HOME 学生長距離

2022.01.25

最後の箱根路/国士大・木榑杏祐 1区で大学最高記録 見せ場十分の区間10位、思いは後輩たちへ
最後の箱根路/国士大・木榑杏祐 1区で大学最高記録 見せ場十分の区間10位、思いは後輩たちへ


2022年の箱根駅伝で光り輝いた大学生ランナーたち。最終学年を迎えた選手の中には実業団に進んで世界を目指す選手もいれば、ここを区切りに新たな道へ進む学生もいる。お届けするのは、最後の箱根駅伝できらりと光った4年生たち幾人かの物語――。

大学最高記録で序盤に見せ場演出

「競技人生で一番いいレースができました」

箱根駅伝1区を走った国士大の主将・木榑杏祐(4年)はそう満足そうにレースを振り返った。チームが掲げていたテーマは『攻めの走りをしよう』。実力者が顔をそろえた1区で木榑はそのテーマを体現してみせた。

序盤から中大・吉居大和(2年)が区間新ペースで飛ばす高速のレース展開になった。鶴見中継所では絶対的エースのライモイ・ヴィンセント(4年)が待っている。「ヴィンセントが気持ちよく走れる位置でタスキを渡したい」との思いから、木榑は第2集団に食らいついた。10kmを通過した際も「まだ比較的リラックスした状態だった」という。

13km過ぎから15km付近にかけては第2集団の先頭に立つ。終盤、ペースが一気に上がって集団後方に下がったが、ラストスパートで落ちてきた選手をとらえ、10位で中継所に到着いた。ヴィンセントはそこから7人抜きの快走で順位を3位に押し上げた。

「中大とは1分34秒離されましたが、2位の駒大とは44秒差。1区の仕事は果たせたと思います」と胸を張る。添田正美監督も「木榑の走りは100点満点です。主将としてこの1年、チームを改革し、レースでは有言実行、流れを導いてくれました」とその走りに満点をつけた。

1時間2分03秒のタイムは、2019年に住吉秀昭(現・SUBARU)が出した1時間2分54秒を上回る1区の国士大最高記録。結果的に総合15位で32年ぶりのシード権こそ逃したが、木榑を含め6人が大学最高記録をたたき出し、11時間03分06秒の総合タイムも大学最高記録だった。予選会をギリギリ10位通過したチームにあって、健闘したと言えるだろう。

一般入試から入部直訴し、主将へ

群馬・沼田高時代、5000mの自己ベストは15分27秒70。国士大には一般入試を経て進学した。

「高校の同期の選手が15分01秒を出したことが悔しく、大学でも競技を続けたくなりました。国士舘なら一般入試でも部に入れてもらえると知って、合格が出た2月、添田監督に電話で直談判して入部させてもらったんです」

徐々に力をつけ、1年の秋に14分台の仲間入りを果たした。3年生で初めて箱根駅伝を走り、4区区間14位。4年生になって10000mの自己ベストを3度更新し、11月には28分52秒76にまで記録を短縮した。

添田監督が「ウチの選手は大学に来てからみんな強くなります。今の1、2、3年生には、しっかり練習して強くなって、木榑みたいな走りができる選手になってほしい」と評するように、後輩たちの見本となる主将だった。

「自分たちの学年も1年生の時は強い先輩たちがいて割って入ることはできなかったけれど、仲間を信じて練習を積むことで力をつけて、徐々に他大学とも戦えるようになりました。後輩たちも、今やるべきことを明確にし、確実にこなしていけば予選会も通過できるし、シード権も狙える力はあると思います」

卒業後は埼玉医科大グループで競技を続ける木傳。シード権獲得という目標を後輩たちに託し、箱根路に別れを告げた。

木榑杏祐(こぐれ・きょうすけ:国士大)/1999年8月10日生まれ。群馬県沼田市出身。沼田高卒。自己ベストは5000m14分06秒67、10000m28分52秒76、ハーフ1時間3分25秒。

文/小川誠志

2022年の箱根駅伝で光り輝いた大学生ランナーたち。最終学年を迎えた選手の中には実業団に進んで世界を目指す選手もいれば、ここを区切りに新たな道へ進む学生もいる。お届けするのは、最後の箱根駅伝できらりと光った4年生たち幾人かの物語――。

大学最高記録で序盤に見せ場演出

「競技人生で一番いいレースができました」 箱根駅伝1区を走った国士大の主将・木榑杏祐(4年)はそう満足そうにレースを振り返った。チームが掲げていたテーマは『攻めの走りをしよう』。実力者が顔をそろえた1区で木榑はそのテーマを体現してみせた。 序盤から中大・吉居大和(2年)が区間新ペースで飛ばす高速のレース展開になった。鶴見中継所では絶対的エースのライモイ・ヴィンセント(4年)が待っている。「ヴィンセントが気持ちよく走れる位置でタスキを渡したい」との思いから、木榑は第2集団に食らいついた。10kmを通過した際も「まだ比較的リラックスした状態だった」という。 13km過ぎから15km付近にかけては第2集団の先頭に立つ。終盤、ペースが一気に上がって集団後方に下がったが、ラストスパートで落ちてきた選手をとらえ、10位で中継所に到着いた。ヴィンセントはそこから7人抜きの快走で順位を3位に押し上げた。 「中大とは1分34秒離されましたが、2位の駒大とは44秒差。1区の仕事は果たせたと思います」と胸を張る。添田正美監督も「木榑の走りは100点満点です。主将としてこの1年、チームを改革し、レースでは有言実行、流れを導いてくれました」とその走りに満点をつけた。 1時間2分03秒のタイムは、2019年に住吉秀昭(現・SUBARU)が出した1時間2分54秒を上回る1区の国士大最高記録。結果的に総合15位で32年ぶりのシード権こそ逃したが、木榑を含め6人が大学最高記録をたたき出し、11時間03分06秒の総合タイムも大学最高記録だった。予選会をギリギリ10位通過したチームにあって、健闘したと言えるだろう。

