2022.09.30
FOCUS! 高校生INTERVIEW
児島 柚月 Kojima Yuzuki
西京3京都
活躍中の注目高校アスリートをフォーカスして紹介! 今回は女子短距離のマルチアスリート・児島柚月選手(西京3京都)にインタビューしました。徳島インターハイでは200mと400mを制覇。この2種目でのインターハイ2冠は8年ぶりでした。100mを含めて3種目に挑んだ真夏の激闘をあらためて振り返るとともに、間近に迫る栃木国体(陸上競技は10月6日~10日)に向けた意気込みや、将来の目標も聞きました。
自信がついたインターハイ2種目V
――徳島インターハイは、どんなテーマを持って臨みましたか。
児島 3種目に出場するということで、集中力を保てるかがポイントと考えていました。インターハイ近畿大会でも同じようなスケジュールで走ったので、「いつも通り」と自分に言い聞かせていたのと、周りから「3冠、がんばってね」という期待をプレッシャーに感じたら終わると思って、1本1本を大切にしながら楽しみたいな、と。あとは恩返しや自分の集大成を結果で残すという気持ちが強かったです。
――恩返しの相手はどなたですか。
児島 一番は顧問の渡邉為彦先生です。高校入学から約2年半、陸上の指導以外にも、いろいろなアドバイスをいただいたり、各地の大会に連れて行ってくださいました。自分の走りで少しでも喜んでほしいなと思っていました。また、チームの他の3年生はみんな引退していましたが、受験勉強で大事な夏休みにもかかわらず、交代で練習に来て一緒に走ったり、インターハイにも3人がサポートに来てくれたりしました。だからこそ金メダルが一番のお土産と思ってレースに臨みました。
――インターハイに向けての練習は順調にできましたか。
児島 近畿大会の後は少し夏バテがありましたけど、時間もあったので焦りはありませんでした。試合が続くと筋肉が落ちやすいので、筋トレを重視しながら、体調を崩さないように走り込みもやって、必要以上にピリピリすることなく、やるべきことをやってきた感じです。
――初日の400mは54秒04の自己ベストで優勝しました。
児島 200m地点で横に捉えられていれば、ラストは負けない自信があったので、内側のレーンに強い選手がいましたが、視界に入らないぐらい離せれば大丈夫かなと。最後のコーナーが開けて、ラスト100mに入ってゴールが見えた時に「行ける」と思えました。54秒04については、自己ベストと西京高校記録だったのはうれしかったですが、53秒台を出したかったなという悔しさもあります。
――2日目の100mはいかがでしたか。
児島 100mは400mと違って予選から抜いている暇はないですし、400mで勝った安心感から気持ちを緩めないように心がけていました。疲れがあったわけではなく、準決勝は2、3歩目あたりで少しつまずいてしまい、決勝に進めませんでした。集中力のなさから来た失敗というか、詰めが甘かったですね。
――気持ちをうまく切り替えられましたか。
児島 レース後は渡邉先生から「自覚はなくても、どこかに400mで勝った安心があったんじゃないか。もう一回、気合いを入れ直して日本一を取ろう」と、励ましていただきました。次の日はレースがなかったので少しゆっくり起きて、トレーナーさんにケアをしていただき、海に連れて行ってもらってリフレッシュできました。
――4日目の200mは24秒32(-1.2)で優勝して2種目制覇となりました。
児島 フィニッシュの瞬間は勝てたとは思いましたが、確信は持てなくて、電光掲示板に結果が出るのを待っていました。優勝できて、よかったとホッとしたのが一番です。でも、(近畿大会での23秒97に続いて)23秒台をもう1回出したかったですし、200mを勝ったからこそ、100mを逃した悔しさがじわじわ来ました。
――インターハイの結果をどう捉えていますか。
児島 初めての全国優勝だったので、今までやってきたことが報われましたし、自信がつきました。渡邉先生を日本一の監督にするという高校生になってからの目標も達成できてうれしかったです。同時に、100mで勝てなくて悔しさもあります。日本一になれなくて悔しいというのは贅沢ですが、そう思えるまでになったという成長も感じられて、次につながる試合になりました。
――活躍の反響は大きかったでしょう。
