2020.07.15
2年ぶりの総合優勝を決めて喜ぶ上田誠仁監督(左)とアンカーの尾方剛
平成以降の箱根駅伝を振り返る「PlayBack箱根駅伝」。今回は山梨学大が往路・復路ともに制する“完全優勝”で史上初の11時間切りを果たした第70回大会(1994年)を紹介する。大会の歴史を知ることで、正月の箱根路がより楽しみになるかも!?
プレイバック箱根駅伝 – 写真で振り返るHakone History
山梨学大が2年ぶり2回目の頂点に。1区で渡辺と井幡が超高速マッチレースを展開
箱根駅伝史に残る高速マッチレースを繰り広げた早大・渡辺康幸(左)と山梨学大・井幡政等
前年に続く「早山対決」となった記念すべき第70回大会。出場枠が特別に5校増え、20チームによって争われた。そのチャンスをつかんだ中央学大と関東学院大が初出場を果たし、第1回大会から出場している慶大が10年ぶり、筑波大が5年ぶりに予選会を突破して本戦に進んだ。
レースは早々に前回王者で全日本大学駅伝2連覇中の早大と、出雲駅伝(当時は「出雲くにびき全日本大学招待ロードリレー」)で3連覇を果たした前回2位の山梨学大によるマッチレースとなった。1区の5km過ぎで早大の渡辺康幸(2年)と山梨学大の井幡政等(3年)が抜け出すと、9km手前で一度は順大の高橋健一(3年)に追いつかれたものの、その後は最後まで一騎打ちへ。残り2.3kmでスパートをかけた渡辺が1時間1分13秒のスーパー区間新記録を樹立。井幡も従来の区間記録(1時間2分09秒)を上回る1時間1分40秒で続いた。
2区では前を行く早大・花田勝彦(4年)に対し、山梨学大のステファン・マヤカ(2年)が猛烈な追い上げを見せる。9km地点で追いつくと、13km手前で花田がわき腹を抑えながら後退。マヤカは1時間7分34秒の区間タイ記録でトップ中継を果たし、花田は13秒差でタスキをつないだ。
3区では社会人経験のある山梨学大の23歳・中村祐二が早大・小林雅幸とのルーキー対決を制し、区間賞を獲得。その差を32秒に広げた。
4区では早大の武井隆次(4年)が史上13人目となる4年連続区間賞の偉業を達成したものの、その差は10秒詰まっただけ。5区では下山一彦(4年)が区間賞を獲得した山梨学大が後続を突き放して往路優勝を手にした。
6区でも藤脇友介(2年)が区間2位と好走した山梨学大は、2位に上がった順大に4分15秒、3位・早大とは4分33秒ものセーフティーリードを構築。以降も危なげない継走で、史上初めて11時間を切る10時間59分13秒で2年ぶり2度目の総合優勝を達成した。往路・復路ともに制する完全優勝だった。
2位は前回王者の早大。3位には順大が入り、前回3位の中大が4位と順位を落とした。2区以降、上位4校の順位変動がほとんど起こらない(6区で早大と順大が一時的に入れ替わっただけ)珍しい大会となった。
5位は11年ぶりに過去最高成績に並んだ東海大、7位の神奈川大も43年ぶりの過去最高タイだった。
<人物Close-up>
尾方 剛(山梨学大2)
広島・熊野高時代から国体10000mで2位(29分12秒43=当時高校歴代3位)となるなど活躍し、山梨学大では2年時の箱根駅伝で10区(21.3km)区間賞を獲得。当時区間歴代2位となる1時間4分58秒をマークした。3年時以降は不振で、意外にも箱根出場はこの大会のみ。卒業後は中国電力へ進み、マラソンで2003年から五輪・世界選手権を合わせて4大会に出場。05年のヘルシンキ世界選手権では銅メダルを獲得し、07年大阪世界選手権でも5位に入賞した。12年の現役引退後は広島経大の監督として後進の指導にあたっている。
<総合成績>
1位 山梨学院大学 10.59.13(往路1位、復路1位)
2位 早稲田大学 11.03.42(往路2位、復路2位)
3位 順天堂大学 11.08.06(往路3位、復路3位)
4位 中央大学 11.13.18(往路4位、復路4位)
