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2021.10.16

学生長距離トピックス 東洋大学/箱根の“優勝争い”に照準 出雲と全日本をステップにチームを計画的に強化
学生長距離トピックス 東洋大学/箱根の“優勝争い”に照準 出雲と全日本をステップにチームを計画的に強化

学生長距離トピックス

箱根の“優勝争い”に照準
出雲と全日本をステップにチームを計画的に強化
東洋大学


箱根駅伝を見据えて着々と強化を進めている東洋大

 東洋大が箱根駅伝で“主役”の座を狙っている。シーズン前半戦は目立った結果を残せなかったが、充実の夏合宿を経てチームの状態は上昇中だ。前回は3位に返り咲いた箱根駅伝に照準を合わせ、計画的に選手の強化・育成に注力している。
 今季のチームスローガンは『鉄紺の証明』。雌伏の時を経て、正月の箱根駅伝で鉄紺軍団の“真の強さ”が明らかになる──。

不発の前半戦から充実の夏合宿

「『箱根から世界へ』という方針を掲げていますが、大会に出られないと看板倒れになる。今年は秋にしっかりタイムも出していきたいと思います」(酒井俊幸監督)

 柏原竜二、設楽啓太、設楽悠太、服部勇馬相澤晃西山和弥――。鉄紺軍団の歴代のエースたちは、関東インカレで活躍しただけでなく、学生時代から日本選手権の10000mにトライしてきた。しかし、今季の東洋大は両大会で存在感を示すことができなかった。

 5月の関東インカレは長距離種目でまさかの0点。故障による主力選手の欠場が重なり、佐藤真優(2年)のハーフマラソン10位がチーム最上位という結果にとどまった。6月の日本選手権には高校記録(13分37秒74)を保持するスーパールーキーの石田洸介が5000mに、同じ1年生の甲木康博が1500mに参戦したが、10000mでは誰も出場資格を得られなかった。前期は宮下隼人(4年)、松山和希(2年)、児玉悠輔(3年)といった主力が本調子でなく、チームには危機感が漂った。

出雲駅伝では主将の宮下隼人(左)とエース格の松山和希がエントリーメンバーから外れたが、11月の全日本大学駅伝での復帰を目指している

 昨年度は箱根駅伝に向けたトレーニングに集中していたこともあり、主力はトラックで記録を狙う機会が少なかった。それが今季のトラックでの戦いぶりにも影響した面があり、冒頭の酒井監督の言葉にもつながっていく。今年の駅伝シーズンは箱根にターゲットを定めつつ、トラックでの記録も狙っていくというスタンスだ。

 秋に向けてチームは6月からミニ合宿を少しずつ行い、7月後半から本格的な夏合宿に入った。コロナ禍で大学のセミナーハウスが使用できないなどの制約がある中で、感染対策に取り組みながら蔵王(山形)、菅平、黒姫(長野)、猪苗代(福島)などで走り込んできた。

「夏合宿は昨年よりも手応えがあります。具体的な数字も出ていますし、全体としては故障者も減りました。同じようなメニューを比較した場合、夏合宿前と後では余裕度が違います。高強度の練習グループに参加している選手が多いので、中間層の充実、底上げは昨年よりも確実にできている実感がありますね」(酒井監督)

今年は6月にミニ合宿を行うなど鍛練期を前倒し。秋はトラックレースでも記録を狙うための準備を進めている。先頭はトラックを得意とする3年生の及川瑠音

その時のチームに適した強化策を打ち出す酒井俊幸監督

 夏合宿は毎年、同じ場所で同じメニューを実施している大学は少なくないが、東洋大は選手が掲げる目標とチーム状況にフィットするかたちでトレーニング内容を変更している。「練習メニューやスタイルは5年前とはだいぶ違います。今年は発展的なかたちでできました」と酒井監督が話すほど充実した夏合宿になった。その中で選手たちのコンディショニング作りに貢献したのが、「ミネラル入り麦茶」だ。

