2021.07.16
学生長距離Close-upインタビュー
栗原啓吾 Kurihara Keigo 中央学院大学4年
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。9回目は、学年を上げるごとに存在感が増してきている中央学大のエース・栗原啓吾(4年)に話を聞いた。
群馬・東農大二高時代から入学し、ルーキーイヤーから三大駅伝フル出場など主力として活躍。2年時の箱根駅伝では1区区間5位とエース級の活躍を見せた。昨年度はチームが箱根駅伝の出場権を18年ぶりに逃す事態となったが、今季は最上級生として新生・中央学院を牽引し、再び駅伝シーズンで強いフラッシュイエロー軍団を披露するつもりだ。
箱根予選会敗退からの再出発を「エース」として牽引
昨年10月の予選会で箱根駅伝の連続出場が「18」で途絶えた中央学大。チームトップの16位(1時間2分03秒)でゴールした栗原啓吾(現4年)はレース中から「嫌な雰囲気」を感じていたという。
「一緒に走る予定だった高橋翔也さん(当時4年/現・ヤクルト)が遅れたので、『自分ががんばらなきゃマズいな』と思っていたんです。それでも通過はできるだろうと思っていたので、落選だと聞いた時は何も考えられませんでした……」
失意の箱根予選会のから8ヵ月が経ち、再出発を切ったチームは復活への道を進んでいる。
6月19日の全日本大学駅伝関東学連推薦選考会は総合6位で通過。2組目で総合順位を2位から通過圏外の12位まで落とすハプニングが発生したが、3組の小島慎也と武川流以名(ともに3年)がワン・ツーフィニッシュで6位まで押し上げ、最終4組も栗原とルーキー吉田礼志が日本人トップ集団でレースを進め、栗原が日本人3番手の9着、吉田も同4番手の10着と好走してピンチを乗り越えた。
「全日本選考会の目標は3位以内での通過でした。そこは達成できなかったのですが、一部の選手以外はしっかりまとめられたので個々の力は間違いなくついてきているのを実感しています」と栗原。今季はスピード練習の設定タイムを1kmあたり3~5秒くらい上げているそうで、「その成果も出ていると思います」と選手たちも成長を実感しているようだ。
また、中央学大はこれまでの紫シャツ、イエローパンツという派手なユニフォームが特徴的だったが、今季から新たに「イエローシャツ&黒短パン」という新スタイルで公式戦に臨んでいる。新ユニフォームに関しての栗原の感想は、「紫色がないのは寂しいですけど、今風になったのかなと思います。でも、まだ慣れないですね(笑)」。
西山、千明らの背中を追った高校時代
栗原は群馬・伊勢崎二中から本格的に競技を開始。中学時代の3000mベストは2年時の9分06秒15で、「県内でもそこまで上位ではなかった」という。高校は「全国の舞台を経験したい」と群馬の名門・東農大二高に進学。1学年上に西山和弥(トヨタ自動車)、同学年には千明龍之佑(早大)がいた。
「西山さんはストイックで見習うことが多く、千明は常に一歩前にいたので『勝ちたい』という思いがありました」と栗原は2人の背中を追いかけて成長した。全国高校駅伝は3年連続で4区に出走。2年時に区間6位と好走すると、3年時には5000mでインターハイに出場した。5000mは2017年の高校ランキング18位(留学生含む)に位置する14分05秒45までタイムを短縮している。
高校時代に印象に残っているレースについて聞いてみると、「インターハイを目指していたので、北関東大会の5000mで5位に入れたのがうれしかったですね」と話す一方、「3年時の全国高校駅伝(4区で区間25位)はうまく走ることができず、悔しさが残っています」
栗原が印象に残ったレースとして挙げた高校3年時の北関東大会5000m。13番が栗原で、6番がチームメイトだった千明龍之佑(現・早大)
卒業後は、「高校と同じように上下関係が厳しくなく、競技に取り組みやすい環境だと思った」と中央学大に進学。1年時から三大駅伝にフル出場し、出雲は2区で区間5位、全日本は3区で区間9位、箱根は3区で区間13位という成績を残している。
「1年時から駅伝メンバーに使っていただけたのは非常にうれしかったんですけど、力不足を感じましたね。ただ距離に不安があった中で、箱根駅伝を区間10番前後でまとめられた。ハーフマラソンも今後は走れるんじゃないかなという手ごたえをつかみました」
2年時は夏合宿の疲労が抜けず、出雲は原因不明の大失速で5区区間20位に沈んだが、その後、10000mで28分35秒00をマーク。箱根駅伝では1区を任され、21.3kmを1時間1分26秒で走破する区間5位と奮起した。「1区は自分からやりたいとは思っていなかったんです」と明かすが、「思った以上に走れたのは自信になりました」と、その後の飛躍につながるターニングポイントとなるレースだった。
