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2022.09.28

NGT48卒業の西村菜那子「陸上界に救われて支えられました」駅伝好きアイドルとしてラストインタビュー

「駅伝好きアイドル」として存在感を発揮してきたNGT48西村菜那子さんが、9月30日でグループを卒業する。2015年からアイドルとして活躍しながら、今では駅伝関連のコラム執筆からゲスト解説、イベントまで、すっかり陸上界になくてはならない一人にまで成長を遂げた(?)

「駅伝は好きでしたがお仕事になるなんてまったく思っていなかった」と振り返る西村さん。いかにして「駅伝好きアイドル」としての地位を築いてきたのだろうか。そして『アイドル』の肩書きが外れてどんな陸上ライフを送っていくのか。グループ卒業を間近に控えて、心境について聞いた。これが「駅伝好きアイドル」としてのラストインタビュー!

駅伝を好きになったのは箱根駅伝と全国男子駅伝

――いよいよ9月30日にNGT48を卒業されます。卒業公演も控えていますが、今の心境は?

7年という数字だけ見ると長いけど、振り返るとあっという間でした。まだ実感は湧かなくてフワフワしています。覚えることがいっぱい。卒業公演のセットリストも考えました!

――「駅伝好きアイドル」「駅伝に詳しすぎるアイドル」として陸上界で圧倒的な存在感がありますが、そもそも駅伝が好きになったのはいつ頃ですか。

両親、特に父が駅伝を好きで箱根駅伝は小さい頃から見ていました。実は両親が初めて旅行に行ったのが京都らしいのですが、その時にやっていた全国高校駅伝で活躍していたのが渡辺康幸さん。当時は「せっかく旅行に来たのに道がふさがっている」と思ったそうですが、あとで気になって調べると、後々に箱根駅伝などで活躍。それからよく見るようになったそうです。

――西村さんが本格的に駅伝を見るようになったのは?

中1の時です。箱根駅伝の往路で東洋大の柏原竜二さんが爆走していたんです。てっきり東洋大が勝ったんだろうなって思っていたら、復路で早大が逆転の総合優勝。駅伝ってこんなに順位が変わるんだって思って、それから追いかけるようになりました。

それからは現地で観戦したり、母と一緒に日体大長距離競技会など記録会にも行ったりするようになりました。でも、実は一番駅伝に興味を持ったのは全国都道府県対抗駅伝なんです。特殊な大会で、つい2週間前に箱根でチームメイトだった選手とライバルになったり、ライバル同士が同じチームになったり。それがおもしろいなって感じたんです。

箱根駅伝を初めて生観戦したのは中3の時で、日体大が優勝しました。最初に行った競技会は確か……八王子ロングディスタンスです!

89回大会の日体大は服部翔大さんが3年生主将で、特集番組では敬語でチームをまとめているのが印象的でした。雪が降っていて、タイムも遅かったんですが、学生主体でチームを立て直して優勝。箱根駅伝らしい大会で、私が思うベスト箱根駅伝です!

――ちょっと飛ばしすぎです! あとで聞こうと思っていたのに……。まずはアイドルになったきっかけから教えてください。

すみません(苦笑)。10年間習っていたクラシックバレエを中2で辞めたのですが、バレエを生かせる職業はなんだろうっていろいろ考えて、そのうちの一つがアイドルでした。

西村さんが駅伝について話し始めたら止まらない!

「駅伝好きアイドル」最初の仕事は原監督との対談

――最初から「駅伝好き」を公言していたんでしょうか?

駅伝好きをお仕事にしようなんてまったく思っていませんでした。そもそもそういう概念がなくて……。自分が詳しいとも、武器になるとも思っていませんでした。わざわざ言うことでもないし、本当に趣味の一つだったんです。

――どういった経緯で……。

最初の3年間は研究生でしたが、その頃にAKB48が10周年を迎えて記念本を発売することになりました。それを読んで読書感想文を書いて、表彰されたら好きな企画ができるというイベントがあったんです。その賞を私がなぜか取れてしまって……。スタッフさんが私の駅伝好きを何となく知ってくださっていて、「青学大の原晋監督にオファーを出すので対談したらどう?」と言ってくれました。研究生のことをいろいろ考えてくれていたのだと思います。

――それが陸上のお仕事第一弾!

