写真/時事
陸上競技3日目は大注目の男子100m準決勝、決勝が行われた。
2008年北京五輪から前回リオまで、3大会連続金と“絶対王者”に君臨していたウサイン・ボルト(ジャマイカ)がトラックを去り、今大会は「ポスト・ボルト」を決める大会だった。
準決勝から波乱の展開になった。6月に世界歴代7位の9秒77をマークしたV候補のT.ブロメル(米国)が2組3着(10秒00)で敗退。衝撃を与えたのは3組に入った9秒91のアジア記録を保持する蘇炳添(中国)だった。
蘇はシャープな飛び出しを見せると、そのままトップを疾走。最後は差をつめられるも粘り切り1着で決勝へ。しかも9秒83(+0.9)という特大のアジア記録、世界歴代12位の記録を打ち立てて、世界を驚かせた。2着のR.ベイカー(米国)も同タイム(自己新)で、3着のL.M.ジェイコブス(イタリア)は9秒84の欧州記録をマークした。
予測不可能な決勝。4レーンのZ.ヒューズ(英国)がフライングで失格するまたも波乱の幕開け。スタートの緊張感がさらに高まった中で2度目の号砲が鳴る。前半はF.カーリー(米国)が先行した。しかし、後半に入ると、ジェイコブスが加速。終盤に逆転して、五輪男子100mでイタリア勢初の金メダルを獲得した。
優勝タイムは欧州新記録となる9秒80(+0.1)。2位はカーリーで9秒84、3位はA.デグラス(カナダ)で9秒89だった。全体トップで通過した蘇はスタートの出遅れが響いて9秒98の6位に終わった。
ジェイコブスは米国生まれの26歳。走幅跳で7m95(2016年)、追い風参考では8m48(+2.8)の記録を持つ。2018年シーズンから100mをメインに戦い、大会前の自己ベストは山縣亮太(セイコー)と同じ9秒95。準決勝はプラス通過だったが、一気に“人類最速”まで上りつめた。
「オリンピックに勝つことが子供の頃からの夢でした。夢は別の何かに変わる可能性がありますが、これは夢の実現です。金メダル獲得は信じられません。いつも私を支えてくれた家族、息子たち、子供の頃から私の一番のファンでいてくれた母親、そして私をフォローしてくれたチームに感謝したいです」とジェイコブス。走高跳でもイタリアのG.タンベリが同日に金メダルを獲得し、「ともに金メダルを獲得できたのも素晴らしいことです」と喜んだ。
アジア記録を出した蘇は、「このスタジアムのことは一生忘れない。準決勝で力を使い果たしていた」と振り返った。蘇は31歳。今年6月には自身7度目となる9秒台となる9秒98をマークしていた。
写真/時事
モーニングセッションで行われた女子砲丸投は鞏立姣(中国)が20m58の自己ベストで制して、中国勢悲願の五輪初優勝。イブニングセッションの男子走高跳は世界選手権を連覇中のM.E.バルシム(カタール)と2m39のベストを持つタンベリ(イタリア)が2m37までを1回でクリア。2m39をともに失敗すると、互いに話し合った末にジャンプオフ(優勝決定戦)を行わず、金メダルを分け合った。女子三段跳はY.ロハス(ベネズエラ)がビッグジャンプを連発。1回目に五輪新となる15m41(+1.1)を跳ぶと、最終6回目に15m67(+0.7)をマーク。従来の世界記録を17㎝も更新して、ベネズエラ陸上界初の金メダルに輝いた。
日本勢は、女子3000m障害に出場した山中柚乃(愛媛銀行)が予選敗退(組10着)も9分43秒83と、早狩実紀が08年北京五輪で出したオリンピック日本人最高記録9分49秒70を上回った。女子100mハードルで21年ぶりに準決勝に進んだ寺田明日香(ジャパンクリエイト)は13秒06(-0.8)の6着で決勝進出はならなかった。男子走高跳で49年ぶりに決勝に進んだ戸邉直人(JAL)は2m24で12位だった。


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