2021.12.24
今週末の12月26日、全国高校駅伝が京都で開催される。各都道府県の代表校が集い、暮れの都大路でタスキをつなぐ光景は年末の風物詩。男子は72回目、女子は33回目で、今年も高校生たちが青春のすべてをかけて古都を駆け抜ける。
そんな大会が差し迫るある日、編集部に一本の連絡が入った。「全国高校駅伝にもっと注目してほしいんです!」。吉本興業所属のお笑い芸人「げんき~ず」の宇野けんたろうさんだ。フルマラソンで芸能界最速の2時間33分30秒という記録を持ち、今年8月に芸人をしながら、フィギュア、プラモデルメーカーでもある壽屋のコトブキヤ陸上部に所属する「実業団ランナー」になったことでも話題になった。
芸人として活躍する一方、その走力を生かして「TBSオールスター感謝祭」では赤坂五丁目ミニマラソン優勝、さらにはドラマ「陸王」、大河ドラマ「いだてん」にも出演するなど、注目を集める存在に。そんな宇野さん、実は高校時代に全国高校駅伝に出場した経験を持つ。「駅伝は箱根やニューイヤーだけじゃないです! 都大路に恩返しがしたい!」という熱い思いを持って編集部に“殴り込み(?)”に訪れた。
高校から本格的に陸上部へ
――今日はお越しいただき、ありがとうございます。コトブキヤの選手ですから、“聖地”秋葉原からいらっしゃったのですか?
宇野 もちろん!走って! と、言いたいところですが、自宅からです(笑)。朝はしっかり練習してから来ました。突然、お邪魔してすみません!
――月陸に乗り込んできた(?)理由を聞かせていただきましょう!
宇野 年末年始になると、箱根駅伝がすごく注目されるじゃないですか。どの雑誌でも、ウェブでも、箱根駅伝、箱根駅伝。その次にニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝)です。それに比べて、全国高校駅伝があまり注目されていないと思うんです。全国高校駅伝ってすごいんだよ! 楽しいんだよ! って、どこかで伝えたい思いがありました。それで、ダメ元で連絡して、乗り込んでみたら何とかなるかなって!
――昔の月刊陸上競技など専門誌の2月号(1月発売)の表紙は全国高校駅伝が飾るほど、他の駅伝よりも注目度が高かったですからね。都大路の魅力をうかがう前に、少し宇野さんのことを教えてください! 芸能人最速ランナーとして知られていますが、いつから陸上を?
宇野 バスケットボール部だった中学校の時に、マラソン大会で優勝して陸上部に誘われました。中3の時に東京都大会に出場したのですが、それを見ていた正則学園高の菅原和幸先生(当時、現・流経大柏高)に勧誘していただきました。「3年目に都大路に連れて行くから!」って。もう、目が“本気”だったんです。先生も当時若かったのでギラギラしていました。都大会でも下から数えたほうが早いのに全国大会?って。「この先生を信じてみよう!」と進学しました。でも、その時は「都大路って何?」状態でしたけど。
――どんな高校生活でしたか。
宇野 めちゃくちゃ厳しかったです! 当時は「東京で一番厳しい」と言われるくらいの練習量でした。朝練習もしっかり皇居を走って。オフも数えるほどしかなくて、毎日、陸上漬けの日々でした。
――芸人とどっちが大変ですか?
宇野 走るほうですね(笑)。いや、芸人には芸人の大変さもあるんですけど。振り返ると、本当に大変でしたけど、その経験、過程が芸人にとってもすごく必要なんです。今に生きていますね。実際、こうして走るお仕事をさせていただけているので。
――入学してから、少しずつ「全国」に近づいていくわけですね。
宇野 1年目の都高校駅伝で12位になって、2年目で確信に変わりましたね。2年生の時は4区の僕にタスキがトップで来たんです。もう、ビックリしちゃって。目の前には先導のバイクがいるし、浮き足だってしまって、結果的にどんどん抜かれちゃいました。國學院久我山高に並ぶ間もなく抜かれて、「これが全国に行くチームなのか」と思いましたね。僕の失速もあって4位で全国には行けなかったのですが、先生もチームメイトから「何をやってるんだ!」と責められることはなくて、チームで戦う駅伝の魅力を実感しました。
高校時代を振り返る宇野けんたろうさん
――3年目に都大路に出場決定!