16年8月に日刊スポーツで原監督と対談させていただきました。今でも覚えているのが、原監督から「総選挙、何位なの?」と聞かれたこと。私は初めて出て圏外。それが悔しくて「絶対にランクインしたい!」と思ったんです。それから2年後に初めてランクインできました。でもまだお会いできていないのでご報告できていません。

その企画が元は日刊スポーツさんの新潟版だけに載る予定でしたが「おもしろい」と全国版に掲載していただきました。その年末に少し駅伝の取材をいただくようになって、17年1月4日のスポーツ報知さんに『駅伝に詳しすぎるアイドル!』というキャッチコピーをつけていただいて、反響が大きかったです。

――以降、徐々にお仕事が増えていったんですね。

少しずついただけるようになりました。取材していただくと、「ちょっと好きくらいかと思ったら、意外とちゃんと好きなんだね」っておもしろがってくださって(笑)。18年の総選挙で初めてランクインした後に、富士山女子駅伝の公式応援アイドルというお仕事をいただきました。それもきっかけだったと思います。

――肩書きに苦しんだこともあったんじゃないですか?

ありがたかったのですが、プレッシャーもありました。駅伝は好きですが、「詳しすぎる」ためには、ちゃんと勉強しなきゃいけないなって。箱根駅伝前になると10社ほど取材していただくのですが、毎回同じことは言えない。それぞれ違うことを話せるように、工夫したり、調べたりしました。どこまで目立てばいいのかなって迷っていた時期でもあります。

――アイドル活動もしながら陸上について調べたり、現地に足を運んだり。

新潟に住むようになっていたので、握手会で東京に来る時に、握手会終わりで記録会に行っていましたね! おじさま方に「よ、また来たね! 楽しもうね!」なんて言われて(笑)。

――活躍して知名度が上がると逆風もあったのではないですか?

陸上界にとって私は“よそ者”です。陸上をしていたわけでもないですし。好きだからこそわかるのですが、ズカズカと入ってはいけない。最初は「誰?」という感じだったと思いますし、私が発信するのを良しとしない方がいるのも理解できます。でも、陸上界のみなさん、とても温かく受け入れてくださいました。

心掛けていたのは「アイドル」を押しつけないこと。駅伝のお仕事をしている時は、アイドルに引き寄せるのではなく、調べると「アイドルだったんだ」くらいになるのが理想だと思っていました。

特に選手や関係者の方が私についてSNSで発信してくれるようになって、風向きが変わった気がします。柏原さんや、アイドル好きで有名な小松陽平選手、ずっと私の名前をアンケートで書いてくれる拓大の佐々木虎太郎選手など、本当に感謝しています!

いろいろな思い出について語る西村さん

卒業後にやってみたいことは…?

――印象や思い出に残っているお仕事は?

全部楽しかったです! 月陸さんや4years.さんは夢だったコラムを担当させていただきましたし、地元の長野でお仕事できているのも最初のきっかけは春の高校伊那駅伝でした。富士山女子駅伝のお仕事をするようになってからは選手の方に「女子駅伝も発信してくださってありがとうございます」という言葉をいただけたのもうれしかったです。スポーツ報知さんの取材で麗澤大に行けたのもうれしかったです。私は大学に通えなかったので雰囲気を知れました。

去年の出雲駅伝では、柏原さんと神野大地さんという豪華な方々とYouTube配信を担当したんです! 今までは「駅伝が好きなアイドル」というゲスト枠だったのが、このときはMCみたいな立ち位置で……。自分がゲストの時って振られたことに対して自分が勉強してきたことを話せば良かったですが、MC的な役回りだとどうすればいいかわからなくて。だって、絶対にお二人のほうが詳しいじゃないですか!?

――アイドル活動をしている中で、陸上のお仕事はどういう場所でしたか。

苦しい時期でもみなさんが温かくて、アイドルとしての私だけではなく、一個人として接してくださいました。どんな時も陸上関係者の方々は味方になってくれました。卒業発表した時も「陸上界を盛り上げてくださってありがとうございました」と、たくさんのメッセージをいただけてうれしかったです。

――一方で、アイドル「西村菜那子」のファンの方々の存在は?

