2020.08.26
初優勝のフィニッシュテープを切る駒大の髙橋正仁
平成以降の箱根駅伝を振り返る「PlayBack箱根駅伝」。今回は駒大が初の総合優勝を果たした第76回大会(2000年)を紹介する。大会の歴史を知ることで、正月の箱根路がより楽しみになるかも!?
往路は法大、帝京大が旋風巻き起こす
前回まで2年連続で2位にとどまった悔しさを晴らした駒大陣営
20世紀最後の箱根駅伝は連覇を目指す順大、2年連続準Vの駒大、出雲・全日本の両駅伝で2位に入った山梨学大、上位10人の持ちタイムで上位につけていた神奈川大と中大の“5強”による優勝争いが予想された第76回大会。
前回出場校の中央学大が予選会で姿を消した一方で、関東学院大が2年ぶりに本戦へ返り咲いた。また、今大会から5区と6区のコースに変更があり、区間記録が刷新された。
1区は法大の徳本一善(2年)がスタート直後に飛び出すと、そのままリードを広げて区間賞を獲得。2位以下に1分以上の大差をつけると、2区の坪田智夫(4年)も区間トップの快走で、“オレンジエクスプレス”の愛称を持つ法大が抜群のスタートダッシュに成功した。
法大は1区の徳本一善(左)、2区の坪田智夫と連続区間賞でロケットスタートに成功した
2区終了時点の順位は、法大から1分40秒差の2位で順大、ほぼ同着で駒大が3位。優勝候補に挙げられた神奈川大、中大、山梨学大はそれぞれ6位、9位、10位とやや出遅れた。
3区でも法大が首位をキープ。後続では帝京大の北島吉章(2年)が区間賞の走りで2位に浮上し、2区終了時で11位だった東海大も伊藤孝志(3年)の6人抜きで5位に躍り出た。
先頭争いに動きがあったのが4区。帝京大が法大を抜いて先頭に躍り出ると、その帝京大を順大の野口英盛(2年)が追い抜いて首位に浮上。2位に帝京大、3位駒大、4位法大、5位早大の順番で5区走者にタスキをつないだ。
山上りの5区では駒大の1年生・松下龍治が帝京大、順大を交わして先頭へ。そのまま独走かと思われたが、後方から前回区間賞の東海大・柴田真一(2年)が猛烈な勢いで迫っていく。14km過ぎで柴田が松下を捕らえたが、17km過ぎで松下が再逆転に成功。そのまま芦ノ湖のフィニッシュに飛び込み、見事往路2連覇を飾った。
5区の区間賞は柴田と、中大のルーキー・藤原正和が同時受賞。東海大は6位から2位へ、中大は8位から4位までジャンプアップ。一方で山梨学大は12位、神奈川大は13位まで沈み、優勝争いから脱落した。
往路を制した駒大は、復路でさらなる強さを見せつけた。6区の大西雄三(4年)が区間2位の好走で後続との差を広げると、7区の揖斐祐治(2年)が区間賞。8区の平川良樹(2年)も区間7位と無難につなぎ、9区の西田隆維(4年)、10区の高橋正仁(2年)は区間新。6区以降は一度も先頭を譲ることなく、往路・復路完全制覇で悲願の初優勝を飾った。
8区・奥田真一郎(2年)の区間賞などで意地を見せた前回王者の順大が2位。5区と6区で大きく順位を上げた中大が優勝した1996年以来となるトップ3に食い込んだ。2年連続最下位(15位)だった帝京大は往路で3位に入った勢いを持続させて過去最高順位の4位。予選会トップ通過の実力を発揮し、出場3回目にして初めてシード権を獲得した。
エースの山本佑樹(4年)をケガで欠いた日大は序盤で大きく出遅れたものの、総合5位で名門の底力を見せた。熾烈を極めたシード権争いは山梨学大が10区で2人を抜いてギリギリ9位を確保。往路序盤を盛り上げた法大がわずか29秒差で10位に泣き、9区終了時で8位だった大東大も10区で4つ順位を落とした。
<人物Close-up>
坪田智夫(法大4年)
法大の絶対的エースとして箱根の“花の2区”を2度出走。3年時は区間3位、4年時は区間賞を獲得し、4年時にマークした1時間8分16秒はいまだに法大記録として20年間破られていない。大学卒業後はコニカ(のちのコニカミノルタ)に進み、2002年には日本選手権10000mで優勝。翌年にはパリ世界選手権にも出場し、全日本実業団対抗駅伝では区間賞を5回、5度の優勝に貢献した。自己記録は5000m13分38秒64、10000m27分51秒85。現役引退後は2012年に法大のコーチとなり、翌年4月からは駅伝監督として母校を率いている。
