生だった約20年前は、今のようにインターネットが発達しておらず、陸上競技の情報を得る手段は雑誌や新聞やテレビなど、ごく一部に限られていました。そこで私は中学時代から実家にあった月陸を片っ端から読みあさり、トップ選手のノウハウを吸収しようとしました。雑誌だけでなく書籍も読み、競技をする上では十分な知識を得たはずでした。
しかし、結果として記録は伸び悩みました。中3の時には3000mが9分33秒と、県大会の決勝まで進みましたが、高校では県レベルの大会では通用せず、5000mの記録も15分41秒にとどまりました。さらに、大学ではその高校時代のタイムすら更新できずに4年間を終えました。
伸び悩んだ理由はいくらでも考えられますが、その要因の1つとして思い当たるのは、「情報の受け取り方」に問題があったのではないかということです。
私は幸運にも中学、高校、大学と、全国レベルのチームメイトに恵まれました。彼らの圧倒的な才能と強さを目の当たりにし、刺激を受けてきたのは間違いありません。
ところが、彼らとの差は縮まるどころか広がる一方でした。自分なりに試行錯誤してきたつもりでしたが、結果は出ませんでした。なぜでしょうか?
今になって考えると、私は才能あふれる全国レベルの選手たちを参考にするというよりは、自分のやり方を見つけ出そうと躍起になっていた気がします。彼らはあまりにも別世界の存在に思え、「参考にしようとしても、自分にはできない」と思い込んでいたと感じます。「遅い選手(自分)を速くする方法」ばかりを無意識的に求めてしまった面は否定できないでしょう。
トップ選手を取材してよく聞く言葉は「感覚」です。トップレベルの選手ほど自分の理想とする感覚を追い求めてフォームを磨き、トレーニングを組み立てている印象です。
先日取材させていただいた東洋大の夏合宿の様子。強い選手ほど「感覚」を重視しているように感じます
その点、私は自分が全国レベルの選手の『感覚』に近づこうとはあまり考えていなかったと思います。練習メニューの組み立て方は自分なりに研究してきたつもりですが、本当は強い選手にもっと走りの感覚とか、身体の動かし方についても聞いておけば良かったと感じます。「どうせ自分にはできないだろう」と思い込んだことが、結果として自身の成長を鈍らせたのかもしれません。
試行錯誤をするのは悪いことではありませんが、時には必要がない回り道をしてしまうこともあります。そうならないために大切なのは、変な思い込みを捨てることです。フラットな視点で知識を吸収してみる。そうすると、同じ情報でも違った受け止め方ができるかもしれません。
陸上は個人競技なので、個々に合ったやり方が存在するのは確かですが、同時に、実績ある指導者が結果を出せるだけの普遍的なノウハウを持っているのも事実です。全部を鵜呑みにする必要はなくとも、まずは考えを知って参考にしてみる。そして、そういう素直さが成長を後押しするのだと思います。
その点、全国トップ級のノウハウが凝縮された『高校陸上 基本&実践 トレーニング』は、多くのアスリートが参考にできる内容となっています。月陸本誌と合わせて、ぜひともみなさんの競技力向上に役立てていただければ幸いです。
山本慎一郎(やまもとしんいちろう) 月刊陸上競技 編集部(兼企画営業部)企画課長 1983年1月生まれ。福島県いわき市出身。160cm、47kg(ピーク時)。植田中→磐城高→福島大→法大卒。中学では1学年下の村上康則(2010年日本選手権1500m覇者)と一緒に駅伝を走り、その才能を間近で見て挫折。懲りずに高校で都大路、大学で箱根駅伝を目指すも、いずれも未達に終わる。引退するタイミングを逸して現在も市民ランナーとして活動中。シューズマニアの一面も持ち、月陸Onlineでは「シューズレポ」を連載中。 |
編集部コラム第58回「それ、ドーピングだよ」(向永)
編集部コラム第57回「東京五輪へ“もう1度”あと1年」(小川)
編集部コラム第56回「魔法の言葉」(船越)
編集部コラム第55回「月陸ってどんな雑誌?」(松永)
編集部コラム第54回「インターハイ種目別学校対抗(女子編)」(大久保)
編集部コラム第53回「明確なビジョン」(井上)
編集部コラム第52回「人間性を磨く」(山本)
編集部コラム第51回「指が痛い。」(向永)
