東京五輪はついに最終日を迎える。残る種目はただ1つ。熱狂の日々の最後を飾るのは男子マラソンだ。札幌を舞台に世界一を決めるレースが8月8日朝7時にスタートする。
何と言っても王者E.キプチョゲ(ケニア)の走りが日本で見られるのは興奮するファンも多いのではないだろうか。
2時間1分39秒の世界記録を持ち、非公認レースでは人類初の2時間切りとなる1時間59分40秒2という記録を打ち立てた。マラソンは14戦12勝。14年4月のロッテルダムから19年4月まで10連勝を飾っている。前回リオ五輪も金メダル。まさに史上最強・最速のマラソンランナーだ。36歳になったが、今年4月に2時間4分30秒をマークするなど、オリンピックに合わせてきている。男子マラソン史上3人目の連覇なるか。
迎え撃つ日本代表は、19年9月の代表選考会マラソングランドチャンピオンシップで1、2位の中村匠吾(富士通/PB2時間8分16秒)、服部勇馬(トヨタ自動車/PB2時間7分27秒)、そして3枠目をつかんだ大迫傑(Nike/2時間5分29秒)の3人。中村と服部はこの1年でケガもあったが、本番に向けて仕上げてきた。日本記録を2度塗り替えた大迫は東京五輪を「現役最後のマラソン」だと表明。集大成のレースで魂の走りを見せる。
事前会見では「2年間準備期間があって、1日1日、精一杯やってきた」と中村。今年は正月の全日本実業団駅伝でケガをした影響が長引き、それ以降レースに出場していない。「本来、びわ湖毎日マラソンと5月のテストイベントに出る予定だったが見送り、6月から約2ヵ月は、長野で高地トレーニングをしっかり積んできた」と仕上げてきた。MGCの圧勝劇に代表されるように、暑さは望むところ。「スローペースでもハイペースでも揺さぶりがあるので、身体と相談しながら対応したい」と展望している。
服部も昨年12月の福岡国際マラソンは欠場。全日本実業団駅伝以降はレースから遠ざかり、5月5日のテストイベントとなった北海道・札幌チャレンハーフマラソンで久々のレース(1時間02分59秒)。それ以降は菅平でトレーニングを積んできた。最後の1ヵ月は、弟の弾馬(トーエネック)とともに練習してきたといい、「これまでやってきたこと発揮したい。100%の力を出して悔いの残らないように走りたい」と思い描いている。
並々ならぬ覚悟を持つ大迫。「ずっとケニア、アメリカでトレーニングをしてきました。順調で充実したトレーニングができたと思います」。最後と決めて臨む地元五輪でのマラソンに「いろんな感情はありますが、客観視している部分もある。いつも通りを心掛けて」と、静かにその刻を待つ。これまで通り勝負にこだわりつつ、「順位、結果はもちろん大切だけど、レースが終わった時に自分が『頑張り切れた』と思える、そんなレースにしたい」と意気込みを語っている。
ただ、海外勢のレベルは近年急騰。世界中のトップランナーたちが集結し、上位争いは熾烈を極める。
キプチョゲの他に、ケニアからはL.チェロノとA.キプルトが出場。チェロノは19年にボストンとシカゴを制し、20年には2時間3分台をマーク。キプルトは19年ドーハ世界選手権で銅メダルを獲得している。
エチオピアからはドーハ王者のL.デシサ、20年ロンドン覇者のS.キタタ、2時間3分台のS.レマと強力だ。
12年ロンドン五輪でS.キプロティチが金メダルを獲得してからトラックやハーフでどんどん記録を伸ばしている第三の国・ウガンダ。そのキプロティチはピークを越えた感があるが、F.チェモンゲス、F.ムソボはまだマラソンで実績は少ないが不気味な存在だ。
他では今年ミラノで2時間4分55秒を出しているタンザニアのG.ゲアイ、O.エルグムリ(モロッコ)も力があり、バーレーンのE.エル・ハブシやベルギーのB.アブディなどが2時間5分を切る自己記録を持つ選手などアフリカからの帰化選手が多数いる。ノルウェーのS.N.モーエンやG.ラップ(米国)らおなじみの顔ぶれも札幌へ。暑さもあって記録は望めないだろうが、勝負の面で見応え十分なレースが展開されそうだ。
日本勢のメダルは1992年バルセロナの森下広一(銀)を最後に遠ざかっている。入賞はロンドン五輪で中本健太郎が6位に入っている。メダル争いは2時間6分前後、入賞争いは2時間10分前後あたりか。30kmあたりまではスローペースになる可能性もあり、そこまでしっかり先頭集団で展開すれば、チャンスは広がっていくだろう。日本は今大会、メダル2を含む入賞8つ。これは1992年バルセロナ、2004年アテネに並ぶ戦後最多だ。1964年の東京五輪では同じく最終日に行われた男子マラソンで、円谷幸吉が大会初のメダルを獲得した。
世界が強いのは百も承知。まずはそれぞれが自分の持てる力を最大限に発揮してほしい。そうすれば自ずと結果はついてくる。東京五輪、いよいよラストスパート!

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