2023.05.31
「駅伝」とともに歩んだ陸上人生
佐藤一世というランナーのルーツを語る上で欠かせないのは、やはり「駅伝」の存在だ。
千葉県松戸市生まれ。小学校の頃はサッカー少年だったが、クラブ活動では季節によって陸上に取り組んでいた。小金中時代もサッカー部に所属しながら、陸上部でも活動。中学3年時には全中3000mにも出場(予選落ち)している。
そして、自身が思い出深いレースとして語るのが、中学時代に出場した千葉県の東葛(とうかつ)駅伝。1チーム10区間(31.9km)で競うこの大会で優勝を経験し、「チームで走る楽しさを感じた」ことで、駅伝の魅力に惹かれていった。
高校は県内の強豪・八千代松陰に進学。2年時には全国高校駅伝1区(10km)で2位と好走すると、全国都道府県対抗男子駅伝では5区(8.5km)区間賞を獲得。さらに3年時の全国高校駅伝では再び1区を任されると、「自然と先頭に出てしまいましたが、調子も良かったのでそのまま行こうと引っ張った」と終始レースを支配して、日本人歴代最高記録となる28分48秒で区間賞。駅伝で無類の強さを誇った。
「駅伝で勝ちたい」と進学を決めた青学大でも、選手層の厚いチームで1年目から駅伝メンバーに。全日本大学駅伝では5区(12.4km)で区間新記録(35分47秒)を樹立すると、翌年も同区で2年連続の区間賞を獲得。それ以外にも2年目には出雲駅伝でエース区間の3区(8.5km)で区間3位、箱根駅伝でも1年時に4区(20.9km)4位、2年時に8区(21.3km)2位と安定した走りを披露した。
2、3年時は駅伝シーズンに故障があり、「100%の状態でレースを迎えられていないことが多い」と反省するが、出走すれば安定した走りを見せる姿に、原晋監督からも、「駅伝男」と信頼される存在となった。
最後のトラックシーズンで好調をアピール
大学ラストイヤーを迎えた佐藤一世は、4年目にして最も充実したトラックシーズンを過ごしている。 これまでの3年間は、この時期に故障で苦しんだ。それでも、「個人としては駅伝を一番重視していたので、トラックで出遅れても、駅伝シーズンに向けて調子を上げていければ良いと思っていた」と振り返る。 2022年の箱根駅伝は制したものの、チームとして2度目の学生三大駅伝3冠を目指していた昨シーズンは、逆に駒大に3冠を許す結果に。佐藤自身も出雲駅伝を故障で欠場。全日本大学駅伝では3区区間2位と好走したが、箱根駅伝では7区区間7位と不本意な結果となった。 さらには3年間ともに戦い、「競技でもプライベートでもお世話になった」という1学年上の世代が報告会で悔し涙を流す姿を目の当たりにし、「先輩たちに優勝して卒業してもらえなかったことは本当に申し訳なかったです」と振り返る。 その悔しさこそが、最終学年を迎える佐藤にとって大きな原動力になった。 「三大駅伝で勝つためには、今までのように駅伝にだけ合わせれば良いとは言っていられません。トラックから自分がチームを引っ張っていかなければいけないと思っています」 箱根駅伝後には一時体調を崩したが、2月頃から練習を再開し、3月の日本学生ハーフマラソンではチームトップの10位(1時間3分05秒)。同25日の「ADIDAS TOKYO CITY RUN」でも豪雨の悪コンディションのなか、13分台で走破した 。 さらに4月22日の日体大長距離競技会10000mで2年ぶり自己新となる28分23秒62をマークすると、5月11日の関東インカレ2部10000mでは最後まで先頭争いに加わり、日本人3番手の6位入賞を果たした。 [caption id="attachment_103490" align="alignnone" width="800"] 2023年5月の関東インカレでは2部10000mで6位入賞した佐藤一世(22番)[/caption] ここまでのトラックシーズンは「80~90点」と佐藤は振り返る。100点満点に届かなかった課題も明確で、「日体大では他大学の2選手が27分台を出していますし、関東インカレも日本人トップを逃してしまったのでまだまだです」と言う。 それでもここまで故障なく練習を積めていることもあり、「このまま継続した練習ができれば、秋には5000m13分30秒台、10000mでは27分台を狙えると思います」と手応えを感じている。それは「青学大のエースとして出さないといけないレベルのタイム」という強い意志を感じさせる。「駅伝」とともに歩んだ陸上人生
