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2020.03.27

編集部コラム「善意」
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攻め(?)のアンダーハンド

リレーコラム🔥

毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ!
陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。
編集スタッフが週替りで綴って行きたいと思います。
暇つぶし程度にご覧ください!

第35回「善意(船越陽一郎)


 取材がない日の出勤は、いつもの電車 同じ時間の同じ車両の同じ場所に乗り込みます。
 
 私のいつもの場所の斜め前に、私と同世代であろう中年男性がいつも既に座っています。そして、私が乗車する駅の次の駅でショートカットの女性が乗ってきてその座っている男性の前に立ちます。

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 それが、私の日常の朝の風景でした。

 そんなある日、ショートカットの女性がいつも通り乗車してきたのですが、持っていた鞄にマタニティーマークのキーホルダーをつけていました。いつも既に座っている男性は、そのマタニティーマークのキーホルダーにすぐに気が付き、ショートカットの女性に自分が座っている席を譲るという、ほほ笑ましい一幕がありました。

 私の憶測ですが、恐らくこの二人は初めて言葉を交わしたのではないだろうかと思います。

 そして、その日を境に2人ともその電車のその場所に乗り込んでくる事もなくなってしまいました。

 これも私の勝手な憶測ですが、いつもの男性はこれからもそのショートカットの女性が自分の前に来る度に気をかけ続けなければならないと思ったのかもしれません。

 また、ショートカットの女性はその男性に気を遣わせ続けると思った、もしくは、その男性の前に立てば席を譲ってもらえると思っていると思われることを避けたのかもしれません。真相は確認しようがありませんが・・・・・・。

 いずれにしても、何気ない自分たちの朝の風景で気を遣ったり遣われたりすることが嫌だったのかなと思います。

 何の狙いもない純粋に相手のことを想った〝善意〟が、彼らの何気ない日常を変えてしまったのかもしれません。

 少しオーバーにとらえ過ぎかもしれませんが。

 そもそも〝善意〟とは何でしょうか?

 相互に良い結果がもたらされなければ、それは〝善意〟ではないのでしょうか?

 相手に伝わらなければ、意味をなさないのでしょうか?

 世の中って本当に面倒くさいなって思ってしまいます。

 今回の新型コロナウイルスやオリンピックのことで途方に暮れている方、たくさんいらっしゃると思いますが、決断の根底にあるものは〝善意〟によるものであると私は信じたいと思います。

 ただ、その〝善意〟が必ずしも良い結果をもたらすものではないことも、覚悟しておかなければならないとも思います。

船越陽一郎(ふなこし・よういちろう)
月刊陸上競技写真部
1974年12月生まれ。172cm、○0kg。福岡県春日市出身
小学生の時に身体が弱く、喘息持ちだったため、鍛えるためにラグビーを始め「走れば治る」が口癖のドSのコーチに肉体改造される。大学までラグビーを続けるも卒業と同時に引退。何を思ったか社会人でボクシングを始める。戦績3戦3敗(3KO負け)。秘密兵器の左フックを編み出すも、秘密のまま引退。なんじゃかんじゃあって現在に至る。

