2020.07.09
7区で山梨学大を逆転し、総合優勝の立役者となった武井隆次(左)
平成以降の箱根駅伝を振り返る「PlayBack箱根駅伝」。今回は早大が往路・復路ともに制する“完全優勝”を飾った第69回大会(1993年)を紹介する。大会の歴史を知ることで、正月の箱根路がより楽しみになるかも!?
プレイバック箱根駅伝 – 写真で振り返るHakone History
“三羽烏”が区間新の快走。早大が山梨学大とのマッチレース制す
1区の櫛部静二(後列中央)、4区の花田勝彦(前列左から2人目)、7区の武井(同左から3人目)と3年生トリオが区間新記録で快走して総合優勝につなげた
11月の全日本大学駅伝で優勝を飾り、久しぶりに頂点を狙える布陣が整っていた名門・早大と、前回王者で10月の出雲駅伝を制した山梨学大による「早山対決」となった第69回大会。東洋大が2年ぶりに出場を果たした一方で、初出場から36年連続で出場中だった国士大が予選会で姿を消した。
レースは序盤から早大が独走態勢を築いた。1区の櫛部静二(3年)が従来の区間記録を1分13秒も短縮。2位の中大に45秒、4位スタートとなった山梨学大に1分15秒の差をつけた。
2区ではスーパールーキーの渡辺康幸が箱根路デビュー。区間賞はのちに宿命のライバルとなる山梨学大のステファン・マヤカ(1年)に譲ったものの、22秒差の区間2位でトップをひた走った。
3区、4区では小林正幹(2年)、花田勝彦(3年)が連続区間賞で首位を疾走。5区の小林修(2年)も区間7位と安定した走りを見せ、一度も首位を譲らない完封勝利で往路を制した。1分58秒差で2位は山梨学大。3位の日大とは5分48の差がつき、優勝争いは“2強”に絞られた。
6区では山梨学大の廣瀬諭史(4年)が素晴らしい走りを見せ、中継所まで残り700m地点で早大を逆転。区間記録にあと7秒と迫る59分28秒の激走で前年に続く区間賞を獲得した。7区では1年生を配置した山梨学大に対し、早大はエースの武井隆次(3年)を投入。従来の区間記録を2分近くも上回る快走で再びリードを2分50秒に広げた。
山梨学大は9区の黒木純(3年)が区間賞の走りで早大との差を2分以上も詰めて食い下がったが、時すでに遅し。8区以降も堅実にタスキをつないだ早大が8年ぶり12回目の総合優勝を達成した。
2分05秒差で2位だった山梨学大は連覇こそ逃したものの、区間賞3つで王者としての意地を顕示。以下、3位に中大、4位は1962年(4位)以来の好成績となった専大となり、前回準Vの日大は5位でフィニッシュした。山梨学大以外は早大から10分以上も大差をつけられ、上位2チームの強さが際立った大会となった。
80年代に4連覇を飾るなど一世を風靡した順大は9位でぎりぎりシード権を確保。8区終了時で6位につけていた日体大は、後半2区間で大きく失速し、わずか4秒差の10位でまたも涙をのんだ。また、前回5位の大東大は10人中8人が区間11位以下にとどまるなど最下位に終わり、2回目の出場となった1969年大会から堅守してきたシード権を25年ぶりに失った。
<人物Close-up>
花田勝彦(早大3)
武井隆次、櫛部静二とともに“早大三羽烏”と呼ばれ、今大会では4区区間新の快走で悲願の総合優勝に貢献。大学時代から早大OBである瀬古利彦の指導を受け、卒業後は1996年アトランタ、2000年シドニーと五輪2大会にトラック種目で出場した。現役引退後は上武大学駅伝監督としてチームを箱根駅伝出場校に導き、現在はGMOインターネットグループの監督を務めている
<総合成績>
1位 早稲田大学 11.03.34(往路1位、復路1位)
2位 山梨学院大学 11.05.39(往路2位、復路2位)
3位 中央大学 11.14.36(往路4位、復路3位)
4位 専修大学 11.18.09(往路5位、復路4位)
5位 日本大学 11.24.19(往路3位、復路14位)
6位 駒澤大学 11.24.37(往路9位、復路6位)
7位 法政大学 11.25.31(往路7位、復路8位)
8位 神奈川大学 11.25.41(往路6位、復路11位)
9位 順天堂大学 11.29.05(往路13位、復路5位)
========シード権ライン=========
10位 日本体育大学 11.29.09(往路8位、復路13位)
