2023.08.09
この春、ニューバランスが発売した『FuelCell Propel v4』。ニューバランスジャパンが開発を手掛け、グローバル展開となった〝日本企画〟のトレーニングシューズが、幅広い層のランナーに注目されている。TPUプレートが生み出すレーシングシューズのような走り心地、トレーニングに最適な安定性、そしてコストパフォーマンス。その魅力を順天堂大学の長門俊介駅伝監督、そして3選手に語ってもらった。
TPUプレートが可能にする反発性と安定性の両立
『FuelCell Propel v4(フューエルセル プロペル v4)』(以下、Propel v4)が持つ最大の特徴は、ニューバランスが誇る高反発材「FuelCell」フォームの間に搭載されたTPU(熱可塑性ポリウレタン)プレートだ。シューズメーカー各社がレーシングモデルを中心に使用するカーボン製のプレートに比べて硬さがない分、推進力は高くないものの、プレート特有の反発性を残しつつ、接地時の安定性を備える。
順天堂大学の長門俊介駅伝監督も、「足を入れた瞬間、『これは良いな』と率直に感じました。カーボンプレートだと反発が強すぎますが、これは適度な反発がありながら、安定性もしっかり備えている」と太鼓判を押す。
ここ数年におけるシューズテクノロジーの進化は目覚ましいものがある。特にカーボンプレート入りの厚底レーシングシューズに関しては、その反発性と推進力でタイムが上がることが立証され、シューズ各社による開発競争も終焉が見られない。その一方でそれらのシューズには、接地時のブレや、ストライドの広がり等による故障のリスクも囁かれる。
だが、長門監督は、「反発の高いシューズを履くことによるリスクも大きいし、(薄底から厚底への)移行期は苦労もありましたけど、今は主流である反発の高いシューズありきで、履くことによるプラスの部分を考えています。大事なのは使いこなすための準備」だという。

順天堂大学の長門俊介駅伝監督は「適度な反発がありながら、安定性もしっかり備えている」ところなどを『FuelCell Propel v4』の特長として挙げた

アウトソールの凹んだ部分から見えるミッドソールのTPUプレートは、カーボンプレートのような剛性はないため適度に屈曲しつつもプレート特有の反発性を残している
そこで、TPUプレートによって適度な反発と高い安定性も実現しているPropel v4は、現代のカーボン厚底シューズと、旧来の薄底シューズのような接地感重視のシューズを“つなぐ”役割を担う。「最低限の反発はあってレーシングシューズの感覚は養えますが、そこに頼り過ぎないようにバランスが取れている。接地時の安定性が高いので、トレーニングには使いやすいと思います。耐久性もあって、コストパフォーマンスも良い(税込12,100円)。夏場の走り込みに良いですね」と長門監督は評価する。
トレーニングに欠かせない1足 キーポイントは「ほどよい反発」
順天堂大学では、練習でPropel v4を着用する選手も増えているが、選手たちが揃って口にする特徴が、「ほどよい反発性」だ。正月の学生駅伝で2大会連続エントリーメンバー入りをしている服部壮馬(3年)は、「朝練の時によく履きますが、適度に反発の恩恵をもらいながら走れるので、淡々と走ることができ、疲れにくい」と話す。
さらに服部同様、朝練習のジョグで使用することが多いという林龍正(1年)、高校時代からニューバランスのシューズを着用しているという児島雄一郎(1年)は、反発性に加えて、「接地時の安定性」の高さを実感している。「反発は強すぎず、疲れがたまっている時に助けてくれて、接地も意識づけできると思います」(林)
「クセがなくて、ブレが少ないのは好きなポイントです。安定感も高いので動きづくりをする時にも正しいフォームで行いやすいシューズだと思います」(児島)
試合やポイント練習との履き分けをするなかで、感覚を大きく損なわずにトレーニングができるこのモデルはこれからも重宝されそうだ。

『FuelCell Propel v4』を愛用している順天堂大学の選手たち。左から児島雄一郎(1年)、服部壮馬(3年)、林龍正(1年)
自分の力で進む〝本来の走り〟とシューズによるサポートを担保
大学生では主にジョグからテンポ走での活用がメインとなりそうだが、高すぎない反発と接地時の安定性は、中高生から市民ランナーまで幅広い層に向いているシューズと言えそうだ。
長門監督も、「最近は中高生も試合ではカーボンの厚底を履くケースが多い。しかし、カーボン系はソールをいったん潰して反発させるためソールが柔らかくて不安定なところもあるので、身体が未完成な選手は安定感もあるこういったシューズをトレーニングに使うことは最適じゃないでしょうか。市民ランナーの方々もどういったシーンで履くかはそれぞれの判断ですが、ほどよい反発は多くの世代にマッチすると思います。例えば、カーボンの厚底シューズを履いてみて、不安定さを感じた方は履いてみてほしいですね」と推奨する。
革新的なシューズが次々と生み出される時代の流れを汲みながらも、自分の力で進む“本来の走り”とシューズによるサポートを担保してくれるPropel v4が、また一つのムーブメントとして、多くのランナーに支持されることになりそうだ。
文/田中 葵
※この記事は『月刊陸上競技』2023年9月号に掲載しています
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トレーニングに欠かせない1足 キーポイントは「ほどよい反発」
順天堂大学では、練習でPropel v4を着用する選手も増えているが、選手たちが揃って口にする特徴が、「ほどよい反発性」だ。正月の学生駅伝で2大会連続エントリーメンバー入りをしている服部壮馬(3年)は、「朝練の時によく履きますが、適度に反発の恩恵をもらいながら走れるので、淡々と走ることができ、疲れにくい」と話す。 さらに服部同様、朝練習のジョグで使用することが多いという林龍正(1年)、高校時代からニューバランスのシューズを着用しているという児島雄一郎(1年)は、反発性に加えて、「接地時の安定性」の高さを実感している。「反発は強すぎず、疲れがたまっている時に助けてくれて、接地も意識づけできると思います」(林) 「クセがなくて、ブレが少ないのは好きなポイントです。安定感も高いので動きづくりをする時にも正しいフォームで行いやすいシューズだと思います」(児島) 試合やポイント練習との履き分けをするなかで、感覚を大きく損なわずにトレーニングができるこのモデルはこれからも重宝されそうだ。 [caption id="attachment_109369" align="alignnone" width="800"]
自分の力で進む〝本来の走り〟とシューズによるサポートを担保
大学生では主にジョグからテンポ走での活用がメインとなりそうだが、高すぎない反発と接地時の安定性は、中高生から市民ランナーまで幅広い層に向いているシューズと言えそうだ。 長門監督も、「最近は中高生も試合ではカーボンの厚底を履くケースが多い。しかし、カーボン系はソールをいったん潰して反発させるためソールが柔らかくて不安定なところもあるので、身体が未完成な選手は安定感もあるこういったシューズをトレーニングに使うことは最適じゃないでしょうか。市民ランナーの方々もどういったシーンで履くかはそれぞれの判断ですが、ほどよい反発は多くの世代にマッチすると思います。例えば、カーボンの厚底シューズを履いてみて、不安定さを感じた方は履いてみてほしいですね」と推奨する。 革新的なシューズが次々と生み出される時代の流れを汲みながらも、自分の力で進む“本来の走り”とシューズによるサポートを担保してくれるPropel v4が、また一つのムーブメントとして、多くのランナーに支持されることになりそうだ。
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