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2022.07.15

編集部コラム「プレイバック 91年東京世界選手権」
編集部コラム「プレイバック 91年東京世界選手権」

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第154回「プレイバック 91年東京世界選手権(大久保雅文)


前回の私のコラムでは「世界選手権ヒストリー」として、大会の成り立ちから、2019年のドーハ大会までを振り返りました。今回は、オレゴン世界選手権の開幕直前ということで、大会のデータなどを紹介しようと思っていましたが、今朝になって、2025年の世界選手権が東京で行われるというビッグニュースが飛び込んできました。

日本での開催は1991年東京、2007年大阪以来3回目となり、国別では最多の開催回数となります。そこで、今回は91年の東京世界選手権をプレイバックしてみたいと思います。

91年の主役の1人は男子100mのカール・ルイス(米国)でした。ルイスは100mだけでなく200m、走幅跳でも活躍し、五輪ではロスで4冠、ソウルで2冠。世界選手権も第1回ヘルシンキ大会、第2回ローマ大会と100m、走幅跳、4×100mリレーで優勝と、その名は陸上界の枠を飛び越えた世界的なスーパースターでした。

2日目に行われた100m決勝にはルイスを一目見ようと国立競技場には6万人の大観衆が詰めかけました。さまざまなプレッシャーもある中、ルイスは人類初の9秒8台となる9秒86で優勝。2位のリロイ・バレルが9秒88、3位のデニス・ミッチェルが9秒91と当時の世界記録が9秒90という時代に、米国の3人が驚異的な強さを見せつけたレースとなりました。

また、この大会で語り草となっているのが男子走幅跳のルイスとマイク・パウエルの一戦です。

走幅跳で65連勝中だったルイスは4回目に8m91(+2.9)を跳び、これで2冠確定かと思われた矢先、ライバルのパウエルが8m95(+0.3)をマーク。ボブ・ビーモン(米国)が1968年に樹立した世界記録(8m90)を23年ぶりに更新するビッグジャンプで、見事に金メダルを獲得しました。また、この記録は今も世界記録として君臨しています。

そして、大会の最終日に行われた男子4×100mリレーでは100mメダルトリオを擁した米国が37秒50と当時としては驚異的な世界記録をマーク。いずれの世界記録にもルイスが関わっていることから、まさに「カール・ルイスのための世界選手権」だったとも言える大会でした。

このほか、男子棒高跳では王者のセルゲイ・ブブカ(ソ連)が大会3連覇を達成。110mハードルで33歳のグレッグ・フォスター(米国)、ハンマー投で36歳のユーリー・セディフ(ソ連)が優勝とベテラン勢が気を吐く一方、男子200m、400mで世界記録を樹立する若きマイケル・ジョンソンが200mで世界大会初優勝、3000m障害でも19歳のキプタヌイが金メダルを獲得するなど、新しい世代の台頭が目立った大会でもありました。

女子では1980年のモスクワ五輪の200mを皮切りに、3位に甘んじることが多く、東京世界選手権でも100m、200m銅メダルとブロンズコレクターと言われ続けたマリーン・オッティ(ジャマイカ)が4×100mリレーで念願の金メダルを獲得。ジャマイカにとってもリレーで初の金メダルとなり、今に続くスプリント強国の礎ともなっています。

日本勢は最終日の男子マラソンで谷口浩美が金メダルを獲得。気温30度の中で行われた過酷なレースの中、38km過ぎの上り坂で後続を突き放して世界の頂点に立ち、日本中が大いに湧きました。また、女子マラソンでも山下佐知子が銀メダルに輝いています。このほか、4種目に6人が入賞。リレーを含め3種目で日本新記録が誕生しました。

カール・ルーイスの活躍もあり、91年の東京大会は連日のようにスタンドが満員になりました。3年後の国立競技場でも満員の観客が選手の一挙手一投足に歓声が上がる大会になるように期待したいですね。

※一部誤りがあり、訂正いたしました。

大久保雅文(おおくぼ・まさふみ)
月刊陸上競技編集部
1984年9月生まれ。175cm、63kg。三重県伊勢市出身。小学1年から競泳、レスリング、野球などをするも、吉田沙保里さんにタックルを受けたこと以外は特にこれといった実績も残せず。中学で「雨が降ったら練習が休みになるはず」という理由から陸上部に入部。長距離を専門とし、5000mと3000m障害で県インターハイ決勝出場(ただし、三重県には支部予選もなく、県大会もタイムレース決勝である)