5位 東海大学 11.20.27(往路10位、復路5位)
6位 専修大学 11.21.06(往路7位、復路9位)
7位 神奈川大学 11.21.36(往路9位、復路8位)
8位 日本体育大学 11.22.25(往路6位、復路11位)
9位 日本大学 11.23.15(往路8位、復路12位)
========シード権ライン=========
10位 法政大学 11.23.38(往路11位、復路6位)
11位 駒澤大学 11.26.55(往路14位、復路10位)
12位 亜細亜大学 11.26.57(往路15位、復路7位)
13位 東京農業大学 11.28.17(往路5位、復路16位)
14位 国士舘大学 11.29.08(往路13位、復路13位)
15位 東洋大学 11.36.02(往路12位、復路17位)
16位 中央学院大学 11.38.35(往路18位、復路15位)
17位 関東学院大学 11.43.42(往路17位、復路19位)
18位 大東文化大学 11.45.07(往路20位、復路14位)
19位 慶應義塾大学 11.48.32(往路19位、復路18位)
20位 筑波大学 11.48.40(往路16位、復路20位)
<区間賞>
1区(21.3km)渡辺康幸(早 大2) 1.01.13=区間新
2区(23.0km)S.マヤカ(山梨学大2)1.07.34=区間タイ
3区(21.3km)中村祐二(山梨学大1)1.04.22
4区(20.9km)武井隆次(早 大4) 1.03.28
5区(20.7km)下山一彦(山梨学大4)1.13.08
6区(20.7km)北口 学(亜細亜大4)1.00.13
7区(21.2km)小林正幹(早 大3) 1.03.44
8区(21.3km)榎木和貴(中 大1) 1.06.31
9区(23.0km)安永淳一(順 大2) 1.10.17
10区(21.3km)尾方 剛(山梨学大2)1.04.58
PlayBack箱根駅伝1993/早大が名門復活の狼煙をあげる8年ぶり総合V
【学生駅伝ストーリー】77歳の“新指揮官”青葉監督が目指す名門・日大「箱根シード権への道」
【学生駅伝ストーリー】東海大黄金世代、それぞれの4年間(1)館澤亨次 頼れる主将
【学生駅伝ストーリー】“高校最速”から学生長距離界のトップへ。お互いをライバルと認め合う早大・中谷雄飛と駒大・田澤廉
【学生駅伝ストーリー】相澤晃を育てた「ガクセキ・メソッド」と東洋大での4年間
山梨学大が2年ぶり2回目の頂点に。1区で渡辺と井幡が超高速マッチレースを展開
箱根駅伝史に残る高速マッチレースを繰り広げた早大・渡辺康幸(左)と山梨学大・井幡政等 前年に続く「早山対決」となった記念すべき第70回大会。出場枠が特別に5校増え、20チームによって争われた。そのチャンスをつかんだ中央学大と関東学院大が初出場を果たし、第1回大会から出場している慶大が10年ぶり、筑波大が5年ぶりに予選会を突破して本戦に進んだ。 レースは早々に前回王者で全日本大学駅伝2連覇中の早大と、出雲駅伝(当時は「出雲くにびき全日本大学招待ロードリレー」)で3連覇を果たした前回2位の山梨学大によるマッチレースとなった。1区の5km過ぎで早大の渡辺康幸(2年)と山梨学大の井幡政等(3年)が抜け出すと、9km手前で一度は順大の高橋健一(3年)に追いつかれたものの、その後は最後まで一騎打ちへ。残り2.3kmでスパートをかけた渡辺が1時間1分13秒のスーパー区間新記録を樹立。井幡も従来の区間記録(1時間2分09秒)を上回る1時間1分40秒で続いた。 2区では前を行く早大・花田勝彦(4年)に対し、山梨学大のステファン・マヤカ(2年)が猛烈な追い上げを見せる。9km地点で追いつくと、13km手前で花田がわき腹を抑えながら後退。マヤカは1時間7分34秒の区間タイ記録でトップ中継を果たし、花田は13秒差でタスキをつないだ。 