2021.11.13
トラック練習の取り組み方、パリ五輪&ロス五輪への意識新たに
東京五輪が閉幕して3ヵ月が経ち、日本の長距離界は秋の駅伝シーズンに突入しているが、真夏の感動はまだまだ記憶に新しい。男子10000mで代表になった相澤晃(旭化成)は、自身の持つ日本記録(27分18秒75)より1分近く遅い28分18秒37で17位にとどまった。しかし、それが「今の僕の実力」と潔く認め、3年後のパリ五輪に向けて新たなスタートを切っている。
「オリンピックに出場できたことで、いろんなことを考えたんです」と相澤。緊張から解き放たれ、我を見つめる時間を得て、自分が思ったこと、感じたことの整理がついたのか、彼の語り口は熱っぽく、いつにも増して雄弁だった。今後の日本長距離界を背負って立つ24歳の「五輪後の想い」に触れてみよう。
トラックの練習に通年で一貫性を
── 初めてのオリンピックで、しかも男子10000mは大会初日に組まれた唯一の決勝種目でした。その中で国立競技場のトラックに足を踏み入れた瞬間は、どういう感覚でしたか。
相澤 審判員に外国の方がいるので、いつもの雰囲気と違ったということもあるんですけど、本当に独特な感じでした。レースに集中しないといけないのに、自分より強い選手が大勢いて、「おお、すごいなぁ」って(笑)。スタート時刻が近づくにつれて緊張が増して、腕時計を外し忘れました。
──28分18秒37で17位という結果は、自分でどう受け止めましたか。
相澤 25人の出場で17位ですから、実力通りかなと思っています。周りから入賞を期待されているのはわかっていましたけど、自分の実力からすれば、正直「真ん中ぐらいかな」と思っていたんです。じゃあ、その実力の中で、自分は何を感じ取れるのか。もちろん順位は1つでも上がいいんですけど、「いろんなことを感じたいな」と思いながら今回はレースに臨みました。
──オリンピックに出場して、まず何を思ったのでしょうか。
相澤 今まではトラックレースと駅伝に対する考え方がごちゃ混ぜというか、曖昧になっていたんです。でも、オリンピックを終えて、トラックを目指すならトラックレースに向けた年間スケジュールを組んで、駅伝はロードレースの1つと思って走り込む必要があるなと、改めて感じました。
──トラックと駅伝の考え方が曖昧とは?
相澤 日本人は夏場、冬季の駅伝に向けた走り込みをすると思うんですけど、それはトラックをメインにする選手にとって必要じゃないのでは、と僕は思っています。なぜなら、夏はまだトラックシーズン真っ盛りだからです。走り込みの時期は、もっと個々の試合に合わせて設定すべきだと思うんですね。そういう走り込みの時期が曖昧で、目的に合っていないなぁと、オリンピックが終わってからすごく感じました。
──今までそこに疑問を抱いたことはなかったのですか。
相澤 学生時代はチームで動くことが多かったですし、夏場は走り込みをするものという概念も強かったですよね。ただ、よく考えると秋にもトラックレースがあります。今回、そこを改めて強く意識したということです。練習の期分けと言えばいいんですかね。トラックの練習は年間で一貫性を持たせる必要があると実感しました。
──オリンピックで何を見て、そう感じたのでしょうか。
相澤 自分の実力が足りなかったというのが前提にあるんですけど、海外の選手の走りを見て、そこまでの準備の差が大きいなと思いました。海外の選手はトラックに集中してやっていますが、実業団に所属する僕たちが駅伝抜きの年間スケジュールを組めるかと言われたらそうでもない。じゃあどうするかとなったら、駅伝をうまく活用しつつ、トラックの練習をやる必要があります。もっと期分けをしっかりやって、駅伝は駅伝で、トラックのオフにロードレースに出るぐらいの気持ちでやらないとダメだと感じました。実業団に所属している以上、駅伝の意義も十分に理解していますし、決して「出たくない」という話ではありませんよ。
パリ五輪までトラックを突き詰めたい
──オリンピック前の準備状況はどうだったのでしょうか。旭化成の川嶋伸次コーチは「ケガをしないように、という意識が先に立って、十分に攻めた練習ができなかった」と話していました。
