2021.10.16
Close-up 石田洸介
5000mの高校記録を塗り替えたスーパールーキー
「世界」を目指して東洋大で“進化中”
5000mの高校記録を塗り替えた東洋大のスーパールーキー・石田洸介
現在の大学1年生で「スーパールーキー」という表現が最も似合うのが石田洸介(東洋大)だろう。昨年は5000mで13分34秒74と高校記録を16年ぶりに更新。10000mでも28分37秒50というタイムを叩き出した。今季は故障もあってトラックシーズンは不発に終わったが、徐々に調子を取り戻している。トラック種目でパリ五輪を狙う逸材は駅伝シーズンでどんな走りを見せるのか。
各世代の記録を塗り替えてきた
福岡・浅川中時代に1500m3分49秒72、3000m8分17秒84の中学記録と5000mの中学最高記録(14分32秒44)を樹立。群馬・東農大二高では5000mで13分34秒74の高校記録(当時)を打ち立て、10000mでも28分37秒50(高校歴代7位)をマークしている。石田洸介は燦々と輝くキャリアを引っ提げて東洋大に入学した。
「中学・高校と指導者に恵まれてきたからこそ、それぞれ結果を残すことができたと思っています。東洋大に進学したのは、酒井(俊幸)監督の『世界大会の代表になれる選手を育成したい』という思いと、自分の目標が一致したことが大きいです。競歩の池田向希さんと川野将虎さん(ともに現・旭化成)は学生のうちから世界大会に出場されていますし、自分の夢をかなえられるのはここしかないなと感じました」
設楽悠太、服部勇馬、相澤晃らOBが世界大会の代表として活躍した姿は石田にとってまぶしく見えたことだろう。歴代のエースたちの背中を追いかけるべく東洋大に入学したが、今年のトラックシーズンはほとんど稼働できなかった。12月の日本選手権5000mと全国高校駅伝の1区(10km)を両立しようとハイレベルなトレーニングに挑み、走りを崩したのが原因だった。
「昨年12月は左右の接地バランスが格段に悪く、脚に力が入らない状態になったんです。これは自分の走りじゃないぞ、とずっと思っていたのですが、原因もわからないまま都大路に向かいました。気持ちだけで何とかしようと思っていたのですが、身体がついてこなくて、結局、惨敗でした」
全国高校駅伝は1区で区間14位。高校最後のレースを終えた後は、左足底付近を痛めてジョグすらできない状態になり、モチベーションも上がらなかった。福岡の実家で“空白の日々”を過ごしたという。
大学入学前から徐々に走り始めた石田は5月の関東インカレを回避。6月末の日本選手権5000mに照準を定めた。しかし、大会直前の合宿で右脚を痛め、大会2日前まで走れない状態に。状態は芳しくない中であえて出場し、3000mで途中棄権した。
「日本選手権は昨年出られませんでしたし、東京五輪の選考会です。勝負できるとは思っていませんでしたけど、何かを得ようと思って走りました。日本選手権に出て、気持ち的に吹っ切れた部分がありましたね」
しばらくは脚の痛みに悩まされたが、夏合宿の後半からAチームの合宿に参加。「ようやく自分のイメージする走りと動きが合致してきて、少しずついい感覚で走れてきています」と表情は明るい。それでも高校の一番良かったときを「100%」とすれば現在は「50%くらい」だという。
「昨年の全国高校駅伝も50%くらいでしたけど、どんどん下がっていくなかの50%です。今は上が見えている状態の50%。動きさえ良くなれば、戻ってくるんじゃないかなという感覚があります」
シーズン前半は故障に苦しんだが、徐々に調子を取り戻している
食育の実践でコンディション向上へ
世代トップを走ってきた石田は中学時代に東洋大の先輩にあたる短距離の桐生祥秀(日本生命)がミネラル入り麦茶で水分補給をしていることをSNSで知り、自身も積極的に飲用するようになったという。
「もともとミネラル入り麦茶は好きだったんですけど、水分補給に最適だと知り、高校時代は親から寮に送ってもらっていました。ゴクゴク飲めるのがいいですよね。とにかく美味しい。夏は1日2?3本は飲みました。ミネラルも豊富なので、良いイメージでずっと飲んでいます」