一般入試から入部直訴し、主将へ

群馬・沼田高時代、5000mの自己ベストは15分27秒70。国士大には一般入試を経て進学した。 「高校の同期の選手が15分01秒を出したことが悔しく、大学でも競技を続けたくなりました。国士舘なら一般入試でも部に入れてもらえると知って、合格が出た2月、添田監督に電話で直談判して入部させてもらったんです」 徐々に力をつけ、1年の秋に14分台の仲間入りを果たした。3年生で初めて箱根駅伝を走り、4区区間14位。4年生になって10000mの自己ベストを3度更新し、11月には28分52秒76にまで記録を短縮した。 添田監督が「ウチの選手は大学に来てからみんな強くなります。今の1、2、3年生には、しっかり練習して強くなって、木榑みたいな走りができる選手になってほしい」と評するように、後輩たちの見本となる主将だった。 「自分たちの学年も1年生の時は強い先輩たちがいて割って入ることはできなかったけれど、仲間を信じて練習を積むことで力をつけて、徐々に他大学とも戦えるようになりました。後輩たちも、今やるべきことを明確にし、確実にこなしていけば予選会も通過できるし、シード権も狙える力はあると思います」 卒業後は埼玉医科大グループで競技を続ける木傳。シード権獲得という目標を後輩たちに託し、箱根路に別れを告げた。 木榑杏祐(こぐれ・きょうすけ:国士大)/1999年8月10日生まれ。群馬県沼田市出身。沼田高卒。自己ベストは5000m14分06秒67、10000m28分52秒76、ハーフ1時間3分25秒。 文/小川誠志

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.11.23

パリ五輪代表・太田智樹がトラック復帰レース28分12秒12「ちょっと戻ってきた」/八王子LD

◇2024八王子ロングディスタンス(11月23日/東京・上柚木公園陸上競技場) 男子10000mに特化した八王子ロングディスタンスが行われ、5組にパリ五輪代表の太田智樹(トヨタ自動車)が出場。28分12秒12の5着だった […]

NEWS 連覇目指す積水化学・山本有真「いい流れを作りたい」 資生堂・五島莉乃「チームのために最大限の走りを」/クイーンズ駅伝前日会見

2024.11.23

連覇目指す積水化学・山本有真「いい流れを作りたい」 資生堂・五島莉乃「チームのために最大限の走りを」/クイーンズ駅伝前日会見

11月24日に開催される第44回全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝in宮城2024)を前に、有力チームの選手たちが前日会見に臨んだ。 前回優勝チームの積水化学からは2年連続で2区に登録された山本有真が出席。「去年の […]

NEWS パリ五輪マラソン6位の第一生命グループ・鈴木優花 1区登録に「殻を破りたい」/クイーンズ駅伝前日会見

2024.11.23

パリ五輪マラソン6位の第一生命グループ・鈴木優花 1区登録に「殻を破りたい」/クイーンズ駅伝前日会見

11月24日に開催される第44回全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝in宮城2024)を前に、有力チームの選手たちが前日会見に臨んだ。 今夏のパリ五輪マラソンで6位入賞を果たした第一生命グループ・鈴木優花は、「マラソ […]

NEWS 約1年ぶり復帰のJP日本郵政グループ・廣中璃梨佳「感謝の気持ちを胸に走りたい」/クイーンズ駅伝前日会見

2024.11.23

約1年ぶり復帰のJP日本郵政グループ・廣中璃梨佳「感謝の気持ちを胸に走りたい」/クイーンズ駅伝前日会見

11月24日に開催される第44回全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝in宮城2024)を前に、有力チームの選手たちが前日会見に臨んだ。 前回2位のJP日本郵政グループからは廣中璃梨佳が登壇。廣中は昨年12月の日本選手 […]

NEWS クイーンズ駅伝の区間オーダー発表!5区で積水化学・新谷仁美、日本郵政・鈴木亜由子、資生堂・一山麻緒が対決! 第一生命・鈴木優花は1区に

2024.11.23

クイーンズ駅伝の区間オーダー発表!5区で積水化学・新谷仁美、日本郵政・鈴木亜由子、資生堂・一山麻緒が対決! 第一生命・鈴木優花は1区に

第44回全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝in宮城2024/11月24日)の前日となる11月23日、区間エントリーが行われ、出場する24チームのオーダーが発表された。 前回2年ぶりの優勝を飾った積水化学は、3区(1 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年12月号 (11月14日発売)

2024年12月号 (11月14日発売)

全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会

page top