相澤 川嶋さんがおっしゃる通りで、すごく守りに入った練習が多かったです。前半はたくさんやったんですけど、途中から疲労が出てしまって、最後の2ヵ月ぐらいは攻めた練習ができませんでした。そこには後悔があります。でも、僕はまだ24歳で、あと2回ぐらいは(五輪出場の)チャンスが巡ってくると思うので、そのチャンスをつかみ取って、今回の経験を生かしたいです。
──攻め切れなかった理由は「ケガをしてスタートラインに立てなかったら……」という不安からですか。
相澤 ケガももちろんイヤだったんですけど、コンディションがあまり良くなかったので、「今攻めたら身体が壊れるな」というのがあって、攻められなかったです。気持ちの面でしんどかったから、身体にも出ていたのかもしれません。
──気持ちの面のしんどさは、オリンピックに向けてのプレッシャーですか。
相澤 そうですね。自分自身あまり考えないようにしていたんですけど、少しずつ身体に影響してました。また、僕は試合を詰めるとなかなか結果が出ないタイプなので、女子
の田中希実さん(豊田自動織機TC)のようにはいかないんです(笑)。体力がないなと思いました。ただ個人差はあると思うので、自分の「出し切れる」という強みをもっと生かせるような調整法や練習法を組み立てていければと思います。
──次のパリ五輪もトラックで狙いますか。
相澤 オリンピックが終わった直後は「マラソンをやろうかな」と思ったんです。マラソンでメダルを取ることが僕の競技人生の目標なので、だったら20歳代最後のオリンピックになるパリはマラソンかな、と。
でも、会社の人に「自分の陸上道を貫き通せばいいよ」と言われて、「自分は今、何をやりたいんだろう」と突き詰めたら、トラックだったんです。僕は今のところ、ロードを走っている時よりトラックを走っているほうが楽しい。もっとトラックをやって、高岡さん(寿成、カネボウ)のように5000m、10000m、マラソンと日本記録を作っていきたいなと考え方が変わりました。トラックでやり残したことがありますし、子供たちにもっと「トラックをやりたい」と思ってもらえるような、目標の選手になりたいですね。
──長距離をもっと極めたい?
相澤 はい。トラックで通用しないからマラソンをやるというのは、僕はイヤだったんです。あと3年間トラックをやっていたら、マラソンを始めるのが年齢的に遅すぎるのかもしれないですけど、僕はそれよりもトラックを楽しみながら突き詰めたいという気持ちのほうが強いです。オリンピックに出る前はここまで深く考えたことがなかったので、東京五輪に出られて本当に良かったなと思います。
日本人初の26分台は自分が出す覚悟
──10000mで26分台を出せる自信はありますか。
相澤 自信というより、出さなくちゃいけないと思っています。一緒にオリンピックに出た伊藤君(達彦、Honda)をはじめ、強い選手がたくさんいますけど、まず僕が出す。自分自身はそう思っています。そこだけは譲らずにやっていきたいですね。しかも「これが仕事だから」と悲壮感を持ってやるのではなく、もっと楽しくやりたい。レースはきついですけど、楽しんでいる姿も見せられたらいいと思います。
── 昨年12月の日本選手権10000mで27分18秒75の日本記録を樹立した後、「まだ行けると感じた」と話していましたね。
相澤 本格的なトラック練習を始めたのは実業団に入ってからなので、今やっと突き詰めた練習の下準備ができた段階です。先輩の鎧坂さん(哲哉)や他のチームメイトに助けてもらうことが多々あるんですけど、ただこれは旭化成という一つのチームだけじゃなくてもいいと思っているんです。大学生が「一緒に練習させてください」と言ってきたら一緒にやればいいし、他の実業団の選手と練習をするのもありだと思っていて、僕はそれが陸上界を活性化させると考えています。
── 旭化成にマラソンで2時間10分を切る選手が何人もいた頃、「一緒に練習をやらせてほしい」と言って延岡までやってくる実業団チームは多かったはずです。
相澤 宗猛さん(総監督)から聞きました。僕自身はそういうのを復活させたい。いろんな選手と陸上について話したり、一緒に練習したりしたい。実業団システムは幅広い選手が競技を続けることができて、素晴らしいんですけど、その枠にとらわれず、もっと広がっていけばいいなと思います。駅伝で名前を覚えてもらって、トラックやマラソンで応援してもらえる形を、もっと作っていけたらいいですね。
──相澤選手は割と柔軟にいろんな人の話を聞けるタイプなんですか。
