2023.09.23
◇第71回全日本実業団対抗選手権大会(9月22~24日/岐阜メモリアルセンター長良川)
全日本実業団対抗の男子10000m競歩が行われ、引退を表明した松永大介(富士通)が現役最後のウォークを披露。42分50秒60で8位入賞し、会場から大きな拍手が送られた。
世界への足掛かりを作った偉大なウォーカーの1人だった。神奈川・横浜高時代にインターハイ5000m競歩を制すると、東洋大に進学してからは世界ジュニア選手権10000m競歩で日本初の金メダルを獲得した。20km競歩ではリオ五輪でこちらも同種目初入賞の7位。その後はケガなどに苦しみながら、昨年は35km競歩でオレゴン世界選手権に出場と、日本代表に返り咲いた。
引退を決意したのは今年4月の全日本競歩輪島大会だったというが、「オレゴンで自分のやりたいレースができた」と序盤からハイペースで飛ばすレースで「やりきった思いが強くなった」と言う。
この日も序盤は先頭に躍り出る歩き。「みんなの期待があったので……。目立てて良かった」と苦笑い。レースを見守った東洋大時代の恩師・酒井俊幸、瑞穂夫妻から「松永らしいレースだった」とねぎらった。
印象に残ったレースを聞かれると「どれも思い出深い」と松永。「関東インカレの雰囲気も好きですし、オリンピックはオリンピックで国を挙げてやる。本当に違った楽しみ方がある」というのも松永らしい。高2のインターハイ失格や初の50km競歩は「思い出したくないですね」と冗談を言って笑わせた。
「本当に99%、やりきりった感じです」。残りの1%は「やっぱり(世界で)メダルを取りたかったけど、そこは叶う人、叶わない人がいるので」。
長距離から競歩へ転向し、「多趣味で何をやっても長く続かない自分が、今後の人生でないというくらい一つのものを続けてこられた。よくやったなと思います」と言うと、目頭を少し熱くした。
今後は「社会人として経験を積みたかった」と社業をメインとしながら、休日に母校・東洋大で女子競歩コーチとして指導にも当たっていくという。
松永が切り開いた世界と対等に戦う20km競歩は、世界の頂点を争うところまできた。「後輩たち、個人の頑張りが大きい」と謙遜するが、世界でメダルを取る池田向希、川野将虎(ともに旭化成)も松永にあこがれて鉄紺の門を叩いた。
「山西(利和、愛知製鋼)らは、これまでの競歩を彼らが受け継いで、自分のものにして、しっかり戦ってきたのが牽引している要因。でも、まだ他の選手がついてきていない。本当に強い日本の競歩を考えたとき、もっと層を厚くする必要があります。今後、僕も含めてもっと日本の競歩界を盛り上げていきたい」
その積極性、スピード、美しきフォーム、面倒見の良さで多くの競歩選手に影響を与えてきた稀代のウォーカー。第二の人生も、松永らしく1歩ずつ踏みしめて歩き続けていく。
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.04.16
上海ハーフに前回8位の太田蒼生、國學院大・上原琉翔、青学大の黒田然らエントリー
-
2025.04.15
-
2025.04.14
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.04.12
-
2025.04.12
-
2025.04.12
-
2025.04.12
-
2025.04.13
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.03.23
-
2025.04.01
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.16
上海ハーフに前回8位の太田蒼生、國學院大・上原琉翔、青学大の黒田然らエントリー
4月20日に行われる上海ハーフマラソン(4月20日)のエントリーが発表されており、プロランナーとなった青学大卒の太田蒼生(GMOインターネットグループ)が登録した。太田は青学大時代、4年連続で箱根駅伝に出走。3年時は3区 […]
2025.04.16
ダイヤモンドリーグ第1戦厦門に110mH泉谷駿介と村竹ラシッドが登録!サニブラウン、三浦龍司、豊田兼もエントリー
世界最高峰のダイヤモンドリーグ(DL)第1戦となる厦門大会(中国/4月26日)のエントリーリストが発表された。 男子110mハードルには、ブダペスト世界選手権5位の泉谷駿介(住友電工)と、パリ五輪5位の村竹ラシッド(JA […]
2025.04.16
人間スポーツ科学科を持つ公立高校が「O2Room®」を導入、スポーツコンディショニングの授業に活用
全国区で活躍する部活動もサポート 2016年に創立100周年を迎えた大阪の伝統校でもある府立桜宮高等学校。1980年にこれまでの普通科に加え大阪府内では初めてとなる体育科を新設し、さらに1999年にはスポーツ健康科学科を […]
2025.04.16
「Tokyo:Speed:Race」に太田智樹、近藤亮太、前田穂南、小林香菜らがエントリー! 海外トップ選手も参加 5月3日に神宮外苑で開催
アシックスは4月16日、さまざまなレベルのランナーが自己ベスト更新に挑戦できるレースイベント「Tokyo:Speed:Race」(5月3日)に出場するエリート選手のメンバーを発表した。 同大会はロードレースでは初となるペ […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)