編集部コラム第50回「温故知新」(小川)
編集部コラム第49回「対面取材」(船越)
編集部コラム第48回「日本選手権優勝者を世代別にまとめてみた」(松永)
編集部コラム第47回「インターハイ種目別学校対抗(男子編)」(大久保)
編集部コラム第46回「月陸に自分が載った」(井上)
編集部コラム第45回「陸上競技と関わり続ける」(山本)
編集部コラム第44回「逃げるとどうなる?」(向永)
編集部コラム第43回「成長のヒント」(小川)
編集部コラム第42回「日本実業団記録」(大久保)
編集部コラム第41回「思い出の2016年長野全中」(松永)
編集部コラム第40回「葛藤」(船越)
編集部コラム第39回「何も咲かない寒い日は……」(井上)
編集部コラム第38回「社会の一員としての役割」(山本)
編集部コラム第37回「大学生、高校生、中学生に光を」(向永)
編集部コラム第36回「Tokyo 2020+1」(小川)
編集部コラム第35回「善意」(船越)
編集部コラム第34回「ピンチをチャンスに」(松永)
編集部コラム第33回「日本記録アラカルト」(大久保)
編集部コラム第32回「独断で選ぶ2019年度高校陸上界5選」(井上)
編集部コラム第31回「記録と順位」(山本)
編集部コラム第30回「答えを見つけ出す面白さ」(向永)
編集部コラム第29回「初めてのオリンピック」(小川)
編集部コラム第28回「人生意気に感ず」(船越)
編集部コラム第27回「学生駅伝〝区間賞〟に関するアレコレ」(松永)
編集部コラム第26回「2019年度 陸上界ナンバーワン都道府県は?」(大久保)
編集部コラム第25回「全国男子駅伝の〝私見〟大会展望」(井上)
編集部コラム第24回「箱根駅伝の高速化を検証」(山本)
編集部コラム番外編「勝負師の顔」(山本)
編集部コラム第23回「みんなキラキラ」(向永)
編集部コラム第22回「国立競技場」(小川)
編集部コラム第21回「〝がんばれ〟という言葉の力と呪縛」(船越)
編集部コラム第20回「日本記録樹立者を世代別にまとめてみた」(松永)
編集部コラム第19回「高校陸上界史上最強校は?(女子編)」(大久保)
編集部コラム第18回「独断で選ぶ全国高校駅伝5選」(井上)
編集部コラム第17回「リクジョウクエスト2~そして月陸へ~」(山本)
編集部コラム第16回「強い選手の共通点?」(向永)
編集部コラム第15回「続・ドーハの喜劇?」(小川)
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編集部コラム第12回「高校陸上界史上最強校は?(男子編)」(大久保)
編集部コラム第11回「羽ばたけ日本の中距離!」(井上)
編集部コラム第10回「心を動かすもの」(山本)
編集部コラム第9回「混成競技のアレコレ」(向永)
編集部コラム第8回「アナウンス」(小川)
編集部コラム第7回「ジンクス」(船越)
編集部コラム第6回「学生駅伝を支える主務の存在」(松永)
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編集部コラム第4回「とらんすふぁ~」(井上)
編集部コラム第3回「リクジョウクエスト」(山本)
編集部コラム第2回「あんな選手を目指しなさい」(向永)
編集部コラム第1回「締め切りとIHと五輪」(小川)
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早いもので陸上界の2020シーズンも後半戦です。 各地で新人戦なども開催され、来年度を見据えたトレーニング計画を考え始める時期になっているのではないでしょうか。 また、競技を続けている中学・高校3年生にとってはここからが勝負どころですね。 そのタイミングで、全国高等学校体育連盟陸上競技専門部が発行する書籍『高校陸上 基本&実践 トレーニング』が完成しました。 [caption id="attachment_10190" align="aligncenter" width="400"] 高校陸上 基本&実践 トレーニング[/caption] これは全国の名だたる指導者の方々が、各種目の基本から応用までを網羅した『教本』です。 