2020.08.21
【ALL for TOKYO 2020+1】
小池祐貴(住友電工)
今年より来年、来年より再来年、
成長した自分でありたい
昨年、初めて世界選手権に出場した小池。日本選手権は100m3位、200m2位だった
慶大を卒業して、社会人1年目の2018年に、ジャカルタ・アジア大会男子200mで優勝。群雄割拠の男子短距離界で、今や押しも押されもせぬ中心メンバーにいる小池祐貴(住友電工)だが、日本代表としてのキャリアはまだ浅い。その経験不足を埋めるべく、昨シーズンは何度か欧州転戦を繰り返し、7月のダイヤモンドリーグ・ロンドン大会100mでは、9秒98(日本歴代2位タイ)という大きな収穫も得た。初の世界大会となるドーハ世界選手権は故障もあって納得のいく結果ではなかったが、2019年は「まずまず良かった」と言える年に。25歳の小池は「東京五輪があるからということではなく、今年より来年、来年より再来年に成長した自分でありたい」と言う。
◎文/小森貞子
冷静に受け止めた五輪の1年延期
年末に引き続き、鹿児島で合宿中だった今年3月末のこと。朝ご飯を食べながらテレビのニュースを見ていると、「東京五輪1年延期」の報。小池祐貴は驚きよりも「そりゃそうだよな」という気持ちのほうが大きかったそうだ。
「新型コロナウィルスの感染が世界規模で広がっていて、すべてのアスリートの条件をそろえるのは不可能だろうな、と思ったんです。むしろ、これで延期にならなかったら、すごく不平等な中でやることになると思いましたね」
東京に戻ってからは緊急事態宣言が出され、練習拠点にしている北区のナショナルトレーニングセンター(NTC)も閉鎖に。会社から部の活動も自粛が要請されて、臼井淳一コーチとは約2ヵ月、電話やメールでのやり取りだけになった。小池だけでなく、3月からチームに合流している新入社員の御家瀬緑(住友電工/恵庭北高卒)も、北海道から都内へ引っ越してきた早々にコロナ禍に巻き込まれた。昨年の日本選手権女子100mで優勝した、女子短距離界のホープ。御家瀬の兄と小池が旧知の仲という、小池にとってはいわば郷里の〝妹分〟だ。
昨今の状況下で、まだそれほど交流する時間は持てておらず、それぞれが自宅近くで身体を動かしたり、坂上りをやったり、走ったり。「僕がお世話するという感じはまったくなくて、逆に練習パートナーが1人来てくれた感じで、いい刺激を受けています」と〝兄貴分〟は笑う。「本当に十代か? と思うぐらい落ち着いているというか、しっかりしているというか、すごく平常心を保てる子なので、こっちも冷静にならせてもらっています」と、小池は19歳の後輩を褒め称えた。
2019年は経験値を高める年に
同世代の桐生祥秀(日本生命、左)と、サニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大)らとともに、日本を代表するスプリンターのひとりに成長を遂げた
2020年が半分以上過ぎて、今さらという感がなくもないが、小池にとって「アジア・チャンピオン」で迎えた昨年はどんなシーズンだったのだろうか。「シーズンを通して試行錯誤を繰り返して、着実に成長できた1年だったので、まあまあ良かったんじゃないかなと思います」と言うのが、まず本人の総括だ。
パスポートにはどれだけ出入国のスタンプが押されたのだろう。ずいぶんと慌ただしい1年だった。3月末に米国・スタンフォード招待でシーズンインし、100mで10秒09(+3.0)と10秒07(+2.8)。追い風参考にはなったが、およそ1時間のリカバリーで10秒0台を2本。4月末にはドーハ・アジア選手権に出て、200mで2位(20秒55 /+1.7)。順当な滑り出しだった。
その後は、6月末の日本選手権をはさんで、日本とヨーロッパを行ったり来たり。男子走幅跳で3度の五輪代表になっている臼井コーチも、現役時代に海外遠征を経験しているが、口で説明するより実体験に勝るものはない。「とにかくハードスケジュールをこなして、身体にどれほどのダメージがあるのか、1度経験させたかった」と言う。
小池も「経験値を高めていくには、とりあえずダイヤモンドリーグ(DL)など、レベルの高い試合に出て、日程的に多少きつくても試合を重ねていくのがベストな方法かな、と思った」と話す。そんな師弟の意図を汲んで、力を貸してくれたのが米国人の代理人、トニー・キャンベル氏だった。
日本選手権前の6月初めにフランス(パドァヴ)とDLオスロ。日本選手権後は、7月にDLロンドン、8月にDLバーミンガム。「ざっくり言うと、新しい世界に触れたということ
です」と、小池は貴重な体験を振り返った。
例えば「試合の翌朝、3時とか4時に起きて移動し、現地に着いたら翌日が試合とか、1日おきに国をまたいで移動するとか」。小池は「陸上選手として生計を立てていくには、こういうスタイルでみんなやっているんだな、というのを肌で感じられたのが大きな経験」と話し、「これが、この人たちの常識なんだ」と痛感したという。
ただ、時差ボケには悩まされた。帰国すると「夜、眠れないし、昼間練習に行くと眠いし」。時差ボケ解消までに10日ぐらい要して、オスロから帰って2週間後の日本選手権は「まだ睡眠のリズムが戻っていなかった」と明かす。そういう中で、100mが3位、200mは2位。どちらも優勝は年下のサニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大)だったが、無難に両種目で世界選手権代表切符を手に入れた。
この続きは2020年9月14日発売の『月刊陸上競技10月号』をご覧ください。
定期購読はこちらから
【ALL for TOKYO 2020+1】 小池祐貴(住友電工)
今年より来年、来年より再来年、 成長した自分でありたい