何をしても、どんな現場にも駆けつけてくれる安心できる存在でした。私は舞台のお仕事も最近では増えていましたが、なかには男性と共演することに抵抗を持つファンもいると思います。でも、私のファンの方々はどこに行っても応援するよ! というスタンスで。何をしてもついてきてくれました。

――いよいよ卒業を控えています。卒業を考えたタイミングはいつ頃ですか。

卒業自体は少し前から頭にありました。舞台『風が強く吹いている』のお話をいただいた時に、駅伝好きのアイドルとして活動してきて、舞台も興味があって。これを一つの集大成にしてもいいかなと思いました。2020年にする予定でしたがコロナ禍で延期。ただ、この舞台だけはNGT48の看板を背負って出たいと思っていました。それが終わってから、少しずつスタッフさんたちと相談して決めました。

最近は卒業するメンバーも増えて、26人いた1期生が今は7人! 卒業が続いていて心配されるファンもいると思いますが、今までが辞めなさすぎただけで……。みんなそれぞれ考えての卒業なので、後押ししてくださったらうれしいです。

――今後は「駅伝好きアイドル」の肩書きがなくなりますね。どんなお仕事をされていく予定ですか? 陸上のお仕事は……。

どうしたらいいですか!?(笑) 最近は、一つのことにこだわらず手広くやれるのが自分の良さだって思うようになりました。なので、いろんなことに挑戦したいです。陸上の大会のプロデュースもやってみたいです! いいじゃん、やろうよって言ってくださる関係者の方もいます。陸上のイベントもたくさん企画したい。今は私のファンの方が多いですが、陸上ファンの方が楽しめるようになればいいなって思っています。月陸さん、コラボしましょう!

――ぜひお願いします! あらためて陸上界へのメッセージをお願いします!!

ありがとうございました。これしかありません! 心が折れていた時も土台を作ってくださったのが陸上のお仕事でした。実はプレッシャーから「駅伝のお仕事がつらいです」ってスタッフさんに言ったこともあります。私なんかがやっていいのかなって。でも、いろいろな感謝の言葉に救われて、支えられました。これからも温かく見守ってください。

――ところで西村さん。確か箱根駅伝の歴代優勝校を全部言えますよね?

それは、もうやめましょうよ!

――第7回大会は?

えっと……中央大学!

――正解です。じゃあ34回大会は?

日本大学!

――おぉ! では52回大会。

うーん……大東文化大学?

――すごい!

もう終わりです!! 間違える前に終わります!

「駅伝好きアイドル」生活約6年で印象に残っているのは?

Q 印象に残る箱根駅伝は?

第95回大会(2019年)です。同じ学年でもある東海大の黄金世代が3年生の時に総合優勝したのですが、その時の2位の青学大のフィニッシュが印象に残っています。5連覇が懸かっていた中で2位だったのですが、鈴木塁人さんは笑顔でフィニッシュしました。これが青学大の雰囲気なんだなって。負けて悔しさを出すのも素敵ですし、笑顔で終わる青学大らしさもいいなって思いました。

Q 印象に残っている選手は?

たくさんいるので挙げるのは難しいですね……。青学大の吉田祐也選手(現・GMOインターネットグループ)です。ずっと“11番目の選手”が最後に区間新記録で走る姿を見て、グループの大塚七海が号泣しながら劇場に来て「青学大の4区の人が……」って。駅伝を知らない人の心にも残るのってすごいなって。

もう一人挙げるとするなら、麗澤大の椎野修羅選手(現・富士通)。練習にお邪魔したときに、みんな苦しそうな中で一人だけ笑って走っていたんです。すごいなって思って監督に話したらやっぱり注目の選手だと挙げていました。

あとは日体大の廻谷賢選手。出雲駅伝、全日本大学駅伝でそうそうたる相手がいる中で区間3位。調べるとSNSがすごく独特でおもしろかったんです。日本一速いパン屋さんになりたい、とか。私がSNSで「おもしろい!」と言うようになったら、「僕の名前を取り上げてくれてありがとうございます」ってメッセージをいただきました(笑)。今では那須拓陽高(栃木)の先生として全国高校駅伝にチームを導いています!

選手やベストオーダーを聞くと真剣に悩みはじめて…
Q 西村菜那子が選ぶ「駅伝好きアイドル時代」の箱根駅伝ベストオーダー!