児島 新聞やネットニュースで取り上げていただいて、久しぶりに小・中学校時代の友達から連絡が来たり、学校の陸上部以外の友達から「記事を見たよ」と言ってもらえたりしてうれしかったです。金メダルをみんなが喜んでくれて、良いお土産を持ち帰ることができました。
――これから残りの高校生活はどんな意識で競技を取り組んでいくつもりですか。
児島 自分のコントロールが重要になると考えています。後輩が自分のことを見ていると思うので、それを良い意味で監視の目だと思って、甘えることなく、自分に厳しくやっていきたいです。
――栃木国体には少年女子Aの100mと300m、女子4×100mリレー、混合4×400mリレーにエントリーされました。目標を教えてください。
児島 100mではインターハイのリベンジをしたいですし、300mも昨年のU18大会が6位と悔しい思いをしたので、それぞれ勝って、100m、200m、300m、400mで日本一になれたら最高です。リレーは西京として出るわけではありませんが、チャンスをもらったので、良い結果を西京のリレーメンバーに届けたいです。
法律や憲法を読むのが好き
――目標とする選手や意識する選手、ライバルはいますか。
児島 あこがれているのは安達茉鈴選手(園田学園女大)です。100mから400mまで強く、どのレースも自信を持って走っているイメージがあります。何度か一緒に練習させていただいた時も、真剣でケアなども含めてしっかりしていて、人としても面白くて優しいです。ライバルは瀧野未来(京都橘2)ですね。1学年下ですが、中学の頃から勝ったり負けたりをずっと繰り返していますし、刺激をもらえる選手です。
――競技者としての最終的な目標を教えてください。
児島 日本代表です。大学進学を考えているので、大学生のうちに達成できたらと思っています。
――陸上はいつから、どんなきっかけで始めましたか。
児島 小学生の頃から運動は好きでしたが、文化系の部活動に入っていたので、5年生の時に運動不足解消になればと母親に勧められて地域のクラブに入ったのがきっかけです。
――陸上を通して得られたことや学んだことはありますか。
児島 それまで何かを始めても長続きしないことが多かったですし、そのために自分を追い込むとか、たくさん練習するとかが苦手でした。でも、陸上で全国大会に行きたいとか、誰かに負けたくないとか思って自然と研究したり、誰かのためにがんばりたいと思ったりすることで成長できました。また、高校に入って、明るくオープンな性格になれたのも陸上のおかげだと思います。
――普段から陸上中心の毎日ですか。
児島 陸上一筋と言えるほどではありませんが、陸上をそっちのけにするほどハマっていることもないので、食事や睡眠などは陸上を優先して考えてしまいます。
――趣味や興味のあることなどを教えてください。
児島 音楽を聴くのが好きです。どちらかと言えばインドア派なので、オフの日は家から一歩も出ずに、好きなボーカロイドなどをよく聴いています。
――得意な教科はありますか。
児島 好きなのは公民や現代社会です。法律とか憲法の文章を読むのが好きです。
――競技以外の面で将来の目標や夢は。
児島 渡邉先生がよくおっしゃるのは、陸上選手として強くなってほしいけれど、人として成長してほしいということです。今後、どんな分野に進んだとしても、人と関わって何かを教えないといけないことはあると思うので、自分がこれまでいろいろな経験をさせていただき、明るくポジティブになれたことを次に伝えたいという気持ちがあります。
――陸上の指導者なども興味がありますか。
児島 選手として一生過ごすことは難しいですが、経験や知識はいつまでも残るので、それを伝えることはできます。ずっと陸上を続けているので、それを生かせたらいいなと思うこともあります。
◎こじま・ゆづき/2004年9月25日生まれ。京都・桂中→西京高。小学5年で陸上を始め、6年時には全国小学生交流大会の4×100mリレー(2走)で準決勝に進んでいる。中学では100mと200mをメインに全中には2、3年時と2年連続で出場。3年時のジュニア五輪A200mで5位入賞を果たした。高校2年時から本格的に取り組んだ400mで、昨年の福井インターハイに出場。秋のU18大会300mでは6位に入る。大きく飛躍を遂げた今季は、徳島インターハイで短距離2冠に輝いた。自己ベストは100m11秒75(22年)、200m23秒97(22年)、300m39秒47(21年)、400m54秒04(22年)、800m2分12秒49(22年)
