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2021.11.01

女王・名城大が盤石の5連覇 4年生が牽引した区間賞5・区間新3の圧巻リレー/全日本大学女子駅伝
女王・名城大が盤石の5連覇 4年生が牽引した区間賞5・区間新3の圧巻リレー/全日本大学女子駅伝

◇第39回全日本大学女子駅伝(10月31日、6区間38.1km/宮城県仙台市・弘進ゴムアスリートパーク仙台~仙台市役所前市民広場)

前回マークした大会記録(2時間2分57秒)には2秒届かなかったものの、今年も女王・名城大の強さは圧倒的だった。

6人中5人が区間賞に輝き、うち3人が区間新記録。2位の大東大に2分36秒の大差をつける2時間2分59秒で圧勝。2011年から15年の立命大だけが成し遂げたことのある「5連覇」の偉業に、ついに並んだ。

前日会見で米田勝朗監督は、「2区と3区に入る4年生2人で勝負を決めたい」と語っていた。それは、名城大にプレッシャーをかけるべく各校が1区から仕掛けてくることを予想しての戦略だったが、1区に入った山本有真(3年)が「ここまで引っ張ってくれた4年生に連覇をしてほしかった」と、会心の走りで21分48秒の区間賞と、一気に主導権を握った。

「監督としてはどのレースでも、一番良く走った時の想定と、ミスをしたりうまくいかなかったりした時のイメージの2通りを考えます。良いことばかり考えて、そうなった試しがないので、最悪の状況を考えながら選手には2通りの指示を出していましたが、1区の山本が指示通りに良い滑り出しをしてくれました」(米田監督)

これ以上ないかたちで早くもトップに立つと、指揮官がポイント区間に挙げていた4年生コンビ、高松智美ムセンビと和田有菜の区間へと入っていく。1年時から主力を担い、2年前にも同じ区間でタスキをつないだ盟友だ。

最終学年となった今季は和田が主将、高松が副主将を務めてきた。「気持ちが入らない時期もありました」と振り返る高松も、夏合宿中に故障で離脱した和田も、今季はここまで常に好調だったわけではないが、高松が「最後の全日本なので思いは強かったです」と語り、和田は「日本一のキャプテンになる」と誓っていたように、今大会に懸けるモチベーションは高かった。7秒あったリードを高松は23秒に、さらに和田は1分19秒に拡大。チームをさらに勢いづけ、米田監督の目論見通り、レース前半を終えた時点でほぼ勝負を決めた。

4年生の魂を込めた走りは、タスキとともに後輩たちにつながった。出走メンバーただ1人の1年生・谷本七星は「1秒が私だけのタイムじゃなく、チーム名城の1秒だと思って削り出しました」と堂々の区間新でつなぐと、エースの小林成美(3年)は本調子ではないながらも区間3位でまとめた。アンカーの増渕祐香(2年)も大量リードを守るのではなく、攻めの走りで区間新を樹立。「4年生の方々がチーム作り上げてくださったからこそ、連覇できました」と頼れる先輩に深く感謝した。

レースが始まってしまえば、学年も年齢も関係ない。強い者が勝つのが勝負の世界の鉄則だ。それでも名城大は4人の4年生がチームを力強く牽引し、後輩たちはその背中を見ながら着実に力をつけた。米田監督は以前、「入学と卒業のある大学スポーツでは、4年が一区切りと考えられます。4連覇と5連覇では意味がまったく違います」と語っていた。史上2校目の5連覇を果たした名城大は、これから新たなフェーズへと突入していく。


最長区間の5区で驚異的区間新をマークしてチームの3位入賞を牽引した拓大・不破聖衣来

大東大が5年連続準V
1年生・不破が激走、拓大が3位

2位は5年連続で大東大。2013年以降の9大会で実に8回目の準優勝だ。1区を務めた準エース格の吉村玲美(3年)が転倒し、11位と出遅れたが、2~4区の1年生が徐々に順位をアップ。そして、エースの鈴木優花(4年)が区間新記録の力走で2位まで順位を上げた。

外園隆監督は「神様はいたずらばかりしてくる」と苦笑しながらも、「あのアクシデントの中、動じずに度胸のある走りを見せてくれた」と1年生の奮闘を高く評価した。

出場4回目の拓大が大健闘の3位。初のシード権獲得だけでなく、目標だった5位も上回ってトップスリー入りを果たした。

立役者となったのは、5000mで学生歴代3位、今季学生ランキングトップの15分20秒68を持つ不破聖衣来(1年)。9位でタスキを受けると、「前にいる選手を1人ずつ抜くつもりだった」と6人を次々と抜き去った。区間記録(29分14秒)更新が目標だったが、それを大幅に上回る28分00秒で、学生トップ選手の大東大・鈴木に59秒、10000mの学生記録(31分22秒34)を持つ名城大・小林を1分28秒も上回った。

