2021.11.29
◇第41回全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝in宮城/11月28日、宮城県松島町文化観光交流館前~弘進ゴムアスリートパーク仙台、6区間42.195㎞)
11月28日に行われた第41回全日本実業団対抗女子駅伝は、前回大会で過去最高の2位に入りながらも悔し涙を流した積水化学が、2時間13分03秒の大会新記録で初優勝を飾った。2000年シドニー五輪マラソン金メダルの高橋尚子らを擁しながらも果たせなかった悲願を、創部25年目にしてついに成し遂げた。
6人中5人が前回経験者。それぞれの思いは1つだった。前回5区で、トップでタスキを受けながらJP日本郵政グループに逆転を許した森智香子が、全員の思いを代弁する。
「昨年は2位。チームとしては過去最高でうれしい面ではあったけど、優勝狙っていたので悔しさのほうが大きかった。去年の大会が終わってからは、優勝だけを狙って本気で過ごした1年だった」
野口英盛監督も、選手たちの1年の取り組みに「それぞれが記録を上げることが優勝につながる。自分たちが何をすべきかを、自分たちで実行できていた」と確かな手応えを感じていた。その成果を示した継走だった。
2区の卜部蘭以外はオーダーが前回から大幅に入れ替わったが、勝負どころは5区。昨年は逆転を許した区間にエース・新谷仁美を配したことが、そのメッセージだ。
1区を務めた森が、「優勝のためには自分が何をしないといけないかを冷静に判断しながら走れた」と、トップの背中が見える9位でタスキをつなぐ。東京五輪1500m出場の卜部はそのスピードを生かし、前回のタイムを11秒短縮する10分08秒の区間新で4人抜き。前回の1区から最長区間3区へ抜擢された佐藤早也伽に、1区からトップを守るヤマダホールディングスと14秒差でタスキをつないだ。
そして、殊勲の快走を見せたのが佐藤。5000mで来夏の世界選手権参加標準記録を突破する15分08秒72をマークするなど、この1年で確かな成長を遂げた27歳が、5.2kmでトップに立ち、そのまま独走態勢を築いていく。区間賞こそ10人抜きで2位に押し上げたJP日本郵政グループ・廣中璃梨佳に譲ったが、その差をわずかに5秒の区間2位。チームとしてのリードを34秒も作り、悲願への大きな流れを作った。
4区の弟子丸小春も実業団駅伝初出走ながら踏ん張り、この区間で2位に上がったデンソーと19秒差。33歳の新谷は、若い選手たちがつないでくれたタスキを感激の面持ちで受け取った。「監督の予定では5区で(トップに立つ)とあったのでしょうけど、それを選手たちの力が上回った」。
個人としては、2位に上がってきた資生堂・五島莉乃に1秒及ばなかったが、従来の記録を41秒短縮する区間新。貯金は33秒に増やした。そして前回の4区からアンカーに回った社会人2年目、宮城・仙台育英高出身の木村梨七が地元を軽やかに走り切り、右手人差し指を突き上げてフィニッシュテープを切った。
前回は1区から佐藤、卜部、新谷の三本柱を並べたが、「残り2区間だけで優勝した郵政さんに2分やられた」と野口監督。そのため、「上の3人よりも、残りのメンバーが自己記録を縮めていくことが大切だと思ってやってきた」という。その言葉通りに、「今日走った選手は、何かしらの種目で自己新を出している。それが今日の結果につながった」と指揮官は胸を張った。
新谷と卜部は、普段はクラブチームのTWOLAPSでトレーニングをしている。だが、新谷は「普段は離れているけど、お互いが思い合っていることを今回に向けての事前合宿に入った時に感じられた」と話す。チームの絆はこれ以上ないほど強まり、タスキをかけた6人の大きな支えとなった。
悔し涙から1年、全員の笑顔の輪が広がった。
前回12位だった資生堂が、予選会トップ通過の勢いを全日本へとつなげて2位へ躍進。1区4位から常に好位置をキープしたデンソーが、3連覇した2015年以来の好成績となる3位に食い込んだ。
史上4チーム目の3連覇を懸けたJP日本郵政グループは4位。1区で東京五輪マラソン代表・鈴木亜由子がトップと40秒差の14位と出遅れたが、、東京五輪10000m7位入賞の3区・廣中が2位まで浮上して望みをつないだ。ただ、その後は追い上げかなわず、順位を落とした。
前回9位のダイハツが5位に入り、2年ぶりのシード権獲得。1、2区でトップを走ったヤマダホールディングスは6位で2年連続、ユニバーサルエンターテインメントが7位で5年ぶりのシード入り。シード最後のイスとなった8位はワコールがつかんだ。
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