宇野 僕はキャプテンをさせてもらいましたが、実は3年目に大変なことが起きて……。都高校駅伝では6区で、プログラムを見るとだいたいの到着予想タイムが載っているんです。これくらいかなってジャージを着て待機所にいたら、「正則学園!正則学園!6区の選手!宇野くん!」って係の人が大声で呼んでいるんです。なんでだろうと思っていたら、5区の選手がタスキを持って「宇野さーん!どこですかー!」て叫んでいました(笑)。やばい!ってジャージを破り捨てるように脱いで脚が空回りながら急いで中継所に行きました。あまりにも1区から速すぎて、予想タイムを大幅に超えていたんです。結果的に優勝できて、先生も「お前らしいよ」と笑ってくれましたが、負けていたらと思うと……。芸人としては“オイシイ”ですけど、競技者としては……。
――アウトですね(笑)。やっぱり格別でしたか?
宇野 先生を胴上げして、夢が叶えられたんだってうれしかったですね。その後は都庁を訪れて優勝の挨拶をして「東京のために頑張ってきてください」というプレッシャーを受け(笑)、メーカーさんからウエアが届いて、取材もあって。喜びはもちろん、周囲の反響がすごかったですね。でも、それで少し気持ちが切れてしまったところもありました。先生は「ここは通過点で、全国で勝負しよう」と言ってくださっていたのですが、僕たちにとっては都大路が「到達点」になってしまったんですね。
――1999年は第50回の記念大会で地区代表も含めて58チームが出場。正則学園は57位、宇野さんは6区を走られています。
宇野 情けない走りになってしまいました。区間56位。1区のエース(原田聡)でさえ区間29位で「こんなに通用しないのか」とショックを受けたことと、招集からバス移動、待機所まで、仙台育英(宮城)や西脇工(兵庫)、佐久長聖(長野)など、テレビや雑誌で見ていたスター選手がいて緊張で自分の身体じゃないみたいでした。
高3時に全国高校駅伝に出場して6区を走った
――さすがにこの時は遅れていないですよね?
宇野 逆にめちゃくちゃ早く行きましたよ! まだ呼ばれていないのに(笑)。テレビカメラを見つけて、ここでこう動いたらNHKに映るだろうとウロウロしていました。その映像が今でもNHKに残っているようです(笑)。都大路を通過点として捉えられていれば、また違った形でテレビに映れたのになって反省しています。力が発揮できなかったことは今も心残りですね。
――同世代には佐藤清治さん(佐久長聖)や前田和浩さん(白石)がいて、高見澤勝さん(佐久長聖)、藤井周一さん(西脇工)など、選手、そして今は指導者としても活躍されている方々がいますね。
宇野 僕からしたらスーパースターばかり。高校の同期の五十嵐利治さんは拓大女子陸上競技部の監督をしています。出世しましたねぇ……。最近は不破聖衣来選手のことでたくさん取り上げられて、僕よりテレビに映っていますよ!(笑) 同世代はその後、箱根駅伝も走った選手も多くて、今も陸上界で頑張っているので刺激をもらっています。
――戦い終えて、チームはどんな雰囲気でしたか。
宇野 菅原先生は「目標を達成してくれた」と言ってくれて、「全国で戦えなかったから、この悔しさを後輩たちが晴らしてくれると思う」とみんなに言っていました。もう一回、都大路に戻ってこよう!と。僕には「宇野は3年間、よく頑張ってくれた」と言ってくれました。その2日後かな。監督室に行って「お話があるのですが……」って。
――まさか……?
宇野 「僕、あの……」って言うと、先生は「大学だろ? いくつか話が来ているぞ。進めておくな」って。そこで僕が「あの、吉本興業でお笑いをやらせてください!」と言ったら、めちゃくちゃ怒られました!(笑) 何を言っているんだ!って。都大路が出発点だろうって。京都では僕もすごく悔しがっていたので、当然、大学に行って箱根駅伝を目指すものだと思っていたようです。それがまさかのお笑い芸人……。
――それは……まぁ、普通はビックリされますよ(笑)。ずっとお笑い芸人になりたかったんですか。
宇野 高校3年生になってからですね。当時は「めちゃ×2イケてるッ!」や「ボキャブラ天国」が流行っていて、ナインティナインの岡村隆史さんを見て、「なんだこの面白い人は!」って。調べると吉本興業所属。じゃあ吉本興業に入ったら面白くなれるのかなって。NSCという吉本興業のお笑い養成所に通うことを決めました。今では先生もすごく応援してくれて、必ず連絡をくれるんです。
都大路出場時の月陸を見て懐かしむ
スピード感と京都の街並みが見どころの一つ
――本題に戻ります! 全国高校駅伝の魅力とは?