五十嵐利治監督も「移動しながら映像を見ていました。『5kmを15分20秒で通過した』と聞いて、それは間違いだろうと思ったけれど、実際に彼女の走りを見たらそれぐらいのペースだった。本当にすごい」と、スーパールーキーの衝撃的な全日本デビューに舌を巻くばかりだった。

4位以下は、立命大、日体大、大阪学大、城西大、松山大が続き、ここまでの8校がシード権を獲得した。

文/小野哲史

■第39回全日本大学女子駅伝 成績

●総合成績
1位 名 城 大 2時間02分59秒
2位 大 東 大 2時間05分35秒
3位 拓  大 2時間06分23秒
4位 立 命 大 2時間06分30秒
5位 日 体 大 2時間06分56秒
6位 大阪学大 2時間07分07秒
7位 城 西 大 2時間07分10秒
8位 松 山 大 2時間07分18秒
9位 東北福祉大 2時間08分46秒
10位 関  大 2時間09分05秒
11位 大阪芸大 2時間09分17秒
12位 中京学大 2時間09分24秒
13位 関西外大 2時間09分57秒
14位 福 岡 大 2時間10分18秒
15位 佛 教 大 2時間10分27秒
16位 鹿屋体大 2時間11分00秒
17位 兵 庫 大 2時間11分14秒
18位 中  大 2時間11分23秒
19位 順  大 2時間11分25秒
20位 筑 波 大 2時間11分33秒
21位 環太平洋大 2時間17分38秒
22位 新潟医療福祉大 2時間19分07秒
23位 札幌国際大 2時間19分40秒
24位 石巻専修大 2時間23分10秒
25位 中 京 大 2時間24分03秒
OPN 東北学連選抜 2時間28分53秒
●区間賞
1区(6.6km) 山本有真(名城大) 21分48秒
2区(3.9km) 高松智美ムセンビ(名城大) 12分01秒=区間新
3区(6.9km) 和田有菜(名城大) 21分51秒
4区(4.8km) 谷本七星(名城大) 15分37秒=区間新
5区(9.2km) 不破聖衣来(拓大) 28分00秒=区間新
6区(6.7km) 増渕祐香(名城大) 22分14秒=区間新

◇第39回全日本大学女子駅伝(10月31日、6区間38.1km/宮城県仙台市・弘進ゴムアスリートパーク仙台~仙台市役所前市民広場) 前回マークした大会記録(2時間2分57秒)には2秒届かなかったものの、今年も女王・名城大の強さは圧倒的だった。 6人中5人が区間賞に輝き、うち3人が区間新記録。2位の大東大に2分36秒の大差をつける2時間2分59秒で圧勝。2011年から15年の立命大だけが成し遂げたことのある「5連覇」の偉業に、ついに並んだ。 前日会見で米田勝朗監督は、「2区と3区に入る4年生2人で勝負を決めたい」と語っていた。それは、名城大にプレッシャーをかけるべく各校が1区から仕掛けてくることを予想しての戦略だったが、1区に入った山本有真(3年)が「ここまで引っ張ってくれた4年生に連覇をしてほしかった」と、会心の走りで21分48秒の区間賞と、一気に主導権を握った。 「監督としてはどのレースでも、一番良く走った時の想定と、ミスをしたりうまくいかなかったりした時のイメージの2通りを考えます。良いことばかり考えて、そうなった試しがないので、最悪の状況を考えながら選手には2通りの指示を出していましたが、1区の山本が指示通りに良い滑り出しをしてくれました」(米田監督) これ以上ないかたちで早くもトップに立つと、指揮官がポイント区間に挙げていた4年生コンビ、高松智美ムセンビと和田有菜の区間へと入っていく。1年時から主力を担い、2年前にも同じ区間でタスキをつないだ盟友だ。 最終学年となった今季は和田が主将、高松が副主将を務めてきた。「気持ちが入らない時期もありました」と振り返る高松も、夏合宿中に故障で離脱した和田も、今季はここまで常に好調だったわけではないが、高松が「最後の全日本なので思いは強かったです」と語り、和田は「日本一のキャプテンになる」と誓っていたように、今大会に懸けるモチベーションは高かった。7秒あったリードを高松は23秒に、さらに和田は1分19秒に拡大。チームをさらに勢いづけ、米田監督の目論見通り、レース前半を終えた時点でほぼ勝負を決めた。 4年生の魂を込めた走りは、タスキとともに後輩たちにつながった。出走メンバーただ1人の1年生・谷本七星は「1秒が私だけのタイムじゃなく、チーム名城の1秒だと思って削り出しました」と堂々の区間新でつなぐと、エースの小林成美(3年)は本調子ではないながらも区間3位でまとめた。アンカーの増渕祐香(2年)も大量リードを守るのではなく、攻めの走りで区間新を樹立。「4年生の方々がチーム作り上げてくださったからこそ、連覇できました」と頼れる先輩に深く感謝した。 レースが始まってしまえば、学年も年齢も関係ない。強い者が勝つのが勝負の世界の鉄則だ。それでも名城大は4人の4年生がチームを力強く牽引し、後輩たちはその背中を見ながら着実に力をつけた。米田監督は以前、「入学と卒業のある大学スポーツでは、4年が一区切りと考えられます。4連覇と5連覇では意味がまったく違います」と語っていた。史上2校目の5連覇を果たした名城大は、これから新たなフェーズへと突入していく。 最長区間の5区で驚異的区間新をマークしてチームの3位入賞を牽引した拓大・不破聖衣来

