◇第92回日本インカレ(9月14日~17日/埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場)
日本インカレ3日目。男子110mハードルで村竹ラシッド(順大)が日本タイ記録となる13秒04(-0.9)で2年ぶり3度目の優勝を果たした。
村竹には忘れられない光景がある。2021年6月27日、大阪。東京五輪代表を懸けた日本選手権の決勝で、村竹は不正スタートで失格となってしまった。
まだ大学2年生。前日の予選で13秒28というとてつもない走りを見せて東京五輪参加標準記録をここで初めて突破。決勝で3位に入ればいきなり地元開催のオリンピック代表という立場になった。
「当時は急にオリンピックが目の前に来た。心が追いつかなかった。自分なんかが出ていいのかな」
そうした心の迷いが焦りを生み、身体が動いた。村竹はスタート地点にとどまり、繰り広げられる東京五輪代表決定の瞬間から目を離さなかった。110m先で、同じ順大のユニフォームを着たあこがれの泉谷駿介(現・住友電工)が13秒06という日本人初の13秒0台という歴史的な日本新記録(当時)を打ち立てて東京五輪を決めた。
それからしばらくは部屋に引きこもり、1週間はグラウンドに足を運べなかった。「こんなにつらい思いをするくらいなら陸上なんてやらないほうがいいんじゃないか」。そんなことも考えたという。
それでも、時間が解決してくれた。グラウンドには「頼もしい先輩、後輩がいる」。山崎一彦先生がいる。そして、ともに切磋琢磨できる同期がいた。
昨年の日本選手権でも3位以内に入ればオレゴン世界選手権代表になれる状況。「正直、少し思い出します」。それでもしっかり泉谷に次いで2位となって、一緒に世界選手権代表となった。
今年は3月に13秒25をマーク。ブダペスト世界選手権の参加標準記録を早々に破ったが、4月の織田記念で左脚を肉離れ。今度は塞ぎ込むことなく、ケガをしない、地道な身体作りをした。強くなって戻る。その答えは、復帰戦となった7月のレースで13秒18というパリ五輪の参加標準記録突破として表われた。
ダイヤモンドリーグにも初参戦。そして、2023年9月16日。あのとき、ジッと見届けた偉大な先輩の背中を0.02秒越え、日本人で2人目の13秒0台に突入し、泉谷が今年6月に出した日本記録と肩を並べた。
「泉谷さんはコンスタントに13秒0台を出されていますし、経験値の差があります。あまり競技のことは話しませんが…ご飯をおごってもらおうと思います」
順大のユニフォームを着て走った最後の対校戦の110mハードル。「明日はめいっぱい応援します」。そういってチームの副主将は笑顔を浮かべた。
文/向永拓史
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.02.22
石井優吉がショートトラック800m1分46秒41の日本新!
2025.02.22
JMCランキング暫定1位の西山雄介がコンディション不良により欠場/大阪マラソン
2025.02.22
【男子ハンマー投】アツオビン・アンドリュウ(花園高3) 61m59=一般規格高校歴代2位
-
2025.02.22
-
2025.02.22
-
2025.02.21
-
2025.02.21
2025.02.17
日本郵政グループ女子陸上部 「駅伝日本一」へのチームづくりとコンディショニング
2025.02.16
男子は須磨学園が逆転勝ち! 女子は全国Vの長野東が強さ見せる/西脇多可高校新人駅伝
-
2025.02.22
-
2025.02.16
-
2025.02.16
-
2025.02.16
-
2025.02.16
2025.02.02
【大会結果】第77回香川丸亀国際ハーフマラソン(2025年2月2日)
2025.02.02
大迫傑は1時間1分28秒でフィニッシュ 3月2日の東京マラソンに出場予定/丸亀ハーフ
-
2025.02.14
-
2025.02.09
-
2025.02.02
-
2025.01.26
-
2025.01.31
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.02.22
石井優吉がショートトラック800m1分46秒41の日本新!
2月21日、米国ペンシルベニア州カレッジステーションでペンシルベニア州立大の学内学内競技会が同校の室内競技場(1周200m)で行われ、男子800mで石井優吉(ペンシルベニア州立大)が1分46秒41のショートラック日本記録 […]
2025.02.22
JMCランキング暫定1位の西山雄介がコンディション不良により欠場/大阪マラソン
◇大阪マラソン2025(2月24日/大阪・大阪府庁前スタート・大阪城公園フィニッシュ) 大阪マラソンの主催者は2月22日、招待選手の西山雄介(トヨタ自動車)がコンディション不良により欠場することを発表した。 西山は22年 […]
2025.02.22
【男子ハンマー投】アツオビン・アンドリュウ(花園高3) 61m59=一般規格高校歴代2位
2月22日、京都市の京産大総合グラウンド競技場で第11回京都陸協記録会が行われ、一般規格の男子ハンマー投でアツオビン・アンドリュウ(花園高3京都)が高校歴代2位となる61m59をマークした。 アツオビンは昨年のU20日本 […]
2025.02.22
円盤投・堤雄司が自己2番目の61m76でV 女子100mH青木益未は13秒04 福田翔太、郡菜々佳も優勝/WAコンチネンタルツアー
世界陸連(WA)コンチネンタルツアー・ブロンズラベルのインターナショナル・トラック・ミート2025が2月22日、ニュージーランドのクライストチャーチで行われ、男子円盤投で堤雄司(ALSOK群馬)が61m76のセカンドベス […]
2025.02.22
「インターハイでも勝ちたい」高校2年の栗村凌がU20男子を制す 女子は真柴愛里が貫禄/日本選手権クロカン
◇第40回U20日本選手権クロスカントリー(2月22日/福岡・海の中道海浜公園) U20日本選手権クロスカントリーが行われ、男子(8km)では栗村凌(学法石川高2福島)が23分20秒で優勝を果たした。 今年も全国から有力 […]
Latest Issue
最新号

2025年3月号 (2月14日発売)
別府大分毎日マラソン
落合 晃×久保 凛
太田智樹、葛西潤
追跡箱根駅伝&高校駅伝