HOME 特集

2022.05.05

【展望】標準突破者4人が激突!廣中、不破、五島、小林が3枠懸けた熱戦の行方は?/日本選手権10000m女子
【展望】標準突破者4人が激突!廣中、不破、五島、小林が3枠懸けた熱戦の行方は?/日本選手権10000m女子

30分20秒44の日本記録保持者で、東京五輪代表の新谷仁美(積水化学)はマラソンで代表に内定。5月5日時点で、世界選手権参加標準記録の31分25秒00をすでに5名が突破済みだが、このうち東京五輪代表の安藤友香(ワコール)は回避したため、代表争いは廣中璃梨佳(日本郵政グループ)、不破聖衣来(拓大)、五島莉乃(資生堂)、小林成美(名城大)の4名が中心になりそうだ。

その中で、東京五輪7位入賞の廣中と、昨年12月に初10000mで日本歴代2位の30分45秒21という快走を見せた不破の対決に注目が集まるところだが、ともに今季はややスロースタート。廣中は2年後のパリ五輪を見据えた中間年と捉え、不破は冬に見せた激走の連続の後に右アキレス腱を痛め、3ヵ月ほど走れない時期が続いたという。

廣中は猛暑の五輪で5000mの予選(14分55秒87=自己新)、決勝(9位/ 14分52秒84=日本新)、10000m決勝(31分00秒71=自己新)の熱走の反動は少なくなく、駅伝シーズンを終えた後は身体のメンテナンス中心とした時間を過ごした。

新シーズンへの始動は4月4日の熊本・阿蘇での合宿から。初レースが日本選手権になるが、6月の日本選手権5000m、そして世界選手権本番へと徐々に調子を上げていくイメージだ。そのため、ターゲットは「3位以内」とまずは代表権確保を優先するレースとなるだろう。

ただ、心身ともにリフレッシュはできていて、「スイッチが入ればポンッと走れる選手」と高橋昌彦監督は心配していない。終盤の強さも日本選手の中では群を抜き、連覇を狙う走りをするだろう。

一方の不破も、駅伝シーズンで大ブレイクした影響があっただろう。昨年10月の全日本大学女子駅伝、12月の富士山女子駅伝では10km前後の区間で従来の区間記録を1分以上短縮する激走。その間に10000mでは終始独走で快記録を打ち立てている。

広告の下にコンテンツが続きます

段違いのスピードと、最後まで軸のブレない伸びやかなフォームで一気に注目を集めたが、その反動はやはりあったようで、右アキレス腱周囲に炎症が出たため、トレーニングが中断。4月上旬になってようやく復帰できたという。

4月17日の日本学生個人選手権5000mに「一番の目的は痛みなく走りきること。3分30秒のイーブンペースで行くこと」(五十嵐利治監督)をテーマに出場した。結果は17分30秒47で12着だったが、五十嵐監督は「目的は達成できた」と言い、「ここから3週間でどこに焦点を置くか」と世界選手権への意欲は失っていない。

この2人に対して、積極的にレースをこなして好調ぶりを示すのが社会人3年目の五島。昨年12月のエディオンディスタンスチャレンジで日本歴代8位(当時7位)の31分10秒02をマークすると、1月の都道府県対抗女子駅伝1区では五輪1500m8位の田中希実(豊田自動織機TC/現・豊田自動織機)を圧倒する区間賞。2月の全日本実業団ハーフでは1時間8分03秒とロードで快走を連発してきた。今季初戦は4月9日の金栗記念選抜中長距離5000mで、15分30秒80で日本人3番手の8位。日本選手権に向けて、ここからしっかりと仕上げてきそうだ。

小林も大学駅伝では区間成績で不破に圧倒された面もあったが、2月の日本選手権クロカンを制するなど、着実に段階を踏んでいる。日本学生個人選手権10000mに33分21秒48で貫録勝ちし、まずはワールドユニバーシティゲームズ代表内定をゲット。世界選手権を懸けた勝負に弾みをつけた。

