2023.03.16
スポーツとケガや故障は切っても切れない関係にある。アスリートにとって日々の体調管理や予防はもちろん、ケガや故障をした後、いかにスムーズに復帰できるかが重要なポイントとなる。来院する9割近くが中学生や高校生を中心としたスポーツ選手という長崎県諫早市にある「TSCスポーツ整骨院長崎」では、県内でもいち早く日本気圧バルク工業の高気圧酸素ルームおよび低圧低酸素ルームを導入。ケガからの早期復帰、リハビリ期間の体力維持などに役立てている。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーで柔道整復師でもある同院の本田智久代表(41歳)に酸素ルームの活用法や効果のほどを聞いた。
スポーツ専門の治療院として地元の長崎で開業
長崎県諫早市で2018年にスポーツ専門の治療院として産声を上げた「TSCスポーツ整骨院長崎」。代表を務める本田智久氏が、福岡県にある医療法人TSCタケダスポーツ・ビューティークリニックで3年間修業したのち、地元・長崎で「ケガで悩んでいる選手を一人でも多く助けたい」という思いで開業し、今年で5年目を迎える。
サッカーどころとしても知られる長崎。本田氏も幼い頃からサッカーに打ち込み、自身もケガに苦しんだ経験を持つ。高校では建築科に在籍していたが、「サッカーをやっていたこともあり、将来はスポーツ関連の仕事に就きたいと漠然と考えていました」と当時を振り返る。その際、強豪校でトレーナーを務める治療家と出会い、「そういう関わり方もあることを知り、スポーツトレーナーを目指すようになりました」ときっかけを口にする。
高校卒業後に東京の専門学校で学び、強豪大学のラグビー部でトレーナー活動を経験した。その後、いったん長崎に戻っている間、難関として知られる日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー資格、柔道整復師の国家資格も取得。そして、前述の福岡のクリニックで著名なスポーツドクターのもとで修業を積んだ。
九州の拠点でもある福岡。「当時も小学生からプロ選手まで、スポーツをする多くの方々が九州各地から福岡まで治療に来られていました」と言い、来院する多くの人たちの共通の悩みが「痛みの原因がわからず、どうしたらいいかわからない」「今の痛みのまま練習を続けていいのか不安」「近くの整形外科に行ったけど今後の対応がよくわからない」といったものだった。
選手たちが知りたいのは、「痛みの原因は何なのか」「復帰までどれぐらいの期間がかかるのか」「今で自分にできることは何か」であり、何より早期復帰、そして復帰後、ケガをする前のパフォーマンスを発揮できるかにある。ケガに悩む多くの若いスポーツ選手と関わることで、そうした選手を手助けしたいという思いがより強くなっていった。
島原出身の本田氏。「当時は長崎からも多くの患者さんが福岡まで来ておられ、長崎にはスポーツ専門の治療院がなかったことから、地元の長崎、県内のどこからも来やすい諫早で開業することを決めました」と経緯を話す。
ケガに苦しむ選手の早期復帰、再発予防を目指して素ルームを導入
スポーツ選手にとってケガや故障はつきものだ。いくら体調管理に努めていても、すべてを防ぐことは困難となる。もしケガや故障をした場合、選手だれもが願うのが現状回復と早期復帰となる。しかし、完全復活までの道のりは決して平坦ではない。そこで、「選手を少しでも早く、そして万全な状態で復帰させ、再発防止に役立てたい」と、以前から注目していた酸素ルームの導入に踏み切った。

