2022.12.23
近年、躍進を続けている実業団チームがSGホールディングスだ。日本選手権は3年連続で入賞者を輩出中。ニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝)は5年連続で順位を上げており、前回は過去最高の7位に入った。今季は青学大で活躍した入社3年目の鈴木塁人がチームの主軸に成長。佐久長聖高(長野)と早大時代は〝世代トップ〟に君臨した中谷雄飛と、一般入試で明大に入学して最後の学生駅伝で10区を4位と好走した橋本大輝が加入した。2023年の元日、SGホールディングスが〝新たなシーン〟を創造する──。
前回のニューイヤー駅伝は最終7区で11位から7位へ躍進
──前回のニューイヤー駅伝はチーム最高順位となる7位に入りました。それぞれどんな感想をお持ちですか?
鈴木 僕自身、1年目のニューイヤー駅伝(2021年)は最終7区で8位から10位に順位を落としてしまい、非常に悔しい思いをしました。前回は「今度こそ」という思いで1年間やってきて、スピード区間の3区(13.6km)で自分の力を100%発揮できたと思います(区間9位の走りで19位から15位に浮上)。ただ、競り合う選手が強く、力不足を感じた部分もありました。最後はアンカー(15.5km)の三上嵩斗さんの底力(11位から7位に浮上)を見させてもらって、僕も本当にうれしかったです。
中谷 途中、厳しい展開だったので、最後までハラハラドキドキしました。最後は三上さんが盛り返して7位でゴールしたのを見たときは、すごくうれしかったです。来年、僕もこのチームでニューイヤー駅伝を走ってしっかり活躍したいな、と思いました。
橋本 序盤は少し出遅れたんですけど、そこからしっかり盛り返していくチーム力に圧倒されました。ミスを全員で取り返していく。そんな強い選手がいるチームに加われることが、楽しみであり、自分もその中で活躍できるのか不安も感じました。
次は 新人2人のSGホールディングス志望理由は?
前回のニューイヤー駅伝は最終7区で11位から7位へ躍進
──前回のニューイヤー駅伝はチーム最高順位となる7位に入りました。それぞれどんな感想をお持ちですか? 鈴木 僕自身、1年目のニューイヤー駅伝(2021年)は最終7区で8位から10位に順位を落としてしまい、非常に悔しい思いをしました。前回は「今度こそ」という思いで1年間やってきて、スピード区間の3区(13.6km)で自分の力を100%発揮できたと思います(区間9位の走りで19位から15位に浮上)。ただ、競り合う選手が強く、力不足を感じた部分もありました。最後はアンカー(15.5km)の三上嵩斗さんの底力(11位から7位に浮上)を見させてもらって、僕も本当にうれしかったです。 [caption id="attachment_88895" align="alignnone" width="800"] 前回のニューイヤー駅伝は序盤の出遅れを徐々に巻き返し、最終7区の三上嵩斗(左)が11位から4人抜き。チーム過去最高の7位でフィニッシュした[/caption] 中谷 途中、厳しい展開だったので、最後までハラハラドキドキしました。最後は三上さんが盛り返して7位でゴールしたのを見たときは、すごくうれしかったです。来年、僕もこのチームでニューイヤー駅伝を走ってしっかり活躍したいな、と思いました。 橋本 序盤は少し出遅れたんですけど、そこからしっかり盛り返していくチーム力に圧倒されました。ミスを全員で取り返していく。そんな強い選手がいるチームに加われることが、楽しみであり、自分もその中で活躍できるのか不安も感じました。 次は 新人2人のSGホールディングス志望理由は?新人2人のSGホールディングス志望理由は?