3区では社会人経験のある山梨学大の23歳・中村祐二が早大・小林雅幸とのルーキー対決を制し、区間賞を獲得。その差を32秒に広げた。 4区では早大の武井隆次(4年)が史上13人目となる4年連続区間賞の偉業を達成したものの、その差は10秒詰まっただけ。5区では下山一彦(4年)が区間賞を獲得した山梨学大が後続を突き放して往路優勝を手にした。 6区でも藤脇友介(2年)が区間2位と好走した山梨学大は、2位に上がった順大に4分15秒、3位・早大とは4分33秒ものセーフティーリードを構築。以降も危なげない継走で、史上初めて11時間を切る10時間59分13秒で2年ぶり2度目の総合優勝を達成した。往路・復路ともに制する完全優勝だった。 2位は前回王者の早大。3位には順大が入り、前回3位の中大が4位と順位を落とした。2区以降、上位4校の順位変動がほとんど起こらない(6区で早大と順大が一時的に入れ替わっただけ)珍しい大会となった。 5位は11年ぶりに過去最高成績に並んだ東海大、7位の神奈川大も43年ぶりの過去最高タイだった。 <人物Close-up> 尾方 剛(山梨学大2) 広島・熊野高時代から国体10000mで2位(29分12秒43=当時高校歴代3位)となるなど活躍し、山梨学大では2年時の箱根駅伝で10区(21.3km)区間賞を獲得。当時区間歴代2位となる1時間4分58秒をマークした。3年時以降は不振で、意外にも箱根出場はこの大会のみ。卒業後は中国電力へ進み、マラソンで2003年から五輪・世界選手権を合わせて4大会に出場。05年のヘルシンキ世界選手権では銅メダルを獲得し、07年大阪世界選手権でも5位に入賞した。12年の現役引退後は広島経大の監督として後進の指導にあたっている。 <総合成績> 1位 山梨学院大学 10.59.13(往路1位、復路1位) 2位 早稲田大学 11.03.42(往路2位、復路2位) 3位 順天堂大学 11.08.06(往路3位、復路3位) 4位 中央大学 11.13.18(往路4位、復路4位) 5位 東海大学 11.20.27(往路10位、復路5位) 6位 専修大学 11.21.06(往路7位、復路9位) 7位 神奈川大学 11.21.36(往路9位、復路8位) 8位 日本体育大学 11.22.25(往路6位、復路11位) 9位 日本大学 11.23.15(往路8位、復路12位) ========シード権ライン========= 10位 法政大学 11.23.38(往路11位、復路6位) 11位 駒澤大学 11.26.55(往路14位、復路10位) 12位 亜細亜大学 11.26.57(往路15位、復路7位) 13位 東京農業大学 11.28.17(往路5位、復路16位) 14位 国士舘大学 11.29.08(往路13位、復路13位) 15位 東洋大学 11.36.02(往路12位、復路17位) 16位 中央学院大学 11.38.35(往路18位、復路15位) 17位 関東学院大学 11.43.42(往路17位、復路19位) 18位 大東文化大学 11.45.07(往路20位、復路14位) 19位 慶應義塾大学 11.48.32(往路19位、復路18位) 20位 筑波大学 11.48.40(往路16位、復路20位) <区間賞> 1区(21.3km)渡辺康幸(早 大2) 1.01.13=区間新 2区(23.0km)S.マヤカ(山梨学大2)1.07.34=区間タイ 3区(21.3km)中村祐二(山梨学大1)1.04.22 4区(20.9km)武井隆次(早 大4) 1.03.28 5区(20.7km)下山一彦(山梨学大4)1.13.08 6区(20.7km)北口 学(亜細亜大4)1.00.13 7区(21.2km)小林正幹(早 大3) 1.03.44 8区(21.3km)榎木和貴(中 大1) 1.06.31 9区(23.0km)安永淳一(順 大2) 1.10.17 10区(21.3km)尾方 剛(山梨学大2)1.04.58 PlayBack箱根駅伝1993/早大が名門復活の狼煙をあげる8年ぶり総合V 【学生駅伝ストーリー】77歳の“新指揮官”青葉監督が目指す名門・日大「箱根シード権への道」 【学生駅伝ストーリー】東海大黄金世代、それぞれの4年間(1)館澤亨次 頼れる主将 【学生駅伝ストーリー】“高校最速”から学生長距離界のトップへ。お互いをライバルと認め合う早大・中谷雄飛と駒大・田澤廉 【学生駅伝ストーリー】相澤晃を育てた「ガクセキ・メソッド」と東洋大での4年間