<総合成績>
1位 駒澤大学 11.03.17(往路1位、復路1位)
2位 順天堂大学 11.07.35(往路5位、復路2位)
3位 中央大学 11.09.58(往路4位、復路3位)
4位 帝京大学 11.16.48(往路3位、復路7位)
5位 日本大学 11.17.42(往路7位、復路6位)
6位 早稲田大学 11.18.12(往路8位、復路5位)
7位 東海大学 11.20.00(往路2位、復路10位)
8位 神奈川大学 11.20.18(往路13位、復路4位)
9位 山梨学院大学 11.22.58(往路12位、復路8位)
========シード権ライン=========
10位 法政大学 11.23.27(往路6位、復路12位)
11位 日本体育大学 11.25.37(往路10位、復路10位)
12位 大東文化大学 11.26.54(往路9位、復路13位)
13位 関東学院大学 11.26.58(往路14位、復路9位)
14位 拓殖大学 11.28.34(往路11位、復路14位)
15位 東洋大学 11.40.45(往路15位、復路15位)
<区間賞>
1区(21.3km)徳本一善(法 大2) 1.02.39
2区(23.0km)坪田智夫(法 大4) 1.08.16
3区(21.3km)北島吉章(帝京大2) 1.03.16
4区(20.9km)野口英盛(順 大2) 1.02.14
5区(20.7km)柴田真一(東海大2) 1.11.36※新コース
藤原正和(中 大1) 1.11.36※新コース
6区(20.7km)永井順明(中 大3) 58.35※新コース
7区(21.2km)揖斐祐治(駒 大2) 1.03.12
8区(21.3km)奥田真一郎(順 大2)1.04.37
9区(23.0km)西田隆維(駒 大4) 1.09.00=区間新
10区(23.0km)高橋正仁(駒 大2) 1.10.26=区間新
PlayBack箱根駅伝1999/“復路の順大”が10年ぶり総合優勝
PlayBack箱根駅伝1998/神奈川大が往路・復路完全制覇で2連勝
PlayBack箱根駅伝1997/神奈川大が初の総合優勝
PlayBack箱根駅伝1996/古豪・中大が最多14度目のV
PlayBack箱根駅伝1995/山梨学大が早大とのマッチレース制して2連覇
往路は法大、帝京大が旋風巻き起こす
前回まで2年連続で2位にとどまった悔しさを晴らした駒大陣営 20世紀最後の箱根駅伝は連覇を目指す順大、2年連続準Vの駒大、出雲・全日本の両駅伝で2位に入った山梨学大、上位10人の持ちタイムで上位につけていた神奈川大と中大の“5強”による優勝争いが予想された第76回大会。 前回出場校の中央学大が予選会で姿を消した一方で、関東学院大が2年ぶりに本戦へ返り咲いた。また、今大会から5区と6区のコースに変更があり、区間記録が刷新された。 1区は法大の徳本一善(2年)がスタート直後に飛び出すと、そのままリードを広げて区間賞を獲得。2位以下に1分以上の大差をつけると、2区の坪田智夫(4年)も区間トップの快走で、“オレンジエクスプレス”の愛称を持つ法大が抜群のスタートダッシュに成功した。 法大は1区の徳本一善(左)、2区の坪田智夫と連続区間賞でロケットスタートに成功した 2区終了時点の順位は、法大から1分40秒差の2位で順大、ほぼ同着で駒大が3位。優勝候補に挙げられた神奈川大、中大、山梨学大はそれぞれ6位、9位、10位とやや出遅れた。 3区でも法大が首位をキープ。後続では帝京大の北島吉章(2年)が区間賞の走りで2位に浮上し、2区終了時で11位だった東海大も伊藤孝志(3年)の6人抜きで5位に躍り出た。 先頭争いに動きがあったのが4区。帝京大が法大を抜いて先頭に躍り出ると、その帝京大を順大の野口英盛(2年)が追い抜いて首位に浮上。2位に帝京大、3位駒大、4位法大、5位早大の順番で5区走者にタスキをつないだ。 