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第154回「プレイバック 91年東京世界選手権(大久保雅文)

前回の私のコラムでは「世界選手権ヒストリー」として、大会の成り立ちから、2019年のドーハ大会までを振り返りました。今回は、オレゴン世界選手権の開幕直前ということで、大会のデータなどを紹介しようと思っていましたが、今朝になって、2025年の世界選手権が東京で行われるというビッグニュースが飛び込んできました。 日本での開催は1991年東京、2007年大阪以来3回目となり、国別では最多の開催回数となります。そこで、今回は91年の東京世界選手権をプレイバックしてみたいと思います。 91年の主役の1人は男子100mのカール・ルイス(米国)でした。ルイスは100mだけでなく200m、走幅跳でも活躍し、五輪ではロスで4冠、ソウルで2冠。世界選手権も第1回ヘルシンキ大会、第2回ローマ大会と100m、走幅跳、4×100mリレーで優勝と、その名は陸上界の枠を飛び越えた世界的なスーパースターでした。 2日目に行われた100m決勝にはルイスを一目見ようと国立競技場には6万人の大観衆が詰めかけました。さまざまなプレッシャーもある中、ルイスは人類初の9秒8台となる9秒86で優勝。2位のリロイ・バレルが9秒88、3位のデニス・ミッチェルが9秒91と当時の世界記録が9秒90という時代に、米国の3人が驚異的な強さを見せつけたレースとなりました。 また、この大会で語り草となっているのが男子走幅跳のルイスとマイク・パウエルの一戦です。 走幅跳で65連勝中だったルイスは4回目に8m91(+2.9)を跳び、これで2冠確定かと思われた矢先、ライバルのパウエルが8m95(+0.3)をマーク。ボブ・ビーモン(米国)が1968年に樹立した世界記録(8m90)を23年ぶりに更新するビッグジャンプで、見事に金メダルを獲得しました。また、この記録は今も世界記録として君臨しています。 そして、大会の最終日に行われた男子4×100mリレーでは100mメダルトリオを擁した米国が37秒50と当時としては驚異的な世界記録をマーク。いずれの世界記録にもルイスが関わっていることから、まさに「カール・ルイスのための世界選手権」だったとも言える大会でした。 このほか、男子棒高跳では王者のセルゲイ・ブブカ(ソ連)が大会3連覇を達成。110mハードルで33歳のグレッグ・フォスター(米国)、ハンマー投で36歳のユーリー・セディフ(ソ連)が優勝とベテラン勢が気を吐く一方、男子200m、400mで世界記録を樹立する若きマイケル・ジョンソンが200mで世界大会初優勝、3000m障害でも19歳のキプタヌイが金メダルを獲得するなど、新しい世代の台頭が目立った大会でもありました。 女子では1980年のモスクワ五輪の200mを皮切りに、3位に甘んじることが多く、東京世界選手権でも100m、200m銅メダルとブロンズコレクターと言われ続けたマリーン・オッティ(ジャマイカ)が4×100mリレーで念願の金メダルを獲得。ジャマイカにとってもリレーで初の金メダルとなり、今に続くスプリント強国の礎ともなっています。 日本勢は最終日の男子マラソンで谷口浩美が金メダルを獲得。気温30度の中で行われた過酷なレースの中、38km過ぎの上り坂で後続を突き放して世界の頂点に立ち、日本中が大いに湧きました。また、女子マラソンでも山下佐知子が銀メダルに輝いています。このほか、4種目に6人が入賞。リレーを含め3種目で日本新記録が誕生しました。 カール・ルーイスの活躍もあり、91年の東京大会は連日のようにスタンドが満員になりました。3年後の国立競技場でも満員の観客が選手の一挙手一投足に歓声が上がる大会になるように期待したいですね。 ※一部誤りがあり、訂正いたしました。
大久保雅文(おおくぼ・まさふみ) 月刊陸上競技編集部 1984年9月生まれ。175cm、63kg。三重県伊勢市出身。小学1年から競泳、レスリング、野球などをするも、吉田沙保里さんにタックルを受けたこと以外は特にこれといった実績も残せず。中学で「雨が降ったら練習が休みになるはず」という理由から陸上部に入部。長距離を専門とし、5000mと3000m障害で県インターハイ決勝出場(ただし、三重県には支部予選もなく、県大会もタイムレース決勝である)
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