HOME 国内、世界陸上、日本代表
田中希実が長野で練習公開 ブタペスト世界陸上で入賞目指し「予選から全力でいきたい」
田中希実が長野で練習公開 ブタペスト世界陸上で入賞目指し「予選から全力でいきたい」

長野県で練習を公開した田中希実

転機となったケニア合宿で成長を実感

そのなかで転機となったのがケニア合宿だという。マラソンの聖地と呼ばれる標高2400mのイテンで現地の選手たちと走り込んだ。

「昨年はケニア人がコーチをしているキャンプで、典型的な大集団で練習する感じでしたが、今年は欧州のコーチがいる少数精鋭のチームに行きました。すべてのメニューをこなすとハーフマラソンに向けたような練習になるので、私の目指したい練習になるように、父がうまく考えて間引き方を決めてくれたんです。路面が不整地というのは日本と違いますし、ペース設定も高い。世界陸上の決勝で最後までつけるのかというのを考えながら、緊張感のある中で(ケニア勢の走りの感覚を)カラダで覚えることができたかな。しんどくて離れてしまう場面もあったんですけど、精神的にも強くなったと思います」

昨年のオレゴン世界選手権は、800mも含めて3種目で出場の快挙を果たす。それでも、1500mはスパート合戦に遅れて準決勝で敗退し、5000mは予選を通過するも、決勝は12位。結果、記録ともに「ついてこなかった」と満足できずに涙をこぼした。

「昨年は日本選手権までが必死で、その後はバタバタといろいろ詰め込んで、よくわからないまま世界選手権を迎えた部分がありました。根拠のある練習を積めていなかった不安があって苦しかったんです。でも、今年は日本選手権が終わってゆとりがあったからこそ、ケニアで徹底的に追い込むことができて、フィンランドやアジア選手権でいろいろと試すこともできた。必要なことがすべてできてはいるので、最後の調整がうまくハマれば、昨年とは違います。緊張はあっても、不安なくいけるのかなと思います」

アジア選手権1500mでは最後の1周を60秒で上がるなど、課題にしてきたラストのキック力もパワーアップしている。

「ブタペスト世界選手権は1500mから始まります。従来と違って、予選と準決勝はプラス通過がないので、着順で突破しないといけません。予選から全力でいく必要があると思っています。オレゴン世界選手権は5000mで決勝に残っても『戦うぞ』という気持ちの余裕がなかった。今年は決勝に残りさえできれば、伸び伸びと戦うぞという気持ちを持っていけるのかなと感じています。ブタペスト世界選手権の経験を生かして、パリ五輪では上位入賞、メダルを狙っていきたい」

さまざまなチャレンジを繰り返しながら、確実に強くなっている田中。東京五輪を上回る快走をブダペストで披露しそうだ。

文・写真/酒井政人

女子1500m日本記録保持者で東京五輪8位の田中希実(New Balance)が8月1日、長野県茅野市内で「ニューバランス契約選手 田中希実 合同取材会」を開いて報道陣に練習を公開、取材に応じた。 突然の雷雨で予定していたメニューはできなかったが、標高800mの茅野市陸上競技場で300m×5本(レスト100m)のインターバル走を実施。父である田中健智コーチが見つめるなか、ビルドアップで力強い走りを披露した。 今後は長野県内の標高1800mほどの高地に移動。今月19日に開幕するブダペスト世界選手権には1500mと5000mでの出場が濃厚で、そこに向けて仕上げていく。 今季は田中にとって「チャレンジ」のシーズンと言えるだろう。この春、豊田自動織機TCを離れてプロに転向。契約するニューバランスのサポートを受けながら、「自分のこうしたいという思い」を求めて、貪欲に突き進んできた。 シーズン序盤は苦しいレースが続いたが、6月上旬の日本選手権は1500mを4分08秒29で4連覇。5000mは15分10秒63で連覇を果たして、2年連続で同種目の2冠を達成した。 その後は17日間のケニア合宿を敢行。帰国後は体調を崩すも、徐々に調子を上げていく。7月8日にフィンランドで5000mを日本歴代3位の14分53秒60で優勝。日本記録(14分52秒84)に届かなかったが、ブタペスト世界選手権の参加標準記録(14分57秒00)を突破した。 その5日後にはバンコクで開催されたアジア選手権1500mに参戦。4分06秒75のシーズンベストで突っ走り、2位に6秒50差をつけて圧勝した。夏の本番に向けて上昇カーブを描いている。