佐藤一世というランナーのルーツを語る上で欠かせないのは、やはり「駅伝」の存在だ。 千葉県松戸市生まれ。小学校の頃はサッカー少年だったが、クラブ活動では季節によって陸上に取り組んでいた。小金中時代もサッカー部に所属しながら、陸上部でも活動。中学3年時には全中3000mにも出場(予選落ち)している。 そして、自身が思い出深いレースとして語るのが、中学時代に出場した千葉県の東葛(とうかつ)駅伝。1チーム10区間(31.9km)で競うこの大会で優勝を経験し、「チームで走る楽しさを感じた」ことで、駅伝の魅力に惹かれていった。 高校は県内の強豪・八千代松陰に進学。2年時には全国高校駅伝1区(10km)で2位と好走すると、全国都道府県対抗男子駅伝では5区(8.5km)区間賞を獲得。さらに3年時の全国高校駅伝では再び1区を任されると、「自然と先頭に出てしまいましたが、調子も良かったのでそのまま行こうと引っ張った」と終始レースを支配して、日本人歴代最高記録となる28分48秒で区間賞。駅伝で無類の強さを誇った。 [caption id="attachment_103489" align="alignnone" width="800"] 2019年全国高校駅伝1区(10km)では日本人歴代最速の28分48秒で走破して区間賞[/caption] 「駅伝で勝ちたい」と進学を決めた青学大でも、選手層の厚いチームで1年目から駅伝メンバーに。全日本大学駅伝では5区(12.4km)で区間新記録(35分47秒)を樹立すると、翌年も同区で2年連続の区間賞を獲得。それ以外にも2年目には出雲駅伝でエース区間の3区(8.5km)で区間3位、箱根駅伝でも1年時に4区(20.9km)4位、2年時に8区(21.3km)2位と安定した走りを披露した。 2、3年時は駅伝シーズンに故障があり、「100%の状態でレースを迎えられていないことが多い」と反省するが、出走すれば安定した走りを見せる姿に、原晋監督からも、「駅伝男」と信頼される存在となった。学生ラストイヤーは駅伝に全集中
それでも佐藤にとって駅伝の魅力は、「個人の走りよりもチームで勝つこと」。一番印象に残るレースについて尋ねると、「高校1年時に都大路(全国高校駅伝)の出場権を逃したこと」と振り返る。 「『勝てるだろう』と思って負けてしまって、その時の先輩たちの涙が忘れられなかったです。そこから翌年は絶対勝つことだけを目標に取り組んで、7秒差でリベンジすることができました。あの時の喜びが今までで一番でした」 だからこそ、大学最後のシーズンは三大駅伝での王座奪還に意欲を見せる。 「2年時の箱根で勝てたことは何よりうれしかったですね。あの時は7、9、10区の先輩が区間賞を取り、自分は区間2位だったので悔しさもありましたが、あの大舞台でタスキをつけて先頭を走る景色は最高でした。あの喜びをもう一度味わいたいので、最後の年は三大駅伝、特に箱根駅伝で勝ちたい気持ちが強いです。それが今年負けて卒業させてしまった先輩方への恩返しにもなると思っています」 そのためには、自身がしっかりエースとして走らなければいけないことも理解している。「今までの安定感ある走りから、チームに勢いを与えられる爆発力を見せられればと思っています」。 卒業後も競技は続けるが、「今はこのチームで走る駅伝のことしか考えていない」と力強く語る。 誰よりも駅伝に強い想いを持つ163cmの小さな大エースが、青学大復権のキーマンとなって、ラストイヤーを全力で駆け抜けている。 ◎さとう・いっせい/2001年7月21日生まれ。千葉県松戸市出身。小金中→八千代松陰高→青学大。自己記録5000m13分49秒74、10000m28分23秒62、ハーフマラソン1時間3分05秒。高校2年時の全国都道府県対抗男子駅伝5区で区間賞を獲得してブレイク。3年時には全国高校駅伝1区区間賞を手にした。青学大では1年時から主力として活躍。主に駅伝で力を発揮し、全日本大学駅伝では5区で2度区間賞を手にしている。今年は4月に10000mで自己新をマークし、5月の関東インカレ2部10000mでは6位に入賞するなど好調を示している。 文/田中 葵
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