編集部コラム第34回「ピンチをチャンスに」(松永)
編集部コラム第33回「日本記録アラカルト」(大久保)
編集部コラム第32回「独断で選ぶ2019年度高校陸上界5選」(井上)
編集部コラム第31回「記録と順位」(山本)
編集部コラム第30回「答えを見つけ出す面白さ」(向永)
編集部コラム第29回「初めてのオリンピック」(小川)
編集部コラム第28回「人生意気に感ず」(船越)
編集部コラム第27回「学生駅伝〝区間賞〟に関するアレコレ」(松永)
編集部コラム第26回「2019年度 陸上界ナンバーワン都道府県は?」(大久保)
編集部コラム第25回「全国男子駅伝の〝私見〟大会展望」(井上)
編集部コラム第24回「箱根駅伝の高速化を検証」(山本)
編集部コラム番外編「勝負師の顔」(山本)
編集部コラム第23回「みんなキラキラ」(向永)
編集部コラム第22回「国立競技場」(小川)
編集部コラム第21回「〝がんばれ〟という言葉の力と呪縛」(船越)
編集部コラム第20回「日本記録樹立者を世代別にまとめてみた」(松永)
編集部コラム第19回「高校陸上界史上最強校は?(女子編)」(大久保)
編集部コラム第18回「独断で選ぶ全国高校駅伝5選」(井上)
編集部コラム第17回「リクジョウクエスト2~そして月陸へ~」(山本)
編集部コラム第16回「強い選手の共通点?」(向永)
編集部コラム第15回「続・ドーハの喜劇?」(小川)
編集部コラム第14回「初陣」(船越)
編集部コラム第13回「どうなる東京五輪マラソン&競歩!?」(松永)
編集部コラム第12回「高校陸上界史上最強校は?(男子編)」(大久保)
編集部コラム第11回「羽ばたけ日本の中距離!」(井上)
編集部コラム第10回「心を動かすもの」(山本)
編集部コラム第9回「混成競技のアレコレ」(向永)
編集部コラム第8回「アナウンス」(小川)
編集部コラム第7回「ジンクス」(船越)
編集部コラム第6回「学生駅伝を支える主務の存在」(松永)
編集部コラム第5回「他競技で活躍する陸上競技経験者」(大久保)
編集部コラム第4回「とらんすふぁ~」(井上)
編集部コラム第3回「リクジョウクエスト」(山本)
編集部コラム第2回「あんな選手を目指しなさい」(向永)
編集部コラム第1回「締め切りとIHと五輪」(小川)

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第35回「善意(船越陽一郎)

 取材がない日の出勤は、いつもの電車 同じ時間の同じ車両の同じ場所に乗り込みます。    私のいつもの場所の斜め前に、私と同世代であろう中年男性がいつも既に座っています。そして、私が乗車する駅の次の駅でショートカットの女性が乗ってきてその座っている男性の前に立ちます。  それが、私の日常の朝の風景でした。  そんなある日、ショートカットの女性がいつも通り乗車してきたのですが、持っていた鞄にマタニティーマークのキーホルダーをつけていました。いつも既に座っている男性は、そのマタニティーマークのキーホルダーにすぐに気が付き、ショートカットの女性に自分が座っている席を譲るという、ほほ笑ましい一幕がありました。  私の憶測ですが、恐らくこの二人は初めて言葉を交わしたのではないだろうかと思います。  そして、その日を境に2人ともその電車のその場所に乗り込んでくる事もなくなってしまいました。  これも私の勝手な憶測ですが、いつもの男性はこれからもそのショートカットの女性が自分の前に来る度に気をかけ続けなければならないと思ったのかもしれません。  また、ショートカットの女性はその男性に気を遣わせ続けると思った、もしくは、その男性の前に立てば席を譲ってもらえると思っていると思われることを避けたのかもしれません。真相は確認しようがありませんが・・・・・・。  いずれにしても、何気ない自分たちの朝の風景で気を遣ったり遣われたりすることが嫌だったのかなと思います。  何の狙いもない純粋に相手のことを想った〝善意〟が、彼らの何気ない日常を変えてしまったのかもしれません。  少しオーバーにとらえ過ぎかもしれませんが。  そもそも〝善意〟とは何でしょうか?  相互に良い結果がもたらされなければ、それは〝善意〟ではないのでしょうか?  相手に伝わらなければ、意味をなさないのでしょうか?  世の中って本当に面倒くさいなって思ってしまいます。  今回の新型コロナウイルスやオリンピックのことで途方に暮れている方、たくさんいらっしゃると思いますが、決断の根底にあるものは〝善意〟によるものであると私は信じたいと思います。  ただ、その〝善意〟が必ずしも良い結果をもたらすものではないことも、覚悟しておかなければならないとも思います。
船越陽一郎(ふなこし・よういちろう) 月刊陸上競技写真部 1974年12月生まれ。172cm、○0kg。福岡県春日市出身 小学生の時に身体が弱く、喘息持ちだったため、鍛えるためにラグビーを始め「走れば治る」が口癖のドSのコーチに肉体改造される。大学までラグビーを続けるも卒業と同時に引退。何を思ったか社会人でボクシングを始める。戦績3戦3敗(3KO負け)。秘密兵器の左フックを編み出すも、秘密のまま引退。なんじゃかんじゃあって現在に至る。
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