2023.09.28
関東インカレでは1部10000mで5位、その後は不調が続く
幼稚園の年中から小6までサッカー少年だった松永。前原中時代は1500mと3000mで全中に出場し、3年時の全国都道府県対抗駅伝では2区区間6位と好走している。
専大松戸高では2年時に県大会5000mで優勝したものの、その後は目立った成績を残せず。オーバートレーニングによって練習もままならない日々を過ごした。法大へ進学後も1、2年生の間は思うように走れなかったが、3年時の関東インカレ1部5000mで才能が開花する。ラスト2周で周囲も驚くロングスパートを仕掛け、残り250m付近まで首位を独走した。結果的に6位まで順位を落としたものの、その名を広めるには十分の激走だった。
11月の上尾ハーフでは、尊敬する先輩・鎌田航生(現・ヤクルト)の持つ法大記録に並ぶ1時間2分03秒をマーク。今年の箱根駅伝1区で区間3位と好走し、チームの総合7位に貢献した。
名実ともに法政のエースに成長した松永だったが、新シーズン初頭は調子を崩していた。
「秋冬の連戦の影響か、慢性的な疲労が溜まっていました。ポイント練習の質もかなり落ち、状態がなかなか上がりませんでした」
いったん休養を入れ、2月12日に行われた富士宮駅伝3区(5.5km)に出場し、17分40秒の区間新をマーク。短い距離だったが、状態はそこまで悪くないことを確認した。すると、その後に調子は上向き、3月の日本学生ハーフでは駒大の篠原倖太朗(3年)、中央学大の吉田礼志(3年)に次ぎ3位に。WUG代表を決めた。
「2月初めに練習を少し休んだ分もあり、80%ほどの仕上がりで臨みました。自分の持ち味であるラストスパートをしっかり出した上での3位なので、良かったと思います」
良い流れは5月の関東インカレへと続く。初日の1部10000mに出場し、28分31秒80の自己新で5位。「好調を維持できていました。ただ、3位の背中も見えていたので、もうちょっと頑張らなきゃなという面もありましたね」。中2日で5000mとの2種目入賞を目指したが、こちらは20位と振るわず。力不足を悔やんだ。
6月に入ると、再び状態が下降する。全日本大学駅伝関東選考会は最終4組で35着(29分55秒23)。先頭集団に付いていたが、スタート直後の600m付近で転倒し、「そこで焦りも出た」。チームも本戦出場権を逃した。
ただ「ずっと落ち込んでいても仕方ない」と、夏合宿でしっかり練習し、秋冬でしっかり結果を残そうとチーム全員で気持ちを切り替えた。
WUGで高まったエースの意識
8月上旬、松永は夏合宿を行うチームから離れ、中国・成都の地にいた。選ばれし選手しか出場できない学生のオリンピック「ワールドユニバーシティゲームズ(WUG)」のハーフマラソン日本代表に選ばれていたからだ。 「慣れない部分が多かった」という初めての海外遠征。6月に落とした調子が上がり切らなかったこともあり、結果は13位だった。 「状態は7~8割ほど。湿度も気温も高く、走りにくい中でのスタートでした。はじめはスローで入り、10km付近でペースが上がった時に吉田君(礼志/中央学大)と篠原君(倖太朗/駒大)は先頭についていきましたが、自分はきつくて離れてしまいました。2人のどちらかには勝ちたかったのですが……」 暑さに自信はあったが、「現地の環境にもっと適応する必要がありました」と反省を述べる。 WUGでは吉田や篠原のほか、安原太陽(駒大)、石原翔太郎(東海大)、山本唯翔(城西大)、菖蒲敦司(早大)といった、トラックに出場した他大学のエースたちと過ごした。「みんな話のレベルが高いなと感じましたね。目指しているところが世界だったり、実業団でこうなりたいと話していたり」。松永自身も将来日の丸をつけたいとは思っていたが、今回のWUGでより意識を高めることができた。 また、ブダペスト世界選手権からも刺激を受けた。法大OBの青木涼真(Honda)が3000m障害で決勝進出(14位)。さらにマラソンで山下一貴(駒大OB、三菱重工)が入賞まであと一歩という快走劇に心を動かされた。 「自分もマラソンで世界と戦いたいという憧れを強く持ちました。世界で結果を残していくためにも、まずは秋冬の駅伝で法大のエースとして勝ちきりたいと思いました」関東インカレでは1部10000mで5位、その後は不調が続く