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
2024.11.22
田中希実が来季『グランドスラム・トラック』参戦決定!マイケル・ジョンソン氏が新設
2024.11.21
早大競走部駅伝部門が麹を活用した食品・飲料を手がける「MURO」とスポンサー契約締結
2024.11.21
立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
2024.11.17
不破聖衣来が香港で10kmレースに出場 9位でフィニッシュ
2024.11.20
【箱根駅伝2025名鑑】早稲田大学
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
2024.11.01
吉田圭太が住友電工を退部 「充実した陸上人生を歩んでいきたい」競技は継続
2024.11.07
アシックスから軽量で反発性に優れたランニングシューズ「NOVABLAST 5」が登場!
-
2024.10.27
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2024.11.22
田中希実が来季『グランドスラム・トラック』参戦決定!マイケル・ジョンソン氏が新設
来春、開幕する陸上リーグ「グランドスラム・トラック」の“レーサー”として、女子中長距離の田中希実(New Balance)が契約したと発表された。 同大会は1990年代から2000年代に男子短距離で活躍したマイケル・ジョ […]
2024.11.21
早大競走部駅伝部門が麹を活用した食品・飲料を手がける「MURO」とスポンサー契約締結
11月21日、株式会社コラゾンは同社が展開する麹専門ブランド「MURO」を通じて、早大競走部駅伝部とスポンサー契約を結んだことを発表した。 コラゾン社は「MURO」の商品である「KOJI DRINK A」および「KOJI […]
2024.11.21
立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン
第55回防府読売マラソン大会事務局は、女子招待選手の立迫志穂(天満屋)が欠場すると発表した。調整不良のためとしている。 立迫は今年2月の全日本実業団ハーフマラソンで1時間11分16秒の11位。7月には5000m(15分3 […]
2024.11.20
M&Aベストパートナーズに中大・山平怜生、城西大・栗原直央、國學院大・板垣俊佑が内定!神野「チーム一丸」
神野大地が選手兼監督を務めるM&Aベストパートナーズが来春入社選手として、中大・山平怜生、國學院大・板垣俊佑、城西大・栗原直央の3人が内定した。神野が自身のSNSで内定式の様子を伝えている。 山平は宮城・仙台育英 […]
2024.11.20
第101回(2025年)箱根駅伝 出場チーム選手名鑑
・候補選手は各チームが選出 ・情報は11月20日時点、チーム提供および編集部把握の公認記録を掲載 ・選手名の一部漢字で対応外のものは新字で掲載しています ・過去箱根駅伝成績で関東学生連合での出場選手は相当順位を掲載 ・一 […]
Latest Issue 最新号
2024年12月号 (11月14日発売)
全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会