1区 吉居大和(中大)
2年生ながら佐藤悠基選手(東海大)の区間記録を破ったインパクト大! 1年時の箱根で満足のいく結果ではなく、涙を流していた姿から1年で大成長した姿は駅伝オタクの心を動かしました……。

2区 伊藤達彦(東京国際大)
相澤晃選手(東洋大)とのランニングデートが印象的。つらい表情になってもペースが落ちないどころか、むしろ上がるのが謎です……。根性あふれる走りが好きです!

3区 遠藤大地(帝京大)
『湘南の神』といえばやはりこの選手! 実力はもちろん、なにより海を横に走ること自体が絵になる人です!

4区 相澤 晃(東洋大)
2区に配置するか迷いましたが、相澤晃選手をあえて4区に置くという贅沢さをわかってもらいたくてここに配置しました!

5区 青木涼真(法大)
安定感抜群!! どんな年もどんな選手相手でも、青木涼真選手なら安定した成績を出してくれると信じられます!

6区 秋山清仁(日体大)
一言、山下り職人!!!!!!

7区 花尾恭輔(駒大)
とにかく笑顔で箱根駅伝を楽しんで走っている姿が学生らしくて印象的でした。やはり箱根駅伝は学生駅伝なので、選手が楽しんでいる姿が見ていて一番うれしいです!

8区 鈴木宗孝(東洋大)
箱根駅伝の出場は一度だけでしたがとてもインパクトがありました。先頭を譲ってしまったものの、1年生ながら区間3位。彼が走る姿をもっと見たかったなぁというのが本音です。

9区 平林清澄(國學院大)
本当に1年生? と疑ってしまうほど、どんな相手でも果敢に攻める結果を出すスーパーランナー。まだまだ、これからが本当に楽しみな選手です。

10区 鈴木塁人(青学大)
笑顔でフィニッシュすることが似合う人!! 雑誌の表紙になる姿が想像つく選手ですね!

にしむら・ななこ/1997年8月11日生まれ、O型。長野県出身。特技はクラシックバレエ、歴代の箱根駅伝の優勝校を言える。趣味は陸上観戦、サッカー観戦。2015年にNGT48第1期生オーディションに合格。両親の影響で幼い頃から駅伝を好きになる。アイドルとしての活動を続ける中で、自身のSNSを通して陸上競技に関する情報を発信し、駅伝関連のメディア出演も多数。9月30日の卒業公演をもってグループを卒業する。

構成/向永拓史

「駅伝好きアイドル」として存在感を発揮してきたNGT48西村菜那子さんが、9月30日でグループを卒業する。2015年からアイドルとして活躍しながら、今では駅伝関連のコラム執筆からゲスト解説、イベントまで、すっかり陸上界になくてはならない一人にまで成長を遂げた(?) 「駅伝は好きでしたがお仕事になるなんてまったく思っていなかった」と振り返る西村さん。いかにして「駅伝好きアイドル」としての地位を築いてきたのだろうか。そして『アイドル』の肩書きが外れてどんな陸上ライフを送っていくのか。グループ卒業を間近に控えて、心境について聞いた。これが「駅伝好きアイドル」としてのラストインタビュー!

駅伝を好きになったのは箱根駅伝と全国男子駅伝

――いよいよ9月30日にNGT48を卒業されます。卒業公演も控えていますが、今の心境は? 7年という数字だけ見ると長いけど、振り返るとあっという間でした。まだ実感は湧かなくてフワフワしています。覚えることがいっぱい。卒業公演のセットリストも考えました! ――「駅伝好きアイドル」「駅伝に詳しすぎるアイドル」として陸上界で圧倒的な存在感がありますが、そもそも駅伝が好きになったのはいつ頃ですか。 両親、特に父が駅伝を好きで箱根駅伝は小さい頃から見ていました。実は両親が初めて旅行に行ったのが京都らしいのですが、その時にやっていた全国高校駅伝で活躍していたのが渡辺康幸さん。当時は「せっかく旅行に来たのに道がふさがっている」と思ったそうですが、あとで気になって調べると、後々に箱根駅伝などで活躍。それからよく見るようになったそうです。 ――西村さんが本格的に駅伝を見るようになったのは? 中1の時です。箱根駅伝の往路で東洋大の柏原竜二さんが爆走していたんです。てっきり東洋大が勝ったんだろうなって思っていたら、復路で早大が逆転の総合優勝。駅伝ってこんなに順位が変わるんだって思って、それから追いかけるようになりました。 それからは現地で観戦したり、母と一緒に日体大長距離競技会など記録会にも行ったりするようになりました。でも、実は一番駅伝に興味を持ったのは全国都道府県対抗駅伝なんです。特殊な大会で、つい2週間前に箱根でチームメイトだった選手とライバルになったり、ライバル同士が同じチームになったり。それがおもしろいなって感じたんです。 箱根駅伝を初めて生観戦したのは中3の時で、日体大が優勝しました。最初に行った競技会は確か……八王子ロングディスタンスです! 89回大会の日体大は服部翔大さんが3年生主将で、特集番組では敬語でチームをまとめているのが印象的でした。雪が降っていて、タイムも遅かったんですが、学生主体でチームを立て直して優勝。箱根駅伝らしい大会で、私が思うベスト箱根駅伝です! ――ちょっと飛ばしすぎです! あとで聞こうと思っていたのに……。まずはアイドルになったきっかけから教えてください。 すみません(苦笑)。10年間習っていたクラシックバレエを中2で辞めたのですが、バレエを生かせる職業はなんだろうっていろいろ考えて、そのうちの一つがアイドルでした。 西村さんが駅伝について話し始めたら止まらない!