──中谷選手と橋本選手は今年4月に入社しました。実業団で競技を続けるにあたりSGホールディングスを選んだ理由を教えてください。 中谷 早大時代は比較的自由にやらせていただいたので、自分なりにアレンジしながら練習できる環境を探していたんです。そのなかで、練習環境も良くて、強い先輩もいる。大学の流れを引き継いで競技を続けられるのかなと思って選びました。 [caption id="attachment_88896" align="alignnone" width="800"] 長野・佐久長聖高、早大を通じて「世代トップ」のランナーとして注目されてきた中谷[/caption] 橋本 僕は大学で競技を引退するつもりでいました。でも、4年生の秋以降に記録が伸びてきて、自分の可能性を広げたい、もう少し競技を続けたい、と思ったときに声をかけていただいたのが理由です。 ──橋本選手は明大に入学したのもスポーツ推薦ではなく、大学時代は一般の就職活動をされていたそうですね。 橋本 鉄鋼メーカーに内定をいただいていたんですけど、物流業界も考えていたんです。SGホールディングスは競技面だけでなく、社会貢献も含めて、自分にとっては最高な企業だと思いました。 ──中谷選手は高校時代から世代トップとして活躍してきました。大学の4年間をどう振り返りますか? 中谷 仲間や指導者にも恵まれて、他校ではできないような経験をたくさんさせていただき、本当に濃い4年間だったと思っています。ただ、高校時代と比べて苦しいこともたくさんありました。うまくいかないことも多々あって、自分が思い描いていた大学4年間とはちょっと違った部分もあったと思っています。 ──鈴木選手にうかがいますが、対照的な新人2人を迎え、先輩としての心境、チームの反応はいかがですか? 鈴木 他のチームから実績ある選手が加入したこともあり、SGホールディングスは強くなっています。そのなかで、タイプが異なる楽しみな新人が入社しました。いろんな大学のメソッドを受け継いだ選手たちが集まることで、チームはもっと強くなると思います。また、注目されるような選手に「SGホールディングスへ入りたい」と言ってもらえるようになったのは、先輩としてすごくうれしいです。 ──学生から実業団選手という立場になりました。競技に対する心構えも変わったと思います。 中谷 昨年度までと違って、走るのが仕事になるので、より結果を残さないといけません。会社を始め、多くの方たちに応援していただいているので、結果で恩返しするんだという思いが強くなりました。 橋本 僕の場合、大学はスポーツ推薦で入ったわけではなかったので、正直、「結果が出なくても仕方ない」という気持ちがあったんです。でも、実業団選手は責任があります。学生時代よりも考えてトレーニングを積んでいますし、いい環境でやらせていただけることに結果で恩返すしかありません。 ──鈴木選手と中谷選手は東京・西葛西、橋本選手は滋賀・守山を拠点としています。東京と滋賀でトレーニングなどに違いはあるのでしょうか? 鈴木 東京はトラックメイン、滋賀はマラソン・駅伝というイメージですね。東京は練習メニューを個々で相談しながら、合わせるところは他の選手と一緒にやっている感じです。関東出身の選手が多いので、トレーニングや治療院を継続しやすい環境を与えていただいています。 橋本 東京と違って滋賀はスタミナ強化の練習が多いんです。1本1本の質は高くないかもしれないけど、間のレストをアレンジして、いやらしいきつさを求めている。レースを意識したトレーニングができているなと感じています。 次は 「青学大の鈴木から卒業」日本選手権5000m4位などの活躍で「青学大の鈴木」から卒業
──2022年ももうすぐ終わります。今季の自己評価をお願いいたします。 鈴木 今季は日本選手権の入賞を目標にしてきました。ニューイヤー駅伝後にギックリ腰になって出遅れましたが、5月のゴールデンゲームズ(宮崎・延岡市)の5000mで13分30秒を切って、6月の日本選手権(大阪市)で勝負するというプランを立てたんです。2つとも目標を達成できて、日本選手権5000mは4位(13分32秒39)に入ることができました。青学大を卒業して、やっと自分で誇れるような結果を残せた。「青学大の鈴木」と言われ続けることがコンプレックスだったので、それを払拭することができたと思います。 [caption id="attachment_88897" align="alignnone" width="800"] 今季の鈴木は日本選手権の5000mで4位入賞するなどチームの主力に成長した[/caption] 中谷 僕は、高校時代も大学時代もそうだったんですけど、環境の変化に慣れるまで結構時間かかるタイプなので、今季もシーズン通してうまくいかないことが多かったですね。いろんなことが空回りしちゃったかなという感じがします。新しいステージに入ったので、練習の強度を上げました。動きを重視して設定より少し速くしたりした結果、オーバートレーニングになってしまったんです。夏合宿前から左アキレス腱に痛みが出て、9月下旬の全日本実業団陸上(岐阜市)が終わって悪化しました。学生時代を含めても一番辛いシーズンになってしまったのかなという感じがします。橋本は関西実業団駅伝でいきなり最長区間を担う