相澤 僕はそんなに固くないと思います(笑)。去年からいろんなことを試したりして今があるので、さらに時代が進めば新しいトレーニングが出てくると思うんですけど、それをうまく自分の中で活用しながらやっていきたいと思います。
── 練習メニューは自分で立てているのですか。
相澤 週3回のポイント練習は今、川嶋さん、鎧坂さんと3人で相談して決めることが多いです。週に2回はジムに行って、旭化成陸上部が契約しているパーソナルコーチに見てもらいながら、ウエイトトレーニングなどをやっています。マンツーマンでしっかり教えてもらえるのが、学生時代と一番違うところですね。
2028年のロス五輪はマラソンで
──10000mで26分台を出すには、あと何が必要ですか。
相澤 スピードですね。もちろんスタミナもつけないといけないですけど、やっぱり5000m向けの高強度のスピード練習は絶対に必要です。僕の場合、遅筋というか長い距離を走る筋肉はすごく発達していて、乳酸がほとんど溜まらない体質なんです。逆に、もっと速筋を使うような瞬発系の練習をやらないといけない。だからと言ってスピード持久系のトレーニングもおろそかにできないので、そこはバランスですね。あとは、故障をしないこと。それをあと2年ぐらいがんばって続けて行けば、26分台は出ると思っています。
──パリ五輪こそ10000mで入賞を狙いますか。
相澤 入賞したいです。今の学生にも有望株が多いですけど、彼らが社会人になって実業団に入ってきても、僕は負けたくないし、トップで引っ張って行きたいです。
──パリ五輪が終わったら、いよいよマラソンを考えますか。
相澤 「マラソンで結果を残したい」というのは、僕の競技生活の目標として真ん中にあるんです。だから、マラソンは絶対にやりたいですし、旭化成陸上部の歴史を築いてきた宗さん兄弟が元気なうちに、マラソンを走っている姿を見せたい。猛さんにはそれが一つの願いだと言われています。
── パリの次のオリンピックはロサンゼルスです。1984年のロス五輪に宗兄弟はマラソンで出場し、猛総監督は4位入賞でした。
相澤 もう、それは運命ですね(笑)。運命の糸をたぐり寄せたいと思います。
トラック練習の取り組み方、パリ五輪&ロス五輪への意識新たに
東京五輪が閉幕して3ヵ月が経ち、日本の長距離界は秋の駅伝シーズンに突入しているが、真夏の感動はまだまだ記憶に新しい。男子10000mで代表になった相澤晃(旭化成)は、自身の持つ日本記録(27分18秒75)より1分近く遅い28分18秒37で17位にとどまった。しかし、それが「今の僕の実力」と潔く認め、3年後のパリ五輪に向けて新たなスタートを切っている。 「オリンピックに出場できたことで、いろんなことを考えたんです」と相澤。緊張から解き放たれ、我を見つめる時間を得て、自分が思ったこと、感じたことの整理がついたのか、彼の語り口は熱っぽく、いつにも増して雄弁だった。今後の日本長距離界を背負って立つ24歳の「五輪後の想い」に触れてみよう。トラックの練習に通年で一貫性を
── 初めてのオリンピックで、しかも男子10000mは大会初日に組まれた唯一の決勝種目でした。その中で国立競技場のトラックに足を踏み入れた瞬間は、どういう感覚でしたか。 相澤 審判員に外国の方がいるので、いつもの雰囲気と違ったということもあるんですけど、本当に独特な感じでした。レースに集中しないといけないのに、自分より強い選手が大勢いて、「おお、すごいなぁ」って(笑)。スタート時刻が近づくにつれて緊張が増して、腕時計を外し忘れました。 ──28分18秒37で17位という結果は、自分でどう受け止めましたか。 相澤 25人の出場で17位ですから、実力通りかなと思っています。周りから入賞を期待されているのはわかっていましたけど、自分の実力からすれば、正直「真ん中ぐらいかな」と思っていたんです。じゃあ、その実力の中で、自分は何を感じ取れるのか。もちろん順位は1つでも上がいいんですけど、「いろんなことを感じたいな」と思いながら今回はレースに臨みました。 ──オリンピックに出場して、まず何を思ったのでしょうか。 相澤 今まではトラックレースと駅伝に対する考え方がごちゃ混ぜというか、曖昧になっていたんです。でも、オリンピックを終えて、トラックを目指すならトラックレースに向けた年間スケジュールを組んで、駅伝はロードレースの1つと思って走り込む必要があるなと、改めて感じました。 ──トラックと駅伝の考え方が曖昧とは? 相澤 日本人は夏場、冬季の駅伝に向けた走り込みをすると思うんですけど、それはトラックをメインにする選手にとって必要じゃないのでは、と僕は思っています。なぜなら、夏はまだトラックシーズン真っ盛りだからです。走り込みの時期は、もっと個々の試合に合わせて設定すべきだと思うんですね。そういう走り込みの時期が曖昧で、目的に合っていないなぁと、オリンピックが終わってからすごく感じました。 ──今までそこに疑問を抱いたことはなかったのですか。 相澤 学生時代はチームで動くことが多かったですし、夏場は走り込みをするものという概念も強かったですよね。ただ、よく考えると秋にもトラックレースがあります。今回、そこを改めて強く意識したということです。練習の期分けと言えばいいんですかね。トラックの練習は年間で一貫性を持たせる必要があると実感しました。 ──オリンピックで何を見て、そう感じたのでしょうか。 相澤 自分の実力が足りなかったというのが前提にあるんですけど、海外の選手の走りを見て、そこまでの準備の差が大きいなと思いました。海外の選手はトラックに集中してやっていますが、実業団に所属する僕たちが駅伝抜きの年間スケジュールを組めるかと言われたらそうでもない。じゃあどうするかとなったら、駅伝をうまく活用しつつ、トラックの練習をやる必要があります。もっと期分けをしっかりやって、駅伝は駅伝で、トラックのオフにロードレースに出るぐらいの気持ちでやらないとダメだと感じました。実業団に所属している以上、駅伝の意義も十分に理解していますし、決して「出たくない」という話ではありませんよ。パリ五輪までトラックを突き詰めたい
──オリンピック前の準備状況はどうだったのでしょうか。旭化成の川嶋伸次コーチは「ケガをしないように、という意識が先に立って、十分に攻めた練習ができなかった」と話していました。 相澤 川嶋さんがおっしゃる通りで、すごく守りに入った練習が多かったです。前半はたくさんやったんですけど、途中から疲労が出てしまって、最後の2ヵ月ぐらいは攻めた練習ができませんでした。そこには後悔があります。でも、僕はまだ24歳で、あと2回ぐらいは(五輪出場の)チャンスが巡ってくると思うので、そのチャンスをつかみ取って、今回の経験を生かしたいです。 ──攻め切れなかった理由は「ケガをしてスタートラインに立てなかったら……」という不安からですか。 相澤 ケガももちろんイヤだったんですけど、コンディションがあまり良くなかったので、「今攻めたら身体が壊れるな」というのがあって、攻められなかったです。気持ちの面でしんどかったから、身体にも出ていたのかもしれません。 ──気持ちの面のしんどさは、オリンピックに向けてのプレッシャーですか。 相澤 そうですね。自分自身あまり考えないようにしていたんですけど、少しずつ身体に影響してました。また、僕は試合を詰めるとなかなか結果が出ないタイプなので、女子 の田中希実さん(豊田自動織機TC)のようにはいかないんです(笑)。体力がないなと思いました。ただ個人差はあると思うので、自分の「出し切れる」という強みをもっと生かせるような調整法や練習法を組み立てていければと思います。 ──次のパリ五輪もトラックで狙いますか。 相澤 オリンピックが終わった直後は「マラソンをやろうかな」と思ったんです。マラソンでメダルを取ることが僕の競技人生の目標なので、だったら20歳代最後のオリンピックになるパリはマラソンかな、と。 でも、会社の人に「自分の陸上道を貫き通せばいいよ」と言われて、「自分は今、何をやりたいんだろう」と突き詰めたら、トラックだったんです。僕は今のところ、ロードを走っている時よりトラックを走っているほうが楽しい。もっとトラックをやって、高岡さん(寿成、カネボウ)のように5000m、10000m、マラソンと日本記録を作っていきたいなと考え方が変わりました。トラックでやり残したことがありますし、子供たちにもっと「トラックをやりたい」と思ってもらえるような、目標の選手になりたいですね。 ──長距離をもっと極めたい? 相澤 はい。トラックで通用しないからマラソンをやるというのは、僕はイヤだったんです。あと3年間トラックをやっていたら、マラソンを始めるのが年齢的に遅すぎるのかもしれないですけど、僕はそれよりもトラックを楽しみながら突き詰めたいという気持ちのほうが強いです。オリンピックに出る前はここまで深く考えたことがなかったので、東京五輪に出られて本当に良かったなと思います。日本人初の26分台は自分が出す覚悟