「駅伝好きアイドル」最初の仕事は原監督との対談

――最初から「駅伝好き」を公言していたんでしょうか? 駅伝好きをお仕事にしようなんてまったく思っていませんでした。そもそもそういう概念がなくて……。自分が詳しいとも、武器になるとも思っていませんでした。わざわざ言うことでもないし、本当に趣味の一つだったんです。 ――どういった経緯で……。 最初の3年間は研究生でしたが、その頃にAKB48が10周年を迎えて記念本を発売することになりました。それを読んで読書感想文を書いて、表彰されたら好きな企画ができるというイベントがあったんです。その賞を私がなぜか取れてしまって……。スタッフさんが私の駅伝好きを何となく知ってくださっていて、「青学大の原晋監督にオファーを出すので対談したらどう?」と言ってくれました。研究生のことをいろいろ考えてくれていたのだと思います。 ――それが陸上のお仕事第一弾! 16年8月に日刊スポーツで原監督と対談させていただきました。今でも覚えているのが、原監督から「総選挙、何位なの?」と聞かれたこと。私は初めて出て圏外。それが悔しくて「絶対にランクインしたい!」と思ったんです。それから2年後に初めてランクインできました。でもまだお会いできていないのでご報告できていません。 その企画が元は日刊スポーツさんの新潟版だけに載る予定でしたが「おもしろい」と全国版に掲載していただきました。その年末に少し駅伝の取材をいただくようになって、17年1月4日のスポーツ報知さんに『駅伝に詳しすぎるアイドル!』というキャッチコピーをつけていただいて、反響が大きかったです。 ――以降、徐々にお仕事が増えていったんですね。 少しずついただけるようになりました。取材していただくと、「ちょっと好きくらいかと思ったら、意外とちゃんと好きなんだね」っておもしろがってくださって(笑)。18年の総選挙で初めてランクインした後に、富士山女子駅伝の公式応援アイドルというお仕事をいただきました。それもきっかけだったと思います。 ――肩書きに苦しんだこともあったんじゃないですか? ありがたかったのですが、プレッシャーもありました。駅伝は好きですが、「詳しすぎる」ためには、ちゃんと勉強しなきゃいけないなって。箱根駅伝前になると10社ほど取材していただくのですが、毎回同じことは言えない。それぞれ違うことを話せるように、工夫したり、調べたりしました。どこまで目立てばいいのかなって迷っていた時期でもあります。 ――アイドル活動もしながら陸上について調べたり、現地に足を運んだり。 新潟に住むようになっていたので、握手会で東京に来る時に、握手会終わりで記録会に行っていましたね! おじさま方に「よ、また来たね! 楽しもうね!」なんて言われて(笑)。 ――活躍して知名度が上がると逆風もあったのではないですか? 陸上界にとって私は“よそ者”です。陸上をしていたわけでもないですし。好きだからこそわかるのですが、ズカズカと入ってはいけない。最初は「誰?」という感じだったと思いますし、私が発信するのを良しとしない方がいるのも理解できます。でも、陸上界のみなさん、とても温かく受け入れてくださいました。 心掛けていたのは「アイドル」を押しつけないこと。駅伝のお仕事をしている時は、アイドルに引き寄せるのではなく、調べると「アイドルだったんだ」くらいになるのが理想だと思っていました。 特に選手や関係者の方が私についてSNSで発信してくれるようになって、風向きが変わった気がします。柏原さんや、アイドル好きで有名な小松陽平選手、ずっと私の名前をアンケートで書いてくれる拓大の佐々木虎太郎選手など、本当に感謝しています! いろいろな思い出について語る西村さん