スポーツドリンクや清涼飲料水はカロリーが少なくないものもある。東洋大の酒井監督は「余計なものはとらないほうがいい」とミネラル入り麦茶を推奨しており、石田も「ミネラル入り麦茶は無糖でカロリーがないですし、ノンカフェイン。たくさん飲んでも大丈夫です。育ち盛りの中高生は水分補給が大切ですし、ミネラル入り麦茶を飲めば熱中症の予防だけでなく、いいこと尽くめじゃないかなと思います」と積極的に活用している。
大学入学前から無糖のミネラル入り麦茶を愛飲していたという石田
東洋大で栄養面のレクチャーを受けたことで、石田はさらに食生活に気をつけるようになったという。朝夕は管理栄養士が監修したメニューを食べているが、各自で準備する昼食は1年生・酒井監督・管理栄養士のグループLINEで「昼食調査」も実施している。
「高校時代は貧血に悩まされたこともあるので、鉄分が入っている食材をなるべくとるようにしています。コンビニやスーパーで肉や魚を調達して電子レンジで調理したり、栄養バランスやご飯の量なども考えています」
「箱根への憧れも抱いている」
体調も走りのバランスも上向いてきた石田。ルーキーイヤーの学生駅伝はどのようにとらえているのか。
「どの区間を走ってもチームに貢献できればと思っています。全日本はまだイメージできていないですけど、前半いい流れで攻めていければ走れるんじゃないでしょうか。来年は日本選手権で勝負したい気持ちが強いので、全日本後は箱根に向けた練習というよりも、5000m、10000mでタイムを狙う練習が優先順位としては上かなと思っています。とはいえ、日本人に生まれたからには箱根駅伝への憧れも抱いています。箱根への過程をトラックにつなげたい。5区は無理だと思っていますが、往路を走りたいですね。箱根でも記憶に残る走りをして卒業したいです」
2024年夏、大学4年で迎えることになるパリ五輪でトラック種目の出場を本気で狙っている石田。“鉄紺のエース”たちの系譜を引き継ぎ、学生駅伝でも攻めの走りを見せてくれるに違いない。
文/酒井政人
※この記事は『月刊陸上競技』2021年11月号に掲載しています
Close-up 石田洸介 5000mの高校記録を塗り替えたスーパールーキー 「世界」を目指して東洋大で“進化中”
5000mの高校記録を塗り替えた東洋大のスーパールーキー・石田洸介 現在の大学1年生で「スーパールーキー」という表現が最も似合うのが石田洸介(東洋大)だろう。昨年は5000mで13分34秒74と高校記録を16年ぶりに更新。10000mでも28分37秒50というタイムを叩き出した。今季は故障もあってトラックシーズンは不発に終わったが、徐々に調子を取り戻している。トラック種目でパリ五輪を狙う逸材は駅伝シーズンでどんな走りを見せるのか。各世代の記録を塗り替えてきた
福岡・浅川中時代に1500m3分49秒72、3000m8分17秒84の中学記録と5000mの中学最高記録(14分32秒44)を樹立。群馬・東農大二高では5000mで13分34秒74の高校記録(当時)を打ち立て、10000mでも28分37秒50(高校歴代7位)をマークしている。石田洸介は燦々と輝くキャリアを引っ提げて東洋大に入学した。 「中学・高校と指導者に恵まれてきたからこそ、それぞれ結果を残すことができたと思っています。東洋大に進学したのは、酒井(俊幸)監督の『世界大会の代表になれる選手を育成したい』という思いと、自分の目標が一致したことが大きいです。競歩の池田向希さんと川野将虎さん(ともに現・旭化成)は学生のうちから世界大会に出場されていますし、自分の夢をかなえられるのはここしかないなと感じました」 設楽悠太、服部勇馬、相澤晃らOBが世界大会の代表として活躍した姿は石田にとってまぶしく見えたことだろう。歴代のエースたちの背中を追いかけるべく東洋大に入学したが、今年のトラックシーズンはほとんど稼働できなかった。12月の日本選手権5000mと全国高校駅伝の1区(10km)を両立しようとハイレベルなトレーニングに挑み、走りを崩したのが原因だった。 「昨年12月は左右の接地バランスが格段に悪く、脚に力が入らない状態になったんです。これは自分の走りじゃないぞ、とずっと思っていたのですが、原因もわからないまま都大路に向かいました。