HOME 特集

2023.05.03

【高平慎士の視点】自分の強み引き出した鵜澤飛羽の20秒10w 上山、飯塚の巻き返しで200mも活況へ/静岡国際
【高平慎士の視点】自分の強み引き出した鵜澤飛羽の20秒10w 上山、飯塚の巻き返しで200mも活況へ/静岡国際

20秒10で23年静岡国際男子200mに優勝した鵜澤飛羽

好天と追い風、絶好のコンディションに恵まれた静岡国際男子200mは、大学3年の鵜澤飛羽(筑波大)が追い風2.6mの参考記録ながら20秒10の爆走。ブダペスト世界選手権参加標準記録(20秒16)を上回る、日本歴代3位相当の快記録をマークした。そのレースを、2008年北京五輪4×100mリレー銀メダリストの高平慎士さん(富士通一般種目ブロック長)に振り返ってもらった。

◇ ◇ ◇

4日前の織田記念とは打って変わって、絶好のコンディションとなりました。予選から見応えのあるレースが続出し、大会を通じて静岡国際らしい盛り上がりが戻ってきたように感じます。

その中でも、男子200mの鵜澤飛羽選手は追い風参考とはいえ世界選手権の参加標準を突破するタイムを出したというのは見事。宮城・築館高2年のインターハイ決勝で20秒36(+2.1)を出していたということもあり、やっと本領を発揮してきたという印象です。

前半は思ったほどスピードに乗っていない印象でしたが、直線にオレゴン世界選手権代表の上山紘輝選手(住友電工)、飯塚翔太選手(ミズノ)と並んで入りました。その段階で余裕があったのでしょう、特にラスト70mからが良かったですね。あそこからもう一段階ギアを上げ、その爆発力をコントロールしきったことが素晴らしい。フィニッシュに向けて、自分のストロングポイントをうまく引き出す走りだったと感じました。

これまで、日本のトップレースでの実績を残せていなかったので、これで日本選手権での勝負や、さらに上のステージへと挑む自信をつかむことができたのではないでしょうか。今日のように爆発力を出せる一方で、それがケガにつながることが多かったことが課題。この後にもう一度、大きな力がかかるレースで結果を残せるようだと、いいよ楽しみになります。

上山選手と飯塚選手は、条件を見たら実力を発揮できなかったレースと見ていいでしょう。あれだけ離されると、レースの中で挽回するのは難しいものです。

それでも、これで鵜澤選手のレースパターンがわかったと思うので、今後のレースでどう対応してくるかに注目です。前半から圧倒するのか、後半競り合う展開に持ち込むのか。どちらも、ビッグゲームに合わせる力を持っています。

代表争いに関しては、200mを専門、得意とする選手たち同士のハイレベルの争いになりそうです。上記3選手に、サニブラウン・アブデル・ハキーム選手(タンブルウィードTC)、小池祐貴選手(住友電工)、200mにも力を入れる桐生祥秀選手(日本生命)、山縣亮太選手(セイコー)まで参戦するようだと、100mに負けないぐらいに盛り上がりそうですね。

鵜澤選手はワールドランキングのポイントでは厳しい戦いになると思われるので、標準突破が求められるでしょう。日本選手権でそれが実現できるか。ただ、今日のレースで標準記録レベルの走りをしたことは、大きなアドバンテージになるはずです。

日本選手権の勝負という観点では、いかに後半に自信を持った位置で入れるか。そのための前半の作り方が、勝負を分けるポイントになるでしょう。また「19秒台」が視野に入るレベルへ、多くの選手たちの力で押し上げてくれることを期待しています。

◎高平慎士(たかひら・しんじ)
富士通陸上競技部一般種目ブロック長。五輪に3大会連続(2004年アテネ、08年北京、12年ロンドン)で出場し、北京大会では4×100mリレーで銀メダルに輝いた(3走)。自己ベストは100m10秒20、200m20秒22(日本歴代7位)