山上りの5区では駒大の1年生・松下龍治が帝京大、順大を交わして先頭へ。そのまま独走かと思われたが、後方から前回区間賞の東海大・柴田真一(2年)が猛烈な勢いで迫っていく。14km過ぎで柴田が松下を捕らえたが、17km過ぎで松下が再逆転に成功。そのまま芦ノ湖のフィニッシュに飛び込み、見事往路2連覇を飾った。 5区の区間賞は柴田と、中大のルーキー・藤原正和が同時受賞。東海大は6位から2位へ、中大は8位から4位までジャンプアップ。一方で山梨学大は12位、神奈川大は13位まで沈み、優勝争いから脱落した。 往路を制した駒大は、復路でさらなる強さを見せつけた。6区の大西雄三(4年)が区間2位の好走で後続との差を広げると、7区の揖斐祐治(2年)が区間賞。8区の平川良樹(2年)も区間7位と無難につなぎ、9区の西田隆維(4年)、10区の高橋正仁(2年)は区間新。6区以降は一度も先頭を譲ることなく、往路・復路完全制覇で悲願の初優勝を飾った。 8区・奥田真一郎(2年)の区間賞などで意地を見せた前回王者の順大が2位。5区と6区で大きく順位を上げた中大が優勝した1996年以来となるトップ3に食い込んだ。2年連続最下位(15位)だった帝京大は往路で3位に入った勢いを持続させて過去最高順位の4位。予選会トップ通過の実力を発揮し、出場3回目にして初めてシード権を獲得した。 エースの山本佑樹(4年)をケガで欠いた日大は序盤で大きく出遅れたものの、総合5位で名門の底力を見せた。熾烈を極めたシード権争いは山梨学大が10区で2人を抜いてギリギリ9位を確保。往路序盤を盛り上げた法大がわずか29秒差で10位に泣き、9区終了時で8位だった大東大も10区で4つ順位を落とした。 <人物Close-up> 坪田智夫(法大4年) 法大の絶対的エースとして箱根の“花の2区”を2度出走。3年時は区間3位、4年時は区間賞を獲得し、4年時にマークした1時間8分16秒はいまだに法大記録として20年間破られていない。大学卒業後はコニカ(のちのコニカミノルタ)に進み、2002年には日本選手権10000mで優勝。翌年にはパリ世界選手権にも出場し、全日本実業団対抗駅伝では区間賞を5回、5度の優勝に貢献した。自己記録は5000m13分38秒64、10000m27分51秒85。現役引退後は2012年に法大のコーチとなり、翌年4月からは駅伝監督として母校を率いている。 <総合成績> 1位 駒澤大学 11.03.17(往路1位、復路1位) 2位 順天堂大学 11.07.35(往路5位、復路2位) 3位 中央大学 11.09.58(往路4位、復路3位) 4位 帝京大学 11.16.48(往路3位、復路7位) 5位 日本大学 11.17.42(往路7位、復路6位) 6位 早稲田大学 11.18.12(往路8位、復路5位) 7位 東海大学 11.20.00(往路2位、復路10位) 8位 神奈川大学 11.20.18(往路13位、復路4位) 9位 山梨学院大学 11.22.58(往路12位、復路8位) ========シード権ライン========= 10位 法政大学 11.23.27(往路6位、復路12位) 11位 日本体育大学 11.25.37(往路10位、復路10位) 12位 大東文化大学 11.26.54(往路9位、復路13位) 13位 関東学院大学 11.26.58(往路14位、復路9位) 14位 拓殖大学 11.28.34(往路11位、復路14位) 15位 東洋大学 11.40.45(往路15位、復路15位) <区間賞> 1区(21.3km)徳本一善(法 大2) 1.02.39 2区(23.0km)坪田智夫(法 大4) 1.08.16 3区(21.3km)北島吉章(帝京大2) 1.03.16 4区(20.9km)野口英盛(順 大2) 1.02.14 5区(20.7km)柴田真一(東海大2) 1.11.36※新コース 藤原正和(中 大1) 1.11.36※新コース 6区(20.7km)永井順明(中 大3) 58.35※新コース 7区(21.2km)揖斐祐治(駒 