ただ、チームは2区以降で順位を落として総合11位でフィニッシュ。シード権を逃がすと、翌年度は予選会で落選した。今季は小島慎也が3年生主将を務め、チームは再出発を図ることになった。
「正直、年下に主将を任せてしまったという負い目はあります」と栗原。その分、最上級生として「『自分は走りでチームを引っ張っていかないといけない』という気持ちが強くなりました。結果や姿勢で見せたいと思っています」とチームの再起を最前線で牽引するつもりだ。
「区間賞を獲得して卒業したい」
熱い気持ちで迎えた今季は4月24日の日体大長距離競技会10000mで自己ベストを30秒以上も短縮する28分03秒39をマーク。木原真佐人が保持していた大学記録(28分06秒48)を13年ぶりに塗り替えた。
「3年時はタイムが伸びていなかったこともあり、箱根予選会が終わってからは、何が何でも出してやろうという気持ちで取り組んできました。目標(28分20秒)を大きく超えることができて、記録として自分の成長を感じられたのがうれしかったです。それでも監督からは『27分台で走らないと他大学のエースとは戦えない』と言われているので、次は27分台を出したいです」
今後は箱根駅伝予選会が最大のターゲット。昨年の悔しさを払拭するために、チームは「トップ通過」を目標にしている。
「予選会は他大学のエースに負けない走りが求められるので、日本人トップ集団で勝負する予定です。そして、全日本と箱根のどちらかで区間賞を獲得して卒業したい。エースと言われなくても、最上級生として示しのつく走りをしなきゃいけないと思っています」
控えめな性格の栗原だが、大学最後の駅伝シーズンを強い気持ちで駆け抜ける。
◎くりはら・けいご/1999年7月1日生まれ。群馬県出身。伊勢崎二中→東農大二高→中央学大。自己記録5000m13分46秒96、10000m28分03秒39。ハーフマラソン1時間2分03秒。高校時代はインターハイに5000mで出場(予選落ち)。現在は早大の駅伝主将を務める千明龍之佑らと組んで全国高校駅伝に3度出場した。中央学大では1年時から主力として駅伝メンバーに名を連ね、2年時には箱根1区区間5位と好走。昨年度はチームが箱根駅伝の出場権を逃したが、最終学年を迎える今季は、10000mで中央学大記録を更新するほか、全日本大学駅伝選考会でチームの通過に貢献するなどトラックで存在感を高めている(写真はチーム提供)
文/酒井政人
箱根予選会敗退からの再出発を「エース」として牽引
昨年10月の予選会で箱根駅伝の連続出場が「18」で途絶えた中央学大。チームトップの16位(1時間2分03秒)でゴールした栗原啓吾(現4年)はレース中から「嫌な雰囲気」を感じていたという。 「一緒に走る予定だった高橋翔也さん(当時4年/現・ヤクルト)が遅れたので、『自分ががんばらなきゃマズいな』と思っていたんです。それでも通過はできるだろうと思っていたので、落選だと聞いた時は何も考えられませんでした……」 失意の箱根予選会のから8ヵ月が経ち、再出発を切ったチームは復活への道を進んでいる。 6月19日の全日本大学駅伝関東学連推薦選考会は総合6位で通過。2組目で総合順位を2位から通過圏外の12位まで落とすハプニングが発生したが、3組の小島慎也と武川流以名(ともに3年)がワン・ツーフィニッシュで6位まで押し上げ、最終4組も栗原とルーキー吉田礼志が日本人トップ集団でレースを進め、栗原が日本人3番手の9着、吉田も同4番手の10着と好走してピンチを乗り越えた。 「全日本選考会の目標は3位以内での通過でした。そこは達成できなかったのですが、一部の選手以外はしっかりまとめられたので個々の力は間違いなくついてきているのを実感しています」と栗原。今季はスピード練習の設定タイムを1kmあたり3~5秒くらい上げているそうで、「その成果も出ていると思います」と選手たちも成長を実感しているようだ。 また、中央学大はこれまでの紫シャツ、イエローパンツという派手なユニフォームが特徴的だったが、今季から新たに「イエローシャツ&黒短パン」という新スタイルで公式戦に臨んでいる。新ユニフォームに関しての栗原の感想は、「紫色がないのは寂しいですけど、今風になったのかなと思います。でも、まだ慣れないですね(笑)」。西山、千明らの背中を追った高校時代
