2022.09.22
アシックスのレーシングシューズ「METASPEED EDGE+(メタスピードエッジプラス)」
中学時代から陸上競技に取り組み、今も市民ランナーとして走り続けている月陸編集者(マラソンの自己ベストは2時間43分)が、注目のシューズをトライアル! 今回はアシックスのレーシングシューズ「METASPEED EDGE+(メタスピード エッジプラス)」(税込27,500円)を紹介する。
ミッドソールのボリュームが大幅増
生まれ変わったピッチ走法向けモデル
発売直後から大人気だ。アシックスが6月14日に発売したレーシングシューズ「METASPEED EDGE+(メタスピード エッジプラス)」が、発売直後から品薄状態が続いている。これはアシックスが昨年から展開している新コンセプトのレーシングシューズの第2第で、前作からアップデートが施されている。
10月6日にはニューカラーも発売される
アシックスの「METASPEED」シリーズは、アシックススポーツ工学研究所での研究結果をもとにランナーを『ストライド型』と『ピッチ型』に分類し、それぞれの走法に合ったシューズを展開している。
今年6月に発売された第2弾の「METASPEED+(メタスピードプラス)」シリーズは、昨年発売した初代モデルに改良を加えてさらにパフォーマンスを追求。ストライド型のランナーはMETASPEED SKY+(メタスピード スカイプラス)を、ピッチ型のランナーはMETASPEED EDGE+を履くことでよりストライドが延びるように設計されており、第三者機関によるテストでは、METASPEED+シリーズは従来のアシックスのレーシングモデルに比べてランニングエコノミーを約2%改善させる可能性があるという。
METASPEED EDGE+の改良点は何と言ってもミッドソールのボリュームが増えたことだ。軽量高反発素材である「FF BLAST TURBO(エフエフ ブラストターボ)」を前作と比べて約16%増量。ソールの厚さは最大39mmと、世界陸連のロードレース用シューズ規定上限である40mmギリギリで設計されている。
ミッドソール素材「FF BLAST TURBO」のボリュームが大幅に増加。METASPEED SKY+と同様に横にはみ出すようにして安定性を提供している
ミッドソールには前作同様に湾曲したフルレングスのカーボンプレートを内蔵。フラットなプレートを採用しているMETASPEED SKY+とは違い、METASPEED EDGE+はプレートを湾曲させることで少ない力でも効果的に反発が得られ、前に進みやすいような設計となっている。前足部の傾斜もMETASPEED SKY+に比べるとなだらかで、ドロップ(前足部と踵の高低差)は8mm。スピードに応じてピッチ(ケイデンス)が変化しやすいランナーに対応している。
METASPEED SKY+とMETASPEED EDGE+のスペック比較。カーボンプレートの位置やドロップなどソールの構造が異なる
アッパーのリニューアルでフィット性が向上
クッション性もアップ
足を入れてみるとまず感じるのはフィット性の良さだ。METASPEED SKY+と同様にアッパーがリニューアルされ、設計時のラスト(靴型)が変わった。シューレース(靴紐)も軽量で結びやすく、ほどけにくいものに変更されている。薄手のメッシュアッパーは通気性に優れており、夏のレースでも快適に走れるだろう。
ソールが厚くなったこともあり、履き心地は前作とは別物だ。明らかにクッション性が向上し、接地の際には適度な沈み込みを感じられる。同時に前方向への推進力が生まれ、重心移動が自然に促される。これはMETASPEED SKY+にも近い感覚だが、異なるのはFF BLAST TURBO(フォーム材)全体にしっかり力を加えないといけないMETASPEED SKY+に対し、METASPEED EDGE+は足を“置く”ような意識で接地しても転がるように前に進むこと。ソールの増量に伴い、重量は初代の約188gから約210g(どちらも27.0cmでの比較)に増えたが、クッション性と反発性がアップしている分、重さの違いは特に気にはならないだろう。
デザインがまったく同じだった初代とは違い、インソールやヒールの文字などで「EDGE+」と「SKY+」を判別できるようになった
