2022.09.23
オリンピックの花形である陸上競技! 球技に比べると、すこーし“地味”な印象があるかもしれない……。しかし、中高生合わせて、なんと約30万人以上が「陸部」なんです。
実は芸能界で活躍するあの人も、この人も、結構、陸上経験者が多いらしい……。そんな「元陸部」の方々へのインタビュー企画がスタート! きつかった練習は!? 楽しかった思い出は!? 陸上を通して学んだことは!?
今回は女優として映画やドラマなどさまざまな作品に出演している上原実矩さんにインタビュー! 小学生の頃から子役として活動しており、現在も映画『ぜんぶ、ボクのせい』や『流浪の月』など数々の作品に出演している。
9月30日には主演映画『ミューズは溺れない』が公開。演技の他にもモデルやミュージックビデオ出演など、幅広く活躍している上原さんに「人として大事なことをたくさん教わった」という中学時代の陸上部のお話をうかがいました!
中学時代は走幅跳に取り組んでいたという上原実矩さん
準備運動で入部を決意!?
――中学時代に陸上部だったとうかがいました。小さい頃から活発な子だったのですか。
上原 小学生の頃にダンスや空手に取り組んでいて、じっと座っているよりはよく動く子でしたね。中学校に上がる時に部活に入ろうと思って辞めてしまいました。最近は行けていないですが、前はキックボクシングで身体を動かしていたんです!
――ご家族もなにか運動を?
上原 弟はサッカーをしていますが、両親は特にスポーツをしていません。だから、なんで陸上部に入ったんだろう、と不思議です。
――その陸上部に入ったきっかけは何だったんでしょう。
上原 最初は陸上部に入ることはあまり考えていなくて「走るだけ」のイメージでした。でも、仮入部期間に陸上部の練習に参加した時に、準備運動で音楽をかけてリズムにのる、ダンスのような動きをしていたんです。そこでギャップを感じました。ダンスを習っていたこともあり、とても楽しくて軽い気持ちで入りました(笑)。
――準備運動がとにかく楽しかったんですね! 入部してからの部活の雰囲気はどうでしたか。
上原 私が入部した時は、結構チームが強い時期だったんです。先輩たちには県大会を突破する方がいて、私と同じ学年の子たちも足が速かったです。
――初めはどの種目に取り組んでいたのでしょう。
上原 短距離を始めたのですが、とても足が遅くて……。学年が上がっていくと、強い1年生が入部してくるので、部活内での足の速さは下から数えたほうが早いくらいでした。
ダンスや空手を習うなど活発な幼少期を過ごしたという
大会の応援が楽しい!
――思い出に残っている練習は?
上原 夏に通い合宿があって、そこで行っていた「1分走」が1番きつかったです! 他にもいろいろメニューがありましたが、とにかく1分走がきつかったという思い出があります。往復100mを1分間で走って休んでの繰り返しで、選手それぞれのスタミナによって20、30、40セットと本数が変わっていくんです。最初のうちは40秒くらいタイムが残っていますが、ずっと走っていると遅くなるのでどんどん時間が減っていくんです。走り終わった時には喉から血の味がしました!(笑)
――とてもきつそうな練習です……! 試合にも出場していたのですか。
上原 大会であまり結果を残せていなかったので、自分が出場した大会で覚えているものはあまりないんですよね。でも、周りが強かったので友達を応援するのはすごく楽しかったです。部活に入った時の3年生の女性の先輩で関東大会も出て、頭も良くて、完璧な人がいたんです。そんな先輩がいたのも陸上部に入ったきっかけだったのかなと思っています。話しかけたり、密に交友があったりしたわけではないのですが、当時は試合で走っている姿を見てあこがれていました。
――応援が好きだったんですね。
上原 自分が出るよりは、みんなががんばっている姿を見て、応援するほうが好きでした。大会では応援側に回っていましたね。マネージャーのような動きのほうが楽しかったのかもしれません。「ファイトー!」の声をいかに届けられるか、たくさん声を出して応援していました。今思うと毎週のように大会へ行っていて、大変だった記憶もあまりないので楽しかったんだろうなと思います。
――最近はコロナ禍の影響で声出しができないんです!