構成/小野哲史
自信がついたインターハイ2種目V
――徳島インターハイは、どんなテーマを持って臨みましたか。 児島 3種目に出場するということで、集中力を保てるかがポイントと考えていました。インターハイ近畿大会でも同じようなスケジュールで走ったので、「いつも通り」と自分に言い聞かせていたのと、周りから「3冠、がんばってね」という期待をプレッシャーに感じたら終わると思って、1本1本を大切にしながら楽しみたいな、と。あとは恩返しや自分の集大成を結果で残すという気持ちが強かったです。 ――恩返しの相手はどなたですか。 児島 一番は顧問の渡邉為彦先生です。高校入学から約2年半、陸上の指導以外にも、いろいろなアドバイスをいただいたり、各地の大会に連れて行ってくださいました。自分の走りで少しでも喜んでほしいなと思っていました。また、チームの他の3年生はみんな引退していましたが、受験勉強で大事な夏休みにもかかわらず、交代で練習に来て一緒に走ったり、インターハイにも3人がサポートに来てくれたりしました。だからこそ金メダルが一番のお土産と思ってレースに臨みました。 ――インターハイに向けての練習は順調にできましたか。 児島 近畿大会の後は少し夏バテがありましたけど、時間もあったので焦りはありませんでした。試合が続くと筋肉が落ちやすいので、筋トレを重視しながら、体調を崩さないように走り込みもやって、必要以上にピリピリすることなく、やるべきことをやってきた感じです。 ――初日の400mは54秒04の自己ベストで優勝しました。 児島 200m地点で横に捉えられていれば、ラストは負けない自信があったので、内側のレーンに強い選手がいましたが、視界に入らないぐらい離せれば大丈夫かなと。最後のコーナーが開けて、ラスト100mに入ってゴールが見えた時に「行ける」と思えました。54秒04については、自己ベストと西京高校記録だったのはうれしかったですが、53秒台を出したかったなという悔しさもあります。 ――2日目の100mはいかがでしたか。 児島 100mは400mと違って予選から抜いている暇はないですし、400mで勝った安心感から気持ちを緩めないように心がけていました。疲れがあったわけではなく、準決勝は2、3歩目あたりで少しつまずいてしまい、決勝に進めませんでした。集中力のなさから来た失敗というか、詰めが甘かったですね。 ――気持ちをうまく切り替えられましたか。 児島 レース後は渡邉先生から「自覚はなくても、どこかに400mで勝った安心があったんじゃないか。もう一回、気合いを入れ直して日本一を取ろう」と、励ましていただきました。次の日はレースがなかったので少しゆっくり起きて、トレーナーさんにケアをしていただき、海に連れて行ってもらってリフレッシュできました。 ――4日目の200mは24秒32(-1.2)で優勝して2種目制覇となりました。 児島 フィニッシュの瞬間は勝てたとは思いましたが、確信は持てなくて、電光掲示板に結果が出るのを待っていました。優勝できて、よかったとホッとしたのが一番です。でも、(近畿大会での23秒97に続いて)23秒台をもう1回出したかったですし、200mを勝ったからこそ、100mを逃した悔しさがじわじわ来ました。 ――インターハイの結果をどう捉えていますか。 児島 初めての全国優勝だったので、今までやってきたことが報われましたし、自信がつきました。渡邉先生を日本一の監督にするという高校生になってからの目標も達成できてうれしかったです。同時に、100mで勝てなくて悔しさもあります。日本一になれなくて悔しいというのは贅沢ですが、そう思えるまでになったという成長も感じられて、次につながる試合になりました。 ――活躍の反響は大きかったでしょう。 児島 新聞やネットニュースで取り上げていただいて、久しぶりに小・中学校時代の友達から連絡が来たり、学校の陸上部以外の友達から「記事を見たよ」と言ってもらえたりしてうれしかったです。金メダルをみんなが喜んでくれて、良いお土産を持ち帰ることができました。 ――これから残りの高校生活はどんな意識で競技を取り組んでいくつもりですか。 