また、ラスト(靴型)が変わった影響なのかサイズ感が前作とは少し変わったように感じた。通常25.0~25.5cmのシューズを履くことの多い筆者は、初代METASPEEDシリーズだと25.5cm(ウイメンズモデル)が一番合っていたが、METASPEED+シリーズはどちらも25.0cmがフィットした(METASPEED+に男女モデルの区別はない)。購入の際には店頭で試し履きをすることをお勧めしたい。
楽に身体が進む“省エネシューズ”
マラソンなどで威力を発揮
METASPEED EDGE+はソールの厚さやプレートの位置などは初代METASPEED Skyと似た設計となっている。異なるのはアッパーと前足部のソール形状(つま先にかけての傾斜)であり、これによって初代METASPEED Skyとは走り心地に違いが生まれている。シューズによる“加速感”はそこまで強いわけではないものの、安定性が高く、楽に推進力が得られるため、反発が強すぎるシューズでは脚がもたない……というランナーが、マラソンなどの長い距離のレースで最後まで脚を残したい時には有効な選択肢となるだろう。
初代METASPEED Sky(右)と比べても前足部のソール形状は微妙に異なる(※写真はMETASPEED EDGE+が26.0cm、初代METASPEED Skyがウイメンズの25.5cm)
なお、プロランナーの川内優輝選手(あいおいニッセイ同和損保)は「マラソンでは初代METASPEED SkyかMETASPEED EDGE+を履きたい」と話しており、一方では細谷恭平選手(黒崎播磨)はMETASPEED SKY+のプロトタイプで昨年12月の福岡国際マラソン2位(日本人最上位)、元日の全日本実業団対抗駅伝4区区間賞(区間新)という結果を残した。細谷選手は「僕はピッチ走法ですが、ストライド走法に憧れていて、それをサポートしてくれたのがこのMETASPEED SKY+です」と、自身の走法とは異なるタイプのシューズを使いこなしており、最終的には実際にシューズを試着してしっくりくるモデルを購入するといいだろう。
METASPEEDシリーズの選択肢は初代METASPEED Skyを含めると2つから3つへ。レースの距離やスピード、走法、走力に応じてシューズを選択できればより頼れる存在になるはずだ。
文/山本慎一郎
ミッドソールのボリュームが大幅増 生まれ変わったピッチ走法向けモデル
発売直後から大人気だ。アシックスが6月14日に発売したレーシングシューズ「METASPEED EDGE+(メタスピード エッジプラス)」が、発売直後から品薄状態が続いている。これはアシックスが昨年から展開している新コンセプトのレーシングシューズの第2第で、前作からアップデートが施されている。 10月6日にはニューカラーも発売される アシックスの「METASPEED」シリーズは、アシックススポーツ工学研究所での研究結果をもとにランナーを『ストライド型』と『ピッチ型』に分類し、それぞれの走法に合ったシューズを展開している。 今年6月に発売された第2弾の「METASPEED+(メタスピードプラス)」シリーズは、昨年発売した初代モデルに改良を加えてさらにパフォーマンスを追求。ストライド型のランナーはMETASPEED SKY+(メタスピード スカイプラス)を、ピッチ型のランナーはMETASPEED EDGE+を履くことでよりストライドが延びるように設計されており、第三者機関によるテストでは、METASPEED+シリーズは従来のアシックスのレーシングモデルに比べてランニングエコノミーを約2%改善させる可能性があるという。 METASPEED EDGE+の改良点は何と言ってもミッドソールのボリュームが増えたことだ。軽量高反発素材である「FF BLAST TURBO(エフエフ ブラストターボ)」を前作と比べて約16%増量。ソールの厚さは最大39mmと、世界陸連のロードレース用シューズ規定上限である40mmギリギリで設計されている。 ミッドソール素材「FF BLAST TURBO」のボリュームが大幅に増加。METASPEED SKY+と同様に横にはみ出すようにして安定性を提供している ミッドソールには前作同様に湾曲したフルレングスのカーボンプレートを内蔵。フラットなプレートを採用しているMETASPEED SKY+とは違い、METASPEED EDGE+はプレートを湾曲させることで少ない力でも効果的に反発が得られ、前に進みやすいような設計となっている。前足部の傾斜もMETASPEED SKY+に比べるとなだらかで、ドロップ(前足部と踵の高低差)は8mm。スピードに応じてピッチ(ケイデンス)が変化しやすいランナーに対応している。 METASPEED SKY+とMETASPEED EDGE+のスペック比較。カーボンプレートの位置やドロップなどソールの構造が異なるアッパーのリニューアルでフィット性が向上 クッション性もアップ