「東洋大ではミネラル入り麦茶をコンディショニング飲料として活用しています。特に夏は発汗量が多いので、熱中症や脱水症状の予防として、失われた水分とミネラルを補給するのが主な目的です。トレーニングの前後はもちろん、食事や日常生活の中でも積極的に飲用しています」(酒井監督)

 東洋大はポイント練習の前や給水時には経口補水液やスポーツドリンクを活用。ポイント練習後にはアミノ酸ゼリーを摂取しているが、その他のシーンではミネラル入り麦茶を飲むことが多いという。

「夏合宿では1回の練習で体重を2kg近く落とす選手がいます。失われた水分量はすぐに補給しないといけません。それだけでなく、夏合宿は食事もしっかりとることを意識させています。スポーツドリンクは口の中がベタベタしてしまいますし、糖分をとりすぎてしまう恐れもあります。麦茶は無糖なので、食事への影響も少ないのがいいですね」(酒井監督)

コンディショニング作りにミネラル入り麦茶を活用

 東洋大がコンディショニングの一環として水分補給に「ミネラル入り麦茶」を導入したのは2018年。無糖でノンカロリーということもあり、選手たちは日々の生活でも積極的に活用している。

 2年連続で箱根駅伝の山上り5区で活躍した主将の宮下はそのレース中に右脚の脛を疲労骨折し、その後も左右のバランスが崩れたことで、今季は故障で走れない日々が続いた。

「4月から6月は思うように走れなかったので、体重が増えないように気をつけました。スポーツドリンクは摂取カロリーが増えてしまうので、昨年以上にミネラル入り麦茶を飲むようにしたんです。体重もさほど増えることはなかったですし、ミネラルも豊富なので、熱中症や脱水症状になることもありませんでした。夏合宿でも質の高いトレーニングができたと思います」(宮下)

東洋大は練習時の給水で経口補水液と麦茶を併用している

前期は故障の影響から練習量が落ちたため、ウエイトコントロールの一環としても無糖のミネラル入り麦茶を活用していたという宮下(左)。右は兼原尚也

 9月の日本インカレは回避した宮下だが、最後の駅伝シーズンに向けて現在は「7~8割くらい」まで体調は戻っている。なかなかチーム練習に加われなかった宮下に代わって、今季チームを引っ張ってきたのが副将の前田義弘(3年)だ。「味が好き」という理由で、高校時代からミネラル入り麦茶を飲用してきたという。

「大学入学後は栄養面のレクチャーもしていただいたので、知識もつき、意識してミネラル入り麦茶を摂取するようになりました。自分は身体が大きいので(189cm、73kg)積極的に飲むようにはしています。1日にペットボトル(650ml)を2~3本は飲んでいますね。試合前は経口補水液の量を増やすなど比率を調整しますが、普段はミネラル入り麦茶で生活しています」(前田)

 箱根駅伝は3区で区間8位。今季はレース後半の失速を課題にしてきたが、関東インカレのハーフマラソンも13位に終わった。だが、夏合宿では「3年間で一番走った」と言うほど距離を踏んできた。昨年までは月間800kmほどだったが、7月は900km以上、8月は950km以上走り込んだという。9月の日本インカレは10000mで10位と目標の「入賞」には3秒届かなかったものの、自己ベストの28分57秒80をマーク。「後半の落ち込みが少なくなってきているのを実感しています」と手応えをつかんでいる。

「3年間で一番走った」と話す前田義弘。3年生ながら副主将を務めている

 コロナ禍になり、選手たちはオンライン授業が増加。さらに外出自粛を徹底しているために、トレーニング以外の運動量が減少している。食事量が変わらないと太ってしまうため、一時は摂取カロリーを抑えた時期もあったという。しかし、食事制限は選手の栄養不足やストレスにもつながるリスクがある。そのため、食事量は元に戻して、無糖のミネラル入り麦茶を飲むことで余計なエネルギー摂取を抑えた。

