2019.03.16
米田勝朗監督に聞く
女子長距離選手のためのコンディショニング
女子陸上アスリートの疲労骨折リスクは他競技と比べてかなり高く、大学女子長距離選手の2人に1人は疲労骨折を経験しているという報告もある(日本産科婦人科学会女性ヘルスケア委員会報告/平成28年度)。コンディションを維持する上で骨の健康は欠かせないが、大学女子長距離界のトップに君臨する名城大学ではどのような点に注意しながらチームをつくっているのだろうか。同校女子駅伝部の米田勝朗監督(50歳)に話を聞いた。
しっかりしたからだをつくることが強さの源
――昨年10月の全日本大学女子駅伝(仙台)で2年連続3回目の優勝を飾り、12月の全日本大学女子選抜駅伝(富士・富士宮)でも初優勝。「学生長距離界の女王」である名城大では選手育成においてどのようなことを大切にしていますか。
米田 全日本大学女子駅伝で初優勝した2005年までは選手を徹底的に管理し、からだを絞るために極力、余計なものを食べさせない指導方針で、結果も出ました。しかし、短期的に結果は出てもその後は伸び悩み、月経がほとんど来ないでホルモンのバランスを崩す選手、ケガをする選手も増えてしまったので、このままではいけないと思うようになり、「まずは、しっかりしたからだをつくってやることが大事」という方針に変えました。
――しっかりしたからだをつくるために取り込んだことはありますか。
米田 2009年から名古屋学芸大学の管理栄養学部の学生に食事提供を受け始め、食事の内容ががらりと変わりました。名古屋学芸大学教授の田村明先生が本学の薬学部の卒業生であり、そんなご縁でご紹介いただいたのですが、管理栄養士を目指す女子学生が自分たちの勉強、実習の一環として交代制で毎日、本学女子駅伝部の寮に来て夕食をつくってくれて、朝食の献立も考えてくれています。それ以前は「食べるな、食べるな」「絞れ、絞れ」という方針でしたが、田村先生は「食え、食え。特に、米を食え」という考えですから食事の内容が180度変
わりました。
単に食事を提供してくれるだけでなく、新入生を迎える春には栄養の大切さを講義してくれますし、同じ女子学生同士ということで話しやすいですから日々いろんなアドバイスをしてくれて、練習前後の尿の状況もチェッ
クしてくれますから、本当に助かっています。このサポートを受けて10年目になりますが、お金をかけて外注するのではなく、利害関係がなくこのような取り組みをしているのは全国でも本学だけでしょうし、胸を張って誇れることです。
――女子アスリートの主な問題点としてスポーツ界や医学界では「栄養不足」、「無月経」、「疲労骨折」の3つが挙げられていますが、「栄養不足」こそ問題の根底です。
米田 しっかりした食事を摂っていれば無月経や疲労骨折の問題も緩和されますから、いろいろな栄養素をバランスよく摂取することが大切です。故障せず、継続してトレーニングできることが強くなるための一番の近道ですし、長く活躍していくためには「絞って走る」という時代はもう終わったと言えるでしょう。
――そのあたりの選手育成方針が、名城大学の強さの秘訣ですね。
米田 本学が結果を出せているのは加世田(梨花)、髙松(智美ムセンビ)、和田(有菜)など力のある選手が入ってきてくれた部分も確かにありますが、高校時代の〝貯金〟がなくなったら低迷することが課題になっている学生女子長距離界において、本学は3、4年生も活躍するチームになってきたことが大きいと思います。
※この続きは2019年3月14日発売の『月刊陸上競技』4月号をご覧ください
米田勝朗監督に聞く 女子長距離選手のためのコンディショニング
女子陸上アスリートの疲労骨折リスクは他競技と比べてかなり高く、大学女子長距離選手の2人に1人は疲労骨折を経験しているという報告もある(日本産科婦人科学会女性ヘルスケア委員会報告/平成28年度)。コンディションを維持する上で骨の健康は欠かせないが、大学女子長距離界のトップに君臨する名城大学ではどのような点に注意しながらチームをつくっているのだろうか。同校女子駅伝部の米田勝朗監督(50歳)に話を聞いた。しっかりしたからだをつくることが強さの源
――昨年10月の全日本大学女子駅伝(仙台)で2年連続3回目の優勝を飾り、12月の全日本大学女子選抜駅伝(富士・富士宮)でも初優勝。「学生長距離界の女王」である名城大では選手育成においてどのようなことを大切にしていますか。 米田 全日本大学女子駅伝で初優勝した2005年までは選手を徹底的に管理し、からだを絞るために極力、余計なものを食べさせない指導方針で、結果も出ました。しかし、短期的に結果は出てもその後は伸び悩み、月経がほとんど来ないでホルモンのバランスを崩す選手、ケガをする選手も増えてしまったので、このままではいけないと思うようになり、「まずは、しっかりしたからだをつくってやることが大事」という方針に変えました。 ――しっかりしたからだをつくるために取り込んだことはありますか。 米田 2009年から名古屋学芸大学の管理栄養学部の学生に食事提供を受け始め、食事の内容ががらりと変わりました。名古屋学芸大学教授の田村明先生が本学の薬学部の卒業生であり、そんなご縁でご紹介いただいたのですが、管理栄養士を目指す女子学生が自分たちの勉強、実習の一環として交代制で毎日、本学女子駅伝部の寮に来て夕食をつくってくれて、朝食の献立も考えてくれています。それ以前は「食べるな、食べるな」「絞れ、絞れ」という方針でしたが、田村先生は「食え、食え。特に、米を食え」という考えですから食事の内容が180度変 わりました。 単に食事を提供してくれるだけでなく、新入生を迎える春には栄養の大切さを講義してくれますし、同じ女子学生同士ということで話しやすいですから日々いろんなアドバイスをしてくれて、練習前後の尿の状況もチェッ クしてくれますから、本当に助かっています。このサポートを受けて10年目になりますが、お金をかけて外注するのではなく、利害関係がなくこのような取り組みをしているのは全国でも本学だけでしょうし、胸を張って誇れることです。 ――女子アスリートの主な問題点としてスポーツ界や医学界では「栄養不足」、「無月経」、「疲労骨折」の3つが挙げられていますが、「栄養不足」こそ問題の根底です。 米田 しっかりした食事を摂っていれば無月経や疲労骨折の問題も緩和されますから、いろいろな栄養素をバランスよく摂取することが大切です。故障せず、継続してトレーニングできることが強くなるための一番の近道ですし、長く活躍していくためには「絞って走る」という時代はもう終わったと言えるでしょう。 ――そのあたりの選手育成方針が、名城大学の強さの秘訣ですね。 米田 本学が結果を出せているのは加世田(梨花)、髙松(智美ムセンビ)、和田(有菜)など力のある選手が入ってきてくれた部分も確かにありますが、高校時代の〝貯金〟がなくなったら低迷することが課題になっている学生女子長距離界において、本学は3、4年生も活躍するチームになってきたことが大きいと思います。 ※この続きは2019年3月14日発売の『月刊陸上競技』4月号をご覧ください
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