11位 東洋大学 11.29.51(往路11位、復路17位)
12位 東京農業大学 11.32.17(往路10位、復路12位)
13位 亜細亜大学 11.33.32(往路14位、復路10位)
14位 東海大学 11.38.06(往路15位、復路9位)
15位 大東文化大学 11.45.08(往路12位、復路15位)
<区間賞>
1区(21.3km)櫛部静二(早 大3) 1.02.09=区間新
2区(23.0km)S.マヤカ(山梨学大1)1.08.26
3区(21.3km)小林正幹(早 大2) 1.04.13
4区(20.9km)花田勝彦(早 大3) 1.02.07=区間新
5区(20.7km)小田典彦(神奈川大4)1.13.32
6区(20.7km)廣瀬諭史(山梨学大4) 59.28
7区(21.2km)武井隆次(早 大3) 1.02.53=区間新
8区(21.3km)高瀬豪史(早 大3) 1.07.01
9区(23.0km)黒木 純(山梨学大3)1.10.22
10区(21.3km)安永淳一(順 大1) 1.06.12
PlayBack箱根駅伝1992/山梨学大が出場6回目で初優勝!
【学生駅伝ストーリー】77歳の“新指揮官”青葉監督が目指す名門・日大「箱根シード権への道」
【学生駅伝ストーリー】東海大黄金世代、それぞれの4年間(1)館澤亨次 頼れる主将
【学生駅伝ストーリー】“高校最速”から学生長距離界のトップへ。お互いをライバルと認め合う早大・中谷雄飛と駒大・田澤廉
【学生駅伝ストーリー】相澤晃を育てた「ガクセキ・メソッド」と東洋大での4年間

“三羽烏”が区間新の快走。早大が山梨学大とのマッチレース制す

|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.03.28
-
2025.03.28
-
2025.03.28
2025.03.23
女子は長野東が7年ぶりの地元V アンカー・田畑陽菜が薫英女学院を逆転/春の高校伊那駅伝
-
2025.03.25
2025.03.02
初挑戦の青学大・太田蒼生は途中棄権 果敢に先頭集団に挑戦/東京マラソン
2025.03.02
太田蒼生は低体温症と低血糖で途中棄権 「世界のレベルを知れて良い経験」/東京マラソン
-
2025.03.23
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.03.29
齋藤みう3000m障害で9分41秒57 自己ベスト4秒以上更新して日本歴代6位、学生歴代2位
第319回日体大長距離競技会初日が3月29日、神奈川・横浜市の同大学健志台キャンパス競技場で行われ、女子3000m障害で齋藤みう(日体大4)が日本歴代6位、学生歴代2位の9分41秒57をマークした。 齋藤のこれまでのベス […]
2025.03.28
【世界陸上プレイバック】五輪ボイコットきっかけに創設!クラトフヴィロヴァが女子400mと800mで今も大会記録に残る2冠 日本は室伏重信ら出場も入賞ゼロ
今年、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪大会を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。これま […]
2025.03.28
【高校生FOCUS】女子三段跳・山﨑りりや(鳴門渦潮高)日本高校女子初の13m到達、大学で学生記録挑戦
FOCUS! 高校生INTERVIEW 山﨑りりや Yamasaki Ririya 鳴門渦潮高3徳島 高校アスリートをフォーカスするコーナー。年度末を迎えますが、振り返ってみれば、2024年度は高校生による日本記録樹立を […]
2025.03.28
3泊4日の全国高体連合宿終了! 「高め合える仲間がいっぱいできた」 来年度は宮崎で開催予定
大阪・ヤンマースタジアム長居を主会場に行われた2024年度の日本陸連U-19強化研修合宿・全国高体連陸上競技専門部強化合宿が3月28日、3泊4日の全日程を終えた。全国から集まった選手たちは交流を深め、試合での再会を誓った […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報