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――印象や思い出に残っているお仕事は? 全部楽しかったです! 月陸さんや4years.さんは夢だったコラムを担当させていただきましたし、地元の長野でお仕事できているのも最初のきっかけは春の高校伊那駅伝でした。富士山女子駅伝のお仕事をするようになってからは選手の方に「女子駅伝も発信してくださってありがとうございます」という言葉をいただけたのもうれしかったです。スポーツ報知さんの取材で麗澤大に行けたのもうれしかったです。私は大学に通えなかったので雰囲気を知れました。 去年の出雲駅伝では、柏原さんと神野大地さんという豪華な方々とYouTube配信を担当したんです! 今までは「駅伝が好きなアイドル」というゲスト枠だったのが、このときはMCみたいな立ち位置で……。自分がゲストの時って振られたことに対して自分が勉強してきたことを話せば良かったですが、MC的な役回りだとどうすればいいかわからなくて。だって、絶対にお二人のほうが詳しいじゃないですか!? ――アイドル活動をしている中で、陸上のお仕事はどういう場所でしたか。 苦しい時期でもみなさんが温かくて、アイドルとしての私だけではなく、一個人として接してくださいました。どんな時も陸上関係者の方々は味方になってくれました。卒業発表した時も「陸上界を盛り上げてくださってありがとうございました」と、たくさんのメッセージをいただけてうれしかったです。 ――一方で、アイドル「西村菜那子」のファンの方々の存在は? 何をしても、どんな現場にも駆けつけてくれる安心できる存在でした。私は舞台のお仕事も最近では増えていましたが、なかには男性と共演することに抵抗を持つファンもいると思います。でも、私のファンの方々はどこに行っても応援するよ! というスタンスで。何をしてもついてきてくれました。 ――いよいよ卒業を控えています。卒業を考えたタイミングはいつ頃ですか。 卒業自体は少し前から頭にありました。舞台『風が強く吹いている』のお話をいただいた時に、駅伝好きのアイドルとして活動してきて、舞台も興味があって。これを一つの集大成にしてもいいかなと思いました。2020年にする予定でしたがコロナ禍で延期。ただ、この舞台だけはNGT48の看板を背負って出たいと思っていました。それが終わってから、少しずつスタッフさんたちと相談して決めました。 最近は卒業するメンバーも増えて、26人いた1期生が今は7人! 卒業が続いていて心配されるファンもいると思いますが、今までが辞めなさすぎただけで……。みんなそれぞれ考えての卒業なので、後押ししてくださったらうれしいです。 ――今後は「駅伝好きアイドル」の肩書きがなくなりますね。どんなお仕事をされていく予定ですか? 陸上のお仕事は……。 どうしたらいいですか!?(笑) 最近は、一つのことにこだわらず手広くやれるのが自分の良さだって思うようになりました。なので、いろんなことに挑戦したいです。陸上の大会のプロデュースもやってみたいです! いいじゃん、やろうよって言ってくださる関係者の方もいます。陸上のイベントもたくさん企画したい。今は私のファンの方が多いですが、陸上ファンの方が楽しめるようになればいいなって思っています。月陸さん、コラボしましょう! ――ぜひお願いします! あらためて陸上界へのメッセージをお願いします!! ありがとうございました。これしかありません! 心が折れていた時も土台を作ってくださったのが陸上のお仕事でした。実はプレッシャーから「駅伝のお仕事がつらいです」ってスタッフさんに言ったこともあります。私なんかがやっていいのかなって。でも、いろいろな感謝の言葉に救われて、支えられました。これからも温かく見守ってください。 ――ところで西村さん。確か箱根駅伝の歴代優勝校を全部言えますよね? それは、もうやめましょうよ! ――第7回大会は? えっと……中央大学! ――正解です。じゃあ34回大会は? 日本大学! ――おぉ! では52回大会。 うーん……大東文化大学? ――すごい! もう終わりです!! 