開院から約2年後の2020年10月に高気圧酸素ルームを導入して以降、来院者が約1.5倍に増えているという
TSCスポーツ整骨院長崎を訪れるのはスポーツのなかでも陸上競技をはじめサッカー、バスケットボール、ラグビーなどの選手が特に多いという。地元にスポーツ専門の治療院が新たにできたことで、これまで福岡などに通っていた選手の多くが来院するようになった。選手のほとんどがケガからの早期復帰を願っての来院であり、地元の整形外科を受診後、藁にもすがる思いでやってくる。そうした選手の声に応えるために導入したのが酸素ルームとなる。
「いろいろな文献や論文を読むなどし、酸素ルームはケガからの早期復帰に役立てることができると考え、導入を決めました」と本田氏。いくつかあるメーカーを比較。実物を確認した上で日本バルク工業の酸素ルームを選んだ。
「大学での研究や陸上競技を中心に実業団チームがトレーニングにも取り入れているなどの実績、エビデンスもしっかりしている点が大きかったですね」と導入の決め手を口にする。
日本気圧バルク工業の酸素ルームは自社開発、自社製造された商品であることが大きなセールスポイント。日本体力医学会に所属して論文発表までしている外交スタッフの豊富な知識と経験が信頼性をさらに高めている。
治療用に高気圧酸素を活用、選手の早期復帰に活躍
それでもなお、「県内でも酸素カプセルを導入している治療院も数多くあり、正直、使い方や効果を全面的に信じてはいませんでした」と不安もあった。
2020年10月、治療に生かすために日本バルク工業の高気圧酸素ルームを導入。試行錯誤を繰り返すなか、「骨折はもちろん、肉離れや捻挫などの電気治療を酸素ルーム内で行うことで、例えば鎖骨を骨折し整形外科の先生から3ヵ月は絶対安静と言われた選手が2ヵ月ほどでリハビリに移れるなど、1ヵ月以上復帰を短縮することができました。また、捻挫なども6週間前後はかかるようなケースでも2~3週間で症状が治まるというデータも出てきています。なかでもオスグッド(成長期の膝痛)と酸素ルームの相性がとてもよく、痛みが治まるのが早く、かつ再発も少ないですね」と導入前に想像していた以上の効果に目を細める。

高気圧酸素ルームのサイズは幅120cm、高さ140cm、奥行き225cm。大人3人でもゆったり入れるが、当院では1人の患者さんが電気治療をしながら使用することが多いという
捻挫や肉離れなどを起こした際、あまり時間をおかず高気圧酸素ルームに入ることでケガの痛みを和らげ、早期回復につながることが大学など研究機関の実験でも証明されている。
同院では普段、約60分行う電気治療を酸素ルーム内で実施。「普通に酸素ルームに入るだけでも通常より治りが早くなるデータも出ていますが、酸素ルーム内で電気治療を行うことで、時間の有効活用はもちろんのこと、さらに治りも早くなります」と明かす。
高気圧酸素はケガからの早期回復に加え疲労回復や免疫力のアップなどにも効果があることがわかっている。
「若い選手がほとんどなので、よく眠れるようになったなどの声はあまり聞かれませんが、『疲れが取れやすい』という感想はよく耳にします。免疫力のアップやメンタル面を安定させるという効果もあると言われているので、コンディショニングにも役立つと思っています」
体力&心肺機能維持に低圧低酸素を活用

2022年7月に導入した低圧低酸素ルーム内には5台の固定式バイクを設置。脚の疲労骨折などで走れない患者さんが心肺機能維持のために利用することが多く、50分のインターバルトレーニング(ゆっくり10分漕いだ後、「30秒全力+30秒低速」×15本×2セット)を中心に取り組んでいるという
高気圧酸素を治療や疲労回復などに活用。その効果を確認した上で、昨年7月に低圧低酸素ルームを導入した。低圧低酸素は高地トレーニングと同様の環境にできるのが特徴で、心肺機能の強化や故障時のリハビリなどに活用される。
「陸上の長距離選手の場合、疲労骨折などで走れない際に〝心肺機能を落としたくない〟という要望が多く、低圧低酸素ルームを導入した実業団や大学の記事なども見ていましたし、選手のためになればと思って導入しました」と本田氏。
さらに「目標の試合までに時間がある場合は、焦る必要はありませんが、中学・高校生の場合、県大会を勝ち抜かない限り地区大会や全国大会には出場することができません。重要な試合が迫っている時などには特に体力を落としたくない、できるだけパフォーマンスを維持したいと考えているので、そうした選手には有効だと思っています」。

低圧低酸素ルームは幅170cm、高さ190cm、奥行き400cmのサイズ
同院の低圧低酸素ルームには5台の固定式バイクが設置されている。希望する選手には、大学のチームなどで実際に行われているメニューを参考に、標高3000m~1500mの高地と同等の気圧に設定し、高速と低速を繰り返すインターバルトレーニングなどを行なっている。
「最近の傾向として、シューズ改革の影響などもあり、長距離選手の間で脛骨や大腿骨などの疲労骨折で訪れる選手が増えています。そうした選手の場合は走ることができないので、高気圧酸素ルーム内で治療後、低圧低酸素ルームでワットバイクを漕いで持久力の維持に努めています」
このように、低圧低酸素ルームの場合、ケガや故障明けのリハビリ期間中の利用が多いが、駅伝チームやサッカー選手なども鍛錬期の高地トレーニングやポイント練習の代わりに利用することもあるという。選手からも、「普段のポイント練習よりきつい」「低圧低酸素ルームでのトレーニングのお陰で体力を維持できた」などの声が聞かれると言い、本田氏も「効果は絶大ですね。高気圧酸素ルームとセットで使うことで、選手のケガからの早期復帰に本当に役立っています」と笑顔で話す。