橋本 僕は入社してすぐに左足首上部がコンパートメント症候群(腫れてしびれや痛みが出る症状)になり、10日間ほど入院しました。7月から走り始めて、10月16日の東京レガシーハーフマラソンで自己ベスト(1時間3分01秒)。関西実業団駅伝(和歌山・田辺市)も任された区間でそれなりに走れたので、徐々に調子を上げられているかなと思います。 ──2連覇がかかった11月13日の関西実業団駅伝はNTT西日本に先着を許しての2位。橋本選手は最長区間の5区(16.0㎞)を任されて、区間3位でした。 橋本 自分はスピードでガンガン行くよりも淡々と走る方が得意ですが、終盤で大塚製薬・上門大祐さんに離されました。全体的な走力が足りなかったと思うので、トレーニングを継続して、もっと土台を上げていきたいです。また、最長区間を任されたのをひとつの自信にしたいと思います。 [caption id="attachment_88898" align="alignnone" width="800"] 11月中旬の関西実業団駅伝で新人ながら最長16.0kmの5区を任された橋本(左)。右は6区を務めた湯澤舜[/caption] 鈴木 自分は別のレースに出ていたので、今年の関西実業団駅伝のレースの雰囲気はわからないですけど、もっと結果は良くないのかなと覚悟していました。走った選手はがんばってくれたと思いますし、特に橋本は初出場で最長区間。雨も降って、難しい展開でしたけど、ニューイヤー駅伝に向けてはプラスになる材料も多かったと思います。ニューイヤー駅伝では「5位以内」を狙いたい
──次は28年連続29回目のニューイヤー駅伝です。現在の状態と個人の目標を教えてください。 鈴木 去年は関西実業団駅伝の後に少し故障してしまい、ニューイヤー駅伝にギリギリ合わせた感じでした。今年は1月1日に調子が合うように、ピーキングを少しずらしながらやっています。前回の3区はキロ2分50秒ペースで押していけばいいと思っていたんですけど、周囲のレベルが予想以上に高かった。今季は5000mで13分30秒をクリアできたので、キロ2分45秒ペースで13.6㎞を押していきたい。また3区を任されることになると思いますが、1・2区の選手がいい順位できてくれるのを願っています。 中谷 状態を100%戻すのは厳しいと思うので、80%ぐらいまでは戻して、任された区間をしっかりと走りたい。今季は納得いくレースはほとんどないので、ニューイヤー駅伝で存在感をアピールして、来季のトラックシーズンにつなげていきたいです。 橋本 僕がニューイヤー駅伝に出場するとしたら後半区間だと思うので、6区あたりを狙いたいですね。区間10番以内をひとつの目標に置いています。11月27日の日体大長距離競技会10000mでも28分36秒02の自己ベストが出ましたし、最後の宮崎合宿でしっかりとトレーニングを積んでいきたいです。 ──ニューイヤー駅伝のチーム目標を教えてください。 鈴木 前回以上、自分としては、できれば「5位以内」を狙いたいと考えています。普段は東京と滋賀で別々に練習をしていますが、12月中旬から宮崎合宿で同じメニューをやりました。元日を走れるのは7人だけなので、本当にピリピリした雰囲気の合宿になりました。 [caption id="attachment_88899" align="alignnone" width="800"] ニューイヤー駅伝に向けて意気込みを語る鈴木[/caption]全国高校駅伝の思い出
──12月25日にはSGホールディングスが特別協賛している全国高校駅伝が開催されます。中谷選手は長野・佐久長聖高時代に大活躍しました。一番の思い出はどんなことですか? 中谷 やはり全国優勝した高3の時(2018年)ですね。3年時は狙って、勝つことができました。1年間目標にしていたので本当にうれしかったです。監督も1区(10km)に起用するか、(複数の留学生とも競う)3区(8.0875km)に起用するか迷っていたようで、最後は「どっちに行きたいんだ?」と聞かれて、希望していた1区に決まりました。区間賞でしたけど、2区だった2学年下の服部凱杏(現・立教大)からは「ちょっと予想外でした」と言われました(笑)。 [caption id="attachment_88900" align="alignnone" width="693"] 高3の2017年に全国高校駅伝で〝花の1区〟を制し、チームの優勝に貢献した中谷[/caption] ──中谷選手と橋本選手は高校時代、大きな差があったと思います。 橋本 高校時代(兵庫・須磨学園)、僕は全国高校駅伝でも沿道で応援する係でした。中谷の走りを見て、すごい選手が同学年にいるのに驚きましたし、いずれチームメイトになるとはまったく想像もしていませんでした。別次元の存在だったので、今、隣にいるのもすごく不思議な感覚です。 ──橋本選手は高校時代、チームのレギュラーではなかったそうですね。 橋本 3年時、チームは全国高校駅伝に出場したんですけど、僕は登録メンバーにも入ることができなかったんです。そのなかで中谷は、自分が勝てない須磨学園のチームメイトを1区で1分近くも引き離した。ただただすごいレベルの選手でしたね。僕の高校時代の5000mのベストは15分09秒ですけど、中谷は13分47秒でしたから。 ──鈴木選手も千葉・流経大柏高3年時(2015年)には全国高校駅伝に出場しています。 鈴木 記念大会の年で、県大会は負けたんですけど、関東大会で優勝して都大路初出場を決めたんです。チームとしてゼロからやってきたので、その瞬間が人生のなかで一番うれしかったですね。大学時代の箱根駅伝の優勝よりもうれしかった。ただ、都大路に向けてお祭り騒ぎのような雰囲気になって、本番は浮き足だってしまいました(笑)。もう一度走るなら箱根よりも都大路ですね。年末年始の駅伝は、全国高校駅伝が最初にあります。高校駅伝が盛り上がってくれれば、次は僕たちのニューイヤー駅伝です。ジュニア世代は学生駅伝が一番大きな目標になると思うんですけど、大学生の次は社会人になる。学生駅伝がすべてじゃないということを僕らが伝えることで陸上界の発展につながると思っています。 ──来季は近藤幸太郎選手(青学大)、中村唯翔選手(青学大)、竹村拓真選手(東海大)、イマヌエル・キプチルチル選手(倉敷高)が入社予定です。SGホールディングスのさらなる躍進を楽しみにしたいと思います。 ◎構成/酒井政人、撮影/船越陽一郎、月刊陸上競技
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