──10000mで26分台を出せる自信はありますか。 相澤 自信というより、出さなくちゃいけないと思っています。一緒にオリンピックに出た伊藤君(達彦、Honda)をはじめ、強い選手がたくさんいますけど、まず僕が出す。自分自身はそう思っています。そこだけは譲らずにやっていきたいですね。しかも「これが仕事だから」と悲壮感を持ってやるのではなく、もっと楽しくやりたい。レースはきついですけど、楽しんでいる姿も見せられたらいいと思います。 ── 昨年12月の日本選手権10000mで27分18秒75の日本記録を樹立した後、「まだ行けると感じた」と話していましたね。 相澤 本格的なトラック練習を始めたのは実業団に入ってからなので、今やっと突き詰めた練習の下準備ができた段階です。先輩の鎧坂さん(哲哉)や他のチームメイトに助けてもらうことが多々あるんですけど、ただこれは旭化成という一つのチームだけじゃなくてもいいと思っているんです。大学生が「一緒に練習させてください」と言ってきたら一緒にやればいいし、他の実業団の選手と練習をするのもありだと思っていて、僕はそれが陸上界を活性化させると考えています。 ── 旭化成にマラソンで2時間10分を切る選手が何人もいた頃、「一緒に練習をやらせてほしい」と言って延岡までやってくる実業団チームは多かったはずです。 相澤 宗猛さん(総監督)から聞きました。僕自身はそういうのを復活させたい。いろんな選手と陸上について話したり、一緒に練習したりしたい。実業団システムは幅広い選手が競技を続けることができて、素晴らしいんですけど、その枠にとらわれず、もっと広がっていけばいいなと思います。駅伝で名前を覚えてもらって、トラックやマラソンで応援してもらえる形を、もっと作っていけたらいいですね。 ──相澤選手は割と柔軟にいろんな人の話を聞けるタイプなんですか。 相澤 僕はそんなに固くないと思います(笑)。去年からいろんなことを試したりして今があるので、さらに時代が進めば新しいトレーニングが出てくると思うんですけど、それをうまく自分の中で活用しながらやっていきたいと思います。 ── 練習メニューは自分で立てているのですか。 相澤 週3回のポイント練習は今、川嶋さん、鎧坂さんと3人で相談して決めることが多いです。週に2回はジムに行って、旭化成陸上部が契約しているパーソナルコーチに見てもらいながら、ウエイトトレーニングなどをやっています。マンツーマンでしっかり教えてもらえるのが、学生時代と一番違うところですね。2028年のロス五輪はマラソンで
──10000mで26分台を出すには、あと何が必要ですか。 相澤 スピードですね。もちろんスタミナもつけないといけないですけど、やっぱり5000m向けの高強度のスピード練習は絶対に必要です。僕の場合、遅筋というか長い距離を走る筋肉はすごく発達していて、乳酸がほとんど溜まらない体質なんです。逆に、もっと速筋を使うような瞬発系の練習をやらないといけない。だからと言ってスピード持久系のトレーニングもおろそかにできないので、そこはバランスですね。あとは、故障をしないこと。それをあと2年ぐらいがんばって続けて行けば、26分台は出ると思っています。 ──パリ五輪こそ10000mで入賞を狙いますか。 相澤 入賞したいです。今の学生にも有望株が多いですけど、彼らが社会人になって実業団に入ってきても、僕は負けたくないし、トップで引っ張って行きたいです。 ──パリ五輪が終わったら、いよいよマラソンを考えますか。 相澤 「マラソンで結果を残したい」というのは、僕の競技生活の目標として真ん中にあるんです。だから、マラソンは絶対にやりたいですし、旭化成陸上部の歴史を築いてきた宗さん兄弟が元気なうちに、マラソンを走っている姿を見せたい。猛さんにはそれが一つの願いだと言われています。 ── パリの次のオリンピックはロサンゼルスです。1984年のロス五輪に宗兄弟はマラソンで出場し、猛総監督は4位入賞でした。 相澤 もう、それは運命ですね(笑)。運命の糸をたぐり寄せたいと思います。
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