2020.07.25
【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!!
アシックス「NOVABLAST(ノヴァブラスト)」
走行時のエネルギー消費を抑えるテクノロジー「GUIDESOLE(ガイドソール)」を採用したランニングシューズを2019年から展開しているアシックス。一方で、今年2月からは〝別路線〟とも言えるシリーズが動き出している。その代表格が、『反発性』を全面に打ち出した新素材を採用している「NOVABLAST(ノヴァブラスト)」だ。
ボリュームのあるミッドソールが特徴的なアシックスの「NOVABLAST(ノヴァブラスト)」。クッション性と反発性に優れた新素材を採用している
柔らかくて弾む新素材
「いつもの道をはずませよう。」をキャッチフレーズに今年2月に発売されたアシックスの「NOVABLAST(ノヴァブラスト)」。速く走るよりは楽しく走ることが目的のジョギングシューズだが、このカテゴリーにとどめるにはもったいないほどの〝個性〟を放っている。
その最大の特徴は、ミッドソールに「FLYTEFOAMBlast(フライトフォームブラスト)」という新素材を採用していること。これがとにかくよく弾むのだ。足を入れた瞬間にわかる段違いのクッション性、そしてバネのような反発。足が地面に着地する際にソールが沈み込み、そこからエネルギーが跳ね返ってくるのを1歩ごとに実感できる。ミッドソールのデザインはトランポリンからインスピレーションを得たそうで、従来のアシックスのシューズでは味わえなかった感触となっている。
キャッチフレーズは「いつもの道をはずませよう」。タレントの渡辺直美さんがイメージキャラクターを務めている
アシックスのシューズはこれまで〝手堅い〟性能のものが多かった。ソールは足元がグラつかない安定性を確保し、その上でクッション性と反発性が絶妙なバランスで調整されていた。ランナーに寄り添い、安全かつ確実に個々の能力を引き出す点を矜持としていたように感じる。
ところが、このノヴァブラストに使われているフライトフォームブラストは趣が異なり、素材としては明らかに「反発弾性」に特化している。柔らかいのによく弾み、しかも軽い。いい意味でアシックスらしくない、尖った性能となっている。
踵からはみ出すほどのミッドソール
独特の感触で「楽しく走れる」シューズ
では、その新素材を採用したノヴァブラストのスペックはどうか。重さは27.0cmで約275gと、ジョギング用モデルとしては標準的と言えるだろう。しかし、厚底で踵からはみ出すほどのボリュームがあるミッドソールを考えると、よくこの数字に収まったなという印象が強い。アッパーの作りも堅牢で、安定性と耐久性は高そうだ。
サイズ感はやや大きく、同じアシックスのGLIDERIDE(グライドライド)で25.5cmを履いている筆者は25.0cmがちょうどだった。ライドシリーズとは異なるラスト(足型)が使われているという。
ドロップ(前足部と踵の高低差)は10mmあるが、METARIDE(メタライド)などに採用されている「GUIDESOLE(ガイドソール)」構造ではないため、接地時の重心移動の際に〝転がる〟ような感覚はそこまで強くない。ただ、ソールにはポヨンポヨンと弾むような独特の感触があり、走っていて純粋に楽しい。この〝ネクスト(次世代)感〟は画期的だ。同時に、アシックスが反発弾性に特化すればこういうものが作れるのか……と、同社の技術力とプライドを見せつけられた思いがする。
トランポリンからもインスピレーションを得たというミッドソールはクッション性が非常に高い。走るのはもちろん、ジャンプやスキップなどをしてみても独特の感触を味わえる
スピードへの対応という点では、トラックの1000mを余裕を持って3分43秒ほどで走った時にはそれほど違和感がなかった。200mをダッシュした際には反発が強すぎて逆にピッチを上げきれず、タイム的にはいまひとつだったが、それでもグライドライドに比べるとスピードは出しやすいように感じる。通常、このシューズでシビアにタイムを計測して短距離をダッシュする必要性は薄いと思われるので、長距離が専門ではないアスリートがトレーニング用として検討する際に注意すれば十分だろう。マラソン4~5時間台のランナーであればレースでも使えそうだ。ただ、それ以上のスピードになるとレースで使うには重すぎるかもしれない。