気持ちだけで何とかしようと思っていたのですが、身体がついてこなくて、結局、惨敗でした」 全国高校駅伝は1区で区間14位。高校最後のレースを終えた後は、左足底付近を痛めてジョグすらできない状態になり、モチベーションも上がらなかった。福岡の実家で“空白の日々”を過ごしたという。 大学入学前から徐々に走り始めた石田は5月の関東インカレを回避。6月末の日本選手権5000mに照準を定めた。しかし、大会直前の合宿で右脚を痛め、大会2日前まで走れない状態に。状態は芳しくない中であえて出場し、3000mで途中棄権した。 「日本選手権は昨年出られませんでしたし、東京五輪の選考会です。勝負できるとは思っていませんでしたけど、何かを得ようと思って走りました。日本選手権に出て、気持ち的に吹っ切れた部分がありましたね」 しばらくは脚の痛みに悩まされたが、夏合宿の後半からAチームの合宿に参加。「ようやく自分のイメージする走りと動きが合致してきて、少しずついい感覚で走れてきています」と表情は明るい。それでも高校の一番良かったときを「100%」とすれば現在は「50%くらい」だという。 「昨年の全国高校駅伝も50%くらいでしたけど、どんどん下がっていくなかの50%です。今は上が見えている状態の50%。動きさえ良くなれば、戻ってくるんじゃないかなという感覚があります」 シーズン前半は故障に苦しんだが、徐々に調子を取り戻している食育の実践でコンディション向上へ
世代トップを走ってきた石田は中学時代に東洋大の先輩にあたる短距離の桐生祥秀(日本生命)がミネラル入り麦茶で水分補給をしていることをSNSで知り、自身も積極的に飲用するようになったという。 「もともとミネラル入り麦茶は好きだったんですけど、水分補給に最適だと知り、高校時代は親から寮に送ってもらっていました。ゴクゴク飲めるのがいいですよね。とにかく美味しい。夏は1日2?3本は飲みました。ミネラルも豊富なので、良いイメージでずっと飲んでいます」 スポーツドリンクや清涼飲料水はカロリーが少なくないものもある。東洋大の酒井監督は「余計なものはとらないほうがいい」とミネラル入り麦茶を推奨しており、石田も「ミネラル入り麦茶は無糖でカロリーがないですし、ノンカフェイン。たくさん飲んでも大丈夫です。育ち盛りの中高生は水分補給が大切ですし、ミネラル入り麦茶を飲めば熱中症の予防だけでなく、いいこと尽くめじゃないかなと思います」と積極的に活用している。 大学入学前から無糖のミネラル入り麦茶を愛飲していたという石田 東洋大で栄養面のレクチャーを受けたことで、石田はさらに食生活に気をつけるようになったという。朝夕は管理栄養士が監修したメニューを食べているが、各自で準備する昼食は1年生・酒井監督・管理栄養士のグループLINEで「昼食調査」も実施している。 「高校時代は貧血に悩まされたこともあるので、鉄分が入っている食材をなるべくとるようにしています。コンビニやスーパーで肉や魚を調達して電子レンジで調理したり、栄養バランスやご飯の量なども考えています」「箱根への憧れも抱いている」
体調も走りのバランスも上向いてきた石田。ルーキーイヤーの学生駅伝はどのようにとらえているのか。 「どの区間を走ってもチームに貢献できればと思っています。全日本はまだイメージできていないですけど、前半いい流れで攻めていければ走れるんじゃないでしょうか。来年は日本選手権で勝負したい気持ちが強いので、全日本後は箱根に向けた練習というよりも、5000m、10000mでタイムを狙う練習が優先順位としては上かなと思っています。とはいえ、日本人に生まれたからには箱根駅伝への憧れも抱いています。箱根への過程をトラックにつなげたい。5区は無理だと思っていますが、往路を走りたいですね。箱根でも記憶に残る走りをして卒業したいです」 2024年夏、大学4年で迎えることになるパリ五輪でトラック種目の出場を本気で狙っている石田。“鉄紺のエース”たちの系譜を引き継ぎ、学生駅伝でも攻めの走りを見せてくれるに違いない。 文/酒井政人 ※この記事は『月刊陸上競技』2021年11月号に掲載しています
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