「食事以外で1日2リットル以上は水分をとるようにしているので、そこで何を飲むのか。甘い炭酸飲料が好きな学生もいますが、選手たちは極力余計なものは飲まず、ミネラル入り麦茶を飲んでいます。以前は内臓疲労を訴える選手がいたのですが、少なくなりましたね。ノンカフェインなので利尿作用もないですし、イライラすることもありません。脱水になりにくいだけでなく、ミネラルが豊富なので市民ランナーの方やスポーツをされる方にもミネラル入り麦茶はお勧めできると思います」(酒井監督)

箱根駅伝では優勝争いを

 夏合宿は計画通りに進めていったが、三大駅伝に向けて酒井監督は大胆な戦略を立てた。出雲駅伝の登録メンバーは4年生を外し、1~3年生だけで臨んだのだ。その中には箱根2区で好走した主力2年生の松山も入っていない。2年ぶりの開催となった出雲駅伝は経験を積む場としてとらえた。

「今年は4年生の人数が少なく、故障者も多かった。それをピンチととらえるのではなく、逆にチャンスだと考えています」(酒井監督)

 出雲を後輩たちに託した主将の宮下は、「今回は4年生が入らなかったということで、申し訳ないという思いがあります。プラスにとらえれば、代わりに走った選手たちが、その経験を今後の駅伝につなげてほしい」と話す。

 全日本大学駅伝からは松山も復帰予定。前回4区を区間4位タイと好走した前田は「全日本は前半のスピード区間でも終盤のロング区間でも任された区間で責任を全うしたい。箱根は悔しい思いをしたので、往路でリベンジします。最低でも区間3位以内。3区、4区あたりで区間賞を目指したいです」と意気込んでいる。

 全日本から駅伝メンバーに加わることになる宮下は、「出雲にエントリーされなかった分、全日本に向けた練習が早めにできます。自分は終盤のロング区間を狙っているので、全日本と箱根に向けて長い距離に対応した練習をしっかり積んで合わせていきたいです。両駅伝で2つの区間賞を取りたい」と静かに燃えている。

夏合宿の後半には1年生の石田洸介(左端)やエース格の松山(左から3人目)が徐々に復調。焦らずにじっくりトレーニングを積んでいる

「全日本は前半で目まぐるしく順位が変わる一方でスピードに乗ったチームはどんどん行くと思うので、前半から食らいついていきたいですね。昨年のように先頭が見える位置で粘りの走りをして、確実にシード権を獲得したいと思います。13年続いている6位以内は死守したい」(酒井監督)

 前回は1区児玉、2区松山、3区佐藤、4区前田と、前半区間に1・2年生を起用。4人とも区間ひとケタ順位でまとめると、6区終了時でトップと20秒差の5位と善戦した。7区で順位を落としたが、2年連続でアンカーを務めた宮下が奮起して6位でフィニッシュしている。7区で好走できれば上位も狙えたレースだっただけに、今回は結果も求めていくことになる。また、箱根に向かう中で今季はトラック10000mでも記録を狙っていくという。

「駅伝で優勝争いをするにはエース力を上げていかないといけません。そのためには日本選手権で戦える走力が必要になってきます。世界を目指すためにも主力選手には28分10秒前後のタイムを狙わせたい」と酒井監督は考えている。

 そして箱根では“優勝争い”に絡んでいくつもりだ。

「出雲と全日本に出た選手たちはその経験値を箱根につなげて、遅れている4年生は最後の箱根に向けて合わせてほしいと思っています。前回は3位に入ったとはいえ、実力通りだったとは思っていません。優勝争いをするには、もっと成長していかないと厳しいという覚悟は持っています。宮下という山上り(5区)のカードがあるので、4区までに好位置につけて、往路で存在感を示したい。そういう意味では宮下に頼らない出雲は貴重な経験になりました」(酒井監督)

 正月決戦には宮下だけでなく、蝦夷森章太、腰塚遥人ら学生駅伝経験者である4年生の力も欠かせない。トラックシーズンは不発に終わった鉄紺軍団だが、“勝負”となる箱根駅伝で戦う準備は着々と整いつつある。