宇野 やっぱりスピードがすごいです! 男子を例に挙げると、箱根駅伝だと1区間20km以上あるので1km3分前後のペースですが、高校駅伝だと短い区間なら1km2分40秒くらいで大学生より速く走る区間もあります! 見どころは1区。男女とも各校のエース区間が集まります。今回の男子では洛南高(京都)の佐藤圭汰選手が注目です。5000mの高校記録13分31秒19を持っていて、もし1区を走ったら日本人最高(28分48秒=佐藤一世)を塗り替えてほしいです! 1区に限らず、現在やシューズや練習の進化によってトラックでも好記録がたくさん生まれています。今年も新記録が誕生するかもしれません! 僕は男女とも仙台育英が来るんじゃないかと注目しています。あとは地元の東京都代表、男子が國學院久我山、女子が順天。どちらも応援しています!
――テレビ観戦する際のオススメはありますか。
宇野 テレビ中継をされるNHKでは事前番組として、注目チームや選手を紹介しています。そういうところとセットで見るとさらに応援したくなると思います! あとは、京都の街並みも中継で映りますので、それがすごくキレイなのでチェックしてみてください。今年はもしかしたら雪景色になるかも!? そういったところも含めて楽しんでもらえればと思います。
――今年6区を走る選手たちに、経験者からアドバイスを!
宇野 6区はすごく難しいコースでテクニックが求められます。紫明通から北大路通に入るまでに3回コーナーがあって、“クネクネ”しています。僕は初出場で経験もなかったので、結構遠回りして、沿道の人にファンサービスしているのかというくらい変なところを走っちゃいました。ずっと上り坂も続くのでいつ切り替えるのかも大事です。しっかりコースを頭に入れて最短距離で行けるようにイメージしておいてください!
――高校駅伝に関するお仕事が来るといいですね。
宇野 ゆくゆくは解説をさせていただきたいです(笑)。現地リポーターでも何でもいいので、全国高校駅伝に携われたらすごくうれしいです。全国高校駅伝は人生の大きな財産ですし、こうして高校駅伝のことを伝えられるのは、一つの恩返しだと思っています。菅原先生も喜んでくれるかな。
――宇野さん自身の、今後の活動予定は?
宇野 来年の3月に東京マラソンがあるので、そこで2時間33分の自己ベストを更新したいと思っています!
――いや、それはもはやアスリートの返答ですよ! 芸人さんとしてのお仕事予定を聞こうかと(笑)。
宇野 確かに! そっちかー! やっちゃいましたね(笑)。芸人としてもいろいろ活動していますし、あくまでベースはお笑い芸人。「走る」を武器に頑張っていきます!
――都大路を走る高校生たちへエールをお願いします。
宇野 陸上を通して学んだのは一生懸命やることの大切さです。一生懸命やって、あきらめなければ、必ず結果はついてくると思います。先日の「M-1グランプリ」では錦鯉さんが優勝しました。昔から知っていたのですが、苦労しても、あきらめずに頑張れば夢が叶うんだと実感しました。僕自身も、一生懸命走っていればいいことあるもんだな、と思います。そういえば、菅原先生も「一生懸命走っていればいいことあるな」と言ってくれました。高校時代の経験が今の宇野の仕事につながっているなって。あの頃の経験は本当に財産です。
――今日はありがとうございました。言い残したことはありませんか?
宇野 高校駅伝が目標ではなく、今後の通過点だと思ってください! 走るみなさんには、いろいろな進路があると思います。箱根駅伝を目指す人、実業団に行く人、引退する人……。一つだけ、お笑い芸人はやめたほうがいいです! もしお笑い芸人になるなら箱根駅伝を走ってからにしましょう! マネージャーさんから「箱根を走っていれば仕事を取ってきやすいのに!」と口酸っぱく言われてしまうので(笑)。お笑い芸人に限らず、都大路を含めていろいろな経験、勉強を積んでいってもらいたいです。選手のみなさん、頑張ってください!