上原 寂しいですね……。あの雰囲気がすごく楽しくて感動します。みんなで話をしながらテントを張るのも楽しかったです!
――あまり速いほうではなかったとのことですが、辞めたいと思った時はありましたか。
上原 記録へのこだわりが強いほうではなかったので、タイムが出なくても辞めたいと思ったことはありませんでした。1番は取れないとわかっていたので、自分が出したいタイムにどれだけ近づけるのか。最初から自分との戦いですね。速い子たちに囲まれていたからこそ、変に焦りはなかったと思います。だからこそ自己ベストをどうしたら出せるかと考えられました。
陸上部時代の「きつかった」1分間走を思いだしてこの表情(!?)
先生に教わった「好きだからやる」
――周りがどうであれ、自分が速くなることを考えて取り組んでいたんですね。
上原 はい。当時はそこまで気にしていなくて、周りが強いのは当たり前で、先生も練習の基準をそこに合わせるので、みんなで切磋琢磨していくという感じでした。
――陸上部の先生ってやっぱり……。
上原 とても厳しかったです(笑)。私の学年の体育の先生だったので、生活面でもたくさん指導されましたね。でも、なかなか記録が伸びなくて少し走りたくないなと思ったタイミングで走幅跳を勧めてもらったんです。その時に走幅跳のフォームがきれいだとすごく褒められて。うれしかったので、それからは走幅跳をやるようになりましたね。そうやってうまく切り替えてもらって楽しく過ごせました。
――その先生とはまだ連絡を取っている?
上原 今も連絡を取り合うこともあります。この前、先生がいる学校の陸上部に顔を出したのですが、昔とまったく雰囲気が違いました。ダンスは変わっていませんでしたけど(笑)。
――当時を振り返って2人で話すことはありますか。
上原 先日、先生のところにお邪魔した際に少し当時のことも話しました。速い子や成績を残しているという子はあまりいなくて、「遅いだろ」と。それでも先生はすごく楽しそうに指導されていて……。「あの頃は強かったから大変だったと思う。続けたのはえらいよ」という話もしてもらいました。先生自身も当時はどうしても楽しくやるより、結果を出すという考えだったのかなと感じましたね。
――先生の中でも葛藤があったんですかね。
上原 そうですね。でもとても面倒見の良い先生で、分厚い十箇条が書いてある冊子を作ってくださったんです。当時は「うわ、こんなに厚い本……」と思っていたのですが、今見返してみると間違ったことは書いていないなと感じます。
――その十箇条とは!?
上原 生活面なども含めたいろいろなことが書いてありました。最後の一つは、「陸上が好きという気持ちだけで良い」という言葉で締めてあるんです。それは陸上だけでなくても仕事や趣味でも言えることだなと思っています。「好きだからやる」というのはいろんなものの根底にあるものだなと。その言葉を見て改めて救われました。厳しいこともたくさん書いてありますが、今でも家に保管してあります!
――とても良い先生だったんですね。
上原 強い子ばかりではなく、私みたいな足は遅いけど速くなりたいという子にもしっかり向き合ってくれました。誰にでも同じように接してくれる良い先生に出会えたなと思っています。私はそこまで考えてなかったのですが、陸上を続けられたのは周りのチームの子や先生のお陰だなと思っています。
陸上部時代のお写真!走幅跳はまるでシザースをしているみたい!(本人提供)
部活も仕事もチームワークが大事
――芸能活動を始めたきっかけを教えてください。
上原 小学生の時に声をかけていただいて芸能界に進むことになりました。でも、その時はお芝居で上を目指そうというよりは、習い事の延長線のような感覚でした。現場が楽しくて通っていた感覚です。その時感じたことを自由に言うというレッスンが楽しくて続けていました。
――お仕事のやりがいは?