顧問の先生方はもちろんのこと、学校に指導者がいない中高生も、これを読んで競技について勉強すれば飛躍のきっかけをつかめるかもしれません。 最近はこういった書籍以外にもインターネットなどでノウハウを入手できる時代になりました。陸上界がレベルアップしているのはそういった情報量の増加も要因の1つだと感じます。 ただし、情報というのは受け取り方によってその意味が大きく異なる場合もあります。 私が学生だった約20年前は、今のようにインターネットが発達しておらず、陸上競技の情報を得る手段は雑誌や新聞やテレビなど、ごく一部に限られていました。そこで私は中学時代から実家にあった月陸を片っ端から読みあさり、トップ選手のノウハウを吸収しようとしました。雑誌だけでなく書籍も読み、競技をする上では十分な知識を得たはずでした。 しかし、結果として記録は伸び悩みました。中3の時には3000mが9分33秒と、県大会の決勝まで進みましたが、高校では県レベルの大会では通用せず、5000mの記録も15分41秒にとどまりました。さらに、大学ではその高校時代のタイムすら更新できずに4年間を終えました。 伸び悩んだ理由はいくらでも考えられますが、その要因の1つとして思い当たるのは、「情報の受け取り方」に問題があったのではないかということです。 私は幸運にも中学、高校、大学と、全国レベルのチームメイトに恵まれました。彼らの圧倒的な才能と強さを目の当たりにし、刺激を受けてきたのは間違いありません。 ところが、彼らとの差は縮まるどころか広がる一方でした。自分なりに試行錯誤してきたつもりでしたが、結果は出ませんでした。なぜでしょうか? 今になって考えると、私は才能あふれる全国レベルの選手たちを参考にするというよりは、自分のやり方を見つけ出そうと躍起になっていた気がします。彼らはあまりにも別世界の存在に思え、「参考にしようとしても、自分にはできない」と思い込んでいたと感じます。「遅い選手(自分)を速くする方法」ばかりを無意識的に求めてしまった面は否定できないでしょう。 トップ選手を取材してよく聞く言葉は「感覚」です。トップレベルの選手ほど自分の理想とする感覚を追い求めてフォームを磨き、トレーニングを組み立てている印象です。 先日取材させていただいた東洋大の夏合宿の様子。強い選手ほど「感覚」を重視しているように感じます その点、私は自分が全国レベルの選手の『感覚』に近づこうとはあまり考えていなかったと思います。練習メニューの組み立て方は自分なりに研究してきたつもりですが、本当は強い選手にもっと走りの感覚とか、身体の動かし方についても聞いておけば良かったと感じます。「どうせ自分にはできないだろう」と思い込んだことが、結果として自身の成長を鈍らせたのかもしれません。 試行錯誤をするのは悪いことではありませんが、時には必要がない回り道をしてしまうこともあります。そうならないために大切なのは、変な思い込みを捨てることです。フラットな視点で知識を吸収してみる。そうすると、同じ情報でも違った受け止め方ができるかもしれません。 陸上は個人競技なので、個々に合ったやり方が存在するのは確かですが、同時に、実績ある指導者が結果を出せるだけの普遍的なノウハウを持っているのも事実です。全部を鵜呑みにする必要はなくとも、まずは考えを知って参考にしてみる。そして、そういう素直さが成長を後押しするのだと思います。 その点、全国トップ級のノウハウが凝縮された『高校陸上 基本&実践 トレーニング』は、多くのアスリートが参考にできる内容となっています。月陸本誌と合わせて、ぜひともみなさんの競技力向上に役立てていただければ幸いです。山本慎一郎(やまもとしんいちろう) 月刊陸上競技 編集部(兼企画営業部)企画課長 1983年1月生まれ。福島県いわき市出身。160cm、47kg(ピーク時)。植田中→磐城高→福島大→法大卒。中学では1学年下の村上康則(2010年日本選手権1500m覇者)と一緒に駅伝を走り、その才能を間近で見て挫折。懲りずに高校で都大路、大学で箱根駅伝を目指すも、いずれも未達に終わる。引退するタイミングを逸して現在も市民ランナーとして活動中。シューズマニアの一面も持ち、月陸Onlineでは「シューズレポ」を連載中。 |
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