好天と追い風、絶好のコンディションに恵まれた静岡国際男子200mは、大学3年の鵜澤飛羽(筑波大)が追い風2.6mの参考記録ながら20秒10の爆走。ブダペスト世界選手権参加標準記録(20秒16)を上回る、日本歴代3位相当の快記録をマークした。そのレースを、2008年北京五輪4×100mリレー銀メダリストの高平慎士さん(富士通一般種目ブロック長)に振り返ってもらった。 ◇ ◇ ◇ 4日前の織田記念とは打って変わって、絶好のコンディションとなりました。予選から見応えのあるレースが続出し、大会を通じて静岡国際らしい盛り上がりが戻ってきたように感じます。 その中でも、男子200mの鵜澤飛羽選手は追い風参考とはいえ世界選手権の参加標準を突破するタイムを出したというのは見事。宮城・築館高2年のインターハイ決勝で20秒36(+2.1)を出していたということもあり、やっと本領を発揮してきたという印象です。 前半は思ったほどスピードに乗っていない印象でしたが、直線にオレゴン世界選手権代表の上山紘輝選手(住友電工)、飯塚翔太選手(ミズノ)と並んで入りました。その段階で余裕があったのでしょう、特にラスト70mからが良かったですね。あそこからもう一段階ギアを上げ、その爆発力をコントロールしきったことが素晴らしい。フィニッシュに向けて、自分のストロングポイントをうまく引き出す走りだったと感じました。 これまで、日本のトップレースでの実績を残せていなかったので、これで日本選手権での勝負や、さらに上のステージへと挑む自信をつかむことができたのではないでしょうか。今日のように爆発力を出せる一方で、それがケガにつながることが多かったことが課題。この後にもう一度、大きな力がかかるレースで結果を残せるようだと、いいよ楽しみになります。 上山選手と飯塚選手は、条件を見たら実力を発揮できなかったレースと見ていいでしょう。あれだけ離されると、レースの中で挽回するのは難しいものです。 それでも、これで鵜澤選手のレースパターンがわかったと思うので、今後のレースでどう対応してくるかに注目です。前半から圧倒するのか、後半競り合う展開に持ち込むのか。どちらも、ビッグゲームに合わせる力を持っています。 代表争いに関しては、200mを専門、得意とする選手たち同士のハイレベルの争いになりそうです。上記3選手に、サニブラウン・アブデル・ハキーム選手(タンブルウィードTC)、小池祐貴選手(住友電工)、200mにも力を入れる桐生祥秀選手(日本生命)、山縣亮太選手(セイコー)まで参戦するようだと、100mに負けないぐらいに盛り上がりそうですね。 鵜澤選手はワールドランキングのポイントでは厳しい戦いになると思われるので、標準突破が求められるでしょう。日本選手権でそれが実現できるか。ただ、今日のレースで標準記録レベルの走りをしたことは、大きなアドバンテージになるはずです。 日本選手権の勝負という観点では、いかに後半に自信を持った位置で入れるか。そのための前半の作り方が、勝負を分けるポイントになるでしょう。また「19秒台」が視野に入るレベルへ、多くの選手たちの力で押し上げてくれることを期待しています。 ◎高平慎士(たかひら・しんじ) 富士通陸上競技部一般種目ブロック長。五輪に3大会連続(2004年アテネ、08年北京、12年ロンドン)で出場し、北京大会では4×100mリレーで銀メダルに輝いた(3走)。自己ベストは100m10秒20、200m20秒22(日本歴代7位)

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.11.21

早大競走部駅伝部門が麹を活用した食品・飲料を手がける「MURO」とスポンサー契約締結

11月21日、株式会社コラゾンは同社が展開する麹専門ブランド「MURO」を通じて、早大競走部駅伝部とスポンサー契約を結んだことを発表した。 コラゾン社は「MURO」の商品である「KOJI DRINK A」および「KOJI […]

NEWS 立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン

2024.11.21

立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン

第55回防府読売マラソン大会事務局は、女子招待選手の立迫志穂(天満屋)が欠場すると発表した。調整不良のためとしている。 立迫は今年2月の全日本実業団ハーフマラソンで1時間11分16秒の11位。7月には5000m(15分3 […]

NEWS M&Aベストパートナーズに中大・山平怜生、城西大・栗原直央、國學院大・板垣俊佑が内定!神野「チーム一丸」

2024.11.20

M&Aベストパートナーズに中大・山平怜生、城西大・栗原直央、國學院大・板垣俊佑が内定!神野「チーム一丸」

神野大地が選手兼監督を務めるM&Aベストパートナーズが来春入社選手として、中大・山平怜生、國學院大・板垣俊佑、城西大・栗原直央の3人が内定した。神野が自身のSNSで内定式の様子を伝えている。 山平は宮城・仙台育英 […]

NEWS 第101回(2025年)箱根駅伝 出場チーム選手名鑑

2024.11.20

第101回(2025年)箱根駅伝 出場チーム選手名鑑

・候補選手は各チームが選出 ・情報は11月20日時点、チーム提供および編集部把握の公認記録を掲載 ・選手名の一部漢字で対応外のものは新字で掲載しています ・過去箱根駅伝成績で関東学生連合での出場選手は相当順位を掲載 ・一 […]

NEWS 八王子ロングディスタンスのスタートリスト発表!! 1万m26分台狙うS組は鈴⽊芽吹、遠藤⽇向、羽生拓矢、篠原倖太朗らが出場!

2024.11.20

八王子ロングディスタンスのスタートリスト発表!! 1万m26分台狙うS組は鈴⽊芽吹、遠藤⽇向、羽生拓矢、篠原倖太朗らが出場!

東日本実業団連盟は11月20日、2024八王子ロングディスタンス(11月23日)のスタートリストを発表した。 来年の世界選手権男子10000mの参加標準記録(27分00秒00)の突破を狙う『S組』では、日本の実業団に所属 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年12月号 (11月14日発売)

2024年12月号 (11月14日発売)

全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会

page top