今季前半は疲労骨折のために離脱していた3年生の児玉悠輔も復活。秋が深まるにつれて足並みがそろっていきそうだ

文/酒井政人
撮影/船越陽一郎、樋口俊秀

※この記事は『月刊陸上競技』2021年11月号に掲載しています

学生長距離トピックス

箱根の“優勝争い”に照準 出雲と全日本をステップにチームを計画的に強化 東洋大学

箱根駅伝を見据えて着々と強化を進めている東洋大  東洋大が箱根駅伝で“主役”の座を狙っている。シーズン前半戦は目立った結果を残せなかったが、充実の夏合宿を経てチームの状態は上昇中だ。前回は3位に返り咲いた箱根駅伝に照準を合わせ、計画的に選手の強化・育成に注力している。  今季のチームスローガンは『鉄紺の証明』。雌伏の時を経て、正月の箱根駅伝で鉄紺軍団の“真の強さ”が明らかになる──。

不発の前半戦から充実の夏合宿

「『箱根から世界へ』という方針を掲げていますが、大会に出られないと看板倒れになる。今年は秋にしっかりタイムも出していきたいと思います」(酒井俊幸監督)  柏原竜二、設楽啓太、設楽悠太、服部勇馬、相澤晃、西山和弥――。鉄紺軍団の歴代のエースたちは、関東インカレで活躍しただけでなく、学生時代から日本選手権の10000mにトライしてきた。しかし、今季の東洋大は両大会で存在感を示すことができなかった。  5月の関東インカレは長距離種目でまさかの0点。故障による主力選手の欠場が重なり、佐藤真優(2年)のハーフマラソン10位がチーム最上位という結果にとどまった。6月の日本選手権には高校記録(13分37秒74)を保持するスーパールーキーの石田洸介が5000mに、同じ1年生の甲木康博が1500mに参戦したが、10000mでは誰も出場資格を得られなかった。前期は宮下隼人(4年)、松山和希(2年)、児玉悠輔(3年)といった主力が本調子でなく、チームには危機感が漂った。 出雲駅伝では主将の宮下隼人(左)とエース格の松山和希がエントリーメンバーから外れたが、11月の全日本大学駅伝での復帰を目指している  昨年度は箱根駅伝に向けたトレーニングに集中していたこともあり、主力はトラックで記録を狙う機会が少なかった。それが今季のトラックでの戦いぶりにも影響した面があり、冒頭の酒井監督の言葉にもつながっていく。今年の駅伝シーズンは箱根にターゲットを定めつつ、トラックでの記録も狙っていくというスタンスだ。  秋に向けてチームは6月からミニ合宿を少しずつ行い、7月後半から本格的な夏合宿に入った。コロナ禍で大学のセミナーハウスが使用できないなどの制約がある中で、感染対策に取り組みながら蔵王(山形)、菅平、黒姫(長野)、猪苗代(福島)などで走り込んできた。 「夏合宿は昨年よりも手応えがあります。具体的な数字も出ていますし、全体としては故障者も減りました。同じようなメニューを比較した場合、夏合宿前と後では余裕度が違います。高強度の練習グループに参加している選手が多いので、中間層の充実、底上げは昨年よりも確実にできている実感がありますね」(酒井監督) 今年は6月にミニ合宿を行うなど鍛練期を前倒し。秋はトラックレースでも記録を狙うための準備を進めている。先頭はトラックを得意とする3年生の及川瑠音 その時のチームに適した強化策を打ち出す酒井俊幸監督  夏合宿は毎年、同じ場所で同じメニューを実施している大学は少なくないが、東洋大は選手が掲げる目標とチーム状況にフィットするかたちでトレーニング内容を変更している。「練習メニューやスタイルは5年前とはだいぶ違います。今年は発展的なかたちでできました」と酒井監督が話すほど充実した夏合宿になった。その中で選手たちのコンディショニング作りに貢献したのが、「ミネラル入り麦茶」だ。 「東洋大ではミネラル入り麦茶をコンディショニング飲料として活用しています。特に夏は発汗量が多いので、熱中症や脱水症状の予防として、失われた水分とミネラルを補給するのが主な目的です。トレーニングの前後はもちろん、食事や日常生活の中でも積極的に飲用しています」(酒井監督)  東洋大はポイント練習の前や給水時には経口補水液やスポーツドリンクを活用。ポイント練習後にはアミノ酸ゼリーを摂取しているが、その他のシーンではミネラル入り麦茶を飲むことが多いという。 「夏合宿では1回の練習で体重を2kg近く落とす選手がいます。失われた水分量はすぐに補給しないといけません。それだけでなく、夏合宿は食事もしっかりとることを意識させています。スポーツドリンクは口の中がベタベタしてしまいますし、糖分をとりすぎてしまう恐れもあります。麦茶は無糖なので、食事への影響も少ないのがいいですね」(酒井監督)