足を入れてみるとまず感じるのはフィット性の良さだ。METASPEED SKY+と同様にアッパーがリニューアルされ、設計時のラスト(靴型)が変わった。シューレース(靴紐)も軽量で結びやすく、ほどけにくいものに変更されている。薄手のメッシュアッパーは通気性に優れており、夏のレースでも快適に走れるだろう。 ソールが厚くなったこともあり、履き心地は前作とは別物だ。明らかにクッション性が向上し、接地の際には適度な沈み込みを感じられる。同時に前方向への推進力が生まれ、重心移動が自然に促される。これはMETASPEED SKY+にも近い感覚だが、異なるのはFF BLAST TURBO(フォーム材)全体にしっかり力を加えないといけないMETASPEED SKY+に対し、METASPEED EDGE+は足を“置く”ような意識で接地しても転がるように前に進むこと。ソールの増量に伴い、重量は初代の約188gから約210g(どちらも27.0cmでの比較)に増えたが、クッション性と反発性がアップしている分、重さの違いは特に気にはならないだろう。 デザインがまったく同じだった初代とは違い、インソールやヒールの文字などで「EDGE+」と「SKY+」を判別できるようになった また、ラスト(靴型)が変わった影響なのかサイズ感が前作とは少し変わったように感じた。通常25.0~25.5cmのシューズを履くことの多い筆者は、初代METASPEEDシリーズだと25.5cm(ウイメンズモデル)が一番合っていたが、METASPEED+シリーズはどちらも25.0cmがフィットした(METASPEED+に男女モデルの区別はない)。購入の際には店頭で試し履きをすることをお勧めしたい。楽に身体が進む“省エネシューズ” マラソンなどで威力を発揮
METASPEED EDGE+はソールの厚さやプレートの位置などは初代METASPEED Skyと似た設計となっている。異なるのはアッパーと前足部のソール形状(つま先にかけての傾斜)であり、これによって初代METASPEED Skyとは走り心地に違いが生まれている。シューズによる“加速感”はそこまで強いわけではないものの、安定性が高く、楽に推進力が得られるため、反発が強すぎるシューズでは脚がもたない……というランナーが、マラソンなどの長い距離のレースで最後まで脚を残したい時には有効な選択肢となるだろう。 初代METASPEED Sky(右)と比べても前足部のソール形状は微妙に異なる(※写真はMETASPEED EDGE+が26.0cm、初代METASPEED Skyがウイメンズの25.5cm) なお、プロランナーの川内優輝選手(あいおいニッセイ同和損保)は「マラソンでは初代METASPEED SkyかMETASPEED EDGE+を履きたい」と話しており、一方では細谷恭平選手(黒崎播磨)はMETASPEED SKY+のプロトタイプで昨年12月の福岡国際マラソン2位(日本人最上位)、元日の全日本実業団対抗駅伝4区区間賞(区間新)という結果を残した。細谷選手は「僕はピッチ走法ですが、ストライド走法に憧れていて、それをサポートしてくれたのがこのMETASPEED SKY+です」と、自身の走法とは異なるタイプのシューズを使いこなしており、最終的には実際にシューズを試着してしっくりくるモデルを購入するといいだろう。 METASPEEDシリーズの選択肢は初代METASPEED Skyを含めると2つから3つへ。レースの距離やスピード、走法、走力に応じてシューズを選択できればより頼れる存在になるはずだ。 文/山本慎一郎
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