転機となったケニア合宿で成長を実感

そのなかで転機となったのがケニア合宿だという。マラソンの聖地と呼ばれる標高2400mのイテンで現地の選手たちと走り込んだ。 「昨年はケニア人がコーチをしているキャンプで、典型的な大集団で練習する感じでしたが、今年は欧州のコーチがいる少数精鋭のチームに行きました。すべてのメニューをこなすとハーフマラソンに向けたような練習になるので、私の目指したい練習になるように、父がうまく考えて間引き方を決めてくれたんです。路面が不整地というのは日本と違いますし、ペース設定も高い。世界陸上の決勝で最後までつけるのかというのを考えながら、緊張感のある中で(ケニア勢の走りの感覚を)カラダで覚えることができたかな。しんどくて離れてしまう場面もあったんですけど、精神的にも強くなったと思います」 昨年のオレゴン世界選手権は、800mも含めて3種目で出場の快挙を果たす。それでも、1500mはスパート合戦に遅れて準決勝で敗退し、5000mは予選を通過するも、決勝は12位。結果、記録ともに「ついてこなかった」と満足できずに涙をこぼした。 「昨年は日本選手権までが必死で、その後はバタバタといろいろ詰め込んで、よくわからないまま世界選手権を迎えた部分がありました。根拠のある練習を積めていなかった不安があって苦しかったんです。でも、今年は日本選手権が終わってゆとりがあったからこそ、ケニアで徹底的に追い込むことができて、フィンランドやアジア選手権でいろいろと試すこともできた。必要なことがすべてできてはいるので、最後の調整がうまくハマれば、昨年とは違います。緊張はあっても、不安なくいけるのかなと思います」 アジア選手権1500mでは最後の1周を60秒で上がるなど、課題にしてきたラストのキック力もパワーアップしている。 「ブタペスト世界選手権は1500mから始まります。従来と違って、予選と準決勝はプラス通過がないので、着順で突破しないといけません。予選から全力でいく必要があると思っています。オレゴン世界選手権は5000mで決勝に残っても『戦うぞ』という気持ちの余裕がなかった。今年は決勝に残りさえできれば、伸び伸びと戦うぞという気持ちを持っていけるのかなと感じています。ブタペスト世界選手権の経験を生かして、パリ五輪では上位入賞、メダルを狙っていきたい」 さまざまなチャレンジを繰り返しながら、確実に強くなっている田中。東京五輪を上回る快走をブダペストで披露しそうだ。 文・写真/酒井政人

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.11.22

第101回箱根駅伝シンポジウム開催!世界を知る武井氏、尾方氏、諏訪氏、中本氏が語る「箱根路と世界」

第101回箱根駅伝を前に、大会への機運を高めるべく「第101回箱根駅伝シンポジウム」が11月22日、発着点となる東京・大手町のよみうりホールで行われた。 パネリストは武井隆次氏(元エスビー食品監督)、尾方剛氏(広島経大監 […]

NEWS 世界陸上アルティメット選手権の実施種目発表!! 100m、やり投のほか、男女混合4×100mRを初実施! 賞金総額は15億円

2024.11.22

世界陸上アルティメット選手権の実施種目発表!! 100m、やり投のほか、男女混合4×100mRを初実施! 賞金総額は15億円

世界陸上アルティメット選手権実施種目 100m 200m 400m 800m 1500m 5000m 110mハードル(男子) 100mハードル(女子) 400mハードル 走高跳 棒高跳 走幅跳 三段跳(女子のみ) ハン […]

NEWS 12月8日のホノルルマラソンに大迫傑、堀尾謙介が招待参加 2時間4分台のB.キプトゥムもエントリー

2024.11.22

12月8日のホノルルマラソンに大迫傑、堀尾謙介が招待参加 2時間4分台のB.キプトゥムもエントリー

12月8日に米国ハワイで行われる、ホノルルマラソン2024の招待選手が発表され、日本からパリ五輪マラソン代表の大迫傑(Nike)や堀尾謙介(M&Aベストパートナーズ)が招待選手として登録された。 8月のパリ五輪 […]

NEWS エディオンディスタンスチャレンジ女子10000mに廣中璃梨佳、安藤友香、不破聖衣来らがエントリー 5000mには樺沢和佳奈、小海遥、山本有真らが出場予定

2024.11.22

エディオンディスタンスチャレンジ女子10000mに廣中璃梨佳、安藤友香、不破聖衣来らがエントリー 5000mには樺沢和佳奈、小海遥、山本有真らが出場予定

エディオンディスタンスチャレンジの主なエントリー選手 女子10000m 廣中璃梨佳(日本郵政グループ) 高島由香(資生堂) A.ムカリ(京セラ) K.カロライン(日本郵政グループ) 安藤友香(しまむら) 菅田雅香(日本郵 […]

NEWS ヤマダホールディングス 2月就任の横山景監督が退任 プリンセス駅伝は複数選手のコンディション不良で出場断念 

2024.11.22

ヤマダホールディングス 2月就任の横山景監督が退任 プリンセス駅伝は複数選手のコンディション不良で出場断念 

ヤマダホールディングスは、女子中長距離ブロックを指導していた横山景監督が11月1日付で退任したことを、ホームページで明らかにした。 50歳の横山監督は東海大時代に箱根駅伝に3回出場。卒業後は雪印や富士通で競技を続け、19 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年12月号 (11月14日発売)

2024年12月号 (11月14日発売)

全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会

page top