院内はウエイトトレーニング機器やストレッチのスペースも設けており、整骨院とトレーニングジムを兼ねた施設と言える
高地トレーニング並みの効果が確認できたことで、「低圧低酸素ルームがあれば、高地に行かずとも高地のような環境を作ることができ、遠征コストも抑え、いつでも高地トレーニングを行うことが可能となります。今後はさらにデータを蓄積し、独自のエビデンスを確認した上で、リハビリに加え、地元のチームに強化トレーニングとしても活用してもらえるようになれば」と構想を描く。
評判が口コミで広がり経営面でも貢献

本田代表(右)はケガや故障からの早期回復を願うアスリートを全力でサポートしている
酸素ルームを導入後、「ケガからの早期復帰ができる」と口コミも広がり、県内では他に低圧低酸素ルームを設置しているところがないということも相まって、訪れる患者さんが増加。
「酸素ルームはデメリットがほとんどなく、初めての方でも安心して使用できるので、小学生から大人まで多くの方に使っていただいており、導入後は来院者が1.5倍ぐらいは増えています」と本田氏。酸素ルームの導入は経営面でも大きな成果を上げている。
TSCスポーツ整骨院長崎には、酸素ルームの他、ところ狭しとトレーニング機器が並んでいる。もちろんケガや故障の治療が第一となるが、「ストレッチやケガの再発を防ぐためのトレーニング、試合に向けたコンディショニングなど、選手のパフォーマンスアップをサポートできるのが強みだと思っています」と本田氏。
これまでもそうした選手へのアプローチは行なっていたが、酸素ルームの導入により「早期復帰というアイテムが加わったことは大きいですね」としみじみと話す。 選手たちは、そのスポーツが好きで打ち込んでいる。
「ケガの場合は仕方がないですが、オスグッドなどの成長痛で練習を休みたくないというのが選手の本音です。そういうケースでも酸素ルームは本当に役立っています」
治療現場における酸素ルームの活用法はまだまだ未開発の部分も多い。地元に密着したスポーツ治療院として、今後も酸素ルームを積極的に活用し、「1日でも早くケガを治して練習したい、試合に出たい」という声に応えられるようサポートしていく心構えだ。
文/花木 雫
足のスポーツ外傷・障害専門
TSCスポーツ整骨院長崎
長崎県諫早市青葉台44 フォレスト・ヴィラ
TEL 0957-47-5479
【受付】10:00~20:30 【休診】日曜/祝日
TSCスポーツ整骨院長崎ホームページ