幼稚園の年中から小6までサッカー少年だった松永。前原中時代は1500mと3000mで全中に出場し、3年時の全国都道府県対抗駅伝では2区区間6位と好走している。 専大松戸高では2年時に県大会5000mで優勝したものの、その後は目立った成績を残せず。オーバートレーニングによって練習もままならない日々を過ごした。法大へ進学後も1、2年生の間は思うように走れなかったが、3年時の関東インカレ1部5000mで才能が開花する。ラスト2周で周囲も驚くロングスパートを仕掛け、残り250m付近まで首位を独走した。結果的に6位まで順位を落としたものの、その名を広めるには十分の激走だった。 11月の上尾ハーフでは、尊敬する先輩・鎌田航生(現・ヤクルト)の持つ法大記録に並ぶ1時間2分03秒をマーク。今年の箱根駅伝1区で区間3位と好走し、チームの総合7位に貢献した。 名実ともに法政のエースに成長した松永だったが、新シーズン初頭は調子を崩していた。 「秋冬の連戦の影響か、慢性的な疲労が溜まっていました。ポイント練習の質もかなり落ち、状態がなかなか上がりませんでした」 いったん休養を入れ、2月12日に行われた富士宮駅伝3区(5.5km)に出場し、17分40秒の区間新をマーク。短い距離だったが、状態はそこまで悪くないことを確認した。すると、その後に調子は上向き、3月の日本学生ハーフでは駒大の篠原倖太朗(3年)、中央学大の吉田礼志(3年)に次ぎ3位に。WUG代表を決めた。 「2月初めに練習を少し休んだ分もあり、80%ほどの仕上がりで臨みました。自分の持ち味であるラストスパートをしっかり出した上での3位なので、良かったと思います」 良い流れは5月の関東インカレへと続く。初日の1部10000mに出場し、28分31秒80の自己新で5位。「好調を維持できていました。ただ、3位の背中も見えていたので、もうちょっと頑張らなきゃなという面もありましたね」。中2日で5000mとの2種目入賞を目指したが、こちらは20位と振るわず。力不足を悔やんだ。 [caption id="attachment_115286" align="alignnone" width="800"] 23年関東インカレ10000mで5位入賞を果たした松永伶[/caption] 6月に入ると、再び状態が下降する。全日本大学駅伝関東選考会は最終4組で35着(29分55秒23)。先頭集団に付いていたが、スタート直後の600m付近で転倒し、「そこで焦りも出た」。チームも本戦出場権を逃した。 ただ「ずっと落ち込んでいても仕方ない」と、夏合宿でしっかり練習し、秋冬でしっかり結果を残そうとチーム全員で気持ちを切り替えた。目指すは10000mと箱根2区の大学記録更新
その駅伝シーズンがいよいよ始まろうとしている。法大は『出雲と箱根で5位以内』を目標に掲げる。「夏合宿の消化率は全学年いい。新戦力も出てきています」と松永は手応えを感じている。チーム内のコミュニケーションもここ数年で最もいい状態だという。 ただ、前回の箱根は主要区間の2、3、4、9区を卒業した4年生が担っていた。「抜けた穴は大きいですが、学生ハーフ6位の武田和馬(3年)も力を付けています。自分たちが引っ張っていきます」と意気込む。 箱根駅伝は2区を志願。「WUGで吉田君や篠原君に負けたので、リベンジしたいです。他にも、青学大の佐藤一世君(4年)や順大の石井一希君(4年)など、千葉県出身者が強い。その中でもトップを取りたい」。同郷のライバルたちへ勝負を挑む。 法大のエースとして、鎌田の持つ箱根2区の大学記録(1時間7分11秒)や、徳本一善(現・駿河台大監督)の持つ10000m大学記録(28分15秒06)の更新も狙っている。 昨年度の主将だった内田隼太(現・トヨタ自動車)が、10000mで大学記録に1秒62 差まで迫った。「内田さんは、箱根1区スタートの直前に鶴見中継所から電話してくれて、『今までしっかり結果を残してきたから大丈夫だ』と激励の言葉をもらい、安心して走ることができました。頼りになる先輩でした」。走りの面でも声掛けの面でも、最上級生として多くを見習っている。 坪田智夫駅伝監督は松永に「エースとしてもう一段の上乗せを」と期待する。松永は「出雲駅伝も昨年は2区9位と関東勢で最下位に近い順位でした。エースとして、『松永さんに頼っても大丈夫』と思ってもらえるような、結果や行動を求められているのかなと感じています」と、指揮官の思いを自覚している。 最終学年として駅伝シーズンへかける思いは強い。「陸上を始めたときから『箱根駅伝の100回大会に出たい』という気持ちが強かったです。また、高3から大2まで不調で走れなかった時期に、たくさんの人に支えられました。そういった人たちへの感謝を伝えるためにも、箱根では総合5位以内を勝ち取りたいです」 兎年と法大キャラクター「えこぴょん」にちなみ、『脱兎の勢い』が今年のチームスローガン。集大成のシーズンでエースが飛躍を誓う。 [caption id="attachment_115287" align="alignnone" width="800"] 23年箱根駅伝1区で3位と好走した松永伶[/caption] ◎まつなが・れい/2001年6月12日生まれ、千葉県船橋市出身。前原中→専大松戸高→法大。自己記録5000m13分50秒45、10000m28分31秒80、ハーフ1時間2分03秒。 文/荒井寛太
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