間違える前に終わります! 「駅伝好きアイドル」生活約6年で印象に残っているのは? Q 印象に残る箱根駅伝は? 第95回大会(2019年)です。同じ学年でもある東海大の黄金世代が3年生の時に総合優勝したのですが、その時の2位の青学大のフィニッシュが印象に残っています。5連覇が懸かっていた中で2位だったのですが、鈴木塁人さんは笑顔でフィニッシュしました。これが青学大の雰囲気なんだなって。負けて悔しさを出すのも素敵ですし、笑顔で終わる青学大らしさもいいなって思いました。 Q 印象に残っている選手は? たくさんいるので挙げるのは難しいですね……。青学大の吉田祐也選手(現・GMOインターネットグループ)です。ずっと“11番目の選手”が最後に区間新記録で走る姿を見て、グループの大塚七海が号泣しながら劇場に来て「青学大の4区の人が……」って。駅伝を知らない人の心にも残るのってすごいなって。 もう一人挙げるとするなら、麗澤大の椎野修羅選手(現・富士通)。練習にお邪魔したときに、みんな苦しそうな中で一人だけ笑って走っていたんです。すごいなって思って監督に話したらやっぱり注目の選手だと挙げていました。 あとは日体大の廻谷賢選手。出雲駅伝、全日本大学駅伝でそうそうたる相手がいる中で区間3位。調べるとSNSがすごく独特でおもしろかったんです。日本一速いパン屋さんになりたい、とか。私がSNSで「おもしろい!」と言うようになったら、「僕の名前を取り上げてくれてありがとうございます」ってメッセージをいただきました(笑)。今では那須拓陽高(栃木)の先生として全国高校駅伝にチームを導いています! 選手やベストオーダーを聞くと真剣に悩みはじめて… Q 西村菜那子が選ぶ「駅伝好きアイドル時代」の箱根駅伝ベストオーダー! 1区 吉居大和(中大) 2年生ながら佐藤悠基選手(東海大)の区間記録を破ったインパクト大! 1年時の箱根で満足のいく結果ではなく、涙を流していた姿から1年で大成長した姿は駅伝オタクの心を動かしました……。 2区 伊藤達彦(東京国際大) 相澤晃選手(東洋大)とのランニングデートが印象的。つらい表情になってもペースが落ちないどころか、むしろ上がるのが謎です……。根性あふれる走りが好きです! 3区 遠藤大地(帝京大) 『湘南の神』といえばやはりこの選手! 実力はもちろん、なにより海を横に走ること自体が絵になる人です! 4区 相澤 晃(東洋大) 2区に配置するか迷いましたが、相澤晃選手をあえて4区に置くという贅沢さをわかってもらいたくてここに配置しました! 5区 青木涼真(法大) 安定感抜群!! どんな年もどんな選手相手でも、青木涼真選手なら安定した成績を出してくれると信じられます! 6区 秋山清仁(日体大) 一言、山下り職人!!!!!! 7区 花尾恭輔(駒大) とにかく笑顔で箱根駅伝を楽しんで走っている姿が学生らしくて印象的でした。やはり箱根駅伝は学生駅伝なので、選手が楽しんでいる姿が見ていて一番うれしいです! 8区 鈴木宗孝(東洋大) 箱根駅伝の出場は一度だけでしたがとてもインパクトがありました。先頭を譲ってしまったものの、1年生ながら区間3位。彼が走る姿をもっと見たかったなぁというのが本音です。 9区 平林清澄(國學院大) 本当に1年生? と疑ってしまうほど、どんな相手でも果敢に攻める結果を出すスーパーランナー。まだまだ、これからが本当に楽しみな選手です。 10区 鈴木塁人(青学大) 笑顔でフィニッシュすることが似合う人!! 雑誌の表紙になる姿が想像つく選手ですね!
にしむら・ななこ/1997年8月11日生まれ、O型。長野県出身。特技はクラシックバレエ、歴代の箱根駅伝の優勝校を言える。趣味は陸上観戦、サッカー観戦。2015年にNGT48第1期生オーディションに合格。両親の影響で幼い頃から駅伝を好きになる。アイドルとしての活動を続ける中で、自身のSNSを通して陸上競技に関する情報を発信し、駅伝関連のメディア出演も多数。9月30日の卒業公演をもってグループを卒業する。
構成/向永拓史

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