上原 映画やドラマの現場は集団の作業なので、チームワークが必要になります。チーム戦というか、みんなで作り上げていくものです。でも、個々の力がなければいけないですし、ちゃんと準備をしてきた物を現場でどれだけ出せるかが大事です。
――陸上部での経験が生きていると感じることはありますか。
上原 仕事も部活と似ているところがありますね。自分のやるべきことは決まっている。でも、大会などに出たら、個人も注目されますが、「あの子はどこの学校だ」とひとまとめで見られます。当時から先生に「集団という意思を持っていなさい」と教えてもらいました。個々で戦っている時も、集団でいるという覚悟を持つべきだと。だからといって雰囲気が良いから良い物が作れるというわけではないですが……。そういった生きる上で大事なことは陸上を通して学びました。
――9月30日には主演映画『ミューズは溺れない』が公開されます。どんな作品でしょう。
上原 淺雄望監督の創作愛がぎゅっとつまった青春エンターテインメントです。2019年の夏に死闘の末撮影を終えた作品ですが、その頃はまっくろこげに日焼けしているし、むず痒く感じます。そんな自分も含めて、スクリーンで「ミューズは溺れない」が上映されるのが楽しみです!
――陸上選手の役もいつかはあるかもしれませんね!
上原 いやー……もう走れないです(笑)。でも、BUMP OF CHICKENさんの『Aurora』というミュージックビデオに出演した際に走るシーンがあったんです。そこでいろんな人に「走るフォームはきれいだね」とたくさん褒めてもらいました。
――以前、「走る」お仕事をされたとか……?
上原 2018、19年ごろに声をかけていただき、お仕事で名古屋ウィメンズマラソンのハーフマラソンを走りました。1km7分くらいで走って、タイムは2時間30分くらいだったと思います。トレーニングは何回か開いていただき、代々木公園や駒沢公園などを走っていました!
――長距離を走ってみての感想は。
上原 そのお仕事をしてから、走るのって意外と楽しいなと、苦手意識がなくなりましたね。疲れるし、競わなきゃいけないしと、マラソンに良い印象はなかったんです。でもそこで心境が変わりました。すごく楽しかったんです! 競技とはまた違った大会の雰囲気でいろんな人が街にいて応援してくれて……。仮装している人もいて、知らない街を走るのも楽しいなと思いました。
――最後に、陸上や部活を頑張っているみなさんにメッセージをお願いします!
上原 私はあまり良い成績を残せなかったですが、陸上を通して礼儀や、人として大事なことを学びました。当時は気づきませんでしたが、後からこれとこれは通じるなとか、これはこういうことだったのか気づくことがたくさんあります。大変なことやめちゃくちゃなことを言われることもありますが、その時に気づかなくても、言われたことは受け止めて、ぜひ毎日頑張ってほしいなと思います!
うえはら・みく/1998年11月4日生まれ。東京都出身。166cm。中学時代に陸上部に所属して短距離と走幅跳に取り組んでいた。小学生の時にスカウトにより芸能活動を開始。子役時代には『シャキーン!』に出演し、映画『君に届け』では主人公の少女期を演じた。その後芸能界から離れた時期もあったが、再びお芝居の道へ。現在の事務所に所属してからも映画やドラマだけでなく、CMやMVなどにも多数出演。2022年は映画『ぜんぶ、ボクのせい』や『流浪の月』などに出演している。9月30日には主演映画で、高校生の将来への不安や葛藤を描いた青春エンターテインメント『ミューズは溺れない』が公開される(詳細はこちら)。公式HP、Instagram |
構成/松尾美咲、向永拓史
上原実矩さんサイン入りチェキを2名様にプレゼント!