うの・けんたろう/1982年3月1日生まれ。東京都出身。吉本興業のお笑いコンビ「げんき~ず」のツッコミ担当で、お笑い芸人をしながら株式会社壽屋の「コトブキヤ陸上部」に所属する実業団ランナー。中学時代に陸上に目覚め、高校時代には全国高校駅伝に出場。陸上の名門校から誘いがある中でNSC東京校へ。フルマラソンの自己ベストは2時間33分30秒。芸人としてだけでなく、TBS日曜劇場ドラマ『陸王』やNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』に出演するなど、幅広く活躍している。
文/向永拓史
高校から本格的に陸上部へ
――今日はお越しいただき、ありがとうございます。コトブキヤの選手ですから、“聖地”秋葉原からいらっしゃったのですか? 宇野 もちろん!走って! と、言いたいところですが、自宅からです(笑)。朝はしっかり練習してから来ました。突然、お邪魔してすみません! ――月陸に乗り込んできた(?)理由を聞かせていただきましょう! 宇野 年末年始になると、箱根駅伝がすごく注目されるじゃないですか。どの雑誌でも、ウェブでも、箱根駅伝、箱根駅伝。その次にニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝)です。それに比べて、全国高校駅伝があまり注目されていないと思うんです。全国高校駅伝ってすごいんだよ! 楽しいんだよ! って、どこかで伝えたい思いがありました。それで、ダメ元で連絡して、乗り込んでみたら何とかなるかなって! ――昔の月刊陸上競技など専門誌の2月号(1月発売)の表紙は全国高校駅伝が飾るほど、他の駅伝よりも注目度が高かったですからね。都大路の魅力をうかがう前に、少し宇野さんのことを教えてください! 芸能人最速ランナーとして知られていますが、いつから陸上を? 宇野 バスケットボール部だった中学校の時に、マラソン大会で優勝して陸上部に誘われました。中3の時に東京都大会に出場したのですが、それを見ていた正則学園高の菅原和幸先生(当時、現・流経大柏高)に勧誘していただきました。「3年目に都大路に連れて行くから!」って。もう、目が“本気”だったんです。先生も当時若かったのでギラギラしていました。都大会でも下から数えたほうが早いのに全国大会?って。「この先生を信じてみよう!」と進学しました。でも、その時は「都大路って何?」状態でしたけど。 ――どんな高校生活でしたか。 宇野 めちゃくちゃ厳しかったです! 当時は「東京で一番厳しい」と言われるくらいの練習量でした。朝練習もしっかり皇居を走って。オフも数えるほどしかなくて、毎日、陸上漬けの日々でした。 ――芸人とどっちが大変ですか? 宇野 走るほうですね(笑)。いや、芸人には芸人の大変さもあるんですけど。振り返ると、本当に大変でしたけど、その経験、過程が芸人にとってもすごく必要なんです。今に生きていますね。実際、こうして走るお仕事をさせていただけているので。 ――入学してから、少しずつ「全国」に近づいていくわけですね。 宇野 1年目の都高校駅伝で12位になって、2年目で確信に変わりましたね。2年生の時は4区の僕にタスキがトップで来たんです。もう、ビックリしちゃって。目の前には先導のバイクがいるし、浮き足だってしまって、結果的にどんどん抜かれちゃいました。國學院久我山高に並ぶ間もなく抜かれて、「これが全国に行くチームなのか」と思いましたね。僕の失速もあって4位で全国には行けなかったのですが、先生もチームメイトから「何をやってるんだ!」と責められることはなくて、チームで戦う駅伝の魅力を実感しました。 高校時代を振り返る宇野けんたろうさん ――3年目に都大路に出場決定! 宇野 僕はキャプテンをさせてもらいましたが、実は3年目に大変なことが起きて……。都高校駅伝では6区で、プログラムを見るとだいたいの到着予想タイムが載っているんです。これくらいかなってジャージを着て待機所にいたら、「正則学園!正則学園!6区の選手!宇野くん!」って係の人が大声で呼んでいるんです。なんでだろうと思っていたら、5区の選手がタスキを持って「宇野さーん!どこですかー!」て叫んでいました(笑)。やばい!ってジャージを破り捨てるように脱いで脚が空回りながら急いで中継所に行きました。あまりにも1区から速すぎて、予想タイムを大幅に超えていたんです。