冷静に受け止めた五輪の1年延期
年末に引き続き、鹿児島で合宿中だった今年3月末のこと。朝ご飯を食べながらテレビのニュースを見ていると、「東京五輪1年延期」の報。小池祐貴は驚きよりも「そりゃそうだよな」という気持ちのほうが大きかったそうだ。 「新型コロナウィルスの感染が世界規模で広がっていて、すべてのアスリートの条件をそろえるのは不可能だろうな、と思ったんです。むしろ、これで延期にならなかったら、すごく不平等な中でやることになると思いましたね」 東京に戻ってからは緊急事態宣言が出され、練習拠点にしている北区のナショナルトレーニングセンター(NTC)も閉鎖に。会社から部の活動も自粛が要請されて、臼井淳一コーチとは約2ヵ月、電話やメールでのやり取りだけになった。小池だけでなく、3月からチームに合流している新入社員の御家瀬緑(住友電工/恵庭北高卒)も、北海道から都内へ引っ越してきた早々にコロナ禍に巻き込まれた。昨年の日本選手権女子100mで優勝した、女子短距離界のホープ。御家瀬の兄と小池が旧知の仲という、小池にとってはいわば郷里の〝妹分〟だ。 昨今の状況下で、まだそれほど交流する時間は持てておらず、それぞれが自宅近くで身体を動かしたり、坂上りをやったり、走ったり。「僕がお世話するという感じはまったくなくて、逆に練習パートナーが1人来てくれた感じで、いい刺激を受けています」と〝兄貴分〟は笑う。「本当に十代か? と思うぐらい落ち着いているというか、しっかりしているというか、すごく平常心を保てる子なので、こっちも冷静にならせてもらっています」と、小池は19歳の後輩を褒め称えた。2019年は経験値を高める年に

|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.02.22
【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日)
2025.02.21
編集部コラム「奥が深い」
-
2025.02.21
-
2025.02.21
-
2025.02.21
2025.02.17
日本郵政グループ女子陸上部 「駅伝日本一」へのチームづくりとコンディショニング
2025.02.16
男子は須磨学園が逆転勝ち! 女子は全国Vの長野東が強さ見せる/西脇多可高校新人駅伝
-
2025.02.16
-
2025.02.16
-
2025.02.16
-
2025.02.16
2025.02.02
【大会結果】第77回香川丸亀国際ハーフマラソン(2025年2月2日)
2025.02.02
大迫傑は1時間1分28秒でフィニッシュ 3月2日の東京マラソンに出場予定/丸亀ハーフ
-
2025.02.14
-
2025.02.09
-
2025.02.02
-
2025.01.26
-
2025.01.31
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.02.22
【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日)
【大会結果】第108回日本選手権クロスカントリー(2025年2月22日/福岡・海の中道海浜公園) ●男子10km 1位 三浦龍司(SUBARU) 28分24秒 2位 井川龍人(旭化成) 28分25秒 3位 塩尻和 […]
2025.02.22
今年も福岡でクロカン日本一決定戦! 日本選手権&U20日本選手権クロカンに有力選手が多数出場
第108回日本選手権クロスカントリー、第40回U20日本選手権クロスカントリーは今日2月22日、福岡・海の中道海浜公園の1周2kmのコースを舞台に行われる。 日本選手権は男子が10km、女子が8kmで争われ、男子にはパリ […]
2025.02.21
編集部コラム「奥が深い」
毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]
2025.02.21
ひらまつ病院にニューイヤー駅伝3年連続出走の三田眞司が加入 「チームの最高順位に貢献」
ひらまつ病院は2月16日付で、サンベルクスに所属していた三田眞司が加入したと発表した。 29歳の三田は神奈川県出身。光明学園相模原高では3年時に全国都道府県対抗男子駅伝4区9位と力走。国士大では3年時に全日本大学駅伝で3 […]
2025.02.21
斎藤将也、不破聖衣来、菖蒲敦司らが欠場を発表/日本選手権クロカン
福岡クロカン事務局は第108回日本選手権クロスカントリーの2月21日時点での欠場者リストを公開した。 男子では斎藤将也(城西大)や谷本昂士郎(順大)ら5人が新たに欠場を発表。女子は不破聖衣来、新井沙希(ともに拓大)、板井 […]
Latest Issue
最新号

2025年3月号 (2月14日発売)
別府大分毎日マラソン
落合 晃×久保 凛
太田智樹、葛西潤
追跡箱根駅伝&高校駅伝