コンディショニング作りにミネラル入り麦茶を活用

 東洋大がコンディショニングの一環として水分補給に「ミネラル入り麦茶」を導入したのは2018年。無糖でノンカロリーということもあり、選手たちは日々の生活でも積極的に活用している。  2年連続で箱根駅伝の山上り5区で活躍した主将の宮下はそのレース中に右脚の脛を疲労骨折し、その後も左右のバランスが崩れたことで、今季は故障で走れない日々が続いた。 「4月から6月は思うように走れなかったので、体重が増えないように気をつけました。スポーツドリンクは摂取カロリーが増えてしまうので、昨年以上にミネラル入り麦茶を飲むようにしたんです。体重もさほど増えることはなかったですし、ミネラルも豊富なので、熱中症や脱水症状になることもありませんでした。夏合宿でも質の高いトレーニングができたと思います」(宮下) 東洋大は練習時の給水で経口補水液と麦茶を併用している 前期は故障の影響から練習量が落ちたため、ウエイトコントロールの一環としても無糖のミネラル入り麦茶を活用していたという宮下(左)。右は兼原尚也  9月の日本インカレは回避した宮下だが、最後の駅伝シーズンに向けて現在は「7~8割くらい」まで体調は戻っている。なかなかチーム練習に加われなかった宮下に代わって、今季チームを引っ張ってきたのが副将の前田義弘(3年)だ。「味が好き」という理由で、高校時代からミネラル入り麦茶を飲用してきたという。 「大学入学後は栄養面のレクチャーもしていただいたので、知識もつき、意識してミネラル入り麦茶を摂取するようになりました。自分は身体が大きいので(189cm、73kg)積極的に飲むようにはしています。1日にペットボトル(650ml)を2~3本は飲んでいますね。試合前は経口補水液の量を増やすなど比率を調整しますが、普段はミネラル入り麦茶で生活しています」(前田)  箱根駅伝は3区で区間8位。今季はレース後半の失速を課題にしてきたが、関東インカレのハーフマラソンも13位に終わった。だが、夏合宿では「3年間で一番走った」と言うほど距離を踏んできた。昨年までは月間800kmほどだったが、7月は900km以上、8月は950km以上走り込んだという。9月の日本インカレは10000mで10位と目標の「入賞」には3秒届かなかったものの、自己ベストの28分57秒80をマーク。「後半の落ち込みが少なくなってきているのを実感しています」と手応えをつかんでいる。 「3年間で一番走った」と話す前田義弘。3年生ながら副主将を務めている  コロナ禍になり、選手たちはオンライン授業が増加。さらに外出自粛を徹底しているために、トレーニング以外の運動量が減少している。食事量が変わらないと太ってしまうため、一時は摂取カロリーを抑えた時期もあったという。しかし、食事制限は選手の栄養不足やストレスにもつながるリスクがある。そのため、食事量は元に戻して、無糖のミネラル入り麦茶を飲むことで余計なエネルギー摂取を抑えた。 「食事以外で1日2リットル以上は水分をとるようにしているので、そこで何を飲むのか。甘い炭酸飲料が好きな学生もいますが、選手たちは極力余計なものは飲まず、ミネラル入り麦茶を飲んでいます。以前は内臓疲労を訴える選手がいたのですが、少なくなりましたね。ノンカフェインなので利尿作用もないですし、イライラすることもありません。脱水になりにくいだけでなく、ミネラルが豊富なので市民ランナーの方やスポーツをされる方にもミネラル入り麦茶はお勧めできると思います」(酒井監督)