結果的に優勝できて、先生も「お前らしいよ」と笑ってくれましたが、負けていたらと思うと……。芸人としては“オイシイ”ですけど、競技者としては……。 ――アウトですね(笑)。やっぱり格別でしたか? 宇野 先生を胴上げして、夢が叶えられたんだってうれしかったですね。その後は都庁を訪れて優勝の挨拶をして「東京のために頑張ってきてください」というプレッシャーを受け(笑)、メーカーさんからウエアが届いて、取材もあって。喜びはもちろん、周囲の反響がすごかったですね。でも、それで少し気持ちが切れてしまったところもありました。先生は「ここは通過点で、全国で勝負しよう」と言ってくださっていたのですが、僕たちにとっては都大路が「到達点」になってしまったんですね。 ――1999年は第50回の記念大会で地区代表も含めて58チームが出場。正則学園は57位、宇野さんは6区を走られています。 宇野 情けない走りになってしまいました。区間56位。1区のエース(原田聡)でさえ区間29位で「こんなに通用しないのか」とショックを受けたことと、招集からバス移動、待機所まで、仙台育英(宮城)や西脇工(兵庫)、佐久長聖(長野)など、テレビや雑誌で見ていたスター選手がいて緊張で自分の身体じゃないみたいでした。 高3時に全国高校駅伝に出場して6区を走った ――さすがにこの時は遅れていないですよね? 宇野 逆にめちゃくちゃ早く行きましたよ! まだ呼ばれていないのに(笑)。テレビカメラを見つけて、ここでこう動いたらNHKに映るだろうとウロウロしていました。その映像が今でもNHKに残っているようです(笑)。都大路を通過点として捉えられていれば、また違った形でテレビに映れたのになって反省しています。力が発揮できなかったことは今も心残りですね。 ――同世代には佐藤清治さん(佐久長聖)や前田和浩さん(白石)がいて、高見澤勝さん(佐久長聖)、藤井周一さん(西脇工)など、選手、そして今は指導者としても活躍されている方々がいますね。 宇野 僕からしたらスーパースターばかり。高校の同期の五十嵐利治さんは拓大女子陸上競技部の監督をしています。出世しましたねぇ……。最近は不破聖衣来選手のことでたくさん取り上げられて、僕よりテレビに映っていますよ!(笑) 同世代はその後、箱根駅伝も走った選手も多くて、今も陸上界で頑張っているので刺激をもらっています。 ――戦い終えて、チームはどんな雰囲気でしたか。 宇野 菅原先生は「目標を達成してくれた」と言ってくれて、「全国で戦えなかったから、この悔しさを後輩たちが晴らしてくれると思う」とみんなに言っていました。もう一回、都大路に戻ってこよう!と。僕には「宇野は3年間、よく頑張ってくれた」と言ってくれました。その2日後かな。監督室に行って「お話があるのですが……」って。 ――まさか……? 宇野 「僕、あの……」って言うと、先生は「大学だろ? いくつか話が来ているぞ。進めておくな」って。そこで僕が「あの、吉本興業でお笑いをやらせてください!」と言ったら、めちゃくちゃ怒られました!(笑) 何を言っているんだ!って。都大路が出発点だろうって。京都では僕もすごく悔しがっていたので、当然、大学に行って箱根駅伝を目指すものだと思っていたようです。それがまさかのお笑い芸人……。 ――それは……まぁ、普通はビックリされますよ(笑)。ずっとお笑い芸人になりたかったんですか。 宇野 高校3年生になってからですね。当時は「めちゃ×2イケてるッ!」や「ボキャブラ天国」が流行っていて、ナインティナインの岡村隆史さんを見て、「なんだこの面白い人は!」って。調べると吉本興業所属。じゃあ吉本興業に入ったら面白くなれるのかなって。NSCという吉本興業のお笑い養成所に通うことを決めました。今では先生もすごく応援してくれて、必ず連絡をくれるんです。 都大路出場時の月陸を見て懐かしむスピード感と京都の街並みが見どころの一つ