児島 自分のコントロールが重要になると考えています。後輩が自分のことを見ていると思うので、それを良い意味で監視の目だと思って、甘えることなく、自分に厳しくやっていきたいです。 ――栃木国体には少年女子Aの100mと300m、女子4×100mリレー、混合4×400mリレーにエントリーされました。目標を教えてください。 児島 100mではインターハイのリベンジをしたいですし、300mも昨年のU18大会が6位と悔しい思いをしたので、それぞれ勝って、100m、200m、300m、400mで日本一になれたら最高です。リレーは西京として出るわけではありませんが、チャンスをもらったので、良い結果を西京のリレーメンバーに届けたいです。法律や憲法を読むのが好き
――目標とする選手や意識する選手、ライバルはいますか。 児島 あこがれているのは安達茉鈴選手(園田学園女大)です。100mから400mまで強く、どのレースも自信を持って走っているイメージがあります。何度か一緒に練習させていただいた時も、真剣でケアなども含めてしっかりしていて、人としても面白くて優しいです。ライバルは瀧野未来(京都橘2)ですね。1学年下ですが、中学の頃から勝ったり負けたりをずっと繰り返していますし、刺激をもらえる選手です。 ――競技者としての最終的な目標を教えてください。 児島 日本代表です。大学進学を考えているので、大学生のうちに達成できたらと思っています。 ――陸上はいつから、どんなきっかけで始めましたか。 児島 小学生の頃から運動は好きでしたが、文化系の部活動に入っていたので、5年生の時に運動不足解消になればと母親に勧められて地域のクラブに入ったのがきっかけです。 ――陸上を通して得られたことや学んだことはありますか。 児島 それまで何かを始めても長続きしないことが多かったですし、そのために自分を追い込むとか、たくさん練習するとかが苦手でした。でも、陸上で全国大会に行きたいとか、誰かに負けたくないとか思って自然と研究したり、誰かのためにがんばりたいと思ったりすることで成長できました。また、高校に入って、明るくオープンな性格になれたのも陸上のおかげだと思います。 ――普段から陸上中心の毎日ですか。 児島 陸上一筋と言えるほどではありませんが、陸上をそっちのけにするほどハマっていることもないので、食事や睡眠などは陸上を優先して考えてしまいます。 ――趣味や興味のあることなどを教えてください。 児島 音楽を聴くのが好きです。どちらかと言えばインドア派なので、オフの日は家から一歩も出ずに、好きなボーカロイドなどをよく聴いています。 ――得意な教科はありますか。 児島 好きなのは公民や現代社会です。法律とか憲法の文章を読むのが好きです。 ――競技以外の面で将来の目標や夢は。 児島 渡邉先生がよくおっしゃるのは、陸上選手として強くなってほしいけれど、人として成長してほしいということです。今後、どんな分野に進んだとしても、人と関わって何かを教えないといけないことはあると思うので、自分がこれまでいろいろな経験をさせていただき、明るくポジティブになれたことを次に伝えたいという気持ちがあります。 ――陸上の指導者なども興味がありますか。 児島 選手として一生過ごすことは難しいですが、経験や知識はいつまでも残るので、それを伝えることはできます。ずっと陸上を続けているので、それを生かせたらいいなと思うこともあります。 ◎こじま・ゆづき/2004年9月25日生まれ。京都・桂中→西京高。小学5年で陸上を始め、6年時には全国小学生交流大会の4×100mリレー(2走)で準決勝に進んでいる。中学では100mと200mをメインに全中には2、3年時と2年連続で出場。3年時のジュニア五輪A200mで5位入賞を果たした。高校2年時から本格的に取り組んだ400mで、昨年の福井インターハイに出場。秋のU18大会300mでは6位に入る。大きく飛躍を遂げた今季は、徳島インターハイで短距離2冠に輝いた。自己ベストは100m11秒75(22年)、200m23秒97(22年)、300m39秒47(21年)、400m54秒04(22年)、800m2分12秒49(22年) 構成/小野哲史
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