大東大が5年連続準V 1年生・不破が激走、拓大が3位

2位は5年連続で大東大。2013年以降の9大会で実に8回目の準優勝だ。1区を務めた準エース格の吉村玲美(3年)が転倒し、11位と出遅れたが、2~4区の1年生が徐々に順位をアップ。そして、エースの鈴木優花(4年)が区間新記録の力走で2位まで順位を上げた。 外園隆監督は「神様はいたずらばかりしてくる」と苦笑しながらも、「あのアクシデントの中、動じずに度胸のある走りを見せてくれた」と1年生の奮闘を高く評価した。 出場4回目の拓大が大健闘の3位。初のシード権獲得だけでなく、目標だった5位も上回ってトップスリー入りを果たした。 立役者となったのは、5000mで学生歴代3位、今季学生ランキングトップの15分20秒68を持つ不破聖衣来(1年)。9位でタスキを受けると、「前にいる選手を1人ずつ抜くつもりだった」と6人を次々と抜き去った。区間記録(29分14秒)更新が目標だったが、それを大幅に上回る28分00秒で、学生トップ選手の大東大・鈴木に59秒、10000mの学生記録(31分22秒34)を持つ名城大・小林を1分28秒も上回った。 五十嵐利治監督も「移動しながら映像を見ていました。『5kmを15分20秒で通過した』と聞いて、それは間違いだろうと思ったけれど、実際に彼女の走りを見たらそれぐらいのペースだった。本当にすごい」と、スーパールーキーの衝撃的な全日本デビューに舌を巻くばかりだった。 4位以下は、立命大、日体大、大阪学大、城西大、松山大が続き、ここまでの8校がシード権を獲得した。 文/小野哲史 ■第39回全日本大学女子駅伝 成績 ●総合成績 1位 名 城 大 2時間02分59秒 2位 大 東 大 2時間05分35秒 3位 拓  大 2時間06分23秒 4位 立 命 大 2時間06分30秒 5位 日 体 大 2時間06分56秒 6位 大阪学大 2時間07分07秒 7位 城 西 大 2時間07分10秒 8位 松 山 大 2時間07分18秒 9位 東北福祉大 2時間08分46秒 10位 関  大 2時間09分05秒 11位 大阪芸大 2時間09分17秒 12位 中京学大 2時間09分24秒 13位 関西外大 2時間09分57秒 14位 福 岡 大 2時間10分18秒 15位 佛 教 大 2時間10分27秒 16位 鹿屋体大 2時間11分00秒 17位 兵 庫 大 2時間11分14秒 18位 中  大 2時間11分23秒 19位 順  大 2時間11分25秒 20位 筑 波 大 2時間11分33秒 21位 環太平洋大 2時間17分38秒 22位 新潟医療福祉大 2時間19分07秒 23位 札幌国際大 2時間19分40秒 24位 石巻専修大 2時間23分10秒 25位 中 京 大 2時間24分03秒 OPN 東北学連選抜 2時間28分53秒 ●区間賞 1区(6.6km) 山本有真(名城大) 21分48秒 2区(3.9km) 高松智美ムセンビ(名城大) 12分01秒=区間新 3区(6.9km) 和田有菜(名城大) 21分51秒 4区(4.8km) 谷本七星(名城大) 15分37秒=区間新 5区(9.2km) 不破聖衣来(拓大) 28分00秒=区間新 6区(6.7km) 増渕祐香(名城大) 22分14秒=区間新

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