廣中、不破が状態を上げていると仮定して実際のレースを想定してみると、廣中、不破、五島は前半からレースの主導権を握っていくタイプ。そのため、多少暑さがあったとしても30分台を見据える高速レースになる可能性は十分にある。ただ、廣中、不破の状態が上がり切らない場合は、五島がそのまま押し切ることも十分あり得る。廣中、不破、小林は代表に決まる3位以内の確保を目指すレースとなるかもしれない。

この他の選手が代表入りを狙うためには、まず3位以内に食い込む必要がある。そのため、優勝争いのハイペースに挑む必要があり、そうなるとついて行ける選手は限られてくる。31分30秒19を持つ佐藤早也伽(積水化学)、5000mで室内アジア新の15分23秒87をマークした矢田みくに(デンソー)、ヤマダホールディングスの岡本春美と筒井咲帆あたり。

また、東京五輪5000m代表の萩谷楓(エディオン)も距離を延ばして参戦。今季初戦だった4月29日の織田記念は15分38秒67で8位にとどまったが、そこからどう調子を上げてくるだろうか。

30分20秒44の日本記録保持者で、東京五輪代表の新谷仁美(積水化学)はマラソンで代表に内定。5月5日時点で、世界選手権参加標準記録の31分25秒00をすでに5名が突破済みだが、このうち東京五輪代表の安藤友香(ワコール)は回避したため、代表争いは廣中璃梨佳(日本郵政グループ)、不破聖衣来(拓大)、五島莉乃(資生堂)、小林成美(名城大)の4名が中心になりそうだ。 その中で、東京五輪7位入賞の廣中と、昨年12月に初10000mで日本歴代2位の30分45秒21という快走を見せた不破の対決に注目が集まるところだが、ともに今季はややスロースタート。廣中は2年後のパリ五輪を見据えた中間年と捉え、不破は冬に見せた激走の連続の後に右アキレス腱を痛め、3ヵ月ほど走れない時期が続いたという。 廣中は猛暑の五輪で5000mの予選(14分55秒87=自己新)、決勝(9位/ 14分52秒84=日本新)、10000m決勝(31分00秒71=自己新)の熱走の反動は少なくなく、駅伝シーズンを終えた後は身体のメンテナンス中心とした時間を過ごした。 新シーズンへの始動は4月4日の熊本・阿蘇での合宿から。初レースが日本選手権になるが、6月の日本選手権5000m、そして世界選手権本番へと徐々に調子を上げていくイメージだ。そのため、ターゲットは「3位以内」とまずは代表権確保を優先するレースとなるだろう。 ただ、心身ともにリフレッシュはできていて、「スイッチが入ればポンッと走れる選手」と高橋昌彦監督は心配していない。終盤の強さも日本選手の中では群を抜き、連覇を狙う走りをするだろう。 一方の不破も、駅伝シーズンで大ブレイクした影響があっただろう。昨年10月の全日本大学女子駅伝、12月の富士山女子駅伝では10km前後の区間で従来の区間記録を1分以上短縮する激走。その間に10000mでは終始独走で快記録を打ち立てている。 段違いのスピードと、最後まで軸のブレない伸びやかなフォームで一気に注目を集めたが、その反動はやはりあったようで、右アキレス腱周囲に炎症が出たため、トレーニングが中断。4月上旬になってようやく復帰できたという。 4月17日の日本学生個人選手権5000mに「一番の目的は痛みなく走りきること。3分30秒のイーブンペースで行くこと」(五十嵐利治監督)をテーマに出場した。結果は17分30秒47で12着だったが、五十嵐監督は「目的は達成できた」と言い、「ここから3週間でどこに焦点を置くか」と世界選手権への意欲は失っていない。 この2人に対して、積極的にレースをこなして好調ぶりを示すのが社会人3年目の五島。昨年12月のエディオンディスタンスチャレンジで日本歴代8位(当時7位)の31分10秒02をマークすると、1月の都道府県対抗女子駅伝1区では五輪1500m8位の田中希実(豊田自動織機TC/現・豊田自動織機)を圧倒する区間賞。2月の全日本実業団ハーフでは1時間8分03秒とロードで快走を連発してきた。今季初戦は4月9日の金栗記念選抜中長距離5000mで、15分30秒80で日本人3番手の8位。日本選手権に向けて、ここからしっかりと仕上げてきそうだ。 小林も大学駅伝では区間成績で不破に圧倒された面もあったが、2月の日本選手権クロカンを制するなど、着実に段階を踏んでいる。日本学生個人選手権10000mに33分21秒48で貫録勝ちし、まずはワールドユニバーシティゲームズ代表内定をゲット。世界選手権を懸けた勝負に弾みをつけた。 廣中、不破が状態を上げていると仮定して実際のレースを想定してみると、廣中、不破、五島は前半からレースの主導権を握っていくタイプ。そのため、多少暑さがあったとしても30分台を見据える高速レースになる可能性は十分にある。ただ、廣中、不破の状態が上がり切らない場合は、五島がそのまま押し切ることも十分あり得る。廣中、不破、小林は代表に決まる3位以内の確保を目指すレースとなるかもしれない。 この他の選手が代表入りを狙うためには、まず3位以内に食い込む必要がある。そのため、優勝争いのハイペースに挑む必要があり、そうなるとついて行ける選手は限られてくる。31分30秒19を持つ佐藤早也伽(積水化学)、5000mで室内アジア新の15分23秒87をマークした矢田みくに(デンソー)、ヤマダホールディングスの岡本春美と筒井咲帆あたり。 また、東京五輪5000m代表の萩谷楓(エディオン)も距離を延ばして参戦。今季初戦だった4月29日の織田記念は15分38秒67で8位にとどまったが、そこからどう調子を上げてくるだろうか。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.03.28

