2021.12.31
◇2021全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝:12月30日/静岡・7区間43.4km)
初出場となった富士山女子駅伝でも、不破聖衣来(拓大1年)の存在感は圧倒的だった。最長10.5kmのエース区間に起用され、12位でタスキを受けると、前を行く走者を次々と捉え、驚異の10人抜きを達成。タイムも従来の区間記録を1分54秒も更新する32分23秒の区間新で区間賞に輝き、8位入賞を目標に掲げていたチームを一気に2位へと押し上げた。
「タイムはあまり意識していなかったです」と涼しい顔で振り返る不破。「今回は自分のタイムというより、前を追って走ることを意識していました。スタートした時は何秒差かわからない状態でしたが、走っていくうちに1人1人抜いていけば、いつか名城大学さんが見えると思ったので、最後まで追いかけようという気持ちで走りました」。
2秒遅れで走り始めた9月の日本インカレ10000m覇者・鈴木優花(大東大4年)が、すぐに不破に追いつき、しばらく並走するかたちで前を追えたのも、不破にとっては良い展開だった。1㎞の入りは2分59秒。そこから3分05秒、3分00秒と刻み、鈴木を3km手前で置き去りにしてしまったのだから、五十嵐利治監督が「えげつない。底知れないですね」と評するのも頷ける。
「自分の感覚的にはそんなに速くは感じなかったのですが、あとから聞いたらすごく速いタイムで入っていたので、そのダメージが7km過ぎぐらいから脚にきてしまいました。きつかったんですけど、そこが駅伝の力というか、みんなの力で踏ん張ることができました」
10月の全日本大学駅伝でも、夏に5000mで15分20秒68(学生歴代3位、U20日本歴代6位)をマークしていた不破に対する注目度は高かったが、9.5kmという未知の距離でその走りができるのか、やや懐疑的に見る向きもあった。しかし、28分00秒という衝撃の区間新で自らのポテンシャルを実証すると、今月11日には初の10000mで、日本歴代2位となる30分45秒21の学生新を樹立し、来夏のオレゴン世界選手権の参加標準記録を突破した。
いまや不破への期待と注目は、学生長距離界だけにとどまらない。
五十嵐監督の口からは全日本の時と同じように驚嘆の言葉がいくつも飛び出した。「10000mの疲労も残っていましたし、10000mが終わってからはポイント練習をまともにやったのは2回だけで、決して万全ではなかったと思います。無理をさせずに普通に走れば、33分ぐらいで走れると思っていましたが、それでも(32分23秒で)行ってしまうところが本当にすごいです」。
この1年を振り返り、「いろいろな人に支えてもらい、いろいろな刺激を受けて、記録を残すことができた1年で、結果的にすごく充実していました。来年はこの1年目の経験を生かして、さらに上を目指せるように頑張りたいです」と不破。数々のインパクトを残した2021年をステップに、2022年はどんなパフォーマンスを見せるのだろうか。
文/小野哲史

|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.03.28
-
2025.03.28
-
2025.03.28
2025.03.23
女子は長野東が7年ぶりの地元V アンカー・田畑陽菜が薫英女学院を逆転/春の高校伊那駅伝
-
2025.03.25
2025.03.02
初挑戦の青学大・太田蒼生は途中棄権 果敢に先頭集団に挑戦/東京マラソン
2025.03.02
太田蒼生は低体温症と低血糖で途中棄権 「世界のレベルを知れて良い経験」/東京マラソン
-
2025.03.23
-
2025.03.19
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.03.28
【世界陸上プレイバック】五輪ボイコットきっかけに創設!クラトフヴィロヴァが女子400mと800mで今も大会記録に残る2冠 日本は室伏重信ら出場も入賞ゼロ
今年、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪大会を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。これま […]
2025.03.28
【高校生FOCUS】女子三段跳・山﨑りりや(鳴門渦潮高)日本高校女子初の13m到達、大学で学生記録挑戦
FOCUS! 高校生INTERVIEW 山﨑りりや Yamasaki Ririya 鳴門渦潮高3徳島 高校アスリートをフォーカスするコーナー。年度末を迎えますが、振り返ってみれば、2024年度は高校生による日本記録樹立を […]
2025.03.28
3泊4日の全国高体連合宿終了! 「高め合える仲間がいっぱいできた」 来年度は宮崎で開催予定
大阪・ヤンマースタジアム長居を主会場に行われた2024年度の日本陸連U-19強化研修合宿・全国高体連陸上競技専門部強化合宿が3月28日、3泊4日の全日程を終えた。全国から集まった選手たちは交流を深め、試合での再会を誓った […]
2025.03.28
資格停止中の競歩・池田向希がCASに不服申し立て「一日も早く競技 を再開」
旭化成は3月28日、所属選手である競歩の池田向希が受けたアンチ・ドーピング規則違反による4年間の資格停止処分について、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に不服申し立てを行ったと発表した。 男子20km競歩で東京五輪銀メダリスト […]
2025.03.28
【男子円盤投】福宮佳潤(東京高1) 50m73=高1歴代2位&4人目の50mオーバー
3月28日、東京都多摩市の国士大多摩陸上競技場で第7回国士大競技会が行われ、高校用規格の男子円盤投(1.75kg)において福宮佳潤(東京高1)が50m73をマークした。この記録は高校1年生の歴代ランキングで2位。高1で史 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報