なお、6月に発売されたトップモデル「METARACER(メタレーサー)」では、ガイドソールの特性を生かすためにフライトフォームブラストを採用しなかったことが明かされている。ただ、これほど軽量かつ高反発の素材であれば、今後はレース用モデルにも転用される可能性は十分にあるだろう。
ガイドソールを採用することで「楽に走れる」がコンセプトのメタライドなどの『ライド系』シリーズに対し、弾むことで「楽しく走れる」モデルとして登場したノヴァブラスト。ランナーのさまざまなニーズに応えているアシックスの中でも、ひときわ尖った存在としてランニングの新たな楽しみ方を提案してくれるシューズだ。
◎文/山本慎一郎
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・【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!! アシックスの「METARACER(メタレーサー)」
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では、その新素材を採用したノヴァブラストのスペックはどうか。重さは27.0cmで約275gと、ジョギング用モデルとしては標準的と言えるだろう。しかし、厚底で踵からはみ出すほどのボリュームがあるミッドソールを考えると、よくこの数字に収まったなという印象が強い。アッパーの作りも堅牢で、安定性と耐久性は高そうだ。 サイズ感はやや大きく、同じアシックスのGLIDERIDE(グライドライド)で25.5cmを履いている筆者は25.0cmがちょうどだった。ライドシリーズとは異なるラスト(足型)が使われているという。 ドロップ(前足部と踵の高低差)は10mmあるが、METARIDE(メタライド)などに採用されている「GUIDESOLE(ガイドソール)」構造ではないため、接地時の重心移動の際に〝転がる〟ような感覚はそこまで強くない。ただ、ソールにはポヨンポヨンと弾むような独特の感触があり、走っていて純粋に楽しい。この〝ネクスト(次世代)感〟は画期的だ。同時に、アシックスが反発弾性に特化すればこういうものが作れるのか……と、同社の技術力とプライドを見せつけられた思いがする。 トランポリンからもインスピレーションを得たというミッドソールはクッション性が非常に高い。走るのはもちろん、ジャンプやスキップなどをしてみても独特の感触を味わえる スピードへの対応という点では、トラックの1000mを余裕を持って3分43秒ほどで走った時にはそれほど違和感がなかった。200mをダッシュした際には反発が強すぎて逆にピッチを上げきれず、タイム的にはいまひとつだったが、それでもグライドライドに比べるとスピードは出しやすいように感じる。通常、このシューズでシビアにタイムを計測して短距離をダッシュする必要性は薄いと思われるので、長距離が専門ではないアスリートがトレーニング用として検討する際に注意すれば十分だろう。マラソン4~5時間台のランナーであればレースでも使えそうだ。ただ、それ以上のスピードになるとレースで使うには重すぎるかもしれない。 なお、6月に発売されたトップモデル「METARACER(メタレーサー)」では、ガイドソールの特性を生かすためにフライトフォームブラストを採用しなかったことが明かされている。ただ、これほど軽量かつ高反発の素材であれば、今後はレース用モデルにも転用される可能性は十分にあるだろう。 ガイドソールを採用することで「楽に走れる」がコンセプトのメタライドなどの『ライド系』シリーズに対し、弾むことで「楽しく走れる」モデルとして登場したノヴァブラスト。ランナーのさまざまなニーズに応えているアシックスの中でも、ひときわ尖った存在としてランニングの新たな楽しみ方を提案してくれるシューズだ。 ◎文/山本慎一郎 <関連記事> ・【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!! アシックスの「METARACER(メタレーサー)」 ・【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!! アシックスの厚底シューズ「GLIDERIDE」 ・【トピックス】「ピンなしスプリントシューズ」メタスプリント開発秘話 アシックススポーツ工学研究所の担当者が語る ・【トピックス】アシックスが新コンセプトシューズ「METASPRINT(メタスプリント)」と「METARACER(メタレーサー)」を発表
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