【世界陸上プレイバック】五輪ボイコットきっかけに創設!クラトフヴィロヴァが女子400mと800mで今も大会記録に残る2冠 日本は室伏重信ら出場も入賞ゼロ

今年、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪大会を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。これま […]

NEWS 【高校生FOCUS】女子三段跳・山﨑りりや(鳴門渦潮高)日本高校女子初の13m到達、大学で学生記録挑戦

2025.03.28

【高校生FOCUS】女子三段跳・山﨑りりや(鳴門渦潮高)日本高校女子初の13m到達、大学で学生記録挑戦

FOCUS! 高校生INTERVIEW 山﨑りりや Yamasaki Ririya 鳴門渦潮高3徳島 高校アスリートをフォーカスするコーナー。年度末を迎えますが、振り返ってみれば、2024年度は高校生による日本記録樹立を […]

NEWS 3泊4日の全国高体連合宿終了! 「高め合える仲間がいっぱいできた」 来年度は宮崎で開催予定

2025.03.28

3泊4日の全国高体連合宿終了! 「高め合える仲間がいっぱいできた」 来年度は宮崎で開催予定

大阪・ヤンマースタジアム長居を主会場に行われた2024年度の日本陸連U-19強化研修合宿・全国高体連陸上競技専門部強化合宿が3月28日、3泊4日の全日程を終えた。全国から集まった選手たちは交流を深め、試合での再会を誓った […]

NEWS 資格停止中の競歩・池田向希がCASに不服申し立て「一日も早く競技 を再開」

2025.03.28

資格停止中の競歩・池田向希がCASに不服申し立て「一日も早く競技 を再開」

旭化成は3月28日、所属選手である競歩の池田向希が受けたアンチ・ドーピング規則違反による4年間の資格停止処分について、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に不服申し立てを行ったと発表した。 男子20km競歩で東京五輪銀メダリスト […]

NEWS 【男子円盤投】福宮佳潤(東京高1) 50m73=高1歴代2位&4人目の50mオーバー

2025.03.28

【男子円盤投】福宮佳潤(東京高1) 50m73=高1歴代2位&4人目の50mオーバー

3月28日、東京都多摩市の国士大多摩陸上競技場で第7回国士大競技会が行われ、高校用規格の男子円盤投(1.75kg)において福宮佳潤(東京高1)が50m73をマークした。この記録は高校1年生の歴代ランキングで2位。高1で史 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報

page top