大2) 1.03.12 8区(21.3km)奥田真一郎(順 大2)1.04.37 9区(23.0km)西田隆維(駒 大4) 1.09.00=区間新 10区(23.0km)高橋正仁(駒 大2) 1.10.26=区間新 PlayBack箱根駅伝1999/“復路の順大”が10年ぶり総合優勝 PlayBack箱根駅伝1998/神奈川大が往路・復路完全制覇で2連勝 PlayBack箱根駅伝1997/神奈川大が初の総合優勝 PlayBack箱根駅伝1996/古豪・中大が最多14度目のV PlayBack箱根駅伝1995/山梨学大が早大とのマッチレース制して2連覇
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
2024.11.22
田中希実が来季『グランドスラム・トラック』参戦決定!マイケル・ジョンソン氏が新設
2024.11.21
早大競走部駅伝部門が麹を活用した食品・飲料を手がける「MURO」とスポンサー契約締結
2024.11.21
立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
2024.11.17
不破聖衣来が香港で10kmレースに出場 9位でフィニッシュ
2024.11.20
【箱根駅伝2025名鑑】早稲田大学
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
2024.11.01
吉田圭太が住友電工を退部 「充実した陸上人生を歩んでいきたい」競技は継続
2024.11.07
アシックスから軽量で反発性に優れたランニングシューズ「NOVABLAST 5」が登場!
-
2024.10.27
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2024.11.22
田中希実が来季『グランドスラム・トラック』参戦決定!マイケル・ジョンソン氏が新設
来春、開幕する陸上リーグ「グランドスラム・トラック」の“レーサー”として、女子中長距離の田中希実(New Balance)が契約したと発表された。 同大会は1990年代から2000年代に男子短距離で活躍したマイケル・ジョ […]
2024.11.21
早大競走部駅伝部門が麹を活用した食品・飲料を手がける「MURO」とスポンサー契約締結
11月21日、株式会社コラゾンは同社が展開する麹専門ブランド「MURO」を通じて、早大競走部駅伝部とスポンサー契約を結んだことを発表した。 コラゾン社は「MURO」の商品である「KOJI DRINK A」および「KOJI […]
2024.11.21
立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン
第55回防府読売マラソン大会事務局は、女子招待選手の立迫志穂(天満屋)が欠場すると発表した。調整不良のためとしている。 立迫は今年2月の全日本実業団ハーフマラソンで1時間11分16秒の11位。7月には5000m(15分3 […]
2024.11.20
M&Aベストパートナーズに中大・山平怜生、城西大・栗原直央、國學院大・板垣俊佑が内定!神野「チーム一丸」
神野大地が選手兼監督を務めるM&Aベストパートナーズが来春入社選手として、中大・山平怜生、國學院大・板垣俊佑、城西大・栗原直央の3人が内定した。神野が自身のSNSで内定式の様子を伝えている。 山平は宮城・仙台育英 […]
2024.11.20
第101回(2025年)箱根駅伝 出場チーム選手名鑑
・候補選手は各チームが選出 ・情報は11月20日時点、チーム提供および編集部把握の公認記録を掲載 ・選手名の一部漢字で対応外のものは新字で掲載しています ・過去箱根駅伝成績で関東学生連合での出場選手は相当順位を掲載 ・一 […]
Latest Issue 最新号
2024年12月号 (11月14日発売)
全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会