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――思い出に残っている練習は? 上原 夏に通い合宿があって、そこで行っていた「1分走」が1番きつかったです! 他にもいろいろメニューがありましたが、とにかく1分走がきつかったという思い出があります。往復100mを1分間で走って休んでの繰り返しで、選手それぞれのスタミナによって20、30、40セットと本数が変わっていくんです。最初のうちは40秒くらいタイムが残っていますが、ずっと走っていると遅くなるのでどんどん時間が減っていくんです。走り終わった時には喉から血の味がしました!(笑) ――とてもきつそうな練習です……! 試合にも出場していたのですか。 上原 大会であまり結果を残せていなかったので、自分が出場した大会で覚えているものはあまりないんですよね。でも、周りが強かったので友達を応援するのはすごく楽しかったです。部活に入った時の3年生の女性の先輩で関東大会も出て、頭も良くて、完璧な人がいたんです。そんな先輩がいたのも陸上部に入ったきっかけだったのかなと思っています。話しかけたり、密に交友があったりしたわけではないのですが、当時は試合で走っている姿を見てあこがれていました。 ――応援が好きだったんですね。 上原 自分が出るよりは、みんなががんばっている姿を見て、応援するほうが好きでした。大会では応援側に回っていましたね。マネージャーのような動きのほうが楽しかったのかもしれません。「ファイトー!」の声をいかに届けられるか、たくさん声を出して応援していました。今思うと毎週のように大会へ行っていて、大変だった記憶もあまりないので楽しかったんだろうなと思います。 ――最近はコロナ禍の影響で声出しができないんです! 上原 寂しいですね……。あの雰囲気がすごく楽しくて感動します。みんなで話をしながらテントを張るのも楽しかったです! ――あまり速いほうではなかったとのことですが、辞めたいと思った時はありましたか。 上原 記録へのこだわりが強いほうではなかったので、タイムが出なくても辞めたいと思ったことはありませんでした。1番は取れないとわかっていたので、自分が出したいタイムにどれだけ近づけるのか。最初から自分との戦いですね。速い子たちに囲まれていたからこそ、変に焦りはなかったと思います。だからこそ自己ベストをどうしたら出せるかと考えられました。 陸上部時代の「きつかった」1分間走を思いだしてこの表情(!?)先生に教わった「好きだからやる」
――周りがどうであれ、自分が速くなることを考えて取り組んでいたんですね。 上原 はい。当時はそこまで気にしていなくて、周りが強いのは当たり前で、先生も練習の基準をそこに合わせるので、みんなで切磋琢磨していくという感じでした。 ――陸上部の先生ってやっぱり……。 上原 とても厳しかったです(笑)。私の学年の体育の先生だったので、生活面でもたくさん指導されましたね。でも、なかなか記録が伸びなくて少し走りたくないなと思ったタイミングで走幅跳を勧めてもらったんです。その時に走幅跳のフォームがきれいだとすごく褒められて。うれしかったので、それからは走幅跳をやるようになりましたね。そうやってうまく切り替えてもらって楽しく過ごせました。 ――その先生とはまだ連絡を取っている? 上原 今も連絡を取り合うこともあります。この前、先生がいる学校の陸上部に顔を出したのですが、昔とまったく雰囲気が違いました。ダンスは変わっていませんでしたけど(笑)。 ――当時を振り返って2人で話すことはありますか。 上原 先日、先生のところにお邪魔した際に少し当時のことも話しました。速い子や成績を残しているという子はあまりいなくて、「遅いだろ」と。それでも先生はすごく楽しそうに指導されていて……。「あの頃は強かったから大変だったと思う。続けたのはえらいよ」という話もしてもらいました。先生自身も当時はどうしても楽しくやるより、結果を出すという考えだったのかなと感じましたね。 ――先生の中でも葛藤があったんですかね。 上原 そうですね。でもとても面倒見の良い先生で、分厚い十箇条が書いてある冊子を作ってくださったんです。当時は「うわ、こんなに厚い本……」と思っていたのですが、今見返してみると間違ったことは書いていないなと感じます。 ――その十箇条とは!? 上原 生活面なども含めたいろいろなことが書いてありました。最後の一つは、「陸上が好きという気持ちだけで良い」という言葉で締めてあるんです。それは陸上だけでなくても仕事や趣味でも言えることだなと思っています。「好きだからやる」というのはいろんなものの根底にあるものだなと。その言葉を見て改めて救われました。厳しいこともたくさん書いてありますが、今でも家に保管してあります! ――とても良い先生だったんですね。 上原 強い子ばかりではなく、私みたいな足は遅いけど速くなりたいという子にもしっかり向き合ってくれました。誰にでも同じように接してくれる良い先生に出会えたなと思っています。私はそこまで考えてなかったのですが、陸上を続けられたのは周りのチームの子や先生のお陰だなと思っています。 陸上部時代のお写真!走幅跳はまるでシザースをしているみたい!(本人提供)部活も仕事もチームワークが大事
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