栗原は群馬・伊勢崎二中から本格的に競技を開始。中学時代の3000mベストは2年時の9分06秒15で、「県内でもそこまで上位ではなかった」という。高校は「全国の舞台を経験したい」と群馬の名門・東農大二高に進学。1学年上に西山和弥(トヨタ自動車)、同学年には千明龍之佑(早大)がいた。 「西山さんはストイックで見習うことが多く、千明は常に一歩前にいたので『勝ちたい』という思いがありました」と栗原は2人の背中を追いかけて成長した。全国高校駅伝は3年連続で4区に出走。2年時に区間6位と好走すると、3年時には5000mでインターハイに出場した。5000mは2017年の高校ランキング18位(留学生含む)に位置する14分05秒45までタイムを短縮している。 高校時代に印象に残っているレースについて聞いてみると、「インターハイを目指していたので、北関東大会の5000mで5位に入れたのがうれしかったですね」と話す一方、「3年時の全国高校駅伝(4区で区間25位)はうまく走ることができず、悔しさが残っています」 栗原が印象に残ったレースとして挙げた高校3年時の北関東大会5000m。13番が栗原で、6番がチームメイトだった千明龍之佑(現・早大) 卒業後は、「高校と同じように上下関係が厳しくなく、競技に取り組みやすい環境だと思った」と中央学大に進学。1年時から三大駅伝にフル出場し、出雲は2区で区間5位、全日本は3区で区間9位、箱根は3区で区間13位という成績を残している。 「1年時から駅伝メンバーに使っていただけたのは非常にうれしかったんですけど、力不足を感じましたね。ただ距離に不安があった中で、箱根駅伝を区間10番前後でまとめられた。ハーフマラソンも今後は走れるんじゃないかなという手ごたえをつかみました」 2年時は夏合宿の疲労が抜けず、出雲は原因不明の大失速で5区区間20位に沈んだが、その後、10000mで28分35秒00をマーク。箱根駅伝では1区を任され、21.3kmを1時間1分26秒で走破する区間5位と奮起した。「1区は自分からやりたいとは思っていなかったんです」と明かすが、「思った以上に走れたのは自信になりました」と、その後の飛躍につながるターニングポイントとなるレースだった。 ただ、チームは2区以降で順位を落として総合11位でフィニッシュ。シード権を逃がすと、翌年度は予選会で落選した。今季は小島慎也が3年生主将を務め、チームは再出発を図ることになった。 「正直、年下に主将を任せてしまったという負い目はあります」と栗原。その分、最上級生として「『自分は走りでチームを引っ張っていかないといけない』という気持ちが強くなりました。結果や姿勢で見せたいと思っています」とチームの再起を最前線で牽引するつもりだ。「区間賞を獲得して卒業したい」
熱い気持ちで迎えた今季は4月24日の日体大長距離競技会10000mで自己ベストを30秒以上も短縮する28分03秒39をマーク。木原真佐人が保持していた大学記録(28分06秒48)を13年ぶりに塗り替えた。 「3年時はタイムが伸びていなかったこともあり、箱根予選会が終わってからは、何が何でも出してやろうという気持ちで取り組んできました。目標(28分20秒)を大きく超えることができて、記録として自分の成長を感じられたのがうれしかったです。それでも監督からは『27分台で走らないと他大学のエースとは戦えない』と言われているので、次は27分台を出したいです」 今後は箱根駅伝予選会が最大のターゲット。昨年の悔しさを払拭するために、チームは「トップ通過」を目標にしている。 「予選会は他大学のエースに負けない走りが求められるので、日本人トップ集団で勝負する予定です。そして、全日本と箱根のどちらかで区間賞を獲得して卒業したい。エースと言われなくても、最上級生として示しのつく走りをしなきゃいけないと思っています」 控えめな性格の栗原だが、大学最後の駅伝シーズンを強い気持ちで駆け抜ける。 ◎くりはら・けいご/1999年7月1日生まれ。群馬県出身。伊勢崎二中→東農大二高→中央学大。自己記録5000m13分46秒96、10000m28分03秒39。ハーフマラソン1時間2分03秒。高校時代はインターハイに5000mで出場(予選落ち)。現在は早大の駅伝主将を務める千明龍之佑らと組んで全国高校駅伝に3度出場した。中央学大では1年時から主力として駅伝メンバーに名を連ね、2年時には箱根1区区間5位と好走。昨年度はチームが箱根駅伝の出場権を逃したが、最終学年を迎える今季は、10000mで中央学大記録を更新するほか、全日本大学駅伝選考会でチームの通過に貢献するなどトラックで存在感を高めている(写真はチーム提供) 文/酒井政人
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