「TSCスポーツ整骨院長崎」は長崎県内の各地からアクセスしやすい諫早市にある
スポーツ専門の治療院として地元の長崎で開業
長崎県諫早市で2018年にスポーツ専門の治療院として産声を上げた「TSCスポーツ整骨院長崎」。代表を務める本田智久氏が、福岡県にある医療法人TSCタケダスポーツ・ビューティークリニックで3年間修業したのち、地元・長崎で「ケガで悩んでいる選手を一人でも多く助けたい」という思いで開業し、今年で5年目を迎える。 サッカーどころとしても知られる長崎。本田氏も幼い頃からサッカーに打ち込み、自身もケガに苦しんだ経験を持つ。高校では建築科に在籍していたが、「サッカーをやっていたこともあり、将来はスポーツ関連の仕事に就きたいと漠然と考えていました」と当時を振り返る。その際、強豪校でトレーナーを務める治療家と出会い、「そういう関わり方もあることを知り、スポーツトレーナーを目指すようになりました」ときっかけを口にする。 高校卒業後に東京の専門学校で学び、強豪大学のラグビー部でトレーナー活動を経験した。その後、いったん長崎に戻っている間、難関として知られる日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー資格、柔道整復師の国家資格も取得。そして、前述の福岡のクリニックで著名なスポーツドクターのもとで修業を積んだ。 九州の拠点でもある福岡。「当時も小学生からプロ選手まで、スポーツをする多くの方々が九州各地から福岡まで治療に来られていました」と言い、来院する多くの人たちの共通の悩みが「痛みの原因がわからず、どうしたらいいかわからない」「今の痛みのまま練習を続けていいのか不安」「近くの整形外科に行ったけど今後の対応がよくわからない」といったものだった。 選手たちが知りたいのは、「痛みの原因は何なのか」「復帰までどれぐらいの期間がかかるのか」「今で自分にできることは何か」であり、何より早期復帰、そして復帰後、ケガをする前のパフォーマンスを発揮できるかにある。ケガに悩む多くの若いスポーツ選手と関わることで、そうした選手を手助けしたいという思いがより強くなっていった。 島原出身の本田氏。「当時は長崎からも多くの患者さんが福岡まで来ておられ、長崎にはスポーツ専門の治療院がなかったことから、地元の長崎、県内のどこからも来やすい諫早で開業することを決めました」と経緯を話す。ケガに苦しむ選手の早期復帰、再発予防を目指して素ルームを導入
スポーツ選手にとってケガや故障はつきものだ。いくら体調管理に努めていても、すべてを防ぐことは困難となる。もしケガや故障をした場合、選手だれもが願うのが現状回復と早期復帰となる。しかし、完全復活までの道のりは決して平坦ではない。そこで、「選手を少しでも早く、そして万全な状態で復帰させ、再発防止に役立てたい」と、以前から注目していた酸素ルームの導入に踏み切った。 [caption id="attachment_95285" align="alignnone" width="800"]
治療用に高気圧酸素を活用、選手の早期復帰に活躍
それでもなお、「県内でも酸素カプセルを導入している治療院も数多くあり、正直、使い方や効果を全面的に信じてはいませんでした」と不安もあった。 2020年10月、治療に生かすために日本バルク工業の高気圧酸素ルームを導入。試行錯誤を繰り返すなか、「骨折はもちろん、肉離れや捻挫などの電気治療を酸素ルーム内で行うことで、例えば鎖骨を骨折し整形外科の先生から3ヵ月は絶対安静と言われた選手が2ヵ月ほどでリハビリに移れるなど、1ヵ月以上復帰を短縮することができました。また、捻挫なども6週間前後はかかるようなケースでも2~3週間で症状が治まるというデータも出てきています。なかでもオスグッド(成長期の膝痛)と酸素ルームの相性がとてもよく、痛みが治まるのが早く、かつ再発も少ないですね」と導入前に想像していた以上の効果に目を細める。 [caption id="attachment_95286" align="alignnone" width="600"]
体力&心肺機能維持に低圧低酸素を活用
[caption id="attachment_95287" align="alignnone" width="600"]


評判が口コミで広がり経営面でも貢献
[caption id="attachment_95290" align="alignnone" width="800"]

RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
Latest articles 最新の記事
2025.04.05
四大学対校・100mで好記録 男子は愛宕頼10秒16w 女子はフロレス・アリエ11秒45w 関東私学七大学対校3000mは東洋大・松井海斗が日本人トップ
4月5日、トラック&フィールドシーズンの開幕を告げるように、各地で大学の対校戦が開催された。 神奈川県相模原市の相模原ギオンスタジアムでは国⼠⼤、順⼤、東海⼤、日体大、⽇⼥体⼤による第61回四大学対校が行われ、男子100 […]
2025.04.05
【男子5000m競歩】山田大智(西脇工高3兵庫)19分57秒40=高校歴代6位
兵庫県高校東播地区記録会が4月5日、加古川運動公園陸上競技場で行われ、男子5000m競歩で山田大智(西脇工3)が高校歴代6位の19分57秒40をマークした。 これまでの山田の自己記録は、昨年の国民スポーツ大会少年共通で優 […]
2025.04.05
パリ五輪代表の五島莉乃、高島由香が出場見送り 男子の斎藤将也も欠場/日本選手権10000m
日本陸連は4月4日、日本選手権10000m(4月12日/熊本総合)の確定エントリーリストを発表した。 日本選手権10000mは3月28日にエントリーが発表されていたが、その後、4日までに男女6名から出場キャンセルの申し出 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報