――本題に戻ります! 全国高校駅伝の魅力とは? 宇野 やっぱりスピードがすごいです! 男子を例に挙げると、箱根駅伝だと1区間20km以上あるので1km3分前後のペースですが、高校駅伝だと短い区間なら1km2分40秒くらいで大学生より速く走る区間もあります! 見どころは1区。男女とも各校のエース区間が集まります。今回の男子では洛南高(京都)の佐藤圭汰選手が注目です。5000mの高校記録13分31秒19を持っていて、もし1区を走ったら日本人最高(28分48秒=佐藤一世)を塗り替えてほしいです! 1区に限らず、現在やシューズや練習の進化によってトラックでも好記録がたくさん生まれています。今年も新記録が誕生するかもしれません! 僕は男女とも仙台育英が来るんじゃないかと注目しています。あとは地元の東京都代表、男子が國學院久我山、女子が順天。どちらも応援しています! ――テレビ観戦する際のオススメはありますか。 宇野 テレビ中継をされるNHKでは事前番組として、注目チームや選手を紹介しています。そういうところとセットで見るとさらに応援したくなると思います! あとは、京都の街並みも中継で映りますので、それがすごくキレイなのでチェックしてみてください。今年はもしかしたら雪景色になるかも!? そういったところも含めて楽しんでもらえればと思います。 ――今年6区を走る選手たちに、経験者からアドバイスを! 宇野 6区はすごく難しいコースでテクニックが求められます。紫明通から北大路通に入るまでに3回コーナーがあって、“クネクネ”しています。僕は初出場で経験もなかったので、結構遠回りして、沿道の人にファンサービスしているのかというくらい変なところを走っちゃいました。ずっと上り坂も続くのでいつ切り替えるのかも大事です。しっかりコースを頭に入れて最短距離で行けるようにイメージしておいてください! ――高校駅伝に関するお仕事が来るといいですね。 宇野 ゆくゆくは解説をさせていただきたいです(笑)。現地リポーターでも何でもいいので、全国高校駅伝に携われたらすごくうれしいです。全国高校駅伝は人生の大きな財産ですし、こうして高校駅伝のことを伝えられるのは、一つの恩返しだと思っています。菅原先生も喜んでくれるかな。 ――宇野さん自身の、今後の活動予定は? 宇野 来年の3月に東京マラソンがあるので、そこで2時間33分の自己ベストを更新したいと思っています! ――いや、それはもはやアスリートの返答ですよ! 芸人さんとしてのお仕事予定を聞こうかと(笑)。 宇野 確かに! そっちかー! やっちゃいましたね(笑)。芸人としてもいろいろ活動していますし、あくまでベースはお笑い芸人。「走る」を武器に頑張っていきます! ――都大路を走る高校生たちへエールをお願いします。 宇野 陸上を通して学んだのは一生懸命やることの大切さです。一生懸命やって、あきらめなければ、必ず結果はついてくると思います。先日の「M-1グランプリ」では錦鯉さんが優勝しました。昔から知っていたのですが、苦労しても、あきらめずに頑張れば夢が叶うんだと実感しました。僕自身も、一生懸命走っていればいいことあるもんだな、と思います。そういえば、菅原先生も「一生懸命走っていればいいことあるな」と言ってくれました。高校時代の経験が今の宇野の仕事につながっているなって。あの頃の経験は本当に財産です。 ――今日はありがとうございました。言い残したことはありませんか? 宇野 高校駅伝が目標ではなく、今後の通過点だと思ってください! 走るみなさんには、いろいろな進路があると思います。箱根駅伝を目指す人、実業団に行く人、引退する人……。一つだけ、お笑い芸人はやめたほうがいいです! もしお笑い芸人になるなら箱根駅伝を走ってからにしましょう! マネージャーさんから「箱根を走っていれば仕事を取ってきやすいのに!」と口酸っぱく言われてしまうので(笑)。お笑い芸人に限らず、都大路を含めていろいろな経験、勉強を積んでいってもらいたいです。選手のみなさん、頑張ってください! うの・けんたろう/1982年3月1日生まれ。東京都出身。吉本興業のお笑いコンビ「げんき~ず」のツッコミ担当で、お笑い芸人をしながら株式会社壽屋の「コトブキヤ陸上部」に所属する実業団ランナー。中学時代に陸上に目覚め、高校時代には全国高校駅伝に出場。陸上の名門校から誘いがある中でNSC東京校へ。フルマラソンの自己ベストは2時間33分30秒。芸人としてだけでなく、TBS日曜劇場ドラマ『陸王』やNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』に出演するなど、幅広く活躍している。 文/向永拓史
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