箱根駅伝では優勝争いを

 夏合宿は計画通りに進めていったが、三大駅伝に向けて酒井監督は大胆な戦略を立てた。出雲駅伝の登録メンバーは4年生を外し、1~3年生だけで臨んだのだ。その中には箱根2区で好走した主力2年生の松山も入っていない。2年ぶりの開催となった出雲駅伝は経験を積む場としてとらえた。 「今年は4年生の人数が少なく、故障者も多かった。それをピンチととらえるのではなく、逆にチャンスだと考えています」(酒井監督)  出雲を後輩たちに託した主将の宮下は、「今回は4年生が入らなかったということで、申し訳ないという思いがあります。プラスにとらえれば、代わりに走った選手たちが、その経験を今後の駅伝につなげてほしい」と話す。  全日本大学駅伝からは松山も復帰予定。前回4区を区間4位タイと好走した前田は「全日本は前半のスピード区間でも終盤のロング区間でも任された区間で責任を全うしたい。箱根は悔しい思いをしたので、往路でリベンジします。最低でも区間3位以内。3区、4区あたりで区間賞を目指したいです」と意気込んでいる。  全日本から駅伝メンバーに加わることになる宮下は、「出雲にエントリーされなかった分、全日本に向けた練習が早めにできます。自分は終盤のロング区間を狙っているので、全日本と箱根に向けて長い距離に対応した練習をしっかり積んで合わせていきたいです。両駅伝で2つの区間賞を取りたい」と静かに燃えている。 夏合宿の後半には1年生の石田洸介(左端)やエース格の松山(左から3人目)が徐々に復調。焦らずにじっくりトレーニングを積んでいる 「全日本は前半で目まぐるしく順位が変わる一方でスピードに乗ったチームはどんどん行くと思うので、前半から食らいついていきたいですね。昨年のように先頭が見える位置で粘りの走りをして、確実にシード権を獲得したいと思います。13年続いている6位以内は死守したい」(酒井監督)  前回は1区児玉、2区松山、3区佐藤、4区前田と、前半区間に1・2年生を起用。4人とも区間ひとケタ順位でまとめると、6区終了時でトップと20秒差の5位と善戦した。7区で順位を落としたが、2年連続でアンカーを務めた宮下が奮起して6位でフィニッシュしている。7区で好走できれば上位も狙えたレースだっただけに、今回は結果も求めていくことになる。また、箱根に向かう中で今季はトラック10000mでも記録を狙っていくという。 「駅伝で優勝争いをするにはエース力を上げていかないといけません。そのためには日本選手権で戦える走力が必要になってきます。世界を目指すためにも主力選手には28分10秒前後のタイムを狙わせたい」と酒井監督は考えている。  そして箱根では“優勝争い”に絡んでいくつもりだ。 「出雲と全日本に出た選手たちはその経験値を箱根につなげて、遅れている4年生は最後の箱根に向けて合わせてほしいと思っています。前回は3位に入ったとはいえ、実力通りだったとは思っていません。優勝争いをするには、もっと成長していかないと厳しいという覚悟は持っています。宮下という山上り(5区)のカードがあるので、4区までに好位置につけて、往路で存在感を示したい。そういう意味では宮下に頼らない出雲は貴重な経験になりました」(酒井監督)  正月決戦には宮下だけでなく、蝦夷森章太、腰塚遥人ら学生駅伝経験者である4年生の力も欠かせない。トラックシーズンは不発に終わった鉄紺軍団だが、“勝負”となる箱根駅伝で戦う準備は着々と整いつつある。 今季前半は疲労骨折のために離脱していた3年生の児玉悠輔も復活。秋が深まるにつれて足並みがそろっていきそうだ 文/酒井政人 撮影/船越陽一郎、樋口俊秀